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第02話 残った二人の会話


「んもう! マリア様ったら、あんな説明だと全然伝わってませんよ」

「あれぐらいでいいのよ、本当の事を言ったら修行にならないじゃない」

「それでも、さっきのは酷すぎます。キズナ様、今頃泣いてますよ」

「まぁ! それは大変! じゃあ、私が行って説明を……」

「ダメです!」

「やっぱり? でも、今のキズナが初心者や最下位ってのは本当よ」

「もちろんそうですが、そのために基礎ステータスを上げたのではないですか」

「そうよ、レベル1の今のキズナの基礎ステータスは一般人の百倍はあるかしら。レベルが上がる毎のアップ率はレベル1の基礎ステータスが高ければ高いほど、次のレベルになった時にステータスが凄く上がるものね。だから、私も心を鬼にしてキズナを鍛えたのよ」

「はい、わかってます。それに先日キズナ様には、レベルアップ超上昇補正も授けられましたものね」


 二人の会話を纏めると、例えばレベル1でHP15だった場合、レベル2になった時には大幅に上がったとしてHP20前後だ。

 だが、レベル1の時にHPが150あったとしたら、レベル2では200前後になるという事だ。

 レベルが一つ上がった時に5上がるのか、50上がるのか。この差は非常に大きい。

 しかもレベルアップ補正で通常の10倍のアップ率があるキズナは、レベルが1から2になった時にHP500上がる計算になる。

 比較対象として分かりやすくHP150を例に出したが、現在のキズナのHPはレベル1にも関わらず、HP588。一般成人のレベル1時のHPが20にも満たない事を思えば、超人と言ってもいいだろう。


 しかも、レベルアップに必要な経験値が通常の1/10。

 一般人が10回の戦闘で得る経験値が1回で済むのだ。キズナはどんどんレベルアップして行くことだろう。


 これも、マリアの超過保護とスパルタの結晶だった。

 もう初期値だけでも十分なのだが、レベルアップ補正の為、多種多様の種族のいるこの世界の最上位種達に、あらゆる加護を付けさせたマリアの仕業でこうなってしまった。もちろん最後にはマリア自身も加護を与えている。ようするに、どこまでも過保護なマリアが招いた結果だったのだ。

 それを最弱だの雑魚だの言うマリアがおかしいのだが、それに同意するジェミーもキズナにはかなり甘かったのである。


「キズナ様の職業ジョブをどうして『スライム戦士』とされたのですか?」

 『スライム戦士』の意味がよく分からないジェミーが尋ねた。


「あら、ジェミーは知らなかったのね。キズナは職業ジョブは元からスライム戦士だったのよ? スライムって何でも吸収するでしょ? それと同じ。『スライム戦士』とはね、何とでも『合体ユニオン』できちゃう称号なの。逆に言えば『スライム戦士』しか【ユニオン】は使えないの。しかも、合体中の相手の分まで経験値にしちゃう称号なのよ。そう! 素晴らしい称号なの! けっしてタマネギ的なアレじゃないのよ!」


 ドヤ顔で饒舌に説明するマリア。キズナから聞いた事のあるタマネギ的な最弱剣士では無いと声を大にして主張した。


「何とでも? どんな種族の者ともですか? しかも、相手の分まで? ですか?」

「そう! 合体した相手パートナーの分まで取っちゃうの! だから一度の戦闘で二人分の経験値を貰っちゃうのよ! それとジェミー、あなた合体できるのはどんな魔物や精霊とでもって思ってるでしょ」

「違うのですか?」

「ええ違うわ! もう何とでもよ!」

「何とでも……よく分かりません」


 更にドヤ顔で胸を張るマリアの回答に困惑するジェミー。そんなジェミーを置き去りにして独り言ちるマリア。


「戻って来る力を溜めるには、何度も何度もこれでもかってぐらいユニークスキル『クロスオーバー』を使わないといけないものね」

「それは知っています。だから、色んな事を経験させていましたもの。本当、色々すぎてひとつの事を極められませんでしたが」


 マリアの独り言に同意して今までの事を振り返るジェミー。


「喚べる種類は多い方がいいでしょ? キズナは元々調教師テイマーの素質を持ってたもの」

調教師テイマーですか……あれを調教師テイマーと呼んでしまうのは、本職の方に申し訳ないレベルでしたが」

「それは仕方ないでしょ、だってキズナだもん。皆、キズナの愛らしさにやられちゃうのよ」

「ソウデスネ」


 いつもの親バカ節が延々と続くかと覚悟を決めたジェミーだったが、本筋の話を続けたマリアに少し拍子抜けした。


「それに【クロスオーバー】と【ユニオン】があるからキズナ自身は強くなれなくてもいいものね」

「少しは大人になられたのですね」


 何歳…というか、何万歳、いや何億歳ともしれないマリアに向かって気の長いジェミーのセリフだった。


「何か言った?」

「いえ、あ、はい、それは勿論そうなのですが、キズナ様自身が強くなってしまっては喚ばなくなってしまうのではないかと思うのですが。初めはそれ程では無いと思いますが、レベルアップ補正が酷い事になってましたし」

「あ……」

「……はぁ…そこまで考えてはいらっしゃらなかったのですね」


 マリアの凡ミスに呆れて溜息をつくジェミー。だが、何とか誤魔化しきれたと心の中ではほくそ笑んでいた。


「そ、そ、そんなはずがないでしょ。ちゃ、ちゃんと考えてたわ。だから称号を『スライム戦士』にしたんだもの。【クロスオーバー】で召喚した場合でもカウント補正が付くんだから」

「そこも…でしたか……」


 慌てて言い訳をしたマリアだったが、更なる過保護が発覚し、既に呆れを通り越えたジェミー。


 召喚スキル【クロスオーバー】でこちらの世界から召喚するほど短剣に力が宿り、短剣が長剣となって行くのだが、そうする事で短剣が力を溜め、この世界に戻る力を得られるようになる。

その力の修得率にまで上昇補正を加えている事を知り、あまりに過保護がすぎるマリアに、もう何も言えないジェミーだった。


「…ええ……だってキズナには早く強くなって帰って来て欲しかったのよ! キズナが怪我をする姿なんて考えられないわ! あなたも無事に帰って来てほしいと思うでしょ!?」

「それは勿論そうなのですが、キズナ様を予定通りあの世界に送ったのですよね?」

「ええ、そうよ」

「では、尚更自力で戦われるのではないでしょうか」

「……そ、そうかもしれないわね……はぁ…」


 ガックリと落ち込むマリアの横で、キズナに同情するジェミーだった。

 しかし、マリアの心配な気持ちも分かるジェミーは、早く力を溜めて無事にキズナが戻って来てくれるように願うしかなかった。



 そんな二人の会話であったが、トータルすると『スライム戦士』と雑魚っぽい称号は付けたが、マリアの超過保護によりキズナをパワーアップさせすぎてチートキャラを作り上げてしまった。という事のようだ。

 そんな事を知る由もないキズナは【鑑定】能力も持たず自分の能力を確かめるすべもない。

 それでいて、『面倒事には率先して首を突っ込め』とマリアが助言してしまっている。

 そんな助言はしなくとも、十五歳の若造が力を見せれば面倒事、厄介事には普通に巻き込まれるだろうが、マリアの助言で更に面倒事、厄介事に関わって行くだろう。

 キズナの未来は明るいのだろうか。『クロスオーバー』の世界に帰って来れる日は来るのだろうか。


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