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煉獄で生きる  作者: レゼ・モノクロ
和馬編1
8/29

ショッピングセンターへ……の前に偵察から。

ゾンビ達との戦闘描写は映画やドラマで十分見られるので、私はキャラクター達の描写をある程度優先して書いています。

とはいえ不足しがちな描写は後々修正したりするつもりです。

「これから近くのショッピングセンターまで遠征して食料や武器を確保する」

崎神高校の生存者8名全員が揃った教室で、黒板に書き込みながら遼之介はそう言った。


真っ先に意見を出したのは意外にも酒井先生だった

「ふむ、異論は無いが、実行班は誰にするのかね?私はもちろんこの学校の安全を確保するために留まるぞ」

意外という言葉は撤回する。コイツやっぱり自分の事しか考えてないぞ。


「出来れば全員で行くのが好ましいんだが、そうだな。酒井先生は待機するんだな?」


「あたしはもちろん行くわよ!」

美咲は徐々に口調が委員長時代に戻っている‥‥のかちょっとわからないけど、その顔に陰は無い。


「花梨も行きますよ!」

「真凛も行くよ」

朝倉姉妹は一人称に自分の名前を使う。

後日知ったのだが、親にも見分けて貰えないから自分たちから名乗り始めたんだそうな。


「僕も‥‥ちょっと怖いけど、頑張ります」

山田くんはゾンビ達とまともに戦ったことがない。

1度戦ったことのある姉妹達より気を払う必要があるだろう。


「俺も行くよ。鈴鹿も‥‥うん」

鈴鹿の方を見ると、コクコクと頷いていた。

ところで、鈴鹿の苗字を、俺はまだ知らない。

機会があったら聞いてみよう、と心のメモに記録して、遼之介に話の続きを促す。


「生徒全員が行くみたいっすね、先生はそれでも残りますか?」


酒井先生はぐぬぬ、と悩み始める。

1度残ると言ったプライドと、何かあった時に誰も助けてもらえない恐怖とを天秤に掛けているのかもしれない。

そのプライドの為に信頼を捨てている事をまだ気づいていないのだろう。

が、酒井先生は思い付いたようにこう言った


「生徒が行くなら引率者が必要になるよな?なら私も重い腰を上げざるを得ないというわけだ」

なんとまぁ即興の言い訳だろう。

誰も突っ込む気にならなかった。


それに、と酒井先生は続ける。

「私の車があれば先行してショッピングセンターまでの道を確保できるはずだ」

しかし遼之介はそれに対して反論を出す。


「この付近の道路の至る所に停車した車や横転した車が多数あって車じゃまともに移動できないっすよ。それこそ戦車なんかで他の車を潰しながら移動するくらいじゃないと。今のところ車はダメだな」

とはいえ大通りまで移動出来れば、そこからは車でも通行可能な幅の道がある。


その事を告げた遼之介に対し酒井先生が悔しそうにしていたが、ここで山田くんが手を上げて意見を出してきた。

「車を使っての移動、可能かもしれません」




山田くんの提案を黒板にまとめた遼之介は、簡単に説明する。

「つまり、学校裏の道は車が殆ど止まってないから確実に大通りまで移動できて、移動には学校のミニバスを使えばいい、ということだな?」


そうです、と山田くんは告げる

「となると問題がある。まず最初にミニバスをどう運転するかなんだが。酒井先生、出来ますか?」


「‥‥バスの運転経験は無いが、私以外ではどうしようもないな。なんとかやってみよう。なーに、私は優秀だ、完璧にやってみせるとも」

俺の見間違いだろうか、酒井先生が輝いて見える。

というより実際嬉しそうだな。


「後の問題は何があるんだ?」

運転手の問題は解決しそうだし、俺は先を促す。


遼之介は、あと一つ問題があると言った。





「大通りまでの裏道が今も使えるのか、ね‥‥」

確認の為の偵察班として、俺と花梨、それから鈴鹿が来ていた。

本当は花梨と2人だけのはずだったんだけど、鈴鹿がどうしてもと言うので連れてきた。

鈴鹿は滅多に喋らないが、であるが故にその言葉の重みは他の人達より重いのだ。

‥‥言い訳だった。ホントは俺が断りきれなかっただけなんだ。


そういうわけで裏道。

「ここを東に歩いて30分で大通りに抜けるらしい」


「ここ、ほんとに誰もいないですね?」

花梨がそう言うのだが、確かに誰もいない。

というか俺もこの道を使うのは初めてだ。


「元々人通りが少なかった道らしい。あまりにも少ない上、整備工事も後年に回されていたから、至る所がボロボロになっていると聞いたけど‥‥こりゃ酷いな」


この裏道に沿うようにして川が一つ走っている。

元は崎神川。その分流の一つがここにあるのだが‥‥

「うっわぁ‥‥このガードレール脆そう」

花梨が指さした先のガードレールは腐食してボロボロになり、至る所に穴が空いていた。


「ほんと工事遅らせ過ぎだろ‥‥大丈夫なのか?」


「んー、道路自体は崩れそうってわけでもないですし、ゾンビはいないし車も十分通れるくらいの道幅はありますし、大丈夫じゃないですか?」


「まぁ、先に進んでみよう」


鈴鹿は壊れかけのガードレールを蹴っていた。

危ないので回収して背中に背負う。

前と違ってバックパックを置いてきているから、このくらいなら全然余裕だ。

鈴鹿はしばらくじたばたした後、川から吹き付ける風を楽しみ始めた。大物である。


「そういえば和馬先輩って、好きな人とかいたりします?」

歩き始めて15分ほど経過した頃、花梨はそう聞いてきた。


「いきなりだな‥‥そういうのはなかったな、遊ぶ時とかも遼之介とかと遊んでたし、高校からは部活もやってないから、そもそも女子との交流が殆ど無かったような気がする」


「アレ?彼女とかいそうだな、って思ってました」

いないな‥‥


「悲しいかな。そういえば俺からも聞きたいことがあるんだ、君たち姉妹って一卵性って奴なのか?」


ああ、それですね、と花梨は嬉しそうに答える。

「そうですよ、私達2人は一卵性双生児として生まれて、一緒の学校でだいたい一緒に過ごしてきました」


「でもちょっと性格が違うよね」


「花梨はですね、中学の時にバスケットボール部に入ってたんです。真凜は弓道。

だからちょっとくらいは違うと思いますよ」


あれはちょっとの差なのか。

というかそれだけで変わるもんなのか。部活ってスゲーな。


「言われてみればおかしいかな?って思う時期はあったんですけど、気づいたら元の真凛に戻ってたし‥‥」

と言っていたが、これ以上聞くのもなんかな、と思い、相槌以外は返さなかった。

美咲のように踏み込みすぎて地雷を踏み抜くのは、あまりいいことじゃない。


さて、大通りの目印になる大型の看板を見つけた。

「よし、確認は出来たし、また学校に戻るぞ」


「了解です!」


いつの間にか道の側を流れていた川は隠れ、鈴鹿のテンションが目に見えて落ちていたが、戻りの道でまた川が見えるようになると、再び喜んで川を眺めていた。




「偵察班花梨、戻りましたー!」


「戻ったぞー」


ものすごく昇り降りのきつい非常階段を使って4階教室に戻る。

鈴鹿が上がる時に何か言っていたが、やっぱり上手く聞き取れなかった。ころ‥‥とか、そのくらいしか聞こえなかった。


「おかえりー、3人とも無事で良かったー!」

「むぎゅっ!?」

花梨は美咲に捕まえられ、教室の片隅に連れていかれた。


「おかえり、早速だが報告をたのむ。」

手短に遼之介に偵察内容を伝える。


ガードレールが壊れていること。

道路自体は安定してて、ゾンビも無く、比較的安全に移動可能なこと。


「ふむ、じゃあ裏道を使う案で決まりだな。今先生と山田がミニバスの確保に向かっている」


「ホントに酒井先生で大丈夫なのかな?」


「まぁあれだけやる気なんだ、少しくらいは信用しても良いと思うぜ。さて、ショッピングセンターについた後の手順はバスの中でするから、俺達も移動するぞ!」


おー!という返事が聞こえ、俺達は再び地獄の非常階段を降りる。

この階段の昇り降りがゾンビ退治よりも疲れるんだよな!

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