05 ずっと、このまま。
05 ずっと、このまま。
好樹とバレッタは手をつないで、煙の中を進んでいた。
煙は熱く、まるで顔を焼かれているような感覚にされる。
小さい家のはずなのに、出入り口までがやけに長く感じられる。
早く出なければ、火で焼かれてしまう。
出口が見えた。
新鮮な空気は目と鼻の先にある。
この時、好樹は二人組のことを忘れていた。
二人(と一つ)は村長の家から飛び出した。
外では、子分がうちわを動かして火に空気を送っていた。
バレッタがにらむ。
「ちょっと、あいつを殴ってきたいんだけど。」
「まあまあ、バレッタ、みーくんの魔法に任せてよ。」
「自称・魔法ね。」
「ミント、だから魔法だって。」
「じゃあ、みーくんにお願いしようかな。」
「了解!」
みーくんは、まず最初に魔法発動座標を設定し、範囲と内容を決めてから発動させた。
目視で短時間に発動もできるが、細かく設定した方が強力で耐久性、持続性のあるものが使えるのだ。
「うわっ。なんだ?」
子分が驚きの声をあげる。
無理もない。この子分の前では家の火が消え、焼けたはずのところがきれいに修復されつつあるからだ。
「こ、これ、なんすか?兄貴。」
「こりゃ魔法だな。どこからか術者が俺たちを今も見てるに違ぇねぇ。…仕方ねぇ、攻撃される前にずらかるぞ。」
「了解っす。」
二人組は慌てて去ろうとする。
みーくんは即席で両端に重りを付けた太さ一~二センチメートルのなわを二つ作り、二人に向かって飛ばした。
もちろん好樹たちのいる方向から飛ばしたわけではなく、別の方向から飛ばしたなわは、二人組の足にヒットし、二人を顔から転ばせた。
親分のほうは縄の飛んできた方を見た。
もちろんそこには何もない。
二人はすぐになわを外そうとするが、簡単には外れない。
そんなとき、上から声がした。
「あ、あ~。テスト、テスト。あ~、あああ~。」
紛れもなくみーくんの声だったが、好樹は思わず目線を上にあげてしまった。
もちろん頭は動かさず、眼球だけ。天井には何もない。
「……みーくん、何してるの?」
呆けた表情をしている二人組を凝視しながら、好樹はつぶやいた。