01 脱出はまだ先…?
01 脱出はまだ先…?
好樹とバレッタは、とりあえず城を出ることにした。
二人は城の屋上で、二人並んで座っていた。
「そう言えば、バレッタって背景と同化できるバリアを張れるんだったよね。」
「そうだけど、なに?」
「いや、その有効範囲ってどれくらいなの?」
「ああ。それはね、私の想像通りに変更可能だから大丈夫よ。少しなら、自分から離れた座標を中心にしたバリアも作れるわ。」
「そういえば、僕を爆発から守ってくれた時もそうだったよね。」
「ええ。」
会話は殺伐とした内容だが、好樹とバレッタの間にはほのぼのとした温かい空気が流れている。
時折聞こえてくるのに無視されている、戦の音がかわいそうになってくる。
「ふぅ。」
「!?」
バレッタが好樹に寄りかかり、その体重を預けた。
(お、重い…。)
思ったことを声には出さない。いや、出せない。
機嫌を損ねてはいけない。
もちろん好樹は運動不足。体力も、力も、精神においても同年齢の人の平均に届いていない。
そして…。
「好樹、いま、ヘンなこと考えなかった?」
「うん?何の事?」
「……まあ、いいわ。」
うかつなことは言えない。
バレッタが寝息を立て始めたところで、泣きそうな声が聞こえた。
「いい加減、みーくんを無視するのはやめて…。」
「あ、ごめん。気が付かなかった。」
「……バカップル。」
「……(グサリ)。」
あらかじめバレッタが、背景と同化するバリアを張っていたので、安心して好樹はバレッタを支えることにちからを注いだ。
村長は、仕事を終えて自宅への帰路を歩いていた。
家々の明かりが闇に浮かぶ。
バレッタはまだ当分帰らないだろう。
好樹君は順調に帰っているだろうか。
そんなことをつらつら考えていると、自分の家が見えてきた。
ポストに手紙と思われる紙が入っている。
紙は高級品だが、こういうことに金は惜しめない。
封筒に差出人と宛名等は記されていない。
つまり、『例のアレ』というわけだ。
妻に見られるわけにはいかないので、外で開ける。
『彼女は魔女。回復系と防御壁系の魔法を使用、攻撃系の魔法は使用不可。よって、危険は皆無。』
村長はため息をつき、家に入ったら妻がいない間に焚いていた火に紙を投げ入れた。
投げ入れてしまえば何とでも言い訳はできるのである。
一週間ほど休みます。