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桜色の忘却―夢幻の廃跡―  作者: 星利
<廃遊園地の怪>
12/14

君たちは、ボクのモノ。


駅に着くと、そこに広がっていたのは、恐怖に支配された空間だった。


停電して止まった電車、駅に押し寄せている人混み、泣き出す赤ん坊、ザワザワとしている不穏な空間…。


電光掲示板には、"遅れ1時間"と表示されている。


「うわ、最悪やな!」


隣にいる玲夜が、自分の腕時計と電車の時間を見比べて言った。


◇◆◇◆


ようやく家に到着したのは、23時過ぎであった。


家に着くと、楽しみにしていたバラエティー番組が裏野夢見ランドについてのニュースに切り替わっていた。「廃遊園地の怪」としてパニックに陥る日本。


あの時間帯、スマホだけでなくガラケーやテレビ、ラジオ、無線までもが裏野夢見ランドに支配されていたらしい。


「あれ、…スマホが乗っ取られたの、私達だけじゃなかったんだ…。」


ぽつりと口にした私の言葉は、テレビニュースの中の騒ぎ立てる群衆にかき消された。



"あれで終わりじゃない。…きっと、何かが始まったんだ。"


ちぇるしーが、廃墟部のグループLIND(リンド)で何かを覚悟したように言った。(※LIND…今や日本中に普及したインスタントメッセージアプリ)


あの時空から降ってきた裏野夢見ランドの招待状が、机の上でニタリと嗤っていた。


◇◆◇◆


それからの日々、私は世間で何が起こっているのかわからないまま、混沌とした時間を過ごした。


10分程の犯行であったが、毎日のように新聞で大きく取り上げられ、世間を震撼させた。


その間、真っ先に疑われたのは、裏野夢見ランドが営業していた頃の支配人だ。


しかし、彼の名前は偽名であったことが発覚し、さらに忽然と姿を消していた。当時から覆面だったことからその顔を知る者もおらず、捜査は難航していた。(常に馬の被り物をしていた)



そんなある日のことだった。犯人は、思っていたよりもあっさり捕まった。


…それは、「廃遊園地の怪」から2週間後のこと。


裏野(うらの) (ただし)と名乗る男が自首したのだ。60代半ばで、薄汚いよれよれの服を着たガリガリのおじさんだった。


裏野は、「自分が犯人でぇす。裏野夢見ランドの元支配人かつ土地管理人なんですぅ。」と供述したという。


事件「廃遊園地の怪」は、早くも解決し、世間から忘れ去られるかのように思われた。



しかし…その容疑者・裏野は狂気に満ちていた。薬物疑惑と言った別の容疑も浮かび上がる。


逮捕され、連行されていく姿がテレビに映ったのだが…。


裏野は、両手でピースをし、可笑しくて楽しくて仕方がないという風に目を見開き、二タッと笑った。


そして、甲高い声で言った。



「君たちは、ボクのモノ。」


「…!」


…一気に体温が下がり、鳥肌が立った。


その時、一緒にテレビを見ていたお母さんがすっとんきょうな声を上げた。


「いい年したオッサンが"ボク"とか…キモッ!」


(そこかーい!)


確かにそのおじさんは、話し方がぶりっ子の少年みたいでヤバそうだったけれども…。



◇◆◇◆


5月2日(金曜日)のサークル活動中、ちぇるしーが言った。


「スマホなどから一斉に声が聞こえた仕組みは、緊急地震速報と同じようなものだろう」と。


緊急地震速報では、地震が来るのを察知した気象庁が各携帯電話会社に連絡し、エリアメールと呼ばれる仕組みを使って通信機器へと通知するのだという。


それを、あの時間裏野夢見ランドは何らかの方法で乗っ取り、悪用したのだ。


また、現実世界でもそこら一帯に声が響いていたのは、裏野夢見ランドがヘリを使って上空から放送していたからだという。空から落ちてきた招待状も、その時ばら撒かれたのだ。


「それに、停電してたっつーことは、…もしや電波をもジャックしたのか…!」


ちぇるしーが面食らったように言った。


「じゃっく…?


何処やらの海賊ですか?」


呑気にそう答えた私に、ちぇるしーはやれやれという顔をして説明してくれた。


「あのなー、…ジャックは英語で"不法に盗む"っちゅー意味だよ。


そんで、電波ジャックは、電波を盗んで乗っ取ること。」


「ほえー。」


話が難しそうだったのでそれ以上突っ込まないことにした。



「ところでちぇるしー先輩。私、バイト始めたいのですが。」


「バイトー?春灯さんも塾講するか?」


「ムリムリ、それは無理です!難しそうですもん!」


「じゃ、…そうだなー、…カフェとか?」


「お、いいですねカフェ!」


ポンと手を打った私は、薫さんに一喝された。


「こら、2人とも、サークル活動中はちゃんと集中しなさい!」


「「はーい。」」

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