パンデミック初日
更新ペース不明、頭に浮かんだアイデアを放出する形で書き重ねていきます。
予約投稿である程度修正しながら書こうと思ったのですが、お蔵入りになりそうな予感もするのでとりあえず公開しながらちょくちょく修正していきます。
7/23追記
エピソード後半の文章との矛盾が幾つかあったので修正。
また、読み直して気に入らなかった表現などの書き換え等。
その日、俺は近所の犬から受けた噛み傷が痛み、高校を休んでゲームをしていた。
実際そこまで痛いわけではなかったが、傷周りがかなり酷い見た目だった。
そこだけ肌の色が青くなっているように見え、あまりにも見た目が悪すぎて学校への登校を自主的に拒否した。
せめて選択科目で総合体育が無ければ‥‥座学オンリーなら良かったんだけど‥‥
というよりあの犬、普段はそんな行動をしない温厚な奴なのだ。身近な存在でもあったので、噛まれるとは思ってなかった俺は完全に油断していたわけだ。
実際学校を休まなければいけないくらいの傷を受けた俺としては、もう2度あの犬に素足を晒さないと誓った。もう夏も近いから長ズボンは勘弁して欲しいとこだが。
看病が不要と判断した両親と妹はそれぞれの仕事と学業をしにいく。
両親は共働きなので同じ職場に、一つ下の妹も、自分の学校に向かった。
ちなみに妹の通う高校は俺と違い、私立桜角女学園と呼ばれる比較的お嬢様系が多い私立高校だ。
かなり受験難易度が高いところと聞き及んでいたが、妹はサクッと合格した。
一体いつ勉強していたんだと聞くと、別にしてないと答えていた。
俺は妹‥‥和葉がなぜあんな受験をした理由が、よく分かってなかったりする
まぁ、和葉には和葉の生き方がある。
ちょっとしたシスコンの兄じゃ、止めることは出来ないからな。
さて、有能な妹と比較すると無能な兄の俺はというと、滅多に取らない休みを満喫するべく自宅でゲームをしているわけだったのだ(というか出られるはずもない)が、我が家の電話が鳴っているので取りに行く。
あまり活用しない固定電話の受話器を手に取り相手の声を聞くと、聞き慣れた父の声だった。
「和馬か、良かった家の外には出ていないな?」
その声は普段とは違い焦りを感じられるが、間違いなく父の声だ。
「どうしたの父さん?職場から掛けるなんて珍しいね」
「お前もしかして‥‥とにかくテレビを付けろ、ニュースを見るんだ、急げ!」
俺の発言に焦りがさらに加速したのか、父は命令してくる。本当に珍しい。
ゲームに使用していたテレビのチャンネルをニュース番組に切り替えようとして、いつもならこの時間帯にアニメを放送している放送局が緊急放送をしていることに気づいた。
その緊急放送の内容はというと。
「世界全域で死んだはずの人間が蘇り、生きている人間に襲いかかる」
というものだった。
まるでゾンビ映画みたいだ。
ただし、同時中継される各地の映像では半分ほど胴体の欠けた人間が、本当に死体が動いている。
本物だった。
電話を握る手が震えだした。
「‥‥見たよ。ニュース」
「あぁ。これから父さんと母さんも避難する。お前達は‥‥っなんだ!?」
さらに電話の向こうからガラスを叩く音が聞こえる。
「っ!私たちの避難場所はお前の通う高校が一番近い、私たちはそっちに避難する!」
父の今まで聞いたことが無い焦りを含んだ声が、逆に冷静さを取り戻させる。
和葉はまだ‥‥!
「和葉は‥‥和葉はまだあっちの高校にいる!連絡は出来ないのか!?」
「和葉の高校は携帯の持ち込みが禁止されていてこちらからの連絡が繋がらない‥‥和葉の高校も避難場所のはずだ。きっと大丈夫」
「大丈夫って‥‥」
「とにかく!お前は家で避難の準備をしたら高校に迎え!避難場所の体育館で合流しよう!こっちは‥‥急がないと‥‥!」
「待ってくれ! ‥‥切れてる‥‥ああもう!!」
父は一方的に話すと電話を切った。よほど危ない状況なのだろう。
すぐに掛け直してみたが、今度は電話回線がパンクしているのか、それともそれどころじゃないのか。電話は全く繋がる気配がなかった。
「とにかく急いで準備しなきゃいけないか」
何が必要なんだ?食料?水?
あぁもうどっから手を出せ‥‥ば‥‥?
‥‥足の傷が痛む。俺自身が燃えているかのような感覚。
その感覚に気づいた時には、俺はフローリング床に熱烈なキスを打ち込んでいた。
‥‥‥‥身体が動かない。熱い。
思い出すのは噛まれた時のあの犬の吠える声だ。
普段は温厚な隣人の犬が、あの時だけは確かに異常だったのだ。
‥‥これもしかして‥‥俺‥‥
もう感染しているんじゃ‥‥?
思考の一つがそう結論した直後、俺は意識を失い床に倒れた。
なお、妹視点は和馬編の区切りが付くまでは一切無いので、しばらくの間我慢してください。