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第28話 フロアボス部屋の前で。


 ブラッキーさんが用意したMP回復ポーションに手を出したのは七階層に入ってすぐだった。


「やっぱり、一気に十階層に行くのは無理ね」


 そう言ってポーションを飲み干すブラッキーさん。

 加減を覚えた今なら、初めからやってれば、何とか辿り着くぐらいは出来たかもしれないよ。かなり調整は上手くなってるから。

 あとは、相手の力量に合わせた経験が必要になってくる。でも、これはもう少し経験しないと無理だろうね。


 それに十階層に辿り着けたとしても、ボス戦もあるんだからやっぱりMP回復ポーションを飲む事になってたと思う。


 あとは休憩かな。

 途中で一回しか休憩を取ってないし、それも短時間の小休憩だ。魔力だって自然回復してる間が無いよ。

 だからパーティ組んで、交代したり助け合ったりするのに、これならブラッキーさんのソロと同じじゃん。

 でも、十階層目までの我が侭だとするのなら、二人のスキルアップのためにもいいのかもしれない。


 結局、九階層目までに現れた魔物はスライム、ゴブリン、ホーンラビット、ビッグラスマウス、グラスウルフ、フォレストキャット、ダイバーマウス。全部、雑魚と言っていい魔物だった。

 地形もここまで全て洞窟型。土や石などの違いはあったけど、ずっと洞窟迷路型だった。


 さて、目的の十階層。

 情報では少し迷路の通路を行った先にボス部屋への扉があり、そこに入るとデッカイスライムがいるらしいんだけど、そこも一人で突破するつもりなんだろうか。


「ねぇブラッキーさん。十階層のフロアボスも一人で戦うつもり?」

「そうよ、それが私の使命だから」


 使命って、そんな大袈裟なものなの?

 そう思ってるとホワイティさんが補足してくれた。


「それも、ここのフロアボスを攻略できた暁には説明できるでしょう」


 なんだろ。色々と含みのある言い方しかされないんだけど、十階層までを攻略しない限り、何も教えてもらえそうにないんだね。

 だったらさっさと倒してもらおうかな。


 フロアボスの部屋の扉前で休憩を取る。

 他の冒険者パーティも何組か並んでいるから待ってる間に休憩が取れた。

 ここのフロアボスはデッカイスライム―――キングゼリーだ。

 ボス部屋の扉は一度に六人までしか入れない仕組みになってるようで、それ以上の人が入ろうとすると、扉がしまって弾かれてしまう。

 大きな扉だから最後に一気に入ろうとしても、上手く捌かれてしまって合計六人までしか入れない。

 逆に少人数のパーティの場合、戦闘が始まると扉が閉まる。

 そして、戦闘が終わると再び扉が開く仕組みだ。

 戦闘終了は、冒険者が全滅するか、キングゼリーが倒されるかだ。

 キングゼリーが倒された場合、戦った冒険者が奥へ進むか扉から戻って出るかすると、リセットされてすぐにでもキングゼリーが現れる。

 だが、再戦はできなかった。少なくとも一日は間を置かないとキングゼリーが消えてしまうのだ。

 パーティの中に一人でも再戦者が混ざっているとキングゼリーは消えてしまって、扉も閉ざされ、次の階層へ進む選択しかできなくなる。

 下位ランクの冒険者にとってはいい経験値稼ぎだが、そうそう美味しすぎる仕組みでは無いようだ。下位ランクと言っても、Dランク以上なのだが。


 それと気になったのが冒険者ギルドで渡された腕輪アームレットだ。

 ここで順番待ちをしてる冒険者もそうなのだが、ダンジョンで出会った冒険者達は漏れなく腕輪アームレットを填めている。

 僕のようにジャケットの中に装備して見せないようにしている人はいなかった。色によってはコンプレックスを持ってしまう人もいるようだけど、腕輪アームレットを填めている事が一種のステータスとされてるようで、必ず見えるように装着している。見えないようにしているのは僕だけみたいだ。


 そんな中、感じたのは黒系の人、つまり魔術系の人が多かった事だ。

 五人パーティなら三人か四人は魔術師のようだ。

 それってバランスとしてどうかと思うけど、魔術部門の統括であるギルバートさんがダンジョン推奨してるみたいだから、ダンジョンにいる冒険者の比率も魔術師が多くなるのかもしれない。


 そういえば、冒険者パーティって魔術師と武術師が混在してるのが当たり前だけど、その場合どっちの部門の管轄になるんだろ。

 それは今度聞くとして、今はフロアボスの事だね。


 十階層のフロアボス―――キングゼリーは雑魚のスライムと言ってもキングを冠するだけあってデカイし、腐ってもフロアボスだ。倒せばそこそこの経験値が入る。

 だからといって、中堅になればあまり訪れない場所でもある。キングゼリーに挑みたければ一階層目からやって来ないといけないのだから。


 ショートカットできる階層は十階層、二十階層、三十階層というキリのいい階層のボス部屋を過ぎた位置から始まるのだ。

 戻りたければ戻れるのだが、そこにフロアボスはいない。しかもボス部屋を通って戻ってるので、次に入った時には再戦扱い。フロアボスに挑みたければ一階層目から始めないと戦えないのだ。

 中堅冒険者にとって、一階層目から来るメリットは無い。だから、ここにはDランク冒険者が多く集まっていた。


 このダンジョンに入れる資格を持つ冒険者の中では最下位の冒険者が集まる扉の前。

 予想通り、待ち時間が長い。

 待ってる冒険者は四組だけだし、新規パーティが入ると即座にフロアボスが現れるのだが、戦闘時間が長いのだ。

 今入ってる五人パーティの冒険者も、既に三十分以上戦っている。扉が開かないところをみると、まだ決着がついていないという事だ。


 僕達の順番は次の次。あと三十分は待たないといけないのかもしれない。

 それはそれでブラッキーさんの魔力回復の時間にあてられるのでいいのだが、僕は暇で仕方が無い。

 ホワイティさんも今は自主練を辞めて魔力回復に当てている様子だ。ブラッキーさんの持ってる魔力回復ポーションとは別にホワイティさんも持ってるようだけど、使わないで済むのなら節約になるんだし、無理に使う必要は無い。


 ここに来るまでブラッキーさんのテンションは高く、一人で魔物と戦って来た。魔力の強弱をつける練習をしながらも、その成果にテンションは上がりまくっていたのだ。

 小さな威力の火魔法で魔物を固め、昨日一昨日と無双した威力の通常魔法で一気に殲滅。

 僕の教えも浸透して来たようで、魔力を節約の戦法も、雑魚相手の練習で中々に様になってきた。元々センスも良かったんだと思う。

 だから自分でも嬉しくなったんだと思うけど、袋小路の行かなくていい道でも魔物を見つけたら率先して戦いに行くなどテンションは非常に高かった。


しかし、今はフロアボス戦のためなのか、えらく静かに待機している。

 シュミレーションでもしているのか、それともただ単に体力回復と温存のために大人しくしているだけなのか。

 それは本人にしか分からないけど、チャチャを入れて邪魔をするのも憚れる雰囲気を醸し出している。


 そうなると、僕は更に暇になる。

 んー……ここに来るまでも初めは見張りやブラッキーさんの補助をするために少しは気を張ってたけど、魔物が雑魚過ぎて途中からは暇を持て余してたのに、何か暇潰しできるようなものは無いかな。

 『クロスオーバー』の世界だといつも何かの勉強をしてたから、こんなに暇になる事なんて無かったからね。


 おっ!? そうだ! 誰かを喚んで相手してもらおっと。

 誰が言いかなぁ……

 せっかくだし、話し相手を選ぶよりもっと有意義に……そうだなぁ、怪我をした時のためのポーション作りとか、今なら料理を作るとか……

 うん、料理がいいな。料理が得意な友達を喚ぼう!


 【クロスオーバー】ポット! パン!


 二人は鍋の精で、ポットちゃんは深鍋の精で、パンくんは浅鍋の精だ。


「キズナ様~!」

「キズナ様!」

「久し振り。でも、他にも人がいるから静かにしててね」

「大丈夫だよ~。わたし達は妖精だから、よっぽど妖精と仲良くないとわたし達の姿は見えないから~」

「そうだよ。ここには妖精と仲良しの人はいないから僕達の声も聞こえてないはずだよ」

「そうなんだ」


 だったら僕って独り言を言ってるようにしか見えないとか? それって痛い人だよ、小さな声で話そっと。


「今、何したの!?」

「えっ」


 ヤバ、見られた?

 ブラッキーさんとホワイティさんが目を瞑ってたから油断してた。

 他の人からも死角になってるから、小さな門だと見えないと決め付けてたよ。今まで喚んだ友達にしてもそうだけど、ポットちゃんもパンくんも小さいから喚び出す門も小さいからね。


「今、魔法陣を……」


 順番待ちの冒険者の女性に見られてたみたいだ。


「えっと……魔法の練習?」

「君は武術師…? じゃなく荷物持ち? でしょ?」


 あー、僕の服装を見て荷物持ちだと思ったんだろうな。

 ここにいる人達は初心者とは言わないまでも、中級と下級の間ぐらいの実力の人達だから、そんなにいい装備じゃない。

 でも、今の僕は装備とも言えない普段着にしか見えない服装だからね。


「だから練習?」

「それにしては詠唱が聞こえなかったようだけど」

「えっと……小さな声で?」


 嘘を言って言い訳してるから、どうしても疑問系になってしまう。


「小さな声って、そうじゃなくて、ここは他にも人がいるんだからそんな所で魔法の練習なんてしたら危ないでしょ!」

「あ、ゴメンなさい」

「不発みたいだったからいいものの、暴発したらどうするのよ!」


 あれ? 門までは見られてなかったのか。

 それに、ポットちゃんとパンくんはやっぱり見えてないみたいだね。

 でも、どんな弱い魔法でも、例えば灯り魔法だとしても、魔力操作を誤り暴走させてしまうと暴発して自爆してしまう事は知っているので、僕の事を“荷物持ち”にしか思ってないのならそう思われるのも納得だ。

 だから素直に、もうしないからと何度か謝ると、その女性の冒険者は許してくれた。周りにいる仲間の人達もその女性に任せたみたいで、それ以上怒られはしなかった。

 ちょっと軽率すぎたね。以後気をつけよう。


 そこからは小声で二人と話した。

 静かな場所なので小声でも何か話してるのは分かってしまうのだが、内容までは分からないだろう。


「ポットちゃん、パンくん。ここで料理を作れる?」

「作れるよ~! キズナ様は何が食べたいの~?」

「でも、食材を持って来てない! だからキズナ様が用意して!」


 僕だけが小声で二人は大きな声で張り切って話して来る。

 妖精の声が他の人には聞こえないとはいえ、僕だけが小声だなんて、何か理不尽を感じる。

 因みにこの世界にも妖精はいる。精霊はまだ見てないけど、たぶんいると思う。まだ声も掛けてないんだけどね。いや、声は掛けたんだけど、無視されたんだっけ。

 僕の声が届いてないってより、自分達の世界に入ってて周りは完全に無視って感じだったよ。


「食材かぁ……」


 確かに料理を作るには食材が必要だ。今更ながらそれに気付いて荷物を探ってみる。

 調味料は持ってきたんだけど、食材までは持って来なかったんだよね。

 ここはダンジョンだから魔物は残らないし……いや、でも、確かドロップ品の中に……

 あったあった、ビッグラスマウスとダイバーマウスとホーンラビットが肉を落としてたのを確保してたよ。

 量は少ないけど、戦闘前の軽食と考えれば丁度いいかも。


「これで作れる?」

「オッケ~だよ~!」

「じゃあ、僕はこの肉を使うよ!」

「じゃあ、私はこっちの肉ね~」


 あ、でも、ここじゃまた怒られちゃうな。どこだといいかなぁ。

 一つ前の角を曲がった所でいいか。そこならここから見えないだろう。

 ブラッキーさんとホワイティさんの様子を確認すると、二人ともまだ目を瞑ってリラックス状態みたいだから、声は掛けずに移動した。


 ここは大扉の前とあって、少し広い空間になってるけど、安全地帯というわけじゃない。偶には魔物も現れる。

 だけど、順番待ちの冒険者は何人もいるし、ここに到達するまでに倒して来てるから魔物も頻繁には現れない。一時間に一度、現れれば多いぐらいだ。

 だから一つ前の角だと言っても、そんなに危険でもない。この階層に現れる魔物は僕にとっては全然脅威でもないし、さっき怒られちゃったから姿が見えないように少し距離を置くだけだ。

 トイレだと言って、離れる姿も何度か見てるしね。


 さて、肉だけの料理だと味気ないので、幾つか持ってた精製前の薬草も二人に渡しておく。

 他にも野菜があればよかったんだけど、荷物になるから持って来てない。

 外なら現地調達もできただろうけど、ここはダンジョンだからね。


「どう? 食材はそれだけしかないけど、作れそう?」

「まかせて~!」

「うん、大丈夫! 足りない分はここで調達するから」


 調達? ここで? どうやって?


 パンくんが徐に魔法陣を描き、数粒の種を召喚した。

 次にポットちゃんが別に魔法陣を描き、そこにパンくんの召喚した種を蒔く。

 すると、ポンっと芽が出てきてニョキニョキっと茎が伸びていき、そこにキュウリやナスやトマトなどの野菜が生った。


 なにそれー! これは僕も初めて見たよ! こんな便利な事ができるだなんて、君達って鍋の精だよね? なんでそんなことができるの? でも、後で教えてもらおう!

 とはいえ、魔法陣は覚えたし、二人が料理に取り掛かったら試してみるかな?


 二人は鍋の妖精とはいえ、更に昇華して料理の妖精と言っても過言では無い存在になってる。だから、そういう事もできたのかな? と自分で自分を納得させた。


 二人が収穫すると、茎が萎れていき魔法陣も消え、枯れた茎も消えてなくなった。

 ダンジョンに吸収されたように見えなくもないけど、恐らく外でやっても消えた気がする。

 これはそういう魔法陣だったんだと何となく理解できてしまった。


 それから二人は料理を作り始める。

 ポットちゃんは得意の深鍋で煮物を。パンくんも得意の浅鍋で炒め物を作り始めた。


 二人に包丁やまな板は必要ない。

必要な食材を鍋の上まで持って行くと、手の中に持たれた食材が綺麗に切られた状態で鍋の中に落ちて行く。

 火も必要ない。

 二人の持つ鍋は、鍋の温度は二人の思い描く通りの温度を演出してくれる。水の量だって思い通りに鍋の中に現れる魔法のような鍋なのだ。流石は鍋の妖精ってところだね。

 今回ポットちゃんは野菜の水分だけを利用してスープを作ったみたいだけどね。


「できた!」

「わたしはもうちょっと~」

「キズナ様、お皿を用意して!」


 もうできたの? 流石に炒め物の方が早いね。

 皿は、持ってたはず……うん、あった。ハーゲィさんと買い物に行った時に、薄い鉄製の平皿を四枚とスープ皿を四枚買ってたから、今回はそれを使えばいいね。

 平皿を四枚出して盛り付けが終わった頃にポットちゃんの方も出来上がった。

 煮物なのに早いね。蓋を完全密封してたから圧力鍋みたいに作ったのかな? 僕も料理はできるけど、普通の腕前だからこの二人がやってるようにはいかない。

 さすがに美味そうだね。ポットちゃんの作ったスープもお椀のようなスープ皿によそい終えると後ろから声が掛かった。


「あなた何してるの」


 ドキッ!


 すぐ様振り返ると、さっき怒られた女性が立っていた。

 殺気には凄く敏感なんだけど、他の気配はあまり分からないんだよな。


すいません。

色々バテバテで更新が滞ってます。

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