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第26話 初ダンジョンより話の内容の方が濃い


 その後は、冒険者ギルドに隣接してある食堂兼酒場でお祝いだ。

 パーティ結成&二人の昇級試験合格祝いをした。のだが、何故かさっきより取り巻きが増えていた。


 おいおい、こいつらは何なんだ? なんでいつまでも付いて来るんだ?


「この人達は何者なんですか?」


 いつまでも付いて来る割に、ブラッキーさんもホワイティさんも平常運転なので聞いてみた。


「知らないけど」

「はい、私も知りません」

「いつも付いて来るだけで、別に何かされたわけじゃないから気にしない事にしたの」

「偶に話しかけられる事ぐらいはありますけど、何もありませんし冒険者ギルド内だけでの話なので私も気にしないようにしています」


 いつも、こんななの? それっていいの? 本人達がいいのならいいのか? う~ん、判断に困る~。


「でも、今後は僕も一緒なんですよね?」


 宿は兎も角、まさか食事まで別だと言わないよね? それでも別にいいんだけど、偶にはご一緒したいよね。


「ええ、もちろん! キズナは弟のような先生みたいなものなんだから」

「はい、歓迎します。キズナは先生のような弟みたいなものなのですから」


 それは先生なのか弟なのかハッキリしてほしい。実際、弟みたいな先生って、いそうでいないから。


「それだと、この状態はさすがに落ち着かないというか……」

「そうね、慣れないと落ち着かないかもね」

「でしたら、外の店にしますか? いいお店を知ってますよ?」

「それもいいけど、キズナの料理が食べたいわね。どっか自分で作れる環境が欲しいわね」

「それなら家を借りますか? 家を借りれば作れますが、私は作れませんよ?」

「それいいかも! 三人で借りればいつでもキズナの料理が食べられるのね! それいい!」


 おいおい、別に女性が料理を作る人なんて思ってないけど、僕が料理担当に決定してるじゃないか。

 料理をするのは嫌いじゃないけど、そんなに好きってほどでも無いんだよ。

 確かに、外で作った時に、美味しいって喜んでくれるのは嬉しいけど、毎日はねぇ。


「毎日じゃなくてもいいのよ? 偶に作ってくれればいいんだけど、今のままだと作れる場所がないじゃない」

「私は毎日毎食を希望します」

「宿で厨房って借りれないんですか?」

「借りれるわよ? でも、借りれる時間は限られてるし、そんな時間に借りても意味無いわよ」


 借りれる時間は、昼食後すぐの短時間か、夜食堂が終わってからだそうだ。

 確かにそれだと意味がない。保存食を作るわけじゃないんだから。


「時間停止の魔法バッグがあればいいんだけどね」

「流石に今の経済状況では買えません。そのためにもダンジョンで稼ぎましょう」


 あるんだ、収納バッグ。だったら収納魔法もあったりするんだろうか。


「魔法バッグって時間経過しないんですか?」

「ええ、そんなに多くは入れられないけど、バッグに入れてるものは時間経過しないの。料理や貴重な素材を入れるのに使われてるわね」

「しかし、値段が高すぎて私達には買えないでしょう。持ち主も王族や上位の貴族だけですから」

「でも、収納バッグならどうかしら。時間経過が無いやつ」

「たしかに収納容量が多いだけの収納バッグでしたら買えなくもありませんが、それでも今の経済状態では買えません」


 そんなに高いのか。この二人って、魔法を教わるのに金貨十枚をポンと出したよね。装備もいいものを着てるし、結構お金持ちだと思ってたんだよね。

 そんな二人が高いって言い切るんだから相当高いんだろうね。今は二人から貰った金貨二十枚と素材を売った分け前があるから何とかなってるけど、明日の宿代にも苦労してた僕が聞いても意味無いか。


「本当に家を借りるの?」

「ええ、明日にでも見に行きましょう」

「でも、料理は偶にしか作らないよ?」

「ガーン!」

「いや、口でガーンって言われても。それはそれで可愛いんだけど」

「かかか可愛い……」

「キズナ、また」

「あ……」


 そうだった、ホワイティさんは免疫が少ないんだった。

 これだけの人に囲まれても平然と食事なんかをしてるから忘れてたよ。

 ホント、この人達は何のために取り巻きをしてるのか。普通に考えたらファンだと思うんだけど、それなら『可愛い!』とか『素敵!』ぐらい言うだろ。


 ホワイティさんが復活するまで、また時間が掛かるだろうからブラッキーさんに聞いてみた。


「あー、この人たち? 私達のファンみたいよ」

「だったら……」

「ファンだからこそ、禁句は分かってるみたいなの。だからキズナも気をつけてよ」

「はい、失言でした。気をつけます」

「ホワイティのファンはね、素材の売り方やポーションなんかを安く買う方法なんかを丁寧に教えてくれるみたい」

「へぇ~」


 だから、あんなに知ってたんだ。


「私のファンはね、色々値引きしてくれるのよ。例えば、ここの食事代や宿代もそうね。あと、私達の装備もファンからのプレゼントよ」


 そんなに貢いでもらってんの? そんなとこに男の僕が入ったとなったら、ファン達に目の敵にされるんじゃないの?


「そうだったの? だったら僕がいたら……」

「大丈夫、キズナのファンも出来たみたいだから」

「僕のファン!?」


 僕のどこに惹かれる部分があったんだ? 聞いてみたい!


「僕のファンって……」

「それはね」

「はい!」

「な・い・しょ」


 ガクッ


 そんな定番なお約束はいらないんだよ! さっさと言えー!


「言えないのよ。言わないって約束しちゃったから」

「むぐぐぐ…だったら、せめて何人かだけでも教えてください」

「それぐらいはいいかな。えーと……ひとり…ふたりかな」

「三人です!」


 あれ? ホワイティさん復活? 今回は早かったね。


「三人ですか! それは凄い快挙です! 誰だか知りませんが、ありがとうございます!」

「いいえ~」

「それほどでも~」

「なんで二人が返事するんですか? 僕はまだ見ぬファンの方にお礼を言ったんですが」

「そ、そうね、そうよね」

「そそそそうでした、おほほほほほ~」

「変な人たちだね。でも、僕にもファンが付いたんだ、何か特典があるのかな? いやいや、無くてもいい、励みになります!」


 拳を握って天井を見上げ熱弁をする僕。熱くなってて気付かなかったけど、向かいの席では、「それほどでも~」と二人が照れていた。


 それと、ファンの件だけど、結局、僕が入っても問題なかったみたいだ。

 さっき、二人から相手にされてないってラピリカさんの前で公言されたからね。

 それにしても、ファンかぁ……意外と嬉しいもんだね! 二人に相手にされてないってのも吹っ飛んじゃったよ!


 その後は『初心者の森』への薬草採取の話も伝え、何日かに一度『初心者の森』で薬草採取をする事については了承をもらえた。

明日は、腕試しも兼ねて三人でダンジョンに行く予定だ。


 そんないろんな事があり、その夜は帰りが遅くなってしまった。ハーゲィさんには、また会えずじまいだった。

 翌朝も、起きた時には既にハーゲィさんは出発していて、やはり会えなかった。

 明日こそは! でも、今日の出来次第でどうなるか分からないし、冒険者ギルドに言付けでも頼んだ方がいいかもな。



 今日は冒険者ギルドには寄らずに、ブラッキーさんとホワイティさんの泊まる宿屋へと迎えに来た。

 ここで合流してダンジョンに向かう予定だ。


 ランガンの町のダンジョン。通称『原初の海の女神迷宮ティアマト・ダンジョン』と呼ばれていて、百階層からなっていると言われている。

 言われている、というのは、まだ誰も踏破したものがいないからだ。

 最高到達階層の公式記録は六十五階層。

 なのに、百階層と言ってるのは、そう言ってた方が格好いいからだそうだ。

 アルガン統括が言ってたので、間違いなく理由は別にあるんだろうと断言できる!

でも、別に理由なんてどうでもいい。僕達は、実力に見合った階層まで行って、程々に稼げればいいのだ。


 因みに、十階層、二十階層と十の倍数の階層にはフロアボスがいて、後戻りができない仕組みになってるらしいが、倒せば地上へと戻るルートができるそうだ。

 次回は、その続きからできるという、便利機能付きダンジョンだそうだ。


 うん、いい感じで便利だね。キリのいい階層だけにしか無い機能みたいだけど、それでも便利だよ。


 原初の海の女神ティアマトね。僕の先生にも同じ種族というか、地位というかレベルというか名前というか…という人がいたけど、こっちの人にも話が通じればいいのに、と願うよ。

 そしたら、苦労なく最下層まで連れて行ってくれるかもしれないのにね。

 でも、それじゃあダメなのか。程々に魔物を狩らないと魔石を手に入れられないものな。



「まずは、私が無双するからキズナは手を出しちゃダメよ!」


 まずは低層と呼ばれる一階層目からだ。

 三十階層までは『下層』、六十階層目までが『中層』、それ以下が『上層』と呼ばれている。

 洞窟型ダンジョンを地下に向かって行くのに、下の方が『上層』っておかしいと思うんだけど、ここのルールみたいだからそれに従おうと思う。

 ルールは大事だからね。


「キズナは私と魔石&ドロップ品拾いです。頑張りましょう」

「はい、走るのは得意なので任せてください」


 どうやら、ドロップ品というのは稀に魔物が落とす宝箱のようなもののようだ。

 箱には入ってないけど、魔石以外に宝石だったり武具だったり魔道具だったり素材だったり、結構有効なものを落としてくれるそうだ。

 それとは別に宝箱もあるそうだけど、誰かが開けてしまうと宝箱自体が消えてしまうそうだ。

 再び何処かに現れるみたいだけど、運の要素が強くて、宝箱を見た事が無い冒険者の方が多いぐらいだそうだ。


 他にも落とし穴があったり矢が飛んで来たり槍が飛び出して来たりと、罠もふんだんにあるそうだ。


 教えてくれたのは、ブラッキーさんとホワイティさんだけど、彼女達も初ダンジョンだからファンに聞いた話らしい。

 それなら、『クロスオーバー』の世界で経験した僕の方が先輩だね。言えないし、言うつもりもないけど。


「でも、地下なのにここって明るいですよね。あのポーチライトみたいなのって照明器具ですか?」


 所々壁についている明かりの灯ったものが目に付いた。


「あれは、冒険者が付けているのです。ダンジョンには魔力が充満してますから、その魔力を利用した灯りの魔道具です。入り口でもらえるのですが、私達はそんなに下層まで行く予定はありませんから」


 どうやら、未踏破の場所に行った冒険者が設置しているようだ。

 最高到達階層が六十五階層という事は、僕らには関係ない話だね。当分、用の無い魔道具だ。せいぜい前任者の業績を利用させてもらいましょう。


「でも、低層にはもう無いと思いますが、中層からは未踏破地帯もあるようですから、そういった場所に行ったら私達もしないといけませんよ」

「そうなんですね。荷物が増えるのはちょっと嫌だけど、ルールなら仕方ないですね」


 高さ二十センチぐらいで一辺が十センチ程度の四角柱の大きさだから、僕の背負いバッグを空の状態で二十個ぐらい入るか。

 でも、それだけ入れると前衛ができなくなりそうだから、五個までにしておこう。


「たぶん、五十階層あたりから現れる“スクレイルファング”がドロップするお宝が手に入れば楽なんですけれど」

「ふ~ん、何をドロップするの?」

「収納バッグです」


 おお! 収納バッグ! それは欲しい!


「大した容量ではありませんが、それでも運が良ければ宿の部屋一室分ぐらいの容量のものを落とす事もあるそうです」


 おお! そんなにか! それは益々欲しいぞ!

 その為には五十階層まで一気に行かなくては!


「ちょっと、あなた達! 私の無双っぷりを見てよ!」


 第一階層目にいる魔物はゴブリンとスライム。しかも素材も取れないダンジョン産の魔物。取れるのは魔石と極々稀に落とすドロップ品。

 そんな雑魚中の雑魚など、今のブラッキーなら瞬殺なのは当たり前。友達になれない魔物なのは初めに確認済み。それだけ条件が揃えばと、キズナはブラッキーを放置してホワイティと話し込んでいたのだ。


「でも、手を出すなって……」

「手は出されたくないけど、見ててほしいのよ!」


 なんて我が侭な……


「……分かった。それなら、下層の魔物は全部任せてもいいかな?」

「もちろん! キズナに教わった魔法を使いたくて仕方がないの! 下層なんて言わずに今日中に上層まで踏破するわよ!」


 いや、それは無理だと思うよ。聞いた話、下層だけでも最高で一日に十階層ぐらいしか踏破できないそうだから。

 ブラッキーさんも、これぐらいの相手だと一人で十階層ぐらい行けそうな気はするけど、下に下りて行くほど魔物も強くなるだろうし、このダンジョンはそこそこ広いから魔物に出会わず歩くだけでも十階層は行けそうも無い。

 その前に魔力切れになっちゃうだろうしね。


 有限実行のブラッキーさんが頑張ってるので、僕はホワイティさんと魔石を集めながら雑談に励む。


「ところで、なんで二人は冒険者をやってるの? お嬢様っぽいし、お金にはあまり困ってるようには見えないし、他の職業でもよかったんじゃないの?」

「やはりそう思いますよね。私は王都の王立学園を卒業して神殿に仕えてたのですが、ブラッキーに脅さ……んんー…誘われて冒険者になるしか……いえ、なったのです」


 ……ここはあえて気付かなかったていで流してあげよう。


「神殿って、ホワイティさんは神官だったんですか?」

「そうなのです。一年で神官長補佐までになったのですが、ブラッキーのせい……コホン、誘いで冒険者にと。神官長になれば、神殿から抜けられなくなるから、抜けるのなら今のうちだと言われ、そのままこの町に連れて来られました」


 えーと…これはツッコんでほしいのかな? 巻き込まれた事を主張したいのかな? もうちょっと流して様子をみよう。


「卒業して一年神殿に、ですか。エリートコースだったんですね。だとしたら、十九歳ぐらいですか?」

「え!? なぜ分かったのですか!」


 年齢は秘密だった!? でも、卒業するのって十八ぐらいだと思うじゃん。確か、この『アナクライム』の世界でも成人は十五歳で、学校を卒業するのは十八歳だったはずだ。

それから社会人を一年やったら十九歳だろ?


「今、卒業してから一年って言ったから」

「……言いましたね」

「だったら合ってると思うけど」

「……誰にも言わないでくださいね!」

「はい」


 秘密だったんだね。だったら迂闊すぎると思うけど。


「でも、ブラッキーも同じ年に卒業して、既に今年も誕生日を迎えていますから、彼女は二十歳になってます。私より年上なのですよ」


 同級生が先に誕生日を迎えただけでしょ? そんなの年上って言わないって。


「二人とも、今年で二十歳だったんだね。盛大にお祝いしなくちゃね」


 『クロスオーバー』の世界でもそうだったけど、この『アナクライム』の世界でも二十歳のお祝いって、そんなに大袈裟なもんじゃない。

 十五歳で成人だから、そっちで盛大に祝うからね。

 だけど、二十歳って節目でもあるし、僕としてはお祝いしてあげたい。


「辞めて下さい! 年がバレてしまいますから!」

「……わかりました」


 二十歳なら全然若いんだし、バレても問題ないと思うんだけどな。でも、本人の希望だから聞いてあげなきゃいけないか。


「だったらブラッキーさんだけ祝ってあげようかな」

「それならいいですけど、その必要はないでしょう。彼女の事なら王家が祝いますから」

「え? なんで王家が?」

「はい、彼女は王女ですから」

「えっ!? 王女!?」

「あっ! キズナは知りませんでしたね。これも内緒でお願いします」


 おいおい、ボロボロ出てくるな。実は王女だったなんて、かなり重大な秘密だと思うんだけど。そんな軽い感じの秘密じゃないよね?

 ホワイティさんって、秘密を守れないタイプ?


「別に言わないけど、そんな重大な秘密を僕に言っちゃっていいの?」

「キズナは先生のような弟ですからいいんです。それに、周りには知ってる人は沢山いますから」

「へ? たくさん?」


そんなに秘密でもなかったの? いやいや、一国の王女が身分を隠して冒険者をやってるって、結構重大な秘密だと思うけど。

 それとホワイティさん、さらーっと弟みたいじゃなく、弟って言い切っちゃってたね。


「取り巻きのファンの大半は護衛の者ですし、王家から資金提供も受けています。護衛の者たちもバレないように振舞ってますから、キズナも今まで通りに接して差しあげてください」


 ファンが護衛だったの!? それなら、あのファン達の態度にも納得なんだけど、それって冒険者をやる意味あるの? 冒険になってないと思うんだけど。


「今まで通りって…いいのかなぁ。後で不敬罪だ! って捕まえられたりしない?」

「大丈夫です、その点は保証します。逆に過剰に接してしまうと王女だとバレてしまいますから、ブラッキーも困るのです」


 バレるって、そこまで知られてるのに誰にバレたら困るの?

 アルガン統括は知らないみたいだったけど、あの人は脳筋だから論外だし、ラピリカさんが呆れてたのは冒険者の名前を知らないというより、王女の名前を知らなかった事に呆れてたんだろうな。


 でも、ラピリカさんもそうだったけど、取り巻きの人達も普通に話してたし、僕だけ過剰に接するのも目立っちゃうか。今更な気はしまくりだけど。


「それに、私やブラッキーもそうですけど、ブラッキーの両親も感謝してましたから。私達二人にこれだけの魔法の手解きをしてくれて、更に前衛として申し分ない力を持っているキズナがパーティに入ってくれたのですから」

「え? それって……」

「はい、全て王家に報告されています」


 当たり前だよねー。あれだけ取り巻きのいる公然の秘密というか、全然秘密になってないんだから、報告されないわけがないよね。

 という事は、二人に魔法の手解きをしてたのも見られてたのか?


「僕達はずっと見張られてたという事ですか? 魔法の練習の時も。もしかして今も!?」

「それはありません。そこまで過保護にしたら冒険になりませんから」


 いやいや、今でも十分過保護だと思いますよ? 過保護って意味わかってる? 冒険の線引きが大甘すぎだけど?

 僕も人の事は言えた義理では無いと思うけど、一応僕の場合は、ちゃんと一人で放り出されてるからね。


「冒険者ギルドや町にいる間だけです。私達も『初心者の草原』限定での活動を条件に護衛は付いて来ない約束をしていました。でも、今回の昇級試験で魔法を披露した事と、キズナの情報が王家に入った事でダンジョンにも入れるようになりました。キズナには本当に感謝です。『お姉ちゃん』と呼ぶ権利を与えましょう」


 お姉ちゃんとは呼ばないし、魔法の披露もいいんだけど、僕の情報ってどんな情報が報告されたんだろ。そこが非常に気になるんだけど。


「僕の情報ってどんな情報なんです?」

「そこは、『お姉ちゃん、教えて?』でしょ?」

「いや、呼びませんから。情報だけ教えてください」

「ガーン!」

「ガーンって。そう言ってるわりに、全然ショックを受けてるように見えないんですけど。普通擬音は口に出して言わないですしね」

「はい、かなり耐性が付いてきました。あと、三回は大丈夫です」


 まったく……ホワイティさんの清楚なイメージがドンドン崩れていくんだけど。

 この人、話せば話すほどボロを出すタイプなんじゃない? もしかして、ブラッキーさんに弱みを握られて脅されてたっぽいけど、自分で墓穴を掘っただけなんじゃないのか?


「キズナの報告内容は私達には全部は知らされてません。ただ、少しだけ聞いていまして、冒険者ギルドから魔物の討伐数について報告を受けたと聞いています」


 それって昨日の事なんだけど。もう報告されてんの? しかも、その内容をホワイティさんが知ってるって、筒抜けってこういう事を言うんだろうね。

 今後この町で…いや、この国でやって行けるのか非常に不安になってきた。


「だから、私を見てって言ってるじゃない! 私の無双っぷりを見て褒めてよ!」


 あ、ホワイティさんの話が強烈過ぎてブラッキーさんの存在を忘れてたよ。

 でも、見るだけじゃなくって褒めないといけないの? 先生としては褒めて伸ばすタイプもいると思うんだけど、僕は先生に褒められた記憶って無いんだけど。

 その分、母さんに褒められまくったけどね。今考えると、それでバランスが取れてたのかもしれない。

 という事は、王女であるブラッキーさんは他で褒められまくってるだろうから、僕は褒めない方の役だな。


「いや、ブラッキーさん。魔法はだいぶ上達したけど、この程度の相手に使うには強すぎる魔法だよ。それだと、あと一時間も持たずに魔力が切れちゃうよ」

「そんな事はどうでもいいの! 私を褒めてって言ってるの!」

「うまくやれば褒めてあげますよ。相手の力量を見定めて、最適解な魔法で仕留める。それが常時できるようになってからですけどね」

「むぐぐぐ…分かったわよ! 見てなさい、絶対にキズナに褒めさせてやるんだから!」

「頑張ってくださーい」


 それからも魔物はブラッキーさんに任せ、僕とホワイティさんで魔石を収集した。

 残念ながらドロップ品は出なかった。

 そして、僕の予想通り、五十分後にブラッキーさんの魔力が枯渇し、今日のダンジョン探索は終了した。


 五階層か、よく持った方だね。

 十階層まで行けばショートカットで帰れるみたいだけど、今日の所は戻ろうかな。

 とりあえず、目標を十階層に定めて、クリアできたら『初心者の森』で薬草採取って感じかな。


 魔力切れのブラッキーさんをホワイティさんに任せ、僕が先頭に立ってダンジョンを戻るのであった。

 初ダンジョン探索は、こうして無事終了した。



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