第100話 新パーティ?
いつも誤字報告ありがとうございます。
「キズナ! やっぱりキズナだったのね!」
「キズナ!!」
バンさんをセーさんに担いでもらって砦に戻ってみると、砦の入り口にブラッキーさんとホワイティさんが待っていた。
ブラッキーさんが僕の事を予想していたと告げたその横で、僕の名を叫んだかと思うと勇者ワタルばりの猛ダッシュで僕に抱きついて来た。
「ホ、ホワイティさん、お久し振りです」
「あんな不利な戦況で戦場にいるなんて無謀すぎます! どこか怪我はないですか?」
「け、怪我は無いんですけど、ちょっと、その苦しいです」
普通に会話しているような内容だけど、今の僕はホワイティさんに猛ハグされててかなり危険な状態だ。
柔らかくていい匂いがするんで、このままの状況が続けばいいと思いと裏腹に、息ができなくてすぐにも解放されたい僕もいた。
どちらかというと命の危険があるので後者が優先か。
「ホワイティ! キズナが息できてないよ! 気持ちは分かるけど解放してあげなさい! そのままじゃ息ができなくて死んじゃうわよ」
「はっ! ごめんなさい、キズナ」
「いえ、その、ご心配をかけたようで、こちらこそすみません」
ブラッキーさんの一言で解放されたので助かったんだけど、残念な気持ちもあったので言葉が続かなかった。
「ほぉ、キズナにもそういう人がおったのだの」
「へぇ~、キズナ様も隅におけないんだね~」
「……むぅ」
三人が勘違いしているが、僕とブラッキーさんはそんなんじゃないから。
前にも部屋でブラッキーさんとホワイティさんにから揶揄われたのを思い出し、複雑な気持ちになる。
キズナも二人の事は好きではあるが、それはLOVEでは無い事は自覚している。相手も同じだと思ってもいる。
たが、これでも男の子だ。将来的に間違いが起こらないとも限らない。
好意的で、しかも美女ならキープだろう。と打算的なキズナがここにいた。
あやふやだが前世の記憶を持つ十五歳。そういうところは八割以上の男性と同じ気持ちなのだ。
「それで戦況はどうなんですか?」
見れば分かる結果なのだが、話を逸らす意味でも質問してみた。
その質問にはブラッキーさんが答えてくれた。
「キズナ達のお陰で大勝利に終わったわ。あの大きな盾や残像しか見えない影はキズナの仕業よね?」
「大盾と残像、ですか? あー、確かにそうだと思います」
「そちらの方がそうなの?」
「大盾と残像だけ~? 私も協力したのに~」
「こちらの方は?」
そういえば自己紹介もまだだったと、ここで仲間の紹介を始めた。
「こっちの女性がシルフィーナさん。戦場では大風で相手の視界や動きを阻害してくれました。バンさんを背負ってるのがセーさん。バンさんの看病をしてくれてました。相手勇者も封じてくれました。それで、こっちがハナノエさんなんですが……」
「……ハナノエ。キズナの新しいメンバー」
「えっ、新メンバー? キズナはもう新パーティを作ったの?」
「いえ、えっと、新パーティというか、まだセーさんと二人だけなんでパーティと呼べるかどうか」
「こっちの、えっとハナノエさんが新メンバーって言ってるけど?」
「それは僕も初耳で……ハナノエさん、そうなの?」
「……新メンバーでサブリーダー。流石にリーダーはキズナ…年下だけど。パーティ名は『サカイーズ』」
いつの間にかメンバーに加入していたハナノエさんが自己紹介をした。しかも何故かパーティ名もダサい名前に変わってた。
その内容は僕を上げてるのか下げてるのか分からないものだったけど、ブラッキーさんとホワイティさんにダメージを与えるには十分だったみたいだ。
「そ、そ、そうなのね。パーティ名まで変わってるなんて……」
「キズナがリーダー…ですか……勝手に抜けてしまった私達に非はあるのですが、いつでも戻れるものとばかり思ってました……」
落ち込む二人にハナノエさんが更なる追い討ちをかけた。
「……私はキズナから離れない。キズナを利用していたあなた達とは違う」
「利用って! ……確かに初めは利用しようとしてたけど……」
「……最後までって聞いてる」
「ぐっ……」
ブラッキーさんもホワイティさんもぐうの音も出ないようだ。
でも、誰から聞いたんだろうね。この世界で僕の事を知ってる人って限られてるし、共通の知人になるともっと少ないと思う。というか、いないよね?
「……キズナ、行こう」
「え…いや、まだ、話も終わってないし」
「……話は終わった。ティアマト様の仰った通りだった」
「あー、ティアマトさんから聞いて……えっ!? ティアマトさんって! ハナノエさん!? なんで知ってるの!?」
ハナノエさんは答えずに先に歩き出した。
セーさんも担いでいたバンさんをそっと降ろしハナノエさんの後を追う。
ハナノエさんのせいで何か険悪な雰囲気になってしまった。
う~ん困った。僕はどっちに付けばいいんだろ。
ブラッキーさんとホワイティさんに何か声を掛けないと可哀想だし、バンさんをこのまま預けていいものか。
でも、そうして時間を取られるとハナノエさんとセーさんが行っちゃうし。
「ブラッキーさん、ホワイティさん。僕は二人の事を裏切ったなんて思ってませんし騙されたとも思ってません。今はセーさんを放っておけないんで行きますが、夜にでも砦に伺います」
「う、うん……」
それだけ伝えると、急いでセーさんの後を追った。
先頭のハナノエさんは砦の通路に戻ると、そのまま止まらずに砦の入り口から出て行った。
当然、僕もセーさんも後を付いて行く。
これって、付いて行く必要があんの? だいたいハナノエさんは僕のパーティメンバーじゃないし、そもそも『サカイーズ』ってパーティなんていつ作ったの?
そこもおかしい。
『サカイーズ』って僕の苗字の『境界』から来てるはずだ。なんで僕の苗字をハナノエさんが知ってるのか。
僕の登録名は『キズナ』なのにだ。
まさか、それもティアマトさんが教えちゃった?
「セーさん、なんでハナノエさんに付いて行くの?」
「そりゃパーティメンバーだからの」
「本気で言ってる?」
「当たり前だの」
「そのパーティのメンバーって?」
「儂とキズナとあの娘だの」
「えっと…いつから? 僕は知らなかったんだけど。セーさんはいつ知ったの?」
「さっきまで儂も知らんかったの。だが、あの娘は裏切らん。ならばメンバーとして迎えてやるべきだの。まぁ、そこそこの力も持っておるようだし、足は引っ張らんだろ」
「さっき!? じゃあ、知ったのってさっきのハナノエさんの自己申告じゃん! それでいいの!?」
「かまわん。さっきの二人の女子よりは使えるだろうの。裏切らんようだしの」
「別にブラッキーさんもホワイティさんも裏切ってなんかいないよ? 元々王女と聖女候補の人だったんだから、元に戻っただけだよ」
「……ふむ、まぁよい。着いたようだの」
「着いたって…あ、冒険者ギルドか」
考え込んだり、セーさんと話したりしてる内に冒険者ギルドに着いたみたいだ。
行きは門での検閲なんかがあって時間がかかった印象があるけど、帰りは何もチェックも無かったので、思いの外早く到着したようだ。
ハナノエさんはそのまま冒険者ギルドに入って行く。
僕とセーさんも後に続いて入って行く。
「……パーティ登録」
「え? あ、はい。パーティ登録ですね。パーティ名と登録者のカードをお願いします」
ハナノエさんが受け付けカウンターに行きカードを出してパーティ登録を願い出た。
やっぱりそうだよね。今、確認したけど僕の冒険者カードには『【三叉槍の魔法使い】』ってなってるもん。
「……パーティ名は『サカイー……』」
「ごめん! その名前は辞めて!」
「……わかった。キズナが決めればいい。でも、リーダーはキズナで決まり」
「ぼ、僕が? でも、僕にはネーミングセンスなんて無いよ?」
「……いい。キズナが決めたものならみんな納得」
みんなって、ハナノエさんとセーさんしかいないけど。
「あの吸血鬼共の名を定めたのもキズナであったの。ならば大丈夫だ」
あの吸血鬼共って、ノスフェラトゥとバンさんとキュラ君の事だよね?
あの三人って、自分で名前を決めたようなもんだから、僕が名付けたんじゃないんだよ。
コガネマルだって、元々名前を持ってたし、セーさんなんて仇名だから名前ですらないよね?
そんな僕に名付けを任すなんて無謀もいいとこだ。
でも、名付けないといけないんだね。セーさんももう冒険者カード出してるしね。
セーさんか……世界樹の精霊だったよね。ハナノエさんって正体が知れないから僕かセーさんに因んだ名前がいいよね。
「う~ん、スラ……」
「……スラ?」
「ス……い、いや、ちょっとまって! 今、すごく悪い流れになったから!」
ヤバイヤバイ。危うくスマッシュって言いかけたよ!
スライム戦士からと思ったんだけど、やっぱ辞めとこう。
だったらセーさんかな。世界樹だし……
「ユグドラ…なんて、どう?」
「……ユグドラ……いい。勇者でグレイトでドラゴン……強そう」
「ふむ、ドラゴンが強い、か。ま、マシな方だの」
いやいや、ユグドラシルから来てるんだから、セーさんは気付いてよ!
しかもマシって…確かに上位であって最上位では無いけど、結構強いよ? そういう意味でドラが付いてる訳じゃないけどね!
「はい、登録が完了しました。パーティ名『勇巨龍』。リーダーはキズナ様でサブリーダーがセー様とハナノエ様。リーダーのキズナ様がSランク、サブリーダーのお二人がAランクですのでパーティランクはSランクになります」
「はい? サブリーダーが二人?」
「メンバーの多いパーティではよくあります」
いやいやいやいや、だったら誰が平なの!? それでいいのか? そんな登録ありなの?
「ハナノエさん?」
「……先輩のセーより上はダメ」
「だったらハナノエさんは役無しでもいいじゃん!」
「……さっきサブリーダーと宣言した」
そりゃしたけどさぁ。それって『サカイーズ』のサブリーダーだろ? 『勇巨龍』のじゃないじゃん!
そもそも聞いてたのってブラッキーさんとホワイティさんだけだし、あの状態の二人には頭に入ってないかもよ?
「儂は役などいらんのだがの」
「……ダメ。先輩は立てる」
「ほうかほうか。嬢ちゃんは偉いんだの」
「……当然」
なんか、孫と爺ちゃんの雰囲気を出してるけど、セーさんの見た目だと娘ぐらいな感じだよ。
年齢で行くとご先祖様ぐらいの差はあるけどね。
それとハナノエさん。先輩を立てるんならブラッキーさんとホワイティさんも立ててあげてほしかったな。
こんな緩いペースでも、なんとか100話達成できました。
お付き合い頂きありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
追伸
野球ですが、あんな時間に毎日やられたら書く時間が取れません。
つい見てしまって全然進みませんでした。




