第101話 報奨
いつも誤字報告ありがとうございます。
すいません。自己都合ですが、一週開けてしまいました。
こういう時って、途中でお詫びメッセージを入れる機会が無いんですよね。
ある程度分かってたので、次週休載かもみたいなものをしておけばよかったと今更ながらに後悔しています。
申し訳ありませんでした。
この国境の町で一泊する事になった。
ようやく町の名前も聞いた。ボーダーの町だって。
夜には砦に行く約束もしてたし、早めの夕食を町の食堂で済ませて、宿を取った後に砦へと向かった。
行くのは僕ひとり。セーさんもハナノエさんも宿で留守番だ。
セーさんは兎も角、ハナノエさんを連れて行くと話がややこしくなりそうだからね。
砦の門は難なくパス。一度通ったからなのか、それともブラッキーさんが手を回してくれていたのか分からないけど、冒険者カードを見せるだけで通れた。
砦の入り口でブラッキーさんの居場所を尋ねたら三階の右最奥に行けと言われた。ホワイティさんも同室だそうだ。
二人は宿の時から同室だったもんね。ここも兵士の部屋も確保しないといけないし、一人一部屋というわけにもいかないのかもね。
部屋に着いたらノックすればいいのか? とか考えてたら、部屋の前には立ち番がいたよ。
王女と聖女候補の部屋だから、そりゃいるよね。
立ち番の兵士にキズナだと告げると少し待つよう言われた。
コンコン
『なんだ』
「キズナ様が尋ねて参りました」
『よし、通せ』
中からはブラッキーさんの声が聞こえた。
許可が下りたので立ち番の人が扉を開けてくれて部屋の中へと通された。
「キズナ! あれはどういう事!?」
「ブラッキー。慌てないで、まずは挨拶でもして何か飲みながら話しましょう」
「そう言うホワイティだって落ち込んでたじゃないの! 先に白黒ハッキリさせたいでしょ!」
いきなり喧嘩腰だった。
たぶん、ハナノエさんの新パーティ発言からモヤモヤしてたのかもしれない。
「え…と、こんばんは?」
「はい、こんばんは。キズナもそこに座って。今、お茶でも入れるから。ブラッキー、貴女も座りなさい」
いつも通りの落ち着いたホワイティさんだ。落ち込んでたって言ってたけど、ブラッキーさんとは大違いだね。
僕がソファーに座ると、ブラッキーさんも渋々座った。だけど、何か言いたそうにずっと睨まれたままだ。
ガチャーンと陶器の割れた音がした。
ブラッキーさんと共に振り向くと、ホワイティさんがカップを落として割っていた。ホワイティさんも平常心というわけでは無かったみたいだ。
すかさず僕がフォローに回り、三人分の紅茶を入れて席へと戻った。
二人掛けのソファーにブラッキーさんが座り、その対面の二人掛けに僕が座った。
ホワイティさんはサイドの一人掛けソファーに座った。
「それで!」
「ブラッキー!」
「もういいでしょ! 早く聞きたいじゃない!」
「あの…昼間の件ですよね?」
「そうよ! 【三叉槍の魔法使い】を解散したのは確かに私達の都合だったけど、もう新しいパーティを作ったの!?」
「そう、ですね。結果、そうなりました。作ったのは今日二人と別れた後ですけどね」
「じ、じゃあ、あの時に『サカイーズ』って言ったのは……」
「あれはハナノエさんの嘘です。そんな名前になんてしませんよ。この町に来るまではセーさんと二人だったし、ハナノエさんに会ったのもこの町に来てからです」
「え? ならあの女の子は初対面?」
「初対面ってわけじゃないんですけど、パーティは組んでませんでした」
その後、冒険者ギルドに行き、『勇巨龍』というパーティを三人で組んだという話をした。
二人の詳細については何も知らないと言うしかなかった。
セーさんの正体は言えないし、ハナノエさんの詳細については何も知らない。
そんな正体不明の人と、よくパーティを組んだもんだと思わなくもないけど、ブラッキーさんとホワイティさんとパーティを組んだ時も正体は知らなかったからね。
「それで、キズナはどうするの?」
「どうするって、どういう意味ですか?」
「このままあの二人と組んで冒険者を続けるのかって事!」
「そうなると思います。今日、パーティを立ち上げたとこだし、ハナノエさんも悪い人じゃ無さそうだし、セーさんとは友達ですから」
「友達!? 随分歳の離れた友達ね」
糸目だし。と、呆れるブラッキーさん。
友達に年齢は関係ないし。近い方が友達にはなりやすいけどね。それに友達になるのに糸目は関係ないからね!
「今更、私達が戻れるとは思ってないし戻れはしないけど、バンはどうすんのよ」
「バンさんですか? バンさんはバンさんの意思で決めればいいんじゃないですか?」
それにバンさんはノスフェラトゥさんの部下だから、冒険者やってるのって一時的なもんでしょ? 最終的には吸血鬼城に帰る人だよ。ブラッキーさん達と一緒だね。二人には言えないけど。
「バンは自由だしね」
「自由奔放ですからね」
そこは二人も強要するつもりはないみたい。
「ブラッキー、愚痴はそれぐらいにして本題に入りましょう」
「えー、まだまだ言い足りないわよ」
「私達はパーティから出た人間です。まだ冒険者を続けるキズナに何を強制できると言うのですか?」
「そういうホワイティだって落ち込んでたじゃない!」
「それは…こんなに早く別パーティを立ち上げるとは思ってなかったから……いえ、キズナが優秀なのは私達が一番よく知っています。当たり前の事だったんでしょうね」
何やら本題は別にあるらしい。
ここまでのは単なる愚痴だったの?
「まずは、今回の参入と活躍、国を代表してお礼を言うわ。キズナ、ありがとう」
「ありがとうございます、キズナ」
ブラッキーさんとホワイティさんが深々とお辞儀をした。
この世界では王族がこういった頭を下げるのはダメだって習ったけど、ブラッキーさんはいいのかな?
『クロスオーバー』の世界にはそういうのは無いから、僕はよく頭を下げてたけどね。ついでに母さんも。
あまり謝る事って無いけど、お礼を言う事はよくあったからね。普通に頭を下げてたよ。
「いえ、僕より仲間が活躍してくれただけですから」
僕は歩いてただけだし。
守りはシールダーさんで撹乱はイダジュウさんとシルフィーナさんがしたし、最優秀賞はメタスランだしね。
あの勇者、どうなったんだろ。
「それで、リーダーのキズナに代表して報奨を受け取ってほしいの」
「報奨?」
「ええ、今回の第一功労者として報奨金はもちろん、武具や宝石もあるわ。欲しい物があればできる限り融通もできるけど?」
「そんな! 僕が第一功労者なんておかしいですよ。僕は後から入って来ただけで、それまではブラッキーさんやバンさんが中心となって防衛してましたし、後方ではホワイティさんを中心としてフォローしてたじゃないですか。最後だけ出てきた僕が第一功労者って言うのは顰蹙を買いますよ」
ブラッキーとしては、ホワイティと共に今まで世話になった分も上乗せして受けさせるにはちょうどいいと思ってるだけなのだが、キズナに伝わるわけもなく、断られそうになって困り顔だ。
そこにホワイティがフォローに入った。
「キズナ。あなたはパーティのリーダーなのですから、メンバーのためにも報奨は出来る限り多く受け取るのも務めです。ここは得したぐらいに思って、多くの報奨を求めるものですよ」
「そういうもんですか?」
「そういうものよ」
ブラッキーと意思を同じくするホワイティの口車なのだが、仲間を盾にされるとキズナも弱い。
とはいえ、この世界に来た当初こそ金欠だったキズナだが、薬草やポーション、魔道具でマージンがっぽりのキズナは、今ではあまりお金に関心が無かった。
お金が欲しい時には魔物素材を売ったりしているし、馬車や宿以外にはあまりお金も使っていない。そもそも、基本的に自給自足スタイルなのだ。
料理素材はセーが用意してキズナが料理をする。その際に出る魔物素材がいい金額で売れる。
だから、ランガンの町の冒険者ギルドでどんどん膨らむキズナの貯金には一切手を付けていない。まったく使い道の無いお金だった。
「お金と言っても、買いたいものって無いんですよね」
「何かあるでしょ! 装備にしてもそうだし、いい宿に泊まって美味しい食事をしたり、魔道具にしても高価で便利なものは沢山あるわよ!」
「ブラッキー……」
「え? あ…キズナだものね。料理は上手だし、武器は棒だし、魔道具やポーションも作ってたわね。でも、装備はあった方がいいでしょ? それにそろそろ家を買って拠点を構えるとか、移動にしても馬車があった方がいいでしょ」
また棒って……。でも、家はあった方がいいのかな? 装備の方は普段着のように見えても母さんがくれたこの服以上に防御力が高い装備なんて無い。
だけど移動に関しては考えた方がいいか。
のんびり旅を気に入ってるセーさんには悪いけど、急ぎの時だってある。
馬車もそうだけど、牽いてくれる魔物か精霊はこの世界で調達したいね。
走竜も速かったけど、もっと速い魔物もいる。でも、そうなるとそれに耐え切れる馬車も必要になって来る。
いっその事、空を飛ぶ烈風鳳凰なんていいかも。
烈風鳳凰……いいね、いいかも! 烈風鳳凰は大きいし速い。そうなると馬車というか移動居室をどうするかだな。
「キズナ? キズナ……キズナ!」
「は、はい!?」
「あなた何か変な事考えてない?」
「い、いえ、べ、別に……」
「まぁいいわ。それで報奨の話に戻るけど、あなた達のパーティへ白金貨十枚の報奨金とは別に、報奨として何かを贈りたいんだけど、何か欲しい物はある? 何かの権利でもいいわよ?」
キズナへの報奨として、今までの分も満足に渡せていない。
冒険者活動での恩賞はブラッキーとホワイティの個人的なものだが、未だに渡せていない後ろ暗さがあるので、ここは公私混同して今回の戦果の報奨としては過剰な報奨を与えようとしている。
もちろんホワイティもグルだ。
但し、前回の『状態異常ほぼ無効のワッペン』の恩恵もあり、王様や教会からも報奨の上乗せの許可を貰っていたのだから、報奨の上限は無いと言っても過言ではなかった。
「権利ですか……どんな権利でもいいんですか?」
「もちろん許可できる範囲よ。でも、許可できる範囲は結構広いわよ。まぁ…(私の伴侶になりたいってのもアリと言えばアリよ)」
許可できる範囲が相当広い事を知ってるブラッキーが自信満々に言った。
後半はゴニョゴニョ言ってて隣にいたホワイティにさえ聞こえた無かったのだが。
「地図ってありますか?」
「地図? そりゃあるけど、地図でいいの? 確かに詳細な地図は王家や軍部でも上層にしか許可できない貴重なものではあるけど、報奨として考えるなら大したものではないわよ?」
キズナだってこの世界の地理に関しては習ってるから大陸中央なら大まかなところは分かっている。
だが、今回求める地図は別物だ。
「魔物の分布図が載ってる地図があれば欲しいんです。特に災害級なんかの載ってる地図があれば貰えないかと」
「災害級の載ってる地図!? そんなの冒険者ギルドのどの支部だって持ってるし、Sランクのキズナならいつでも見れるでしょ! 別のものにしなさい!」
そうなの? そんなの誰も教えてくれなかったし、講習でも聞かなかったよ?
そういう強い魔物を率先して倒して欲しいしか言われなかったし、場所に関しては…聞いてないね。
「冒険者ギルドにあったのか……」
「他には無いの? 例えば騎士団団長の座とか筆頭宮廷魔道士になりたいとか」
「教会の司教になりたいでも構いませんよ」
なんでトップ系の役職しか言わないのかは知らないけど、組織に入ると旅ができなくなるよね。
折角セーさんと友達になれたんだし、旅は続けたい。
それに一番の目的でもある母さんに渡された『短剣』も、もうちょっとで『長剣』になりそうなんだ。
旅を辞めるって選択はないな。
「組織に入るのはちょっと……」
「でも、これは持ってなさいよ」
「こちらも渡しておきます」
そう言って二人から渡されたのは筒のように巻かれた紙―――書状のようだった。
「それは王家が認めた者だという証、認定書よ。それを見せればこの国のどんな所でも入れるの。町でも施設でもどんな場所でもよ! それに販売価格は少し高くなるかもしれないけど、店が隠し持ってるような希少な素材なんかも優先的に売ってくれるから」
「教会関係も同様です。特に情報などは各町村にある教会の情報は冒険者ギルドより上です。是非利用してください」
「そんな凄い権利を貰っていいの?」
「「いいの(です)」
何か、紙を見せるだけで特権を使えるようになったらしい。
ただの紙じゃなくて、王家の紋章や教会の紋章が書いてあって、誰かのサイン入りなんだけど、それでも破格な権利だ。
販売価格が少し高くなるってのは、貴族価格みたいなもんかな? でも、お金には不自由しなくなったし、金額よりも内容だよね。うん、いいものを貰ったよ。
「これがあれば今回みたいに冒険者ギルドの承諾なんて無くても私のところまで来れるんだから、いつ来てもいいのよ」
「教会内でも構いませんから」
確かに。これがあれば砦にもすぐに入れたね。でも、そうだった場合、ハナノエさんとは会えてなかったのか。うーん、上手く行かないね。これも縁だよね。
それから、今回の戦争について少し雑談をした。
久し振りに二人と話せて楽しかったけど、戦場で活躍したイダジュウさん、シールダーさん、シルフィーナさんの事は知らなかった。
あの三人って精霊と悪魔なんだけど、いつもは姿を見せなくしてる癖に見せたい相手には見えるようにできるからね。
戦場の相手には見せて、砦の兵からは見えないようにしてたのか。
そうなると、三人が見えてた勇者って何か恩恵があったのか、それとも何かスキルを持ってたのか。
【鑑定】しときゃよかったよ。




