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第39話 レベル判定


 始祖の城を出たキズナは、ひたすら走った。

 目指すは勿論、薬草だ!

 足にはまぁまぁ自信があるし、幾分レベルも上がった事で三〇分と掛からず町の見える場所まで来れた。

 まだ全力では無かったとはいえ、全く息も上がらず以前の半分以下の時間で辿り着いた。


「こ、これは……レベル三〇ぐらいになってるんじゃないだろうか」


 実際は、レベルは503、HP5458220(七桁)、MP998222354(九桁)、力や速さも七~八桁になっていた。それに加えて様々な加護のお蔭で、攻撃力や防御力や早さに上乗せ効果がされており、状態異常耐性もある。母マリアに用意してもらった服も、防御力がアダマンタイト製の鎧並みに高く、状態異常耐性、体力・魔力回復上昇効果が成されていた。

 完璧チートの無敵状態と言い替えてもいいのだが、未だに自分のレベルが多く見積もっても三〇ぐらいと言ってるのだから、自分の強さを全く理解できていないキズナだった。


「さて、薬草はどこに置いてくれたのかな」


 今更、薬草やポーションなんているの? とツッコまれそうだが、薬草自体は冒険者ギルドとの約束だから納品しないわけには行かない。

 ポーションに関しては、キズナ自信で使う事は無いだろうが。


「おっ! あったあった! やっぱりカゲールくんは分かってるね。そうそう、陽が昇っても陰になるように置いてくれてるよ。鞄も一緒に置いてあるし、いい仕事してくれるね。次に喚んだ時には、忘れずにお礼を言っておこう」


 薬草五籠を見つけ、ホクホク顔のキズナであった。

 前回、一籠で金貨百枚の値がついたクレセントムーン草なのだ。それが五籠、頬が緩まないわけがない。

 だが、今は真夜中で、開門まではまだまだ時間がある。

 そこで考えた。


 五籠を一気には運べない。二~三回往復しなくちゃならない。

 だったら抽出の作業だけでもしておこうか。抽出だけならもう少し瓶を増やせば三籠は減らせると思う。

 そうすれば運ぶのは二籠だから一度で運べるな。

 ポーションにするためには綺麗な水が必要だ。その上で魔力を込めたり回復魔法や解毒魔法を込めたり付与魔法を込めたりするんだけど、その分、量が多くなる。

 効能を強化するためにはウーリンに出してもらったような回復効果の高い水を用意してもらったりするのも効果的だ。


 ポーションは一度作って見せてみたけど、保留されてしまっている。

 だから、ポーションを作る前準備として、抽出だけしてしまえばポーションを作ったわけでもないし荷物も減る。

 うん、一石二鳥の良い考えだね!


 良い事考えた的にドヤ顔のキズナだったが、ここには誰もいないのでツッコまれることは無かった。

 そして抽出作業をする事二時間。

 薬効成分の抽出だけならこんなに時間は掛からない。三籠分をキズナの技術を持ってすれば五分と掛からない。


 なのに何故ここまで時間が掛かったかと言うと、物凄く手間隙を掛けて新技をあみ出して抽出したのだ。

 初めはいつも通りに抽出していたのだが、予想通り瓶の数が足りない。

 ならば先に瓶を作るか、と思ったが、近場で瓶に良さそうな素材が無い。

 その日に使うポーションのための瓶なら使えそうな素材はあるのだが、百本からの抽出液を作ろうとしてるのだから抽出液を日持ちさせる様な瓶じゃないといけない。


 では、どうするか。色々考えた挙句、試作も繰り返し、圧縮する事に成功したのだ。

 ギューギューと今まで培ってきた錬金術を酷使し圧縮させる。

 水分濃度はそのままで、重量を変えずに体積だけ圧縮させる事に成功したのだ。これもレベルが上がった効果なのかもしれないな。

 抽出液の濃縮液(圧縮液と言っても誰にも通じないだろうから濃縮液で行こう。濃縮液では無いんだけどね)を完成させたキズナは、ついつい嬉しくなって調子に乗ってしまい、四籠分の濃縮液を作ってしまったのだ。


 それでも使用した瓶は三〇本程度。予想では百本でも足りないと思ってたのに、残った空き瓶の方が多くなるほど濃縮できてしまった。


「これでポーションを作ったらどうなるんだろう」


 一度気になると、どうしても実験したくなるのは人の常。錬金術師の性とも言えるだろう。

 そしてキズナは作ってしまった。

 水魔法に回復魔法【ウォーターヒール】を重ねて作った特性の魔法水に濃縮液を合わせ、融合・合成・錬金・精製を経てポーションが出来上がった。


「出来た!!」


 回復効果の非常に高そうなポーションが出来上がった。出来上がったポーションを嬉しそうに眺めるキズナ。

 だが、しかし、ここでキズナに大きな疑問が残った。


「これって、どんな効果があるんだろ」


 そう、キズナには【鑑定】スキルが無い。出来上がったポーションは習ったポーションとは別物だから効果の程が分からない。

 腕に少し傷を付けて効果を見るのは意味が無い。今までキズナが作ったポーションでも、余裕でそれぐらいは治す。

 だったら腕を一本切り落として……キズナにそんな度胸は無い。そして意味も無い。先日ハーフムーンポーションから作ったポーションでも、それぐらいは出来るのだから。


 今回はワンランク下のクレセントムーン草から作ったポーションだが、濃縮率は非常に高い。しかもレベルの上がったキズナの回復魔法付与の魔法水で作られている。

 キズナとしても自信作ではあったが、その効能まではハッキリと把握できていなかった。


「まぁいいや、ちょっと調子に乗って一籠になっちゃったけど、そろそろ夜も明けるし、これを持って冒険者ギルドに行こうかな。このオリジナルポーションは一旦保留だね。ポケットに入れておこう」


 濃縮液は鞄に、自信作のオリジナルポーションはポケットに、空になった籠はそのまま放置して町の門へと向かった。

 キズナが門に辿り着くと、丁度開門する所だった。

 そのまま町に入り冒険者ギルドへ。


「あっ、ラピリカさん、おはようございます」


 今日は朝一からラピリカさんがいてくれた。

 先日、クレセントムーン草を一籠金貨百枚の査定をしてくれたのもラピリカさんだったので、居てくれると話が早いのにな。なんて思ってたから居てくれてラッキーだよ。


「キズナ様! 何処へ行ってらしたのですか! 昨夜、ハーゲィさんやブラッキーさん達に聞いても教えてもらえなかったのです! 探してたのですよ!」


 そんな事を言われても、僕だって始祖―――今はノスフェラトゥだったか。そのノスフェラトゥ達に捕まってて大変だったんだから。

 名付けなんてさせられてさ。ホント僕の柄じゃないんだよ、そんなのは。


「では参りましょう!」

「え? ちょ、ちょっと待って? 先に査定を……」

「急ぎの指名依頼ですので、全ては後回しです。一緒に来てください」


 そう言って、ガシッと腕をロックされた。

 僕の右手を抱えるようにロックするから、ポニョンという感触はムフフなんだけど、いきなり指名依頼だと言われても戸惑うしかない。


「でも、この薬草を……」

「はい、それも持って来てください。向こうで直接買い取ってくれますから」


 そうなの? だったらいいの、かな? でも、僕は冒険者ギルドと約束してるんだけど、そこはカウントに入れてくれるのかな?


「あっ! その前に、キズナ様の今の強さを見ておきましょう! 紹介する時に必要になるかもしれませんから」


 おお! それって登録する時にしてくれたアレだろ? ラピリカさんはカウンターの中だったから何をやってたのか分からないけど、水晶で確認して残念そうな顔してたもんな。アレって僕のレベルなんかが分かったりするやつなんじゃないの?

 ちょっと楽しみかも!


 登録時と同じ一番奥のカウンターに行きラピリカさんは中へ、僕はカウンター前で用意が出来るのを待った。

 用意するのは水晶玉だけだと思ってたけど、何かカウンター下でゴソゴソしてるようだから他にも用意するものがあったのかもしれない。

 そんなのはどうでもいい。僕の現在のレベルが分かるんだ。すっごい楽しみだよ!


「お待たせしました。前回もやりましたので分かってると思います。では水晶の上に手を置いてください」


 ラピリカさんに促されて水晶玉に手を置くと、ピッカ―――――ッ!! っと白く輝いた。

 ウシッ! 犯罪歴は無しだ! 光の強さも前回より上がってるとこを見ると、魔力も上がってるようだ。


 さぁバッチ来ーい! レベルはいくつだ!?


「……」


 はれ? ラピリカさん? どうしたの?


「すみません……あまりにも眩しすぎて目が見えなくなっていました。今から見ますので少々お待ちください」


 たしかに眩しかったけど、目くらましみたくなってたんだ。なんかすみません・

 おぉ? 朝一で人が少ないから、他の冒険者からも注目を集めちゃったよ。

 『なんだなんだ!?』ってなってるよ。ホントなんかすみません。お騒がせしております。


「おかしいですねぇ……」


 ん? 分かったのか? レベル三〇行ったか?


「これは絶対おかしいです」

「何がおかしいんでしょう」

「以前、冒険者カードを拝見した時に、討伐した魔物も確認しました。あれからも魔物を討伐してらっしゃると思いますし…それで行くと、レベル40ぐらいは行ってると思ってたのですが、これだと……」

「これだと?」

「レベル5も行ってません」

「ご……ご?」

「はい、この鑑定具は高い技術を要求されるため使える者が少ないのですが、私には使えるのです。ただし、レベルが数字で表されるのではなく、凡そしか分かりません。例えばキズナ様のように低レベルの方ですと上限をレベル50としたバーになります。本来は見せてはいけないのですが、見てみてください」


 そう言って水晶を見せてくれたけど、棒グラフの棒のように、光が短いバーで現されていた。目盛りは付いてないので凡そという事なのだろう。


「これが上級冒険者になると、限界突破をしてレベル99のバーになります。そのような方はうちのギルドにはいらっしゃらないのですが、もしそうだとしてもレベル10にも足りません。キズナ様は先日まで限界突破されてませんよね?」

「はい……」


 レベル1でした……


「でしたら、やはりレベル50を上限として考えますので、現在のレベルは5か4という事になります。確かに以前と比べると幾分上がってはいるようですが」


 マジか……もうちょっと行ってると思ってたんだけどなぁ。まさかのレベル5とは……


 この鑑定具ではこういう間違いが起こっても仕方が無いのだが、キズナは既に限界突破の加護を持っている。しかも上限無しの加護なので、レベルが500オーバーでも割合としては微々たるものなのだ。よく少しだけでも目盛りが上がったと思うのだが、レベル1でも無ければ少しでも上げなければならないという設定の鑑定具なのだろう。

 普通ならそれが冒険者にとっては勇気付けられたりもするのだろうが、今回は逆にキズナを落ち込ませる結果となってしまったようだ。


「……キズナ様、それでは参りましょうか」

「……はい」


 鑑定結果に肩を落とすキズナを慮り、静かに声を掛けるラピリカであった。


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