第34話 みんなでお出かけ
キズナは学習能力も高い。薬草採取は常時依頼だともう知っているのだから受付に行く必要など無いのだ。態々列を作っている受付に並ぶ必要など無いのだから。
町を出ると街道を一気に『初心者の森』まで走りきる。
到着するとすぐに昨日のメンバーを喚び出した。
ピッピ、キラリちゃん、カゲールくん、ノムヤン、ウーリン、テンちゃんの六人に加えて、今日はポットちゃんとパンくんも喚び出した。
総勢八名の妖精達だ。
喚び出すとすぐに妖精達にモミクチャにされ、治まるまで少し待つ。
そして昨日同様キラリちゃんとカゲールくんとテンちゃんに薬草採取に行ってもらい、ピッピには籠を、ノムヤンには瓶用の素材を集めてもらった。
始める前にカゲールくんには最後に運んでもらう事も伝えておいた。
二時間もすると薬草で満タンになった籠が五〇も集めてしまっていた。
内訳はハーゲィさん推奨のサラーム草が十五、買い取り金額が一番高かったクレセントムーン草が三〇、ハーフムーン草が五である。
一ヶ月に籠十杯をノルマとされているから、これで三~四ヶ月は薬草採取はしなくて済むだろう。
問題は一気に納品するか小出しにするかだ。
僕としては一気に出したい。だけど、大量入荷で価格が暴落して文句を言われる恐れもある。
ここは一度『クロスオーバー』の世界に持ち帰ってもらって、少しずつ持って来てもらう方がいいかもしれない。
そこはハーゲィさんかラピリカさんと相談だな。
「みんなー、お昼には少し早いけどご飯にしよう!」
妖精達に食事は必要ない。でも、食べる事はできる。
なので今日は、ポットちゃんとパンくんも喚んで、妖精が好むものを作ってもらったんだ。
皆が薬草を集めてる間にホーンラビットを狩って、解体もして後処理も済ませている。
それをポットちゃんとパンくんに任せたんだけど、どうやら料理も完成しているみたいだ。
後は、食事が終わったら食休みにポーションを作って、それから皆で探検だな。
この『初心者の森』ってかなり大きいんだ。奥に行けばもっと色々な素材がありそうだし、皆で探検がてら素材探しをしようと思ってるんだ。
食後にその提案をすると、ウーリンを残して全員が一斉に散って行った。下見に行くそうだ。
いやいや、そういうのも含めて探検って言うんだよ? それに、皆バラバラの方向に散って行ったけど大丈夫?
目的は違うんだろうけど、それを全員で探せばいいんじゃないの?
残されたのは僕とウーリンだけ。
仕方が無いので皆が帰って来るまでウーリンとポーション作りに励んだよ。
ポーションを作る薬草は、もちろんハーフムーン草。ここには更に上のフルムーン草は無かったみたいだ。
皆に探しきれなかったんなら、ここには無いと見るべきだね。もっと森の奥に行けば見つかるかもしれないな。
フルムーン草があればいいポーションが作れるんだけどなぁ。
ハーフムーン草で作ったポーションだと、僕なら十分なんだけど、先生達だと半分も回復しないからね。いつもダメ出しされてたんだよ。
ここには先生達がいないけど、手を抜くなといつも教わってきたからね。今の僕に出来る事ならやっておきたいんだよね。
皆が戻ってくるのを待つ事一時間。
やっぱり一番早いテンちゃんが最初に戻って来たけど、いい場所を見つけたみたいだ。
全員が戻って来て、何処に行くのか聞いてみたけど、全員が池だとか沼だとか湖って言うんだ。
それってもしかして、全員同じ場所の事を言ってない?
そう思って方向を聞いてみたら、全員バラバラを指差すんだ。
じゃあ、違うのかと思って、順番に聞いていくと、順路が違うだけで目的地は同じだった。
なんでも、途中に寄りたい所があるんだとか。
ピッピは回復系に適した薬草が生えてる群生地を見つけたので、そこに寄って池に行きたい。
キラリちゃんはキラキラ光る水晶群を見つけたので、見てから湖に行きたい。
カゲールくんはダンジョンっぽい洞窟を見つけたので、そこによってから沼に行きたい。
ノムヤンは鉱石群を見つけたので、そこに寄ってから沼に行きたい。
ポットちゃんとパンくんは、もちろん香草群を見つけたので、そこに寄ってから池に行きたい。
テンちゃんは沼までまっしぐらに走って競争したいだけだった。
本当ならウーリンだって湧き水を見つけたかっただろうけど、僕のポーション作りを手伝ってもらってたからね。
「みんなが言いたい事は分かったよ。最終目的地は同じだけど、ルートが違うんだよね」
「そうそう! 私の道がいいと思うんだ。だってキズナ様ってポーション作るの好きでしょ?」
いや、もう持ちきれない程ここにあるんだけど。
それに、別に好きってわけじゃないんだよ? 作っておいた方が自分のためになるから作ってるんだよ。こんなにも必要ないとは自分でも思ってるけど。
「キズナ様は武器や防具が作れる鉱石も好きだ。だから鉱石採取」
うーん、確かに必要かも。でも、作る時間にしてもいいのかな? メインは池だか湖だか知らないけど、そっちなんだよね?
「それなら水晶よ! あそこには他に宝石もあったもん! キズナ様はアクセサリーも作れて付与もできたわよね!」
確かにそれも魅力だな。今のところ母さんにもらった服に頼りっきりだからね。防御はともかく、状態異常耐性や身体能力向上や体力・魔力を徐々に回復させる付与をしたアクセサリーはいいかも。
「キズナ様は香辛料を持ってるの? いいのあったよ」
それも魅力的なお誘いだ。ポットちゃんとパンくんのお勧めの香辛料か……そそられるなぁ。
「ボクはダンジョンを見つけたよー! キズナ様は魔石がいるんでしょ? 魔物はボクがジャンジャンやっつけてあげるよ!」
そう言ってシュッシュッとワンツーパンチを繰り出すカゲールくん。
君には無理かもしれないね。でも、魔石があれば魔道具の動力として使えるし、何より付与した魔石を武器に仕込めば魔剣が出来る。う~ん、それも魅力的だぁ。
【三叉槍の魔法使い】で集めた魔石は全部売っちゃうから手元に残らないんだよねぇ。
う~ん、決めきらないね。何処も毎日でも行きたいぐらいだ。そうだ!
「ウーリンは留守番で僕を手伝ってくれてたんだから、ウーリンに決めてもらおうかな」
「……いいの?」
「うん、いい、いい」
「ダメよ! そんなのズルイ! だってウーリンはキズナ様と二人で留守番して得してるじゃん!」
「得って……」
ウーリンに選んでもらおうと思ったら、キラリちゃんから待ったが掛かった。
よく分からない理由だったけど、結局ウーリンの一言で決まった。
「……水晶に行きたい」
「え? じゃあ許す!」
「「「え―――――」」」
ウーリンがキラリちゃんの提案した水晶群を選ぶと、キラリちゃんは掌返しで許した。
皆はブーブー言ってるよ。
「いいの? キラリちゃんに遠慮してない?」
「……キズナ様に…アクセサリーを作って欲しい」
「!! ウーリン! それいい!」
「「「うん! 賛成!」」」
遠慮してるのかと思ったら、そういうリクエストがあったんだね。
その意見には全員が賛成し、水晶群ルートで池を目指す事になった。
作るのは僕なんだけどね。でも、皆にはいつもお世話になってるし、感謝の意味も込めて作らせてもらいましょう。
水晶群の場所には三〇分ぐらいで到着した。
足の遅いウーリン、ノムヤン、ポットちゃん、パンくんは僕が担いでテンちゃんと競争した結果だ。
さすがに負けちゃったけどね。
だって、腕を前にして、片腕に二人ずつ乗せてるんだから腕が振れないんだよ。樹も避けなきゃなんないし、やっぱり遅くなるって。背中の背負い袋には大量のポーションも入ってるんだからさ。
『スラ五郎』? スラ五郎は背負い袋と背中の間に差してるから邪魔にはならないよ。むしろ最近『スラ五郎』が無いとシックリ来ないぐらいだ。
その後、皆で好きな水晶や宝石を採取し、カゲールくんに影の中に持っててもらい、池に向かった。
どんだけ採るんだ! というぐらい採掘したけど、余ったら余ったで使い道はあるからね。でも、みんな張り切りすぎ! 君達の分なら小指の先ほどで十分だからね。
池の畔に着くと、ポットちゃんとパンくんが飲み物と軽食を用意してくれた。
僕は遠慮なくご馳走になったけど、皆は銘々自由行動だ。
キラリちゃんとピッピは池の上を飛び回り、ウーリンは水辺で何かやっている。
カゲールくんとテンちゃんは少し探検してくると言い、ノムヤンは何故か穴を掘っていた。
その様子を見て、僕は作業に入った。
皆、やっぱり自分の属性石がいいんだね。だったら属性の能力を増やしつつ、何か防御を入れてあげればいいかな。精神耐性なんかどうだろ。
元々、防御力が低いから、防御耐性をつけても大した効果は無いだろうし、精神耐性だったら魅了や即死魔法を弾くからね。うん、それで行こう!
一時間ほど経つと、遊び疲れたのか全員戻って来た。
「キズナ様ー! できたー?」
「うん、できたよ」
「見せて見せてー!」
「わー! 綺麗な指輪!」
「うん、綺麗だねー」
悩んだ挙句、アクセサリーは指輪にした。
自動調節付きにしたからサイズの問題も無いし、妖精達ってこういうのに興味はあるけど持ってないみたいだからね。
「……うれしい」
「ありがとう、キズナ様ー!」
「自慢しちゃお!」
「うん、みんな欲しがるよね!」
「うんうん、見せびらかしちゃう!」
「ボク…男なのに……」
みんな気に入ってくれてよかった。ノムヤンも恥かしそうだけど、顔は笑ってるね。男でも指輪をしてもいいんだよ。
皆からお礼を言われ、それぞれの指輪の効力を説明した。
「あれ? 雨?」
「ホントだー」
「どうする?」
「帰ろうよ」
「そだね」
「キズナ様ー! 雨みたいだから帰るねー!」
「そうだね、でもカゲールくんだけは薬草を運んで欲しいな」
「うん、町の壁のとこでいいんだよね」
「それでいいよ。悪いけど頼むね」
「うん、お安い御用だよ。鉱石も一緒に置いておくね」
「よろしくー」
ちょっと多めにMPを消費しちゃうけど、帰りのためのゲートをカゲールくんのために町の壁のところに設置しておく。
喚ぶ時は名前を呼ばないといけないから出来ないけど、還る時はゲートを通ればいいだけだから、僕がいる必要は無いんだ。
「さてと、僕も帰ろうかな」
雨が本降りになる前に帰ろうかと思ったんだけど、何か違う事に気がついた。
「これって昨日も見た黒い雨?」
雨だと思っていた黒い雨は、見る見るうちにその濃度を濃くして行く。
「これって雨じゃない。身体から出ている、僕には見える魔力だよ」
濃度を濃くした黒い雨が周囲を多い尽くすと、何処からか声が聞こえた。
「遅い! 遅すぎるのだ! ここまで余を待たせるとは、中々剛毅な奴じゃ。キズナよ、まさかとは思うが、余との約束を忘れてはおらんであろうな」
現れたのは始祖だった。
約束? やっぱり何か約束してたみたいだ。僕も何か忘れてるなぁって思ってたんだけど…なんだったっけ?




