第109話 廃城の主
いつも誤字報告ありがとうございます。
譲⇒嬢。ビックリするほどありましたね。すみませんでした。
61話以降も幾つかあったので訂正しました。
ありがとうございました。いつも助かってます。
城に足を踏み入れた瞬間、僕らを閉じ込めるように上から分厚い鉄製の扉が落ちてきた。
まだ先頭の僕が一歩城内に足を踏み入れただけだ。セーさんやハナノエさんはまだ扉より外にいる。
大きな開きドアは木製だったのに、上から落ちてくる扉は鉄製だ。
というか、これって僕は中に入れるけど、二番目のセーさんや最後尾のハナノエさんは入れないかもしれない。
それぐらいの勢いで扉が落ちてきた。
ガッキィィィィィィン!!
あのままだとセーさんが何とか入れても、ハナノエさんが外に残されるか扉に押しつぶされるかのタイミングだったので、スラ五郎をつっかえ棒にして扉を受け止めた。
さすが八角鉄棍スラ五郎! 素材もそうだが圧縮率が半端無い!
凄く重そうな鉄扉でも曲がる事無く受け止めていた。
「今の内に入って!」
「すまんの」
「……ありがとう」
二人が入るのを待って、スラ五郎を引き抜いた。
ズズーン! と地響きを立てて扉が下まで落ちた。
「……閉じ込められた」
「ふむ、ここに同胞の気配は無いの」
う~ん、セーさんから自分は役立たず宣言されてしまった。ハナノエさんのテンションも低い。
いきなり罠に嵌まってしまったんだから、そうなるか。
セーさんの言う同胞とは植物の事だろうね。普通、廃墟だったら蔦などで覆われてたりする場合もあるけど、ここには一切の植物が見当たらない。
「どうする? たぶん、今なら扉をなんとかして出られると思うけど」
たぶん僕なら何とかできると思う。
「いんや、先へ行きたいの。奥の方から古い知り合いに似た気配がするでの」
「……キズナに付いて行く。そこが一番安全」
古い知り合い? 世界樹関係? それとも精霊関係? 僕も魔素を介して奥を探ってみるが、仕切りのようなもので分断されてるようで途中までしか分からない。
それとハナノエさん…買い被りすぎだ。僕の傍でも城内だと危険だと思うよ。
ハナノエさんが罠を発動させてしまったら助けが遅れる可能性もあるのだから。
そう思って、進行方向を探ってみる。
罠探知や魔素探知や気配探知で順に調べる。同時発動もできなくはないけど、罠が多すぎたので確実を期するために別々に探知をした。
「……やっと」
「これは儂も堪えたの」
「確かに多すぎだね」
鉄扉が閉められ閉じ込められた入り口からここまで角を一度曲がっただけ。
閉じ込められた扉から直線で二〇〇メートル以上ありそうな真っ直ぐな通路から、一〇〇メートルほどの所で右折をしてそのまま真っ直ぐ来ただけ。
通路が長いので移動距離としては二〇〇メートル近くあったが、それでも見通しの良い廊下だ。
そこに詰め込むだけ詰め込んだ罠が満載。正に罠祭りだった。
たかが二〇〇メートルに掛かった時間はおよそ二時間。だけど、精神的に来るので体感的にはもっと掛かった気がする。
気の長いセーさんでさえ弱音を吐く始末だ。
僕? 僕はもっと極悪な罠を何度も体験してるからね。これぐらいじゃ参らないよ。
初めの内は警戒しててもハナノエさんが何度も罠を発動させていた。
そのハナノエさんのせいで目立ちはしなかったが、セーさんも何度か罠を発動させた。
一歩進む間に二重三重の罠が仕掛けてあるんだ。
罠の解除係は僕なんだけど、僕が罠解除してる間にゴーレムがチャチャ入れしてきて罠を発動させたり、それを防ごうとして罠を発動させたりもあった。
その都度、発動された罠を防ぐのに気を使ったり、罠解除の間も気を張り詰めて警戒していた。
二時間もそんな状態が続けば誰だって精神的に参る。
罠の効果も極悪だったしね。ハナノエさんもよくゴールできたと思うよ。
まだゴールじゃないんだけどね。
そう、ここからがスタートだ。第二ラウンド開始ってとこか。
「セーさん?」
「うむ、ここだの。ここまで近づけば間違いなさそうだの」
「この気配は僕も知ってる。本当にセーさんの知り合いなの? なんか全然共通点が無さそうなんだけど」
「キズナも知っとるのかの。色々と経験しとるんだの」
僕は殺気には敏感なんだよ。
「まぁ、確かに経験は色々としてるね。それで、この強烈な殺気は悪魔でしょ?」
「当たりだの。昔、世界樹が勇者に協力せぬよう、茶々入れしてきた魔王がおるんだの。その時の使いの悪魔に気配が非常に似とる。四天王最強だと自負しておったがあの程度の実力では使いっ走りがいいとこだの。実際、使いっ走りに来ておったようだしの」
自称四天王最強……セーさんの言う通り使いっぱしりだったら最弱なのかもね。他の四天王から『彼奴は四天王最弱!』とか言われてんのかも。
「ここまで来たら行くしかないんだけど、これだけの殺気を放つ奴って事は話し合いは通じない?」
さすがにここから入り口まで戻るという選択肢は無い。二人も同意だと思う。
「彼奴は元々話を聞かん奴だったでの、無理かもしれんの」
「だったらやっぱり戦闘になる?」
「なるだろうの。使者として来た時もそうだったでの」
「その時はどうしたの?」
「叩きのめしてやったかの。だが、この気配を見るに、あの頃の数倍は強くなっとるようだの。それに、ここは同族もおらんし儂の使えそうな魔素も少ない。やはりキズナに任せるしかないかの」
それはいいんだけど、やっぱり戦闘になるのか。
自信無さ気なコメントだけど、セーさんも負ける気は無さそうだ。ただ、ハナノエさんがいるので、戦闘は僕に任せてハナノエさんを護るつもりなんだろう。
セーさんから漏れ出る魔素が増えたのがいい証拠だよ。ここまでも何だかんだ言ってハナノエさんのフォローをしてたもんね。
「じゃあ、僕が前に出て戦うから守りは任せるよ」
「うむ、任せるのだの」
「倒してしまっていいんだよね?」
「もちろんだの。奴らは精神生命体だでの、この世界で倒されても悪魔界に戻るだけ。受肉しておってもそれは変わらんが、ここに居座っておるところを見ると受肉しておらんのかもしれんの」
何故悪魔が古代都市遺跡にいるのかは知らないけど、最奥でボスとして存在するなら倒すしかない。
話し合いで終わるんならそれでもいいんだけど、セーさんの情報だとそれも難しそうだ。
何より、この古代都市遺跡がその悪魔のせいで滅びたとか、今も攻略できないのは悪魔のせいだったりするんなら排除した方がいいに決まってる。
罠を警戒しつつ、周囲にも気を配りながら最奥の扉を開けた。
そこは広々とした空間で、意外にも天井が綺麗なまま存在していた。
朽ち果てた外観からは想像ができないほど、豪奢な絨毯やカーテンなどがあった。
ここは謁見の間だったんだろうと、すぐに予想がついた。
中央には真っ赤な絨毯が敷き詰められていて、両サイドには一段高くなった傍聴席がある。今は誰も座ってないけど、当時は貴族がいて野次を飛ばしたりしてたんだろうね。
傍聴席前には近衛兵がズラズラーっと並んでいて、正面の玉座には王様やお后様が座ってたんだろうな。
今は二本角の生えた悪魔が座ってるけどね。
「おお! 誰かと思えば世界樹の爺ぃじゃねーか! まだ生きてたのかよ! で、何しに来た。魔王様の配下にでもなりたくなったか!」
僕達が入った途端、悪魔が大声で語りかけて来た。
受肉は…してないね。なら、さっさと悪魔界へ帰ればいいのに、誰もいない廃城で何してるんだろ。
やろうと思えばゴーレムにでも憑依して受肉できるはずなんだけど。
「あの、あなたは何故ここにいるんですか?」
一番の疑問点を聞いてみた。もし、帰りたくても帰れないようなら手伝ってあげようと思ったからだ。
それなら無難に解決できるし、もし罠の作動をここから操作してるのなら辞めさせる事もできるからだ。
「あ~ん? 誰だお前は。なに勝手に聞いてんだ? 俺は王だぞ! 跪けぇ!」
「え? 王? あなたは魔王なんですか?」
「魔王~? 魔王か、それもいいかもしれねぇ。よし! 今日から俺は魔王だ! 全員俺の前に跪くのだー!」
「「「……」」」
質問したのは僕だけど、魔王って言ったら魔物達を統べる王か、悪魔達の頂点の事を魔王と呼ぶんだけど、あなた四天王最弱の使いっ走りってセーさんが言ってたよ? 魔王なんて名乗ったら他の四天王からお仕置きされちゃう未来が待ってませんか?
しかも、今思いついた的な感じで言ってるし、ずっとここでボッチだったんだから配下なんていないでしょ? どの種族の王なの?
「魔王、なんですね? 本当に魔王でいいんですね?」
「うっ……ちょ、ちょっと待て。魔王を名乗るのはやっぱり辞めよう。四天王筆頭…いや、影番的なやつがいいな。よし! 今日からこのガミジン様は四天王を影から操る裏魔王だ! 裏だから逆さから読んでウオマだな」
後が怖いから辞めようって聞こえた気がするけど、それなら影番を名乗るのもヤバいんじゃないの?
しかもウオマって……誰にも伝わらねーわ。だからいいの、か?
「裏から操れるほどの実力者なんですか? しかも優秀な頭脳を持ってると」
絶対にありえないと思う。一応【鑑定】もしてみた。
ガミジン LV50
武技:パンチ、キック
魔法適正:闇
技能:痛覚鈍化
ユニークスキル:―――
HP 17200 MP 200
STR(体力):666
ATK(攻撃力):680
DEF(防御力):555
INT(知力:魔攻):30
AGL(敏捷性):310
MPR(魔防):80
称号:四天王(最弱)
加護:―――
ユニークスキルは持ってないしスキルだって【痛覚鈍化】しか持ってない。悪魔の特製である闇魔法が使えるぐらいで、武技だってパンチとキックだけ。
まだ技になる前の状態じゃん! そんなん誰でもすぐ身に付くって!
しかも知力、低っ! 謀略なんて絶対できない脳筋野郎じゃん! 裏番とか無理ゲーっしょ!
称号は四天王だけど、やっぱ最弱ってなってんし、加護だって持ってないじゃん!
四天王なら魔王の加護ぐらい持っとけよ!
HPだけ無駄に高い、脳筋バカじゃん! どこにセーさんが苦戦する要素があるんだよ!
「此奴は人の話を聞かんのだの。しかも叫びながらどんどん前に突っ込んでくる。意外とパンチやキックも破壊力があっての。何発か食らっただけだが、結構効くんだの。まぁ、その時は滅ぼして悪魔界へ帰したんだが、またこっちに来ておったようだの」
戦うと鬱陶しい奴なんだの、と語るセーさん。こちらが攻撃しても効いてるにも関わらずどんどん前に出てきて攻撃をしてくる。ノーガードの打ち合い希望者。
本当に面倒くさそうだ。
ステータスはどっこいだけど、ハナノエさんとは相性が悪そうだね。
痛覚の鈍い無謀な特攻野郎ね。少し話しただけで大体分かってたけどね。獣人達と同じ匂いがしたもん。
「じゃあ、敵認定なんで滅ぼしますね」
「なっ!?」
話してても会話にならなさそうなので、精神生命体の悪魔が苦手な魔法で対処しよう。
物理攻撃は無効だろうから、悪魔の苦手な魔法といえば『光』か『聖』属性だね。
『闇』も有効だろうけど、一応適正を持ってるから軽減されるだろうから『光』か『聖』がいいだろう。
という事で、【聖光】を悪魔の頭上に出し、煌々と照らしてやった。
癒しの効果のある聖なる光だ。
こっちの世界の人には、魔物も含めて癒し以外の効果は無いんだけど、受肉していない悪魔に対しては効果が絶大だ。
ガミジンは「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と叫び声を上げながら数秒で消滅してしまった。
「……眩しい」
「心地よい光だの。また頼むとするかの」
聖光だからね。世界樹の精であるセーさんには気持ちいい光みたいだけど、ハナノエさんには不評みたいだ。
「あれ? これって……」
四天王最弱悪魔のガミジンが消えた玉座を見ると、大きな魔法陣が描かれていた。
「ほぅ、その魔法陣で召喚されたようだの。人族は何を考えとるんだか」
こんな魔法陣で召喚できたの? 色々と欠落があるように思えるんだけど、召喚のためのエネルギーを補うために都市が滅んだとか?
しかも欠落が多すぎて受肉に足るエネルギーが確保できなかったと予想できるか。
これならこことここと描き替えて、ここを削ってこことここに魔力を吸収する魔法陣を加えて、こことここを繋いだらもっと効率のいい魔法陣になるじゃん。
ちょっと試しにやってみよう。
魔法陣に手を加えて、魔力供給に先日獲った【暴風雪龍】の魔石を置いた。
初めは僕の魔力を通すけど、足りなかった場合の補助のために置いてみた。
そういう風に魔法陣も描き替えてしまったので置かないと発動しないので仕方が無い。
予想では【暴風雪龍】の魔石だけで足りそうだけど、僕の魔力の方が断然多いから初めだけでも僕の魔力で補う事にした。
【召喚(悪魔)】
「カッカッカッカッ! 久し振りの現界だぜ! 質、量ともに中々の魔力だったな。何万人の生贄を用意したのかは知らねぇが、少しは話を聞いてやるぜ。誰が俺様を召喚……ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
魔法陣は正解だったようで、一体の悪魔が召喚された。
結構ノリのいい奴だったみたいで、色々と情報を吐き出した後、まだ玉座の上で輝いている【聖光】に照らされて消滅して行った。
「「「……」」」
三人で呆然と悪魔の召喚と消滅を眺めていたが、意外にも一番にハナノエさんが口を開いた。
「……今の、なに?」
「悪魔…かな?」
「……悪魔? もういないの?」
「うん、さっきいた悪魔同様、消滅したみたいだね」
「……その眩しいので?」
「【聖光】ね。これが効くって事は悪魔で間違いないよ。魔法陣も悪魔召喚のものだし」
「……そう」
ハナノエさんは信じてくれたみたいだ。
「あれ? これってレベリングにいいんじゃない?」
「……あ、レベル上がってる」
「これなら僕の魔力を少し消費するだけで簡単に悪魔を倒せるじゃん!」
【聖光】を出した状態で悪魔召喚をすれば、勝手に現れて勝手に消滅して行く。
いいじゃんいいじゃん! めっちゃ楽じゃん!
「鬼だの……」
そんなセーさんの非難の声は無視して悪魔召喚を何度も続けた結果、ハナノエさんのレベルが95まで到達した。
レベル100を超える日も近そうだ。
ハナノエさんって限界突破みたいなスキルや称号を持ってないけど、99で打ち止めじゃないよね?
なんとか今週は乗り切れました。




