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桜色の忘却―夢幻の廃跡―  作者: 星利
<廃遊園地の怪>
10/14

廃遊園地の挑戦状


「…ふむふむ。」


紙とペンを前に、考える人のポーズをしているちぇるしー。



「まず気になるのは、この"寝血襖(ねけつふすま)"だな。」


「ねけつふすま…?」


彼は、紙に平仮名で"ねけつふすま"と書いた。


ブツブツと呟きながら、その暗号を並び替えたりしている。そして、「…そういうことか!」と言いながら、手をポンと叩いて頷いた。



「春灯さん、さっき説明したシーザー式暗号かもしれない!」


「シーザーサラダですか?」


やれやれと首を振りながら、ちぇるしーは説明してくれた。



「あのなー…。古代ローマの軍事的指導者、ガイウス・ユリウス・カエサルって世界史で習っただろ?


そいつは、英語読みでシーザーっつうんだ。


そいつが使用したとされる暗号。」


「あー、カエサルは聞いたことあります!カエルとサルみたいなんで。」


「…バカにしないで、それぐらいちゃんと覚えとけ!」


「…はい。」


思わず叱咤されてしまい、しゅんとする私。


「でさ、その暗号では、アルファベットや平仮名などの文字を、いくつか同じ数ずつずらすんだ。」


「へぇ、…いくつずらすんですか?」


「モノによるよ。これは、わざわざ"ラッキー7"って書いてあるから、試しに前に7つずつ進めてみよう。」


ちぇるしーは紙にあいうえお順で"あ"から"ん"までの文字を書き、1文字ずつ7つ前に進めてみせた。



すると、"ちいさなかね"という文字が浮かび上がった!


「小さな金?つまり金欠ってことですね!私と一緒です!」


興奮する私に対して、ちぇるしーは冷静な顔をしている。


「おっけ、分かった。」


「それって、ポケベルのことよね?」


いつの間にか、薫さんも輪に加わっている。


「ぽけべる…?」


ほへぇとしている私。


「ポケベルっつーのは、日本で1986年頃から急速に普及した、携帯電話の前身みたいなもんだよ。


1996年にポケベルブームはピークを迎えた。


ちょうど俺らが生まれた頃だな。」


「へぇー、データ発信できる初期の機械と言ったところですか…。」


私は、少し賢そうな風をまとってそう言った。(今日の授業に出てきたフレーズである)


「でも、何で"小さなかね"がポケベルなんですか?」


「"ポケット"には"小さな"という意味があり、また、"かね(鐘)"は"ベル"と同義…すなわちポケットベルだからでしょう。」


向こうの席で廃墟についての論文を読んでいた星野さんが、冷静沈着な声で答えた。


「そう。だから、この数字をポケベルの暗号表に合わせてみよう。」


ちぇるしーは、あいうえお順の平仮名、アルファベット、数字、記号を10×10のマスに書いて表を作り、上から下にかけて1~0、左から右にかけて1~0とした。


「じゃ、春灯さん。この数字に当てはまる文字を探してほしい。」


そう言われたので、基本的に2つの数字を1組にして確かめると…。


挿絵(By みてみん)



「キタぁぁぁ!!」


私はぴょんと飛び上がった。暗号の謎が解けたのだ!


それを大声で読み上げる。



「うらのゆめみらんどへ ようこそ


ろくじゅうごねんたったとき きょうふのとびらは ふたたびひらかれる


ねんげつはときのながれ


いちどうおまちしております」



「…。」


「……。」


静まり返る一同。


…一体、何が始まるというのか?


「ちえた、あたし、この"年月は時の流れ"っていう言葉が、どうも腑に落ちないのよ。」


怪訝そうな顔をしている薫さん。


「年月は、時…、つまり時間…。」


そう呟いたちぇるしーは、顔を真っ青にして目を見開いた。


「裏野夢見ランドが開園したのは1952年12月24日。…いや、ちょっと待て…。


誰か、裏野夢見ランドの建設工事が行われ始めた日にちって知ってるか…?」


「それなら、1952年4月8日です。」


淡々と星野さんが答えた。


「えっ?えっ?」


話についていけない私は、首を傾げる。


「…つまりだ、今日は2017年4月8日。


裏野夢見ランドの本当の出発点となった日から65年経った今日…、」


ごくりと唾を飲み込む私達。



「1952年が時間…、おそらく19時52分に、何かが起こるかもしれない――!」


その言葉は、鉛のように私達の心にのしかかり、暗雲を運び、地震のような衝撃をもたらした。

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