表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
煉獄で生きる  作者: レゼ・モノクロ
和馬編1
5/29

新たな生存者と情報交換。

説明回のような‥‥?

『とにかく上がってこいよ!あ、非常用の外階段で上がれよ!必ず!』

という(天にしてはやたら近い位置にいる)天の導きに従い、俺と鈴鹿は一段一段が妙にキツイ外階段を登っていた。


「これ誰が設計したんだよ‥‥」


滅多に使われない非常階段である。避難訓練の時にしか出番が無かったが、こうして登るとなるとものすごく大変だった。


ちなみに鈴鹿の場合はもっと大変で、俺の右腕を掴んで手すりのようにして上がっている。

時々鈴鹿が小さな声で何か言っているのだが、聞き取れなかった。


「‥‥してやる」


とかそのくらいの音量である。

その後、無事に階段を登りきり、既に開いている非常扉を通り抜ける。

そしてさっきの2人がいた部屋に入る。


「お、来たか!3日ぶりだな‥‥和馬」

「久しぶり、遼之介」


日向遼之介。俺の昔からの友達だ。

剣道部のキャプテンだったが受験の為につい最近辞めたらしい。


「ちーっす和馬っちー!」

「えー、と。誰?」


金髪ギャル。誰だコイツ。


「ひどいなー、同じクラスの美咲だっつの」

「‥‥‥‥あぁ! 金髪だから全然分からなかったよ」


辰野美咲。同じクラスでたしか‥‥委員長だったような‥‥?

そもそも黒髪だったし、あの真面目系の委員長が‥‥?


「パンデミックが起きて、校則もクソも無くなったから思い切ってイメチェンしましたー、的な?」

的な?って言われても、その。

違和感がありすぎて何言ってるのかわかりません。


「普通に考えて委員長がこんな金髪になってたら誰も気づかねぇよ‥‥まぁ座れよ和馬、そこの子も座ってくれ」


俺と鈴鹿は適当な椅子に座る。

情報交換の時間だ。


「まずは俺等から質問させてくれや、お前、この三日間どこにいたんだ?」

「自宅だよ。パンデミックが起きたその日、俺は学校を休んでたんだ」

「お前が休むのは滅多に無いから、珍しいと思ったんだが‥‥なんで休んだんだ?」


それは犬に噛まれた噛み跡が酷くて、と説明しようとして‥‥

そういえば。

俺の足の噛み跡はどうなってたんだっけ?


「ええと、それは‥‥‥‥これを見てくれればわかるかも」


確認の意味も込めて俺は足の噛み跡を見せようとした。


「‥‥何も無いんだが」

「なーんにも無いね?」


何も。

傷痕も、青くなっていた肌も。

全部元の状態になっていた。


「‥‥アレ?」

「どういうことー?」

「休む日の前日、近所の犬に噛まれたんだ。その傷痕がひどい状態だったから休んだんだけど‥‥」

「‥‥何も無いな、痕すら無いじゃねーか」


俺の身体に何が起きているんだ‥‥?


「まぁいい、お前は嘘をつかない奴だし信じるさ。とにかく初日はわかった。じゃあ後の2日は?」

「えーと、傷に関わるんだけど、避難しようとした時に傷痕が熱くなって、それで意識を失って‥‥気づいたら今日の昼頃になってたんだ」

「2日も意識を失う程の傷‥‥?一体なんなのかしら」

「委員長、口調が戻ってるぞ」


辰野さんは元々清楚系として人気だった。その頃の口調だ。

できればそのまま戻らないでくれ、キャラがもうわからなくなってきた。


「ん、んん!へ、へー、なんかよく分かんないけど凄いジャン」


もうブレッブレの人だなぁ、と思う。


「うーむ、結論を決めるには材料が足りないな。この話は後で考えよう。さて最後の質問だが、その子は誰なんだ?」


遼之介は鈴鹿を見ながら俺に聞く。


「あぁ、こっちに来る途中で横転した車の中から助け出してきた。名前は」

「鈴鹿」


鈴鹿が一言だけ喋る。


「そう鈴鹿だ。見ての通り滅多に喋らない」


余計な一言だったのか鈴鹿から軽く叩かれる、痛い。


「そうか‥‥大変だったな。次はそっちが質問してくれ、答えられることなら答えよう」


聞きたいことか‥‥それなら沢山ある。


「このパンデミックは何なんだ?あのゾンビ達も‥‥何なんだ?」

「俺たちにも良く分かっていない。全世界で同時に発生して、そして一日でインフラを壊滅させたことぐらいしか」

「つっても、あのゾンビ達の特徴はある程度分かってるんだけどねー、頭部の筋肉以外が軒並み弱くなって?顎の力が跳ね上がってて、あとはー」

「夜になると奴らは素早くなる」

「そうそれ!」


辰野さんが遼之介に向かって指をパチンと鳴らす。

だいたい持ってる情報は同じか。


「顎の力は俺も1度確認した。包丁を噛み砕かれたんだ」

「そりゃ記録更新だな、俺達が確認したのは箒の持ち手部分を噛み砕いたとこまでだ」


嫌な更新だよそれ。


「所で、夜になると素早くなる、というのは‥‥?」

「もうそろそろ夜だしー、その時に見られるかもね!」


想像出来ないし、実際に見て確認するしかないか‥‥

あとの質問は、と。


「次の質問は‥‥この学校で生き残っているのは2人だけか?」

「いや、屋上にまだ数人いる。俺達の担任と2年の山田と、1年の朝倉姉妹だな」

「双子の姉妹っていいよねー、私も妹か弟欲しかったなー」

「案外生きてる‥‥というか、避難場所は体育館じゃなかったの?さっき見た時はひどい有様だったけど」


それを聞くと、遼之介も辰野さんも嫌な顔をしていた。


「‥‥避難してきた人の中に感染者がいた」

「それも深夜に発症して襲いかかるのだから、見回りで外に居た人、体育館に行かなかった人、体育館から逃げ出した人以外は全員‥‥死んだわ」

「それは‥‥‥‥‥‥」

「その時見回りにいた私達2人が体育館に戻った時にはもう手遅れで、全員、瀕死かゾンビだったわ」

「だから俺たちは体育館の2階に行って、防火用のシャッターを閉じて奴らを閉じ込めた」


あのシャッターは遼之介が閉めたのか。


「つまり、生存者は‥‥」

「和馬達を入れても8人だな。全く‥‥最悪だった」


重い空気の中、俺は最後の質問をした。


「最後に聞きたい。その避難してきた人達の中に‥‥俺の両親を見なかったか?」

「‥‥いや、見ていない」


遼之介は俺の両親を知っているし、お互いに顔を合わせている。


俺は両親がまだ生きている希望を持てたことに感謝すると同時に、同じように学校に避難したであろう妹を心配せざるを得なかった。


和葉‥‥生きていてくれ。

遼之介達のエピソードも描きたい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ