第106話 VS烈風鳳凰
あけましておめでとうございます。
旧年中は誤字報告や感想、ありがとうございました。
非常に助かっていますので、今年もよろしくお願いします。
あと、今年もマイペースですがよろしくお願いします。
ハナノエさんのレベルが80に到達したので、レベリングも一段落させてようやくSランク依頼に向かう事になった。
五日かけたけど、魔法の発動がかなりスムーズになったし、威力もレベル40程度のサイクロプスなら五体纏めて葬れるようになった。
今から向かうSランク指定の魔物相手にはまだまだ厳しいが、一撃死はしなくて済むだろうぐらいまでにはなった。
「……強くなった」
「うんそうだね、かなり強くなったと思うよ」
「……痛くもなかった」
「修行ってそんなもんじゃないの?」
「……修行は痛いもの」
「そうかなぁ。僕の場合は授業だったけど、痛くはなかったね」
「……なるほど……授業は痛くない」
「でも、今回のハナノエさんのって修行だと思うけど」
「……修行は痛い。キズナとセーのは授業」
そうは言ってもキズナも教わっている頃は何度も傷を負っていた。
その都度、間髪入れずに母マリアが癒すので、教師役もレベル一桁のキズナに無茶なダメージを与える技も繰り出していたのだが、キズナにとっては多少痛いだけの記憶しか残ってない。
「あとセーさんね。やっぱり大人にはさん付けしないとダメだよ」
「……わかった」
お土地柄、先輩でも呼び捨てにする風習みたいだけど、さすがに大人に対して呼び捨てはね。
ゆったりとした朝食が済むと、セーさんから声が掛かった。
いつも食事終わりはセーさん待ちだからね。
「早速行くかの」
「そうだね、あんまり時間を掛けるのも勿体無いし、そろそろ烈風鳳凰のいる山に向かおうか」
「それだがの。悪いが彼奴のいる山の麓までしか行けんようだの」
「十分だよ。ここから歩いて行く事を考えたら山の麓まで行ければ、十分だって」
「そこからは、また箱かの?」
いやいや、そこは別に徒歩でいいでしょ。
もう浮遊箱があれば足探しなんて意味無いぐらいになってない?
セーさんなんて「あれは良いものだの。静かで良い」なんて言ってるし。
お気に入りはいいんだけど、そのまま浮遊箱で旅するぞって言われかねない。
あれ? それってアリなのか?
セーさんに蔓で引っ張ってもらうとか、僕が改良して移動できるようにするとかすれば移動が凄く楽じゃん。
ま、今はSランク依頼も兼ねてるから旅がてら回る予定だけどね。
できれば友達に。ダメでも依頼達成が目標だからね。
セーさんの転移で烈風鳳凰が縄張りとしている山の麓へとやって来た。
セーさん曰く、烈風鳳凰はこの大陸にある自分の縄張りを周回しているそうだが、ちょうど今はこの山に来ていると予想していた。
「ちょうど来ておるようだの。ハナノエの修行に時間が掛かったが、それがちょうど良かったのかもしれんの」
烈風鳳凰は今日か昨日にやって来たようだ。
ハナノエさんの修行が早く終わってたらまだ来てなかったかもしれない。
そういう意味ではハナノエさんのファインプレー? になるのかな?
「キズナよ。箱は出さんのかの?」
「浮遊箱? そんなの出したらいい的にならない? 目的は烈風鳳凰を友達にするんだよ?」
「友達にの。無駄だと思うがの」
「そんなのやってみないと分からないじゃない。一応召喚術だって捕獲術だって習ったから出来るかもしれないじゃん」
どっちも一回も使った事ないけどね。
「捕獲術はどうか知らんが召喚術なら行けるかもの」
「えっ!? そうなの!?」
「ふぉっふぉっふぉっふぉ。規格外のキズナのやる事など、儂にもどうなるか分からんがの」
規格外って…そりゃステータスを見て自分でも自覚しだしたけど、人から言われるなんて初めてだから人間扱いされなくて嫌な気持ちが半分と、強いと褒められてるようないい気分が半分で微妙な感じだよ。
「兎も角、浮遊箱は無し。歩いて行こう」
「仕方ないの。して、どうやって仕留めるのかの」
いや、仕留めちゃダメでしょ! 仕留めちゃったら友達にできないじゃん!
「仕留めないからね! まずは話をしてみて言葉が通じるか確認するよ。通じるようなら友達になってって頼んでみる」
「烈風鳳凰相手に話すのかの! ふぉっふぉっふぉっふぉ、キズナは豪気だのぉ」ふぉっふぉっふぉっふぉ
なんかセーさんのツボに入ったみたいだ。
上機嫌で笑ってるよ。
「ハナノエさんは無理しなくていいからね。僕とセーさんがいれば安全だと思うけど、デカくて威圧感のある相手だから離れててもいいから」
「……わかった。でもキズナといる」
ハナノエさんも頑張って着いて来るみたいだ。無理無理言ってたけど、今回の修行で少しは自信がついたのかな?
軽くハナノエさんと打ち合わせをして烈風鳳凰がいるという山へと登った。
「……意外と多い」
「そだね、この山って主がいるという割りに魔物が多いね。それに魔素も濃いめだ」
「彼奴が縄張りとするぐらいだからの。魔素が多いところを縄張りにしとるの」
ただ、セーさんが言うには魔の森と違って魔素が安定しないのだそうだ。
そのため魔素の多い時に来て、少なくなって来たら次の場所に移動する。その周期がうまく大陸一周できるような周期になってるようで、一番目から四番目とかならずに順番に回って行けるようになってるそうだ。
「でも、早くなったよね」
「……授業のおかげ」
ハナノエさんの魔法発動が別人のように早くなっている。しかも威力も伴っていて、今まで出てきた魔物程度なら一撃で葬っている。
僕はまた回収係りだ。
ハナノエさんの修行で獲得した魔物の死骸は毎日その日の夕食後に全部解体済みだったのに、また解体の仕事ができてしまった。
いいんだけどね。解体も別に苦手ってわけじゃないからすぐに済むんだけど、自分の分は自分でやれって言われてた身としてはハナノエさんにもやってほしいって思うんだよ。
でも、やった事ないって言われたし、夜は疲れ果ててすぐに寝ちゃってたから強くは言えなかったんだよね。
出て来る魔物はセーさんがレベリングのために用意してくれた魔物とそう大差は無いものが生息していた。
これならハナノエさんのレベリングの続きみたいなもんだし、全部ハナノエさんに任せちゃおう。
セーさんもそのつもりのようで、一切手出しをしていない。
山は千メートル級なので高くもなく低くもなくって程度の山だけど、今までのハナノエさんだと辛かっただろう。
でも、今は魔物を屠りながらしっかりと僕達に着いて来ている。
移動についてはかなりペースは落としているけど、それでもかなりの上達振りが見られる。体力の方も今のところは大丈夫そうだ。
いよいよ山頂に辿り着くと、そこにはこちらをジッと見据えたまま動かない真っ赤な巨鳥がいた。羽だけでなく、嘴まで真っ赤な巨鳥だった。
しっかりとした巣の中で動かずにこちらを警戒していた。
巣の素材が藁なのか小枝なのかと思って見ていたら、巨木の枝で出来ているみたいだ。
葉は枯れて茶色にはなってるが、茶色のまま落ちずに付いてるものもあった。
烈風鳳凰が巨大なので巣の形から藁か小枝だと誤認していたようだ。
でもあれって屋根が無いから雨が降っても濡れ鼠だよな。そこまでの知恵は無いのかな?
『クロスオーバー』にいる烈風鳳凰は話ができたんだけどなぁ。
「してキズナよ。本当に話すのかの」
「うん、がんばってみるよ」
「防御……はいらんかの。ハナノエは儂が見とるでの、気の済むまでやるといい」
セーさんがハナノエさんを護ってくれるというなら安全だな。
後は僕が烈風鳳凰を懐柔できるかだな。
「そこの鳥さん! ちょっと僕と話をしませんか!」
一人で前に進み出て、烈風鳳凰にそう声を掛けてみた。
後ろで頭を抱えてる気配を感じたが、今は前に集中だ。
だって大きな溜息まで聞こえて来たんだから分かりたくなかったけど分かってしまったんだよ。
「クゥェェェエエエエエエエ!」
あれ? こいつって話せないの? もしかして若い個体なのかな? それでもこっちの言ってる事は分かってくれるはずだけど。
「君って話せないの? 烈風鳳凰なのに?」
「クゥェェェェェェエエエエエエエエエ!!」
え? もしかして気に障った?
「そんなに怒らないでよ。そうそう、お土産も持って来てるんだ。これなんだけど、食べない? 烈風鳳凰だったら好きだよね?」
そう言って収納バッグから唐辛子をたっぷり効かせた肉の塊を出した。
ビッグラットの肉に、これでもかと唐辛子を掛けて真っ赤に染まった肉の塊だ。
その肉をゆっくりと烈風鳳凰の口元に放り投げた。
鳥類は視覚が特に優れているというのは誰でもが知っている。
でも、嗅覚についてはあまり知らない人の方が多い。だけど、鳥だって嗅覚は持っている。
特に上位種である烈風鳳凰なんかは人間と同じ程度の嗅覚は持っている。
見た目は赤い塊だが、肉の匂いはプンプンさせている塊に反応しないはずはない。
しかも、見た目が赤いだけで肉だというのは、その優れた視覚で確認できている。
ならば烈風鳳凰の取る行動は一つ。
好物であるネズミ系の魔物肉を食べないわけがない。
さっきはバカにされたようだが、そんな事は既に忘れて肉に集中。そして、巣に放り込まれる前に空中でパクっとキャッチした。
そして……
「ギュァァァアアアアアアアァァァァァアァァァアアアア!!」
火を噴いた。
文字通り、空に向かって烈風鳳凰が火を噴いたのだ。
もう噴火と言っても過言では無いぐらいの量の火を噴いた。火龍も真っ青な量の炎だった。
おそらく麓から見たら山が噴火したと見えているだろう。
元々烈風鳳凰は火を吹く。
それは癒しの炎だったり攻撃の火炎攻撃だったりするのだが、今回のように空に向かって威嚇の火を吹く習性はない。
まして噴火レベルの火を噴いたのは烈風鳳凰一族にとっても初めてだったかもしれない。
ひとしきり火を噴いた烈風鳳凰は、その視線を僕に向けた。敵意剥き出しの恐ろしい威圧感を放っている。
心なしか、赤い嘴が更に赤くなってる気がする。それにちょっと腫れてるかも。
嘴だから腫れたりしないと思うんだけどなぁ。
こうやってのんびり構えてられるのは烈風鳳凰の攻撃方法を知ってるからであって、特に脅威には思ってないからだ。
烈風鳳凰の攻撃方法は二つ。口から噴き出す火炎放射か、羽の羽ばたきで巻き起こす突風刃だ。
火炎攻撃の場合、古い個体になると火炎弾を放ったり、突風刃―――ツムジだけでなく竜巻を起こしたりするものもいる。
だが、目の前にいる烈風鳳凰はそこまででも無いだろうと思っているので余裕で構えていられるのだ。
あと、突いて来たり脚の爪攻撃もあるけど、厄介なのは身体中に纏っている炎だけで、攻撃力自体は大したものではない。
そうは言ってもBランク冒険者程度では瞬殺されるだろうけどね。レベルアップを果たしたハナノエさんでもちょっとヤバいかもね。
何もせずジッとしている僕に痺れを切らしたのか、烈風鳳凰が挨拶代わりとばかりに火炎放射を放ってきた。
さっき上空に噴いた火炎より大分控えめなので、挨拶代わりなのだと思う。
【薄水膜】で簡単に防ぐ。
薄い水の膜とは言っても絶えず下から上に流れを作ってるし水も生み出している。あの程度の火炎放射で突破されるはずもない。
しかも、レベル一桁時代と違って、魔力に物を言わせてかなりの密度になっている。
それが下から上に高速で流れているのだ。更に、上まで上がった水は魔力に戻して、その魔力を利用して再び下に水を生む。
魔力の消費は高熱により蒸発した分の補充分だけだ。
薄い膜のような水だから蒸発する量なんてたかがしれている。自然回復分程度のものだ。
火炎放射を簡単に防ぎきると、今度は風攻撃で来た。
本来なら土魔法のアースウォールか、その上位版のアイアンウォールがいいんだろうけど、前が見えなくなるからあまり好きじゃない。
なので、試したい事もあったので【薄水膜】をもう一枚前に張って、二重で張ってみた。
自前の魔力は使わずに周囲の魔素を利用して張ってみたんだ。
これも思いの外うまくいき、二重にするまでも無く一枚だけで完璧に防いでいた。
痺れを切らした烈風鳳凰が次に取る行動は物理攻撃だ。
まずは爪攻撃からの嘴攻撃だね。もうワンパなんでつまらないんだよね。
爪攻撃も嘴攻撃も【薄水膜】を貫通できずに、逆に烈風鳳凰がダメージを受けている。
そりゃ高速で流れてるからね。
爪攻撃の時に弾き返されてバク転したのに、めげずにそのまま頭から突っ込んで来たらダメージも受けるでしょ。
やっぱ鳥って頭よくないのかな?
この後、また初めから繰り返すんだけど、クールタイムなのか知らないんだけど少し止まるんだよ。
もう隙だらけ過ぎて誰でも倒せるだろって思うんだ。やっぱこっちの烈風鳳凰も行動パターンは同じなんだね。
という事で、攻撃しちゃおう。
スラ五郎だとやりすぎだろうから、ここはパンチかな。
そう思って地面を蹴った。
立ってると体長が四メートルぐらいあるんで跳ばないと届かないんだけど、このクールタイムの時って頭を下げるんだ。
正に、殴ってください状態になるバカ鳥なんだよ。
結構、手加減をして烈風鳳凰の顔面に右フックを放った。倒したいわけじゃないからね。まずは僕の方が上位に立ってるんだぞって示すための一撃だ。
相手は止まってるんだから普通にクリティカルヒット!
烈風鳳凰は殴られた反動で身体まで半回転して後ろ向きになった。
そして、そのまま動かなくなった。
うん、手加減も完璧だ。これでポーションでもかけて恩を売った的な感じで再び交渉してみよう。
「やっぱり無理だったの」
後ろからセーさんが歩いてくる。ハナノエさんも一人は嫌なのか慌ててセーさんを追いかけて来ている。
「無理ってなにが? 交渉がうまくいかなくて戦いにはなったけど、これから再交渉するんだけど」
「もう話もできんようだがの」
「えっ……?」
「もう死んでおるようだがの。キズナは蘇生もできるのかの」
「えっ!?」
すかさず【鑑定】をして烈風鳳凰を見てみた。
烈風鳳凰LV:41 HP:0と出ていた。
「えぇぇぇぇえええええ!? なんで? ちゃんと……」
「キズナが攻撃する前に、既に瀕死になっておったが、キズナには分からんかったのかの」
マジか! 防御しただけで瀕死だったの!? そして、そこに止めの一撃を入れちゃった?
ダメだ、戦闘中でも【鑑定】するべきだったよ。
「どうしよう……」
「どうにもならん。蘇生薬でも持っておれば別だがの」
「……持ってない」
「ならばそういう事だの。おや? それは……ほぉ、面白いもんが出てきたの」
「でも烈風鳳凰って、また復活するよね?」
『クロスオーバー』の烈風鳳凰はそうだった。何度でも甦るんだ。
先生が倒して、皆で手羽や腿をご馳走になった次の日には復活してたんだ。こいつもそうなんだろ?
「無理だの。此奴は少々若い個体だの。そこまでの能力は持っておらんようだの。でも、そこを見てみい。面白いものを落としおったの」
「面白いもの?」
烈風鳳凰の前には何か落ちていた。さっきまで何も無かったと思うので烈風鳳凰が死に際に落としたんだろう。
俗に言うドロップアイテムか。
ダンジョン以外では滅多にないんだけどね。死体だって残ってるし。
「これは……」
【鑑定】
鳳凰の呼子
いつでも烈風鳳凰を喚び出せる。
召喚時間は呼び出す者のレベル×10分。
「いや、便利だけど! 便利だけどぉ! こういうんじゃないんだよ! 僕は友達になってほしかったんだよー!」
僕の叫びが木霊して、余計にむなしくなるのであった。




