表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/126

第24話 色々バレた


 何はともあれ、ホワイティさんが買い取り事情に精通してたお蔭で、僕の懐も少し暖まった。

 今後は三等分になるんだから、今まで以上に稼がないといけない。

 いや、今までも稼いだと実感はしてないんだけど、一時的にはお金持ちになってたはず。二人に魔法の指南をして授業料をもらって、パーティメンバーとなる二人の実力が上がれば、それはそのままパーティレベルが上がるんだから僕にとっては良い事尽くめだ。

 問題は、どうやったらDランクになれるかなんだけど。


「そうですね。ダンジョンに行けば稼げると言うならダンジョン行きには賛成ですが、どうやったらDランクになれるんですか? 確か、ダンジョンに行けるのはDランクからですよね?」

「キズナもその気になってくれたのですね。キズナはダンジョンが嫌いなのかと思ってました」

「嫌いというわけでは無いんだけど、ダンジョンってあんまりいい思い出がないので」


 『クロスオーバー』の世界でもダンジョンに行った事はある。ただ、初めて魔物の命を奪ったのもダンジョンでだった。

 僕には魔物の友達が多い。魔物だけじゃなく、精霊や妖精や、もちろん人にも友達はいたけど、友達と同じ種族を殺す体験は物凄く辛かった。

 初めての時は、「友達になろうよ! 僕達は友達になれるよ!」って何度話しかけた事か。

 友達になれないと分かるのに、凄く時間も掛かった。


 あの時ダンジョンに付き合ってくれたのはハデス先生だったけど、いつもならハードな試練を課すくせに、あの時だけは無言で根気良く最後まで付き合ってくれたよな。

 友達になれないどころか、害にしかならないと分かってからは討伐対象にできたけど、慣れるまでは相当な時間が掛かったはずなのに。

 それでもハデス先生はずっと付き合ってくれたもんなぁ。今更ながら感謝しかないよ。


「苦手なのですね。それなら私とブラッキーだけで行っても構いませんが」

「そうね、この魔法さえあれば楽勝よね!」

「その為には、昇級試験に合格しないといけないのですが、私達は魔術部門ですし、魔術部門のギルバート統括はダンジョン推進派ですから、ダンジョン探索のため昇級試験を受ける者には相当甘いと言われていますから簡単に合格できるでしょう」


 そうだとは思ってたけど、やっぱり魔術部門のギルバート統括はダンジョン推しの人だったんだね。

 しかも、試験も甘いって……実力不足の人がダンジョンに行ったら死んじゃうんじゃないの?


「いいえ、今はダンジョンも平気になったから僕も行くよ。でも、それだと僕も昇級試験を受けないといけないね」


 僕もEランクだからね。


「そうね、だったら一緒に冒険者ギルドに行って、現在の貢献度を確認しよっか」

「ええ、そうですね。私達の貢献度は既に足りていると思うのですが、キズナの状況は分かりませんからね」

「貢献度?」

「まさかあなた、貢献度を知らないなんて言わないわよね」


 う~ん、思い出せないという事は習ってない? 冒険者ギルドでは聞かなかったし、正直に話すしかないか。


「はい、知りませんね」

「魔法の知識は凄いのに、常識は知らないのね」

「魔法の方も常識知らずのようですものね」


 散々な言われようだな。ホワイティさんも、常識知らずって何なんだよ。そこは常識ハズレって言うんじゃないの? いや、自分で言うのは嫌だからツッコまないけどさ。


「魔法を教わった身としては非常識人が先生では困るから特別に教えてあげるわ」

「そうですね、常識人として教えてあげましょう」

「……はい、お願いします」


 なぜこんなに敗北感が漂うのだろうか。勝ち負けなんて関係ないはずなのに。


「貢献度ってどれだけ冒険者ギルドの依頼を達成したかなの。もちろん難易度によっても達成回数の基準は変わってくるけど、下位ランクだったらどの依頼でもそんなに変わらないし、失敗無く普通に依頼を熟してたら半年もあればEランクになれるわ。試験も無いしね」

「Dランクに上がる場合にはダンジョンへの入場資格が発生しますので試験があるのです。でも、先ほども申し上げました通り、魔術部門の試験は甘いのです」

「もちろん試験に挑むためには資格が必要なの。Eランクで依頼を熟して資格を取るんだけど、一年でも早い方じゃないかしら」

「私達もEランクを一年やってますものね。ようやく試験に挑めるかと思うと楽しみで仕方がありません」

「そうよね。しかも、こんな魔法を引っ提げて挑めるのよ? 絶対合格間違いなしよ!」


 ブラッキーさんとホワイティさんが代わる代わる話してくれたけど、ようは依頼をどれだけ熟して冒険者ギルドに貢献したかで試験資格がもらえるって話だな。

 それだと、僕には無理だな。だって、依頼は薬草採取と、ここで三人で倒した魔物の分だけだから一年もEランクをやってる二人と比べると全然足りないだろうから。

 でも、どれだけ足りないか聞いておいて損は無いだろうし、冒険者ギルドには一緒に行こうかな。

 表には待ち合わせで何度か行ってるけど、初日以来、中には入ってないからね。


 Dランクに上がるための試験のレベルは分からないけど、魔法の手解きをする前の二人でも受かると思ってたみたいだから、今の二人なら楽勝かな。

 そうなると、僕だけダンジョンに行けないんだけど、その時は薬草採取するしかないよな。


 因みに手直しをした魔法は、ブラッキーさんの場合は火と風の攻撃魔法だけで、ホワイティさんは回復や支援系の魔法だ。

 ホワイティさんが魔力アップや防御魔法をかけ、ブラッキーさんが仕留める。ただ、魔術師二人なので近接戦闘には弱い。だから僕がパーティに入る事で、その弱点を補おうとしてたんだけど、僕がEランクのままだと一緒にダンジョンには行けない。


 悩ましいところだね。

 確かに魔術部門のギルバート統括なら僕をDランクにしてくれそうだけど、僕は武術部門で担当はアルガン統括だからなぁ。

 ……無理かもしれない。



 冒険者ギルドに入ると受付譲のラピリカさんがすっ飛んで来た。


「キズナ様! 今まで何処にいらしてたんですか!」


 何処にって…ずっとこの町にいましたけど。

 というか、何か用があったんだろうか。


「えと、ラピリカさん? どうしたんですか?」

「どうしたのかではありません! すぐにアルガン統括のところへお越しください!」


 え――――、いやだ――――! この剣幕で呼び出されて脳筋統括のところへなんて行きたくなーい!


 助けてくれーと願ってブラッキーさんとホワイティさんに視線を送るが、プイっと視線を逸らされた。

 いやいや、そこは同じパーティメンバーとして助けてくれよ! 君らは年上で先輩だろ? 成人したての俺を見捨てないでくれよ!


 僕の願いは誰にも届かず、ラピリカさんにドナドナされてしまった。



「まぁ座れ」


 統括室に通されて、アルガン統括の一言目がそれだった。

 大人しく座る僕。

 ラピリカさんもそのまま同席するようだ。

 ブラッキーさんとホワイティさんは付いて来てない。薄情な人達だよ。パーティ解散の危機だね。

 あれ? でも、まだパーティ登録してないんだっけ? 魔法の練習が終わったらすると言ってた気がする。


「おい、キズナ。お前、薬草採取はどうなったんだ」


 なんで、薬草採取の事を聞かれるんだろ。


「はい、えーと、初日に行きましたが」

「その後はどうなってる」

「色々と忙しくて行ってません」

「なぜ行かん」

「忙しくて行く暇が無かったんです」

「そうか、ならいつ行く」

「えーと…今のところ行く予定はありません」

「なぜだ」

「その…ダンジョンに行こうかと。あの、僕、パーティを組んでもらって、その人達がダンジョンなら稼げると言うものですから、僕も稼ぎたいですし、ダンジョンに行きたいと思ってるんです」

「ダメだ! そのためにお前をEランクにしたのに、俺の苦労を無にしやがって」


 えっ!? 苦労って…Eランクになったのはアルガンさんの陰謀? 本当は何ランクだったのさ。


「その、僕も稼がないと生きていけないわけで、稼ぐ方法も知らなかったものですから、一緒に依頼を受けたわけで」


 だって薬草採取が常時依頼だとか、お店に直売できるって知らなかったんだから仕方が無かったんだよ。


「なんだ、ハーゲィは一緒じゃなかったのか」

「アルガン統括、ハーゲィ様は“はぐれオーク”の件で活動されてましたので」

「お、あれか。あれはいい仕事だった。だが、薬草採取は一人でも行けるだろ。なぜ行かなかった」

「それはその…薬草採取を常時依頼だと知らなかったもので」

「あん? ハーゲィはそんな事も教えてなかったのか。これはお仕置きが必要だな」

「……ほどほどに願います」


 お仕置きって……ラピリカさんがほどほどにって言うぐらいだし、初めに手合わせをしてる身としては、『頑張れハーゲィさん、生きて帰って来て!』としか言えないよ。


「んで、お前はダンジョンに行きたいってか。どんな奴らと行くんだ」

「ブラッキーさんとホワイティさんに誘われてまして、新パーティ【三叉槍の魔法使いトライデント・マジックマスター】を結成したんです」

「ブラッキー? ホワイティ? そんな奴いたか?」

「アルガン統括……お二人は魔術部門の方達です」


 魔術部門の人達は覚えてないんだね。


「まぁ、お前の実力ならダンジョンに行かせてもいいんだが、お前はEランクだ。まずは実績を積んで貢献度を示さねばならん」


 誰かがEランクって決めちゃったからね。


「ラピリカ、ちょっと調べてやれ」

「畏まりました。キズナ様、冒険者ギルドカードを見せてください」

「はい」


 少しお借りしますね、と言ってラピリカさんは僕の冒険者ギルドカードを受け取り、アルガン統括の執務机にあった水晶で何やらゴソゴソ始めた。

 受付で見せてもらった水晶玉と同じものに見える。ここでも同じ作業ができるみたいだ。


「これは……」

「ん? どうした」

「い、いえ、少しお待ちください」


 ラピリカさんが慌てて紙に何かを書いていた。

 書き終えると、その紙をアルガン統括に手渡した。

 紙と言っても白くないし質も悪そうなやつだ。羊皮紙というやつだろう。

 紙を手渡されたアルガン統括は、サッと目を通すと僕に向かって話し始めた。


「おい、これは本当か!」


 なにが?


「アルガン統括。その言い方では、キズナ様は何の事か分かってないと思いますが」

「む、そうか。キズナ、この短期間にお前は何をやったんだ」


 何を? まぁまぁ色んな事をやったかな? あまり覚えてないけど、最近なら魔法の先生役をやったかな。


「アルガン統括……その言い方では答えようがありません」


 ラピリカさんがフォローに回ってくれた。

 助かります。この脳筋の話は、色んな言語を話せる僕にも全く分からない。これでよく統括ができるなと思ってしまうよ。


「キズナ様、アルガン統括は言葉足らずで分かり難いかと思いますので私が説明します」


 ラピリカさんはアルガン統括から、先ほど渡した羊皮紙を乱暴にひったくるようにして奪うと読み上げていった。


「オーク二四体、バンパイア一一五体、レッドスパイダー八三体、バンパイアロード一体、ホーンラビット一三四体、ビッグラスマウス一〇六体、ゴブリン四四体、他にもスクテイルやダイバーマウス、フォレストキャットなども討伐されています。アルガン統括は、この短期間にどうやってこれだけの数を討伐したのかと言いたかったのです」


 そういう意味だったのか。それを『お前は何をやったんだ』だけでは分からないよ。

 よくこれで統括なんてできるよね。

 でも、なんで討伐の詳細が……そっか、初めに冒険者ギルドカードにカウントされていくので討伐証明はいらないと言われたっけ。

 とすれば、アンダーバットは恐らく数から言ってもバンパイアと表記されてるんだと思うんだけど、止めを刺さなくても討伐数にカウントされるのか。

 だったらバンパイアロードと表記されてるのがバンパイアだから、処分されてしまったんだね。

 今更だけど、超便利な機能付きなカードだったんだな。

 そういや、あの時始祖に何か言われた気がするんだけど……


「あっ!」

「どうかしましたか?」

「あ、い、いえ、何でもありません」


 そうだ! 始祖と話し合おうって約束してたよ。完全に忘れちゃってたな。確か三日後って言ってたな。もう過ぎちゃってるし、向こうももう忘れてるでしょ。

 突然、大声を出してしまったが、何とか誤魔化せたかな? ラピリカさんは訝しげな視線で見てくるけど、アラガンさんは関係ないって顔してるもんな。


「気になりますが、まぁいいでしょう。アルガン統括、キズナ様はDランク試験の資格を十分にクリアしてると思われますが、如何致しましょう」

「別にいいんじゃねーか? 試験もいらねぇよ、こいつの実力は分かってるからな。それより、だ。キズナ、お前この倒した魔物はどうした」

「どうしたって言われましても、そのままですが」


 オークとアンダーバットとレッドスパイダーはスランチ達やカゲールくんに『クロスオーバー』の世界に持って帰ってもらったし、他もブラッキーさん達と一緒の時の分は、持てる分は持ち帰ったけど現場で燃やしたものも多かったからね。


「バッカ野郎! なんて勿体無い事してやがるんだ! そんな時は冒険者ギルドで依頼をかけて運び屋を雇うんだ! ハーゲィの野郎はそんな事も教えてないのか」


 すいません、聞いてませんでした。というか、ハーゲィさんは僕がオークやアンダーバットを倒した事を知らないからね。

お仕置き時間の延長だ! って言ってるよ。

 ゴメンね、ハーゲィさん。これも、便利機能付きの冒険者ギルドカードのせいなんだよ? 僕のせいじゃないからね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ