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煉獄で生きる  作者: レゼ・モノクロ
和馬編1
6/29

バリケード作り

大幅に修正されてます、特に酒井先生関係。

修正理由などはいずれ活動報告にでも。

「夜が来る」


会話を大人しく聞くことに飽きた鈴鹿が教室の周りを探検し、それにも飽きて戻ってきた後にそう言った。


「っと、やべぇな。ゾンビ共の夜の動きを見るなら屋上から見るのが安全だ」

「まだ作業終わってないんですけどー」

「また明日にでもやれるさ、とにかく屋上の拠点に戻ろう」


俺達は屋上に向かう。




「そういうわけで生存者が二人増えた。えーと‥‥」


知ってる人がいるが、知らない人もいるので、鈴鹿の紹介も兼ねて俺は名乗る。


「俺は一条和馬、こっちは鈴鹿。鈴鹿はあまり喋りたがらないから気をつけてくれ」

「一条くん、生きていたのかね?いやそれよりも‥‥日向くん、予定していた作業はどこまで進んだのだ?」


この人はうちの担任、酒井先生だ。

45歳くらいだと言われている。

俺は正確な年齢を知らないが、委員長あたりなら知っているかもしれない。


他にも三人ほどいるが、どれも見知らぬ顔だ。

うち2人の女子は顔が似ている。なるほどこの2人が例の朝倉姉妹だろう。


「あー、まぁほぼ終わってはいるんスけど、途中でこの2人が来たから全部終わったわけじゃ」

「必ず終わらせておけと言っただろう!バリケードが無ければここもいつ危険になるか」

「いや、俺と委員長でシャッターを閉じたからゾンビはそれほど多くないって」

「子供の言う事など信じられるか!とにかく終わらせてこい!」

「ッチ‥‥わーったよ、んじゃちょっと行ってくるわ」


酒井先生は‥‥前々からこんな感じのヤツだ。

どちらにせよバリケードを作るなら早いに越したことはないし、そう考えると酒井先生の言うことも間違ってはいない。

遼之介もそれはわかっているのだが、酒井先生は一言多い発言をする。

お互いに信用するまでは少し時間が掛かりそうだ。

踵を返して下に向かおうとする遼之介を、待ってください、と最後の1人が止める。


「1人では危険です。僕も行きます」

「山田か‥‥わかった、ついてきてくれ」


山田と呼ばれた男子生徒は立ち上がり、そのまま遼之介の後を追う。

二年生か一年生‥‥どっちかな。


後に残ったのは俺と鈴鹿、それに辰野さんと朝倉姉妹に酒井先生だった。

夜はゾンビの動きが素早くなる。つまり危険度が跳ね上がる。

2人だけで行かせるには不安があった。


「俺もアイツらを追う。辰野さん、鈴鹿を頼んでいいか」

「辰野、じゃなくて美咲って呼んでくれるなら引き受けるわよ」


そしてこちらにウインクをしてくる。


「わかったよ。じゃあ美咲さん、それに酒井先生も、鈴鹿を宜しく頼む」


任された!という美咲さんの声を背中に受けながら俺は階段を降りる。

二人の場所はさっきの教室だろう。




「和馬も来たのか‥‥早速だがその机を持ち上げてくれ」


遼之介はというと、別段危険な状況というわけでもなく作業を進めていた。


「危険でないならそれはそれでいいことだよな‥‥」


拍子抜けではあったが、大丈夫そうだ。

机を持ち上げる。


「持ち上げたら山田に渡してくれ、山田はそれを重ねていけ」

「わ、わかりました!」


俺は山田と呼ばれた男子生徒に机を渡す。


「さっき紹介したけど、俺は一条和馬、宜しく」


改めて自己紹介。そして名乗る時は自分から。

父の教えは大事なのだ。


「あ、え、えと。僕は山田輝彦って言います。宜しくお願いします」


よろしく、と挨拶しながら次の机を持ち上げて渡していく。

今やっている作業はバリケード作成だ。

机を重ねて壁にし、それを遼之介がテープ等で固定していく。

久しぶりの平和な時間だった。

夜の暗闇が広がる中、ただ一つだけ明かりのついた教室。

文化祭の準備の様だが実態は真逆だ。

生き残るための布石。防壁。

‥‥これが突破されるほどの数が来たら?と考えなくもないが、今は気にすることじゃないか。


「そういえば酒井先生なんだけど。あの人今もあんな調子なのか?」

「そうだな、相変わらずクソみたいな野郎だぜ。自分で動かずに指示だけ出したつもりになってるゲス野郎だ」

「パンデミックが起こる前からあんな調子だったししょうがないか‥‥」

「僕はてっきり家族が死んで精神がおかしくなったのかと‥‥」

「いいや、あれは昔からの性格だな、俺達のクラスメートはみんなアイツが嫌いだったぜ」


二か月前の体育祭では、練習の段階で散々的外れな指示を出した挙句、当日は欠勤して教師対抗の競技から逃げ出した実績がある。


「えぇ‥‥ちょっと、いやかなりショックです」

「尊敬とかしてたのか?」

「はい、あの人なんでこの学校にいるのかわからないくらい良い大学の出身」

「確かに学歴だけは凄いんだけどな‥。その学歴のせいでプライドだけ大きくなったんなら逆効果じゃねーか」


後、他の先生方が言っていたのだが‥‥『峠を攻めるのが上手い』らしい。

正直何のことかわからないが、そういう実験でもしてたんだろうか。


「とはいえ今は生き残ることが先決だ。酒井先生を相手にしている余裕もないから、あんな感じで自由にさせている」

「そのうち打ち解けるかもしれませんし‥‥」

「そっか‥‥あ、山田くんこれが最後の机ね」

「作るのに結構時間掛かりましたね‥‥よし、と」

「こっちも終わったぜ。屋上に戻る前に和馬に夜のゾンビを見せてやる。こっちだ」




夜の街は、未だに街灯に照らされて明るさを保っていた。

そのうちに街灯が点かなくなる日もある。

が、それよりも目を引くのは、ゾンビ達の活動だった。


「アレが‥‥夜のゾンビ‥‥」


そこにいたのは、もはや走っているといっても過言ではないスピードで動き回るゾンビの姿があった。

ただ走っているだけではなく、獲物を探して回ってるようだ。


「痛覚も無いからあの状態の時は常にフルスピードで走ってくる。狙われたら殺さないと永遠に追ってくるぞ」


こんなスピードで襲われたらたまったもんじゃない。

少なくとも夜は出歩かない方が良さそうだ。


「屋内だと常時このスピードなのか‥‥?」

「いや、日没を感知して加速する。正直何が何だかわからん」

「僕の仮説なんですけど、人間は時計の無い部屋でも寝る時間だけは凡そ同じ時間になるそうです。ゾンビ達も同じように夜を体内時計だけで把握しているのかもしれません」


ゾンビになって残るのは理性じゃなくて、そういった野性的、本能的な部分が多いから、山田くんが言うことも一理あるな、と思う。


「山田の仮説も確証は無い、とにかく奴らは夜になると素早くなる、というのがかなり厄介な所だと覚えておいてくれ」

「ただ素早くなるだけでそこまで厄介になるのか?正直あのふざけた顎の力のほうがヤバイと思ったんだけども」


あのチカラはなんなんだと思うが、遼之介の意見は違った。


「単純に日毎に動く行動範囲が広くなるってだけでかなり厄介だ。奴らは音を察知して集まるが‥‥走って移動しているとなると、どんな安全な場所でも次の日にはゾンビの溜まり場になりかねない」


遼之介は口が悪く、教師相手でも臆すこと無く反論するから評価を下げられることが多いが、とても聡明な男だ。


「遼之介がそこまで言うくらいだ、確かに危険だな」


俺の心の対ゾンビメモに残しておこう、と思い始めた頃、山田くんがそろそろ、と口を開く。


「先輩方、そろそろ帰りましょう。僕は残してきた人達が心配です」

「つっても屋上は一番安全だし‥‥一応酒井先生がいるからな」

「やることは終わったし、俺も疲れたんだ。ところで俺が寝る場所ってある?」


こうして俺達は完成したバリケードを背に、屋上へと帰っていく。

やるべき事は沢山あるが、今しばらくは遼之介達の手伝いでもしようか、と俺は考えていた。

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