第108話 古代都市
いつも誤字報告ありがとうございます
セーさんの予告通り、氷山はさっさと終わらせた。『氷結鳥』と『暴風雪龍』の両方共にだ。
氷山と聞いて氷の塊だと思ってたが、セーさんの言う氷山は年中氷に閉ざされた、ただ寒いだけの山だった。
もちろん魔物も生息していて、例の如く山の麓の樹のある場所までセーさんが転移で連れて行ってくれて、そこからは徒歩だったのだが、魔物退治は全部ハナノエさんと烈風鳳凰でやってくれた。
主に烈風鳳凰で倒すようにして、烈風鳳凰に多く経験値が入るように倒していた。
僕の場合は加護があるので、パーティ全員に経験値が行き渡るようになるんだけど、それでも止めを刺した者には多少多く経験値が入るようだ。
それで、一発目の『氷結鳥』との対決に着く頃には烈風鳳凰のレベルが47まで上がっていて、レベル38だった『氷結鳥』を簡単に倒してしまった。
戦法としては、召喚しては最大火力。そして送還しては再召喚しての最大火力でゴリ押しで倒してしまった。
隣の氷山にいた『暴風雪龍』に対しても同じ戦法で倒し、烈風鳳凰のレベルは51になった。
そして運の良い事に、『氷結鳥』がまた呼子を落とした。もはや強運を通り越して豪運と言ってもいいかもしれない。
『暴風雪龍』の戦利品は魔石だけだったが、『氷結鳥』の落とした『氷結鳥の呼子』は、よりハナノエさんの戦略の幅を拡げてくれるだろう。
今は火山の麓に着いて夜営の準備中だが、ハナノエさんは『氷結鳥』のレベル上げに勤しんでいた。
夕食までは少し時間があるので、本日の戦利品である魔物の解体をして時間を潰した。
とは言っても、氷山での戦闘はほとんどが烈風鳳凰のファイアブレスで倒したので、焦がしたり溶かしてしまって解体できるものは少なかった。
あと、『氷結鳥』と『暴風雪龍』はパーティで倒したとカウントされたみたいで、僕の召喚リスト入りも果たしていた。
「明日は『溶岩龍』だの。それまでに『氷結鳥』は間に合わんだろうの」
だろうね。頑張ってもレベル20を超えればいいとこだろう。
予想では『溶岩龍』も『氷結鳥』LV41と『暴風雪龍』LV45と同じぐらいだと見ている。
炎と氷だと炎の方に軍配が上がるのは、今回の烈風鳳凰の活躍でも分かる。
溶岩が炎の上位互換だと考えれば、『氷結鳥』のレベルとしては最低でもレベル50は欲しいところだ。
同程度のレベルだと氷など溶岩で簡単に溶かされてしまうだろう。
しかし、レベル10違えば強さもワンランク上がる。そうすれば実力も均衡するだろうが、それでもまだ足りないと思う。烈風鳳凰で護って『氷結鳥』で攻撃する。
これなら何とかなるかもしれない。
とはいえ、別に無理をする場面でもない。セーさんも樹の精霊だから火系には弱いだろうから、ここは僕が何とかするべきだろう。
「主まではハナノエさんと烈風鳳凰が主体となって『氷結鳥』のレベリングにしよう。主である溶岩龍にはちょっと分が悪そうなんで、僕が主体でやるから」
「……くやしいけど納得」
「そうだの、ここはキズナに任すべきだろうの」
セーさんは元々僕に任せる予定だったみたいだけど、ハナノエさんは悔しそうだった。
ここまで飛躍的に実力を伸ばしてきて、更に一段も二段も底上げのできる武器を手にしたのだ。欲が無いと言う方が嘘だ。
それでも第三者的目線で、今の自分達の実力を把握できている。
やっぱりハナノエさんは凄い才能の持ち主だと思った。
朝から火山に登って昼には『溶岩龍』を倒してしまった。
今回は八角鉄棍スラ五郎で『溶岩龍』の喉を一突きで終わった。
予定通りハナノエさんは山頂までレベリングをしてレベル88まで延ばしていたし、烈風鳳凰はLV46、『氷結鳥』はLV31にまでなった。
セーさんは何もしてないけどパーティ分けの経験値が入り少しだがレベルを上げている。
セーさんの場合は移動で非常に貢献してもらってるからね。全く問題ない。
今回の『溶岩龍』はそのまま死骸を収納バッグに収めた。烈風鳳凰も持っている。
どっちも魔石だけは抜き取ったけどね。
残念ながら『氷結鳥』と『暴風雪龍』は魔石しか無いが、今回のSランク依頼のリストの中には無かったからいいだろう。
さて、次だね。
「やっぱり遺跡の古代都市コナムに行くの?」
「そうだの。儂も知らん場所だ。興味はあるの」
「……どっちでもいい」
「罠ばかりが多くて、あんまり経験値は美味しく無さそうな気がするんだよね」
「……やめよう」
「いやいや、今の儂らは冒険者だ。そういう経験はしておくべきであろう。それにの、ゴーレムが多くいそうでの。キズナは興味がないかの? ゴーレムの召喚などどうだの」
あ、それいいかも! 確かに試してみる価値があるかも。
いいね、いいね。ゴーレム召喚! 格好いいかも!
「ハナノエも。ここまでキズナや儂におんぶにダッコだ。偶には付き合え」
「……わかった」
何やら二人で合意したようだが、僕も異存は無い。
だってさ、ゴーレムだよ?
【召喚】ゴーレム! 集合、合体!
ロケットパーンチ! フィンガービーム! アイレーザー! ドリルアーム! コールドブレース! 各パーツに分離! そのまま個別変形!
他にも異次元潜行! とか、亜光速飛行とか…夢が広がりまくりだ!
どこからどう考えても格好いい……うん、いい。個別変形からのトランスフォーム的な感じでもいいな。
「そろそろいいかの」
「……まだ行かない?」
「え……?」
「もう着いとるんだがの」
「……キズナの妄想……悪くない」
ゴーレムの可能性を大妄想している間に、目的地に着いていたみたいだ。
「キズナが罠もあると言っていたのでな、少し離れた場所にしたのだの」
古代都市コナムの近くまで、セーさんがいつもの如く転送してくれたみたい。
確かに一瞬だからね。妄想する間に着いちゃうか。
「ごめん、着いてたんだね。それで、どう? ゴーレムいる?」
「……よほどゴーレムが気にいったんだの。普通は罠を聞いてくると思うがの」
「……キズナの意外な面が見れた。まんぞく」
ゴーレムフェチとまでは行かないけど、ゴーレムって色んな想像が出来て素晴らしいと思うのは僕だけなんだろうか。
セーさんにもハナノエさんにも理解はしてもらえないようだ。
凄いのを倒して召喚して見せてあげれば、少しは僕のこの気持ちも理解してくれるんじゃないか? うん、きっとそうだ! やってやるぜー!
周囲を警戒しながら古代都市の門であったであろう場所までやって来た。
石壁であったと思われる残骸があるし、地面も雑草があまり無いため石畳だった名残が見受けられる。ここが町の境界線だと思う。
ここまでは罠もなかったし、魔物にもゴーレムにも出会わなかった。
ここからが本番だな。
「ふむ…動く者はおらんの。こちらが近付けば動くのかの」
「……【鑑定】でもゴーレムはいない」
セーさんはある程度魔素での探索もできるようだけど、今はいつも通り周囲の植物を介して見てるんだろう。ここにも僅かながら雑草は生えてるからね。
ハナノエさんは【鑑定】なんだ。確かに鑑定して『ゴーレム』って出れば、そいつは正しくゴーレムだからね。
でも、全部を鑑定するの? 無駄が多すぎるよ。
それとも『全体鑑定』みたいな便利なスキルを……持ってないみたいだね。
「二人ともゴーレムを見つけるのは難しい?」
「ここには眷属が少ないでの」
「……むぅ、どれ?」
セーさんはやっぱり植物が少ないので厳しいみたいだ。
ハナノエさんのは、どれを【鑑定】すればいいのか分からないってとこかな。だって、普段から『家』とか『椅子』とか身の回りにあるものって【鑑定】しないもんね。しかも残骸とは言っても沢山あるし、ハナノエさんも厳しそうだ。
「なら僕が先頭だね。ようやく周囲の魔素での応用に慣れて来たから、ここぐらいの魔素濃度があれば小さなものでも見つけられそうだよ」
「むむ……」
「……むぅ」
なんで二人とも悔しがるかな。そこは「任せた」って言ってくれればいいんじゃないの?
でも、ここって意外と魔素濃度が高いんだよ。
魔の森には全然及ばないけど、町の中の倍ぐらいある。
これだけあれば魔素を辿ったり操ったりして色んな事ができそうだ。
『探知』に関しては問題ない。この古代都市コナムの中央辺りにある城までは罠は無い。
周辺に魔素を内包してる塊がある。ゴーレムの可能性が高いから、そこは警戒しないといけないだろう。
「あれが城かな?」
「……ぼろぼろ」
「ボロだがまだ棲めそうだの。魔素濃度も高そうだしの」
セーさんはあのボロ城に住めるのか。僕達の住むって意味じゃないのかもしれないけど。
「魔素が分かるセーさんなら何がいるのか分からない?」
「無理だの。魔素は普段から流動的だしの。濃さが分かる程度だの。だが、あの廃墟の城が目的地だというのは間違いないだろうの」
そうか。やっぱり危機管理は僕が先頭に立ってやらないといけないな。
古代都市に入ってからこの城の廃墟までも何も無かった。
でも、この白地な石の門兵は分かり易すぎ? 逆に何も起こらないのかな?
だって、城門の壁はボロボロなのに門柱だけが健在で、その門柱の影に等身大の石の兵士がいるんだよ? おかしいでしょ!
「……」
「……」
「……」
「もう先制攻撃でいい?」
「それは可哀想ではないかの」
「……かわいそう」
石の作り物の何が可哀想なの? 仕込みが無かった事にされるのが可哀想って意味?
そんな理由で先制攻撃される僕は可哀想じゃないのかな?
どっちにしても召喚の素材にするには倒さなきゃなんないんだ。ちゃっちゃと倒しちゃおう。
徐にスラ五郎を出して突く。たぶん、魔素の濃い部分が一箇所あるのでそこが弱点だろう。
こういう時って魔素が目視できるって便利だ。
起動前だからか、一点にしか魔素が見えない。
個体差があって胸だったり喉だったり額だったりするけど、見える位置にいる石像の兵隊は全て倒した。
一点を突くだけで身体の形態を維持できなくなるようで、ボロボロと崩れてただの石の残骸に成り果てた。
「無慈悲だの」
「……極悪」
いやいやいやいや、やっぱりゴーレムだったじゃない! 先制攻撃でいいじゃない! 奴ら生き物でもないし!
城門跡から城に向かうと、城の周辺にいたと思われるゴーレムが続々と現れた。
形も大きさもバラバラで、犬型や猫型から馬型や熊型なんてものもいる。人型もいて、金属の武器をもっているものまでいる。
「【促成】、茨」
ピーヒョロヒョロヒョロヒョロ~
セーさんが茨で周囲を囲み、ハナノエさんが呼子を吹く。
セーさんは花や樹の種を幾つか常備してるみたいで、その種を蒔いた後、【促成】スキルを使ったようだ。
ハナノエさんは二つある呼子の内『鳳凰の呼子』を使ったようで、烈風鳳凰が召喚されていた。
僕? 僕は召喚するまでもなく、僕に憑いていた妖精達が大活躍してるよ。
ホント、最近日替わりで三人はいるから、こういう時って率先して戦いに参加してくるんだよ。
相手はできないよって言ってんのに喚ばないと怒るしさ。だからと言って相手をしないと怒るってのが定番なんだけど、それはないんだ。
だから放置でいいんだけど、こういう時は参加して来るんだよね。
今はピッピとカゲールくんとノムヤンの三人。
それにしてもみんな強くなったよね。相手がゴーレムだから一点突破の攻撃が超有効なのは分かるんだけど、みんな的確にゴーレムを葬っていくよ。
ま、相手からは見えないんだから攻撃し放題ではあるんだけどね。
僕も負けずに後方に控えてるちょっと格好いいかんじの奴らを相手にするかな。
人型なんだけど、なんか滑らかなシルエットのゴーレムが五〇体ぐらい城の入り口扉に集まって来て固まってるんだ。
魔素の感じを見る限りゴーレムだと思うんだけど、他のゴーレムより魔素が多めだし、上位版って感じの奴らなんだ。
さて、やっぱりスラ五郎かな? いや、偶には魔法もいいね。土ってより金属って感じのゴーレムだから雷魔法かな。
【雷の雨】
上空より数十条の雷を落とし、上位版ゴーレムを屠る。
周囲の雑魚ゴーレムは、苦戦する事無く仲間に葬られていく。
茨からは何十本の蔓が伸びゴーレムに突き刺さる。突き刺さっただけでは終わらず、そこから更に棘が伸びる。
敵に回すと厄介この上ない攻撃だ。
烈風鳳凰は当然『炎の息吹』かと思いきや、二本の脚で一体ずつゴーレムを掴み、上空へ飛んで他のゴーレムにぶつけて倒している。
なるべく大きめのゴーレムを選んで掴んでるのは、その方が落とした時の拡大被害を狙っての事なんだろう。上空でゴーレムを離すと同時に羽で暴風を起こしているので効率のいい攻撃を考えての行動であってると思う。
召喚主であるハナノエさんはセーさんが出した茨の内側で護られている。もうある程度の指示で判断できるぐらい烈風鳳凰も育ったようだ。
数十分で城門から内側の城外部分のゴーレムは全て倒した。周囲は岩や土や金属の山がそこここに出来ている。
特に酷いのが城の入り口前と、セーさん達がいた門柱の傍だ。
僕の倒した入り口前は、ほぼ金属の山だったのでそのまま収納バッグに収めた。
しかし、罠も無く、ゴーレムの攻撃で魔法攻撃は無かった。中距離攻撃といえば弓を持つゴーレムが数体いただけだ。
この程度だったら、国や軍を滅ぼすほどではないのでは?
「……キズナは甘い」
「キズナよ、先日の戦争を見たであろう。人族の戦力などあの程度のものよ。キズナの眷属の働きと勇者の間引きが無ければ結果は逆になってたであろうの」
そうだった。初めはバンさんが無双できていて、そのバンさんを勇者ワタルが倒して、その勇者ワタルはメタスランがおびき出したら、ブラッキーさん達の活躍で一方的だったね。
イダジュウさんの撹乱とシールダーさんの分断があったからとはいえ、あまりにも脆いと思った。
逆に、その手助けが無く勇者ワタルがいなければ均衡した戦力だったと思う。
あの戦力がここに来たとして……無理だね。初めのゴーレム群も突破できそうもない。
しかもここからが本番なら、更に相手側の戦力も上がる。幾人かのAクラスレベル(先日までのハナノエさん程度)がいて運良く城にも辿り着けたとしても厳しい状況しか思い浮かばない。
どう贔屓目に見ても城に入った途端に全滅しか無さそうだ。
Sランククラス(現在の呼子を使ったハナノエさん程度)が数人いたとすればどうだろう。
城までは辿り着けるだろうが、その後はどうだろう。
外より弱いという事は無いだろうから、やっぱり厳しいかもしれない。
「どうする? 城に入る?」
「……当然」
「当たり前だの。何故ここで引き返すという気持ちになれるのかの」
いや、僕の目的は達成したからもう満足なんだけど。早くゴーレム召喚を試したいもん。
もしかしたらゴーセム創生とかならやりたい放題じゃん! 喚び出しまくれば創生になる!?
これはやるしかない! もう帰るしかないでしょ!
「……キズナ」
「行こうかの。ほれ、キズナは先頭であろう」
何故かハナノエさんまでやる気になってる。カモンみたいに僕を呼んでるよ。
ハナノエさん、ここからは呼子を使えないよ? いいの?
だって烈風鳳凰も『氷結鳥』もデカイじゃん! 城内では出せないでしょ。
まぁ、ハナノエさん自信もレベルが上がってるから従魔よりは強くなってるとは思うけど、それでも戦力半減なんだよ? 何がハナノエさんをそんなにやる気にさせたの?
「仕方が無いか。何があるか分からないけど、面倒だと思ったら帰るからね」
「当然だの。ここに何があるか知りたいがために来ただけだしの」
「……てったい。でも興味津々」
とりあえずゴーレムの核で使えそうなものは回収。ドロップ品も僅かにあったが確認は後にした。
身体として使われてた部分は土や石だから素材として使えそうもないので放置して城の扉を開けた。
たぶん大丈夫だと思いますが、もしかしたら来週一週分
投稿できないかもしれません。
前回、告知ができなかったので、念のためお伝えしておきます。




