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第44話 買い取り相談

 ダンジョンから帰ると大人しく宿に帰り、食事を摂った後は、部屋に戻ってピッピ達を喚び出して謝ってから寝るまでは話をして楽しんだ。

 もうレベルが高い事がわかったから節約など不要とばかりに妖精達を喚び出したんだ。


 結局、母さんがなんでピッピ達を喚び出したのかは教えてくれなかったけど、もう一個アクセサリィを作ってくれと頼まれたという事は、そういう事なのだろう。

 母さんが、ピッピ達のアクセサリィを羨んでグチでも言ってたんだろうね。

 僕が作ったアクセサリィ以上のものを山ほど持っているのに、おかしな話だ。


 今は素材が無いから、明日にでも『初心者の森』に行って作るからと約束して皆に還ってもらった。

 「明日も喚んでよー」と全員に言われて、笑顔で「了解」と伝えると、嬉しそうに還って行った。


 翌日は朝から冒険者ギルドへと赴き、ラピリカさんを見つけ、小声で相談を持ちかけた。


「おはようございます、ラピリカさん」

「おはようございます、キズナ様。今日は薬草採取ですか? それともダンジョンでしょうか」


 二択!? それ以外にも何かあるでしょ! 例えば……そうそう、『初心者の草原』とかメメジーさんの工房とかあるじゃん!

 でも、考えないと出て来ない時点で、ラピリカさんの判断は正しかったのかもしれない。実際、今日の予定は『初心者の森』だしね。


「『初心者の森』に用があるので、薬草採取はして来ますけど、その前にちょっとご相談が」

「! そ、それは大きな声で言える事でしょうか。何でしたら別室をご用意致しますが」


 なんで!? いつから僕の扱いがそんな大袈裟なものになってんの!?


「確かに大きな声では言えませんが、別室を用意してもらうほどではありません。ちょっと見てもらいたいものがあるだけです」

「わかりました。では別室をご用意しますので付いて来て下さい」


 あれ~? わかりましたって言ったけど、分かってないよね? 見てもらいたいものがあるって言っただけなんだけど。


 有無を言わさずさっさと歩き出すラピリカさん。

 仕方が無いので、ラピリカさんの後を追うように付いて行くしかないのだった。


「では、その見せたいものとは何でしょうか」


 冒険者ギルドの奥に設けられている個室に案内され、ラピリカさんから尋ねられた。

 冒険者ギルドには大中小の個室が用意されており、人数に応じて使い分けているそうだ。

完全防音のその部屋は、秘密の依頼や達成報告、商談や合同会議をする時に使われる部屋だった。


「こんな部屋を用意してくれなくても、小声で話すだけで良かったんですが」

「私はキズナ様の事を見くびっていたと非常に後悔しております。先日の薬草の件では自分の無知を恥じておりますし、その薬草を大きな声で話し、しかも見せびらかせていた事にも後悔しております」

「そんな。ポーション精製の権威であるメメジーさんだって知らなかったんだし、仕方がありませんよ」

「慰めて頂きありがとうございます。ですが、キズナ様が小声でという案件は、私共にとっては極秘案件に当たると思って接したいと思います」


 いやいや、そんなの大袈裟だって! 僕だって、この世界の知識は勉強して来たんだから少しは分かってるんだよ。

 ちょっと習ってたよりこの世界の方が魔法や薬草の知識レベルが低かっただけで、僕の中では許容範囲内なんだけど。そう、セーフだよ、セーフ。ギリかもしんないけど。


「もう一度お聞きしますが、見せたい物とは何でしょうか」

「あ、すいません。ダンジョンで取ってきた魔石なんですが、全部買い取ってくれるのかと思いまして、まずはラピリカさんに相談かなと」

「ホッ、そういう事でしたらカウンターでも良かったですね。私はてっきり蘇生薬を持って来たとか、転移魔法陣の取り扱いの相談とか、ダンジョン脱出石の大量生産方法を思いついたとか、遠距離通話魔法が完成したなどのお話かと」


 はい? 何度でも言うけど、僕ってどういう扱いなの? ラピリカさんの中では薬草のスペシャリストってだけだったと思うんだけど!

 まぁ、ポーション精製でも指導はしたけどさ、この国ナンバーワンの人をさ。だけど、今言われた事は僕にもできないって!


「違いますからね! でも、ちょっと数が多いので、全部買い取ってくれるのか心配で相談に来たんです」

「数が多い? ですか。どれぐらいあるのでしょう。今は持ってらっしゃらないようですが」

「そうですね。今持って来たのは背負い袋満タン分ですが、これの五倍はあります。それで、大きさの方ですが、平均的な大きさの物を用意しました。これなんですが、どうでしょう」


 そう言って、机の上に魔石をガラガラーっと出して見せた。


「なっ! これは…五ランク魔石……しかも、この色は二万…いえ三万ケルビンはありそうです。と言う事は、四〇階層…いえ、四五階層以降の上層の……」


 これは習ったね。

 確か、魔石の大きさは等級で示されて、一センチクラスが一ランク魔石で十センチクラスが十ランク魔石。ここまでがよくある魔石の大きさで、龍や大精霊、大悪魔などのクラスになってくると、三十ランクや五十ランクなんてものもあるそうだ。

 色については黒が一番良質で、青→白→黄色→赤の順で下がって行くんだったね。色の三原色だけど、黒だけ別格って習ったよ。

 という事は、大きさは平均的だけど良質の魔石って事だ。青というより濃紺に見えるからね。


「しかもこの数は……」

「えっと、さっきも言いましたけど、これが今持ってる中では平均的な大きさで、数はまだこの五倍ほど……」

「五倍!?」


 なんで驚いた? さっきも言ったじゃん! 聞いてなかったの?


「キズナ様は……昨日、ダンジョンに行ったと聞いていたのですが」

「そうですね、合ってますよ」

「一人で行ったとも聞いていましたが」

「それも合ってますね」


 ジョン君、メイさん、イダジュウさんと一緒だったけど、彼らは冒険者じゃないからね。しかも途中合流だし、言わなくてもいいかな。言っても信じられないだろうしね。


「そそそその…キズナ様?」

「はい」

「やはり、この部屋に移動して正解でした。念のためお伺いしますが、キズナ様は何階層まで踏破されましたか?」

「えっ!? ひゃくう……」

「ひゃ、ひゃく~!?」


 しまった! 予想外の質問に驚いて答えちゃったよ。

 あのダンジョンって、まだ六五階層ぐらいまでしか踏破されてなかったんだ。


「百…何階層なんでしょうか」


 冷ややかな視線で問い掛けてくるラピリカさん。

 うん、これはもう誤魔化せないかな。でもねラピリカさん。その視線はジト目って言ってね、僕は嫌いじゃないですよ。


「ここの防音設備はかなり優秀です。秘密は護れますので、どうぞ安心しておっしゃってください」

「あの、その前にひとついいですか?」

「ええ、なんでしょうか」

「この部屋で話した事が他に漏れないのは分かりましたけど、ラピリカさんは報告をするんですよね?」

「はい、そうですね」

「誰…何処まで報告するのでしょう」


 ここで話した事は秘匿されるかもしれないけど、色んな所まで報告されてしまったら、それは全く秘密とは言えない。

 例えば、ラピリカさんが統括のアルガンさんに報告をしたとして、そのアルガンさんが誰かに報告、更にその人が誰かに報告となれば、秘密を知ってる人間がどんどん増えるわけだ。


「私は長ではありませんので、報告の義務があります。ですので、統括であるアルガンさんとギルバートさんには報告を致します。その後は、それぞれの統括の判断となります」


 やっぱりか。でも、ここまでバレてて黙ってるなんて出来るんだろうか。

 そんな不安気な僕を心配してラピリカさんが付け加えた。


「キズナ様のご心配されてるような事にはならないと思いますよ」

「え?」

「アルガンさんもギルバートさんも、ご自分の中だけに留められると思います」

「そんなのが通るんですか? お二人は統括であって、このギルドの長ですら無いんですよね?」

「はい、もちろん長であるギルドマスターとは話されると思いますが、それは完了内容だけであって、誰がというのは伏せますから」

「いいんですか……?」

「はい、報告書を作るのは私ですから。というか、この冒険者ギルドのマスターは私なんです」

「ええぇぇぇぇぇぇえええええぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!」


 驚愕の事実だった。受付譲だと思っていたラピリカさんが、実はギルドマスターだなんて、思ってもみなかった。

 というか、自由すぎな勤務もこれで何となく説明が付く。

 ただ、何となくというだけで、ギルマスが受付をするなんて思わないし!

 初めて出会った時、アルガンさんの迫力に気圧されてたけど、そのアルガンさんに最後は説教してたもんな。

 ただもんじゃ無いとは思ってたけど、ギルマスって…予想外だよ!


「ここが完全防音室でよかったですね。やはり、この部屋に来て頂いて正解でした」

「す、すいません……」


 いや、そりゃあ誰だって叫ぶだろ!


「ずっと驚かされ続けていましたから、やり返せたようで少しスッキリしました」


 その感想も冒険者ギルドの長としてどうなの? って思っちゃうけど。


「それで、話を戻しますが、キズナ様は何階層まで踏破されたのでしょうか。もしや! ダンジョン制覇を達成された!?」

「いえいえ、達成なんてしてませんから! その一階層手前の百二階層までですから!」

「ひ…ひゃく…ひゃくに……」


 しまったー! ダンジョン達成!? と言われて、つい返しちゃったー!

 さっきから向こうのペースに流されっ放しだ!

 答えるとラピリカさんが驚いて一旦話が止まるのに、全然こっちのペースになれない。


「キズナ様の報告は心臓に悪いですね。もう何度不整脈を起こしかけているか。一階層手前だと仰いましたが、何故次が最後だと分かったんでしょう」


 もういいか。ここまで答えたんだ、誰にも言わないってギルマスのラピリカさんが言ってるんだから言っちゃってもいいでしょう。


「凄く豪華な扉があったんです。扉もそうでしたけど、中からの気配も恐ろしいものがありましたし、あれが最終ボスの部屋で間違いないと思います」


 メイさんが言ってたんだから間違いないよね。


「入ってはいないのですか?」

「はい、目的は達成しましたし、入れば長くなりそうでしたので」

「あ、キズナ様はソロで行かれたのでしたね、それは仕方が…………ソロォォォォ!? 有り得ない! でもキズナ様なら……それでも、うちの最強の現役Aランクパーティでも六〇階層も行ってないのに…過去にはそれ以上の冒険者もいたというのに、最近の冒険者と来たら……」


 自分の言葉に驚いて、一人ノリツッコミですか。

 それで最後はボヤキと……もう帰っていいかな? あ、まだ買い取りの件の話がついてないからダメだね。


「それで、魔石の買い取りは……」

「もちろん、うちで買い取らせて頂きます! 当然ドロップアイテムやお宝もありましたよね? それも、是非うちで買い取らせて頂きます!」

「いいんですか? 相場が崩れたりとか」

「構いません! こんな一過性なものでそうそう値崩れは起こりません! しかも、保管していても腐ったりしないのですから総資産の多い冒険者ギルドには問題ありません」


 ……さすがに今のはアウトだろ。いくら誰にも聞かれていないと言っても、会社で言うアルバイトみたいな立場の人間に言っちゃいけない言葉だと思うんだ。

 どれだけお金を使っても私の胸先三寸で意のままに操れるのよって言ってるようにしか聞こえない。影のボスは私なのよ、的な?

 ギルマスなんだから普通にボスなんだけど。


「残りは何処にあるんでしょうか」

「あ、はい、宿に置いてます」


 ま、冒険者ギルドの内情を僕が考えても仕方が無い。昨日、ピッピ達に何度か往復して持って来てもらった分が宿の部屋に置いてるからね。何度か往復すれば全部持って来れるでしょ。

 でも、午前中に終わるかなぁ。魔石だけじゃないもんな。


「宿ですね。では、下級冒険者に手伝わせましょう。袋も持たせますから買い取り品以外の品を見られても宜しいのでしたら手伝わせてくださって結構ですよ。それぐらいはこちらでサービスしますから」

「それは助かります! では、この背負い袋十個分ぐらいでお願いします」


 魔石だけだったら、あと五袋ぐらいで行けるけど、他もとなるとその倍はあるもんな。


 その後、手伝ってくれる冒険者を連れて宿に戻り、袋への詰め込み作業も手伝ってもらって冒険者ギルドへと納品した。

 買い取り金は、後日冒険者カードに入金してくれるそうなので、用件はこれで完了だ。

 後は、ピッピ達との約束を守るために『初心者の森』に行って、母さん用のアクセサリ素材を集めたら今日の予定は終わりかな。


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