2日後、家から見た外の世界。
7/24修正
2日。
それが俺が意識を失ってからの経過日数である。
意識を取り戻して直ぐにスマホの日付時刻を確認した俺は、その事を自覚するまでにかなりの時間を必要とした。
「どうなってんだ‥‥ニュースどころかどこの放送局からの放送も無い‥‥」
電気はまだあるのかテレビも付く、明かりも付く。
だけど何も放送されていない。
いや、不協和音のようなピーという音が響き、避難してくださいというテロップだけが画面に表示されている。
多分、もう放送局に人が残っていないのだろう。
避難したか、あるいは‥‥蘇った死体たち、ゾンビ共に襲われたか。
俺は家の階段を上がり、普段入ることのない和葉の部屋に入る。
和葉の部屋は2階の片隅にあり、ベランダから周囲を確認するのに最も向いた位置にある。
和葉がベランダに出る時に使っているのであろう、乙女チックなサンダルを借りてベランダに出る。
そしてこの目で見た外は‥‥外は地獄だった。
住宅街であるこの付近の道路の何処を見ても、死体がある。
視力が1.2あるのが密かな自慢だった俺だが、今回はそれがマイナスの作用を引き起こした。
死体のどれを見ても、何処かが損壊している。
首が落ちかけていたり、内臓が腹から飛び出ていたり。
下半身が無かったり。
燃えて炭化したのか、黒くなっていたり。
それらの死体が鮮明に映った。
「‥‥‥‥‥‥!」
今すぐにでも吐き出しそうだ。
というか吐く。
幸いにして意識を取り戻してからまだ何も食べていない。
出るのは只の胃液らしい何か。
これ以上妹のベランダを汚すのも別の意味でヤバイと思った俺は家の階段を滑るように降り、トイレに直行する。
「おェッ!!ゲホッ!!」
ほんの少し前まであった日常が、壊れているのを自覚した。
更に数回ほど吐いたあと、ようやく俺は落ち着いて外を見ることが出来た。
こんな世界に慣れるなんて無理だと思いながらも、慣れ始めている自分が嫌になる。
落ち着いて来ると、少しずつ思考が過去に遡っていく。
「父さんや母さん、和葉は大丈夫なのか‥‥?」
何となく頭に浮かんだ事を言葉にした。
そして意識を失う直前の父とのやりとりを思い出した。
「避難場所があるんだった‥‥!」
とにかく家族を探さないと。
俺が何故あの時意識を失ったのか、そもそもこのパンデミックは何なのか。
何もかも分からないことだらけだけど、俺は生きている。
やることがある。
父にも頼まれている。
なら、やらなきゃ。
「‥‥とにかく準備しよう。ゾンビも1度確認しないと」
どんな風に襲いかかってくるのか、ニュースでは説明がなかった。
だから自分でゾンビを見つけ、観察しなくちゃいけない。
例えそれが、どんな無残な人間の姿であっても。
生き残る為なのだから。
決意を固める。
まずは災害用に備えて保存してある食料を探そう。