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第40話 メメジーさんとご対面

「ごめんください」

「よう、お嬢か。今日はなんじゃ?」


 誰? このお爺さんは。今はソッとしておいてほしい気分なんだけどな。だって、低く見積もってもレベル30は行ってると思ってたのに、5って何なんだよ、5ってさ。しかも4かもしれないって、そんなもんなのかなぁ。結構、頑張ってきたと思うんだけどな。

 でも、この世界に来てまだ一ヶ月も経ってないんだ。もう何年もレベル1でやって来たんだし、目指せ一ヶ月でレベル10ぐらいに思ってればいいのかな?

 うん、そうだ。短剣だって少しは伸びて来たみたいだし、僕のレベルも気長に上げて行こう!


「キズナ様? キズナ様?」

「あ、はい! なんでしょう」

「先ほどから呼んでますのに……こちらがこの町一番、いえ、この国一番の薬師のメメジー様です。そしてこちらが……」

「この小僧か! この小僧があのポーションを持って来おったのか! 小僧! おんしはどっからあのポーションを持って来おったのじゃ! 早よ言え! ほれ言わんか!」


 とても年寄りとは思えぬ素早い動きでキズナの胸倉を掴み問い質すメメジー。


「な、なんですか、このお爺さんは!」

「ですから、この国一番の……」

「儂の事などどうでもええわい! あのポーションじゃ! 小僧! あのポーションは誰が作ったんじゃ!」

「誰…と言われても……」


 僕なんですけど……


「早よぉ白状せんか!」

「メメジー様、少し落ち着いてください。キズナ様も困ってるではありませんか」

「小僧がさっさと言えばいいのじゃ! ほれぇ、早よぉ言え!」


 なんなの! このお爺さんは! テンション高すぎ! 口を挟む隙が無いって!


「キズナ様、申し訳ありません。この方は薬師の中でも名のあるの方なのですが、先日、キズナ様から預かったポーションの査定をお願いした方なのですが、あまりにも効果の高いポーションだったようで、キズナ様が預かってきたポーションの製作者をお知りになりたいのだそうです。キズナ様、教えて頂くわけにはいきませんか?」


 おーい! 作ったのは僕だってラピリカさんには教えたよね! なんで製作者は別人になってんですか?


「そうじゃ小僧! さっさと教えぬか!」

「キズナ様?」

「小僧!」

「あの……」

「はい」

「なんじゃ」

「僕です」

「は?」

「ぬ?」

「別に内緒にもしていませんし、ラピリカさんにも教えました。ポーションを作ったのは僕です」


 呆気に取られているラピリカさんに、「ホントか、お譲!」とメメジーさんが問い詰めている。


「では聞くが、あの薬草の名前はなんじゃ?」


 ラピリカさんから返事がもらえなかったので、メメジーさんが話題を変えて僕に問い掛けて来た

 恐らく、ポーションと一緒に渡した薬草の事だろう。というか、メインが薬草で、ポーションはおまけだったんだけどね。どっちも保留で、まだお金を貰ってないけど。あ、金貨一枚貰ったか。


「小僧?」

「あ、す、すいません、薬草の名前ですね。この前の保留分に関してはハーフムーン草で、籠一杯を金貨百枚で買い取ってもらったのはクレセントムーン草です」

「ほぉ、クレセントムーン草は分かるが、ハーフムーン草とな……」


 このお爺さんって高名な薬師ってラピリカさんが言ったけど、そんな人でもハーフムーン草の事を知らないの? 僕のとこじゃよく使ってたんだけど。


「して、あのポーションの事じゃが」

「あ、これですね。あ、違った。これはクレセントムーン草で作った抽出液でした。ハーフムーン草で作ったポーションはこれです」


 以前、ハーフムーン草を採り過ぎて、納品した五籠から溢れたもので作ったポーションだ。

 ウーリンに手伝ってもらって、効果が以前の僕の作ったものより五割り増しだとお墨付きをもらったポーションだ。

 いざという時のためにポケットに五本忍ばせてたんだよね。その内の一本は先日ラピリカさんに渡したんだけどね。

 残りは宿に置いてて、今背負い袋に入ってるのはさっき作ったクレセントムーン草の濃縮液と空瓶だけだ。

 ん? それでも数が合わない気がする。どこかで纏めて無くなった気がするんだけど……

 ま、いっか。薬草はあるからいくらでも作れるもんね。次はもっと上位のを作ればいいんだしね。


 回復魔法もできるし、負傷した経験が無いため、念のためで持ってるポーションには無頓着なキズナであった。

 実際、一回分丸ごとカゲールくんが『クロスオーバー』の世界に持ち帰ってるが、まったく気付いてないキズナなのだ。


「ほぉ! これは……」

 メメジーさんは受け取ったポーションを上に上げて下から見たり匂いを嗅いだりと、入念にマジマジと観察していた。


「そっちの抽出液も気になるの。もちろん見せてくれるのじゃろうの!」

「え、ええ、構いませんが、そのままでは使えませんよ? 十倍に薄めて……」

「能書きはいらん! さっさと寄越すんじゃ!」


 まだ説明も終わってないのに僕からふんだくって行くメメジーさん。


「ほぉ~、ふむぅ…ほほぅ…むぅ……」

「メメジー様、何か分かりましたか?」


 抽出液やポーションを眺め回すメメジーさんにラピリカさんが尋ねる。ある程度、解析が終わったと見たのだろう。


「ふむ…素晴らしいポーションじゃな」

「やはりそうなのですね! どれほどの効果があるのでしょうか!」

「それは分からぬ」

「え? 何が分からないのですか? 回復量ですか? 消費期限ですか? それとも設定価格ですか?」

「何も分からんのじゃ。ただ、素晴らしいとしか分からんのじゃ」

「それは、どういう……」

「これを作った者は、儂の数段上の知識と腕を持っておるという事じゃ! 儂にはこれほどのポーションは作れん! 素材となる薬草が目の前にあるというに、作り方も分からん! よって、効能も分からんのじゃ!」


 バンッ! と机を叩いて悔しがるメメジー。

 そんなメメジーを見て、声を掛けられずに落ち着くのを待つラピリカ。


「小僧!」

「は、はい!」


 出番はまだだと思ってたので、いきなり呼ばれてちょっと意表をつかれた。もうポーションの検証は終わったんだろうか。

 分からない所があるんなら解説してあげるけど?


「本当に小僧がこれを作ったのか」

「はい、そうですけど」

「むぐぐぐ……頼む! 教えてくれ! いや、そうではないか…教えてください!」

「え?」


 睨むように尋ねて来たかと思ったら、今度は凄い勢いで土下座をして来た。その内容は『教えてくれ』だ。教えてくださいと言い直したけど、どう答えていいものか。

 救いを求めるようにラピリカさんに視線を送ったが、いきなり土下座をしたお爺さんに驚いて目を丸くして驚いている。フォローは期待できない感じだ。

 ならばどうする。『はい』と答えるか。否! ここは交渉だ!

 見知らぬお爺さんに教えてくれと言われて、はいそうですかと簡単に言うのはお人好し過ぎる。

 で、出した結論はこうだ。


「いくら出しますか?」


 スパ―――ンッ!


 ラピリカさんの平手が僕の頭でいい音を奏でた。

 ツッコみ早くない? 今、呆けてたよね?


「キズナ様! この方は国一番の薬師……」

「待て、お嬢。小僧の言い分は尤もじゃ。これだけの技術、タダで教えを請うわけにも行かぬ。小僧、いくら欲しいのじゃ? いくらでも言い値を言うがいい」

「メメジー様!」


 止めに入るラピリカさんを手で制し、お爺さんは肯いて早く言えと促す。


 よぉーし、言ってやろうじゃないか! ここ最近、ずっと大きく稼げてなかったんだ。

 薬草にしても未だにお金を貰ってないし、ポーション代も保留中だ。その分も上乗せして、金貨五百枚! なんてどうだろう。

 ちょっと言いすぎか? たかがポーションだもんな、確かに言い過ぎだ。もうちょっと下げた方がいいな。金貨十枚ぐらい?

 いやいや、それだったら籠一杯のクレセントムーン草にも劣るよ。

 でも、ポーションの作り方を教えるだけだろ? だったら薬草を採って来るより簡単じゃないか。籠一杯の薬草採取とは比べ物にならないよ。


「コホン……」

「「ゴクリ……」」

「金貨五枚でお願いします」

「「は……?」」


 おぅ、まだ高すぎたか。


「す、すみません。金貨三枚で」

「「へ……?」」


 まだ高いのか! そうだよな、たかがポーションだもんな。急場凌ぎはできるけど、上位の回復魔法の方が手っ取り早いもんな。


「金貨一枚ぐらいにはならないでしょうか」

「キズナ様……あなたという人は……」

「がっはっはっは! 面白い小僧じゃ! がっはっはっはー!」


 まだ言いすぎだったか。お爺さんにはウケまくりだし、ラピリカさんには呆れられる始末だ。

 大体、ポーションがいくらするとか知らないんだから仕方ないじゃん! 買った事もないんだから!


「キズナ様、このポーションの価値を分かってらっしゃいますか?」


 先日渡して保留中のポーションを差し出して尋ねてくるラピリカさん。


「いえ、銀貨十枚ぐらいですか?」


 宿代より高いって事は無いだろうから、それぐらいかな?

 前に、薬草を二〇株で一日の稼ぎとしては銀貨二〇枚も行けば非常に優秀だと聞いた。宿代・三食の飯代・ポーション数個分だったか。


「では、普通に売り出されてる下級ポーションの価格はご存知ですか?」

「いえ、すいません。買った事がないので分かりません。銀貨二枚ぐらいですか?」

「はぁ……下級ポーションは現在高騰していまして、銀貨二十枚です。そして、こちらのポーションは未だに値がついていません。でしたね、メメジー様」

「そうじゃ、未だに値が付けられん。効果は確認したのじゃが、儂の知る限り作れる者がおらん。もちろん儂も含めてじゃがの」


 作れる人がいない? どういう事だろ。ラピリカさんが国一番の薬師と言ってたよね? この程度のポーションなんて誰にでも作れると思うんだけど。まだまだ上があるんだから。

 という事は、そういう事か。


「たしか、ハーフムーン草をご存知ないようでしたね。それだったら抽出方法や精製方法も知らなくて当たり前ですね。フルムーン草から見れば半分の効力も無いような薬草ですし、フルムーン草を普段から扱ってる方からすれば見向きもしない薬草ですもんね」


 この世界に来て、フルムーン草はまだ見てないけど、もっと森の奥まで行けばあると思うんだ。

 それにまだまだ上位の薬草はある。サンライズ草やサンセット草、グレアサン草もあるし、スターダスト草も確保しておきたい。

そうそう、シューティングスター草は絶対見つけたいね。あれがあるとリレイズ効果のあるポーションが作れたもんね。


「フルムーン草……?」

「はて、聞かぬ名じゃな」

「え……?」


 フルムーン草を知らないの!? 初級から中級に移る試験的な素材で出てくるじゃん! 中級の一番目に習う素材だよ!

 凄っごくメジャーな薬草だと思うんだけど知らないの? そりゃ、まだまだ上の薬草はあるけどさ。ここは押さえとかないとダメなとこじゃん!


「ええっ! 知らないんですか!? だったらその上のサンライズ草をメイン素材として使ってるんですか? いやサンセット草とか…あー! レインスター草ですか!」


 リレイズどころか、完全復活薬フルレイズのメイン素材となるレインスター草を例に出して聞いてみた。


「す…すまぬ……どれも聞いた事の無い薬草じゃ……」

「……」


 マジか……


「キズナ様? 申し訳ありませんが素材の話は後にして、今はこの薬草…ハーフムーン草でしたか。を使ってのポーション作成についてご教授頂けませんか?」


 ラピリカさんがフォローしてくれるが凄く下からの態度で丁寧だ……あ、ラピリカさんは元々こうか。偶に融通が利かないだけで、話し方なんかはこうだったね。

 しかし、何を教えればいいの? 薬草の種類? 名前? ポーションの作り方?


「どのポーションが聞きたいんですか?」

「では、とりあえず……」

「すべてじゃ! と言っても、ここに無いものを聞いても仕方があるまい。ここに先日預かったポーションが二つある。検証に使ったから少し減っておるが、この二つのポーションの精製方法を教えるんじゃ! いや、すまん。教えてくだされ!」


 またまた言い直すメメジーさん。

 別に話し方なんて気にしてないんだけどね。でも、上から頭ごなしに言われるよりはいいかもね。


「はい、教えるのは構わないんですけど、僕は人に教えた事が無いんで教え方が分かりません。一度見てもらった方がいいですかね?」

「そうじゃな。どうやって作るのか想像もできんから、一度見せてもらえるとありがたいの」

「分かりました。では、持って来たクレセントムーン草でやってみますので見ててください」


 背負い袋から空瓶を十個並べ、クレセントムーン草を一株持ち、すかさず解析を行なう。

 もう解析なんてしなくても分かってるんだけど、もうルーティーンになってるから手順としてやってしまうんだよね。


 クレセントムーン草を持った手を空瓶の上に置き、抽出と同時に回復効果のある水を魔法で出す。

 抽出液と魔法水を合成し錬成していく。そして錬金で効果を確定し、精製で効果の底上げをし固定させる。

 その間、僅かに一秒。


「すまぬ…まったく見えんかった。今、何をやったのじゃ?」

「ななななななんで今の一瞬で空瓶が全部満タンになるのですか!? 魔法ですか!?」


 結構、ゆっくりと分かりやすく丁寧にやったつもりなんだけどな。

 あー、お年を召してるから目が悪いんだ。

 あとラピリカさん。これは魔法も若干使ってますが、基本は錬金術ですよ。


「早かったですか? もう少しゆっくりやりましょうか?」

「うむ、そうじゃな……いや、先に聞くが、もっとゆっくりやったとして、効能が落ちりゃせんか?」

「それはそうですね、抽出液は素早く加工しないといけませんから」

「ふむ、そこは儂らと同じじゃの。しかし、全く別世界の錬金術を見とるようじゃわい」


 メメジーさんは、出来上がったポーション瓶を手に取り、やはり匂いを嗅いだり透かして見たりして検証をしている。

 ラピリカさんも、分からないなりにメメジーさんの真似をして検証したフリをしていた。


 うん、間違いなくフリだね。専門外丸出しだよ。


 メメジーさんは助手を呼びつけ、ポーション瓶を一本渡した。

 すると、そのポーション瓶を持って助手の人は奥に入って行った。

 お互いに何も言わないから何をするのか分からないけど、ここでやる事って検証ぐらいだよね。

 ニセモノだと思われてるんだろうか。


 助手の人が入って行った奥を、僕がずっと見ていたら、何を勘違いしたのかメメジーさんに諭されてしまった。


「心配するでない。あの分の代金もちゃんと払ってやるわい。もちろん授業料もな」

「いやぁ、はは…そんな心配なんてしてませんから」


 ヤバイ、ちょっと忘れてた。そうだよ、今回は冒険者ギルドからじゃなく、直接報酬をもらえるんだよね? いつも、冒険者ギルドのカウンターでしかお金を貰った事が無いから頭になかったよ。


「では、一からご教授願おうかの」

「あ、はい。まずは解析をして……」

「ちょちょっと待て! 小僧の解析というのはどうやってやっとるんじゃ? 普通、解析とは魔力を広げ、薬草をその中に納めて徐々に中を浸透するように調べて行くのでは無いのか? 今、小僧は解析なぞしとらんだろ」


 おー! さすがに分かってるじゃん。薬師というのも嘘じゃなさそうだね。


「合ってますよ? 僕も同じ事をやってますから」

「なん…じゃと? 一体、いつやったのじゃ……?」

「いつって、初めにやりましたよ。そんなのポーション精製の基本じゃないですか」

「そ、そうじゃの…基本……じゃの……じゃが、そのスピードで…いや、できるのであれば問題ないの…か?」


 当然のようにのたまうキズナに対し、今まで築き上げてきたものがどんどん崩れていく感覚を味わうメメジー。何が正解なのか分からなくなってしまった。


「で、次は抽出ですね。それが終われば合成して錬金して……」

「そこじゃ! 解析や清水を合成するまでは分かる! どう錬金しておるんじゃ。そこんとこを詳しく教えて欲しいのじゃ!」

「清水…ですか。それも正解なんですけど、回復効果を含ませた回復水を使う事で効果は上がりますよ。もちろん綺麗な清水が前提ですけど」

「回復水……? 初めて聞くのじゃが……」

「それと錬金ですが、僕がやってるのは一般的なポーションを作るのと同じです。特別な事はやってませんよ」

「そんなはずはない! まず普通の錬金術で、このポーションは作れん! ゆっくりじゃ! 超スローで見せてほしい」


 超スローって、それじゃポーションの効果が薄れてしまうよ。

 キズナが困った顔をしていると、そこは薬師でも重鎮のメメジーが、その悩みを見抜いてキズナに提案した。


「効能が落ちるのを心配しておるんじゃな? 構わんから見せてほしい。それでポーションも研究の対象となるのじゃから、儂が同じ値で買い取る。それとも、薬師としての矜持が許さんか?」


 薬師としての矜持? 僕は薬師じゃないんだけど。

 それに、同じ値で買い取ってくれるんだったら何も文句はないしね。


「わかりました。時間を掛けるほど効能は落ちますけど、いいんですよね?」


 肯くメメジー。


「わかりました。どのぐらい時間を掛けますか? 途中で止める事もできますが」


 もちろん、そんな事をしたら効能が半減どころではない。しかし、それでも買い取ってくれると言うのだから、それぐらいのサービスはしてもいいだろう。


「十秒じゃ! 止める必要はない!」

「わかりました」


 因みに巷で出回っている、程度の悪い下級ポーションならメメジーでも五分あれば一本作りあげる。

 しかし、上級ポーションだとそうは行かない。

 素材の厳選を済ませ解析から抽出まで済ませた後でも、合成だけでも錬成具を使いゆっくりと時間を掛けて行なうため一瓶に一日ほど掛かる。

 その後の合成にも、メメジーの開発した魔法陣を使い一時間ほど掛けて行ない、その後は薬効を固定させるため三日ほど保存器に入れて寝かせる。

 それだけの工程をキズナは一秒で十瓶を作り上げた。しかも効能はメメジーの作る上級ポーションを軽く上回っている。

 本来ならもっとじっくりと見定めたいところだが、メメジーの薬師としての矜持がそれを許さなかった。

 この国一番の自負もある。

 絶対に見極めてやろうと集中するメメジーの気迫は、一流の戦士のそれと通ずるものがあった。


「いいですか?」


 返事をするのも集中力が途切れるとばかりに、肯きもせずキズナの手元から目を離さないメメジー。

 それを了解と受け止め、作業に入るキズナであった。


「……」

「……」

「……」


 ポーションが出来上がった後も、出来上がったポーションから目を逸らせないメメジーだったが、ようやくポーションから目を切ると、項垂れ呟いた。


「見えんかった……」

「……」

「……」


 メメジーさんの呟きに、場は更に静まり返ってしまった。


「キ、キズナ様、もう一度やればきっとメメジー様も分かるかもしれません」

「そ、そうですよね。じゃあ、もう一回……」

「無理じゃ……小僧の魔力操作がまったく分からんのじゃ。錬金の流れも全く分からんかった。小僧はさぞかし名のある薬師なのじゃろうな。はっはっは、儂もそろそろ引退かの!」


 だから薬師じゃないんですけど。


「いえ、僕は薬師ではなく……」

「そうです! キズナ様はスライム戦士ですわ!」


 ぐはっ! そうだった、僕ってスライム戦士だったっけ。でも、それをここで胸を張って言えるラピリカさんの神経を疑うよ。


「なに!? 戦士じゃと!? しかし、スライム戦士とは聞かぬ戦士じゃの。最近ではそういう職業も出てるのか。儂も益々世間ズレしてきたようじゃの」


 いえ、たぶんスライム戦士って僕だけですから。スライムってとこを忘れてもらって、戦士だけに反応してくれないかな。


「メメジー様、それは間違いです。スライム戦士はキズナ様以外にはおりません。それで私は閃いたのです。スライム戦士とは、あらゆる分野に万能で、何もかもを吸収する職業なのでは無いかと。キズナ様を見ていると、そう思わずにはいられないのです」


 おおーっ! それって何か格好いいじゃん! あらゆる分野に万能ですか。それ頂いちゃっていいですか?


「なるほどの。しかもスライムは色んな進化先もあるしの。それに、スライム液は薬剤にもなる。まさに小僧はスライム戦士じゃったか」


 それは違うと思う。それだと僕が薬剤にされちゃうよ。


 実際は、何とでも【合体ユニオン】できるからと、母マリアに付けられた職業なのだが、合体魔法【ユニオン】は誰にも見せてない。

 始祖―――ノスフェラトゥの城では見られているが、誰にも【ユニオン】だとは思われていなかった。

 故に、今後ラピリカとメメジーの間では戦士が外され、職業スライムと思われて行くのだが、二人とも誰にも話す事は無かった。



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