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桜色の忘却―夢幻の廃跡―  作者: 星利
<廃遊園地の怪>
14/14

嵐の前の静けさ


それから夏休みまでの日々は、足早に過ぎていった。


暫くすると、じめじめした梅雨の季節がやって来た。ちょうどその頃は中間テスト期間だ。



「た、単位…!せんぱい、教えて下さい…。」


「まったく、春灯さんは!」


「しおりん、その授業の先生、すっごく厳しいわよ~!」


「ま、まじですか…!」(バタンッ)



ちぇるしーや薫さんに助言をもらい、何とか中間テストを乗り越えると、いつしか梅雨が明け、カラッとした青空が顔を出した。



ミーンミンミンとセミが歌い、暑さを際立たせるようになった。


味気ない日々、すなわち平凡な日常。どこからか漂ってくる日焼け止めの匂いは、夏の訪れを感じさせた。



そして、7月から8月初旬にかけて、次は前期期末テストが襲いかかってきた!


「うわぁぁ!持ち込みなし論述3,000字のテストってなんですかぁぁーー!」


「それは鬼畜だな。」


「ちぇるしー!フッて笑わないで下さい!今私の頭の中には、近代西洋史が渦を巻いてるのです!」


「しおりん、次からちゃんと授業カリキュラム見て選びましょ。」


「ごもっともです、薫さん…。」



ゼ―ハ―言いながら迎えた、裏野夢見ランド見物前日。



私達廃墟部+玲夜は、買い出しに行くことにした。


…裏野夢見ランドは、私達の大学の所在地・京都から遠く離れた北海道に位置しているのだ。1泊も視野に入れなければならない。


「必要なものを買いに行くぞ。」


部長であるちぇるしーを筆頭に、私達は京都のIRON(アイロン)というショッピングモールへと出向いた。



「廃墟探索に必須のアイテムは、次の8つだ。


歩きやすい靴、軍手、懐中電灯、緊急用品、方位磁石、飲料水、体に密着するリュッ…」


ちぇるしーの言葉もそこそこに、私達女子は服屋さんに夢中だ。



「見て見て、薫さん!この服、似合いますか?」


「あら、いいわね♡」


星野さんもスタスタと1人で、いつも着ているであろうロリータっぽい服屋・"an(アン) another(アナザー) angelus(エンジェルス) by M.i.n.t"を見ている。



「お前ら…ッ!


俺、女子の買い物に付き合うのはごめんだ。ちょうど長袖長ズボンも必要だし、見とけ。」


「智瑠先輩。オレ、IRONで安売りしてるTシャツと短パンでいいっスよ!」


「だーから、長袖長ズボンだって。」


「アー?ラー?やっちまったなァー!」


つまらない漫才を繰り広げているちぇるしーと玲夜に手を振った。



そこからは、ショッピング女子会タイム。


2対1に分かれて買い物をするのも良くないと思い、私と薫さんはロリータショップを見ている星野さんの元へと向かう。


星野さんは、無言で"aces(エイシーズ) form(フォーム)"というブランドの、濃い青色の生地に宇宙柄がデザインされたフリフリワンピースを合わせている。



「わぁ…!可愛い…!」


私は思わず感嘆した。普段、このようなロリータを買って着る勇気はないが、生きているうちに1度は着てみたいと思う。


…星野さんの、真っ白な透き通る肌や、艶やかな黒髪によく合っており、女の子らしくて、とても可愛い。



「お世辞は、要りません。」


ピシャッと冷たく返されてしまった。


「いや、本心だよ。」


星野さんの目を、キラキラした目で見つめている私。


彼女は、少しだけ嬉しそうに目を逸らした。


私は、星野さんをまじまじと見つめる。


(あんなクールすぎる性格じゃなかったら、とても可愛いのになぁ。)


黒髪ロングで、華奢な小柄。身長は、私より少し低い。(148cmぐらいだろうか?)


黒髪ボブの私から見ると、綺麗なロングヘアは羨ましい。


ぱっつん前髪に、クリクリしたつぶらな瞳。暗くて陰りのある、ミステリアスな雰囲気。



「…何ですか?」


不機嫌そうな顔をしている星野さん。


「…いや、何でもない!」



「そうだ、しおりん。いつもどこで服買ってるの?」


好奇心に目を輝かせている薫さん。


「私ですか?私は、主としてナチュラル系ですかね~。


"ALIVE(アライブ) death(デス) ALIVE(アライブ)"とか、"ROLECAKES(ロールケーキズ) FROM(フロム)"、"magic(マジック) region(リージュン)"などなどです。」



「オシャレねぇ…!」


「ありがとうございます!あの店も好きですけどね。」


私は、"LORISPORT(ロリスポーツ)"という服屋を指さす。


その服屋では、上品かつ少し甘めのガーリーファッションが売っている。


「へぇ…!♡」


「薫さんは、いつもどこで買ってるんですか?」


「あぁ、あたしは"Tutty(ツッティー)Go(ゴー)."、"Jazzlin(ジャズリン)"、"SHELL(シェル) Mr(ミスター).been(ビーン)"などね♡」


「ほぅほぅ…!」


薫さんが列挙したのは、どれも綺麗めギャル系姉ファッションの店だ。


ファッションの話題で盛り上がっていると、何者かに肩をトントンと叩かれた。



「ん?」


振り返ると、そこには懐中電灯で顔を照らした玲夜の姿。


「……?」


「あれ、お前怖がりちゃうかったっけ?」


「いやいやいや、ナメてんのか!」


コラー、と言って追い回す私に、ニコニコしながら駆けていく玲夜。 そんな私達を見て、薫さんはフフッと笑っている。



◇◆◇◆


そうして買い出しも終わり、備えるべきものは気持ちのみになった。


明日、裏野夢見ランドに突撃する。…戦じゃぁぁ!!



そんなことを言っていられるのも今のうちだということを、知る由もなかった。



明日、恐怖の世界が幕を開ける…!

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