3話 転生
やっと転生します
濃い緑の香りが鼻腔をくすぐる。
こんな匂いを嗅いだのは戦時中以来だろうか。
「...ぅ」
俺は目を覚ました。
どうやら倒れていたらしい。
「...ここは何処だ?」
俺は森の中にいた。
「なんだって森の中に...わざわざ俺をここまで運んで置いていったとは考えにくいな」
そもそも俺は永瀬組の事務所で、まだ生きていた構成員に刺されたハズだ。
「傷は...ないな」
着ていたスーツのワイシャツにはべっとりと血が付着していたが、傷は綺麗さっぱり消えていた。
血が着いたワイシャツを着ているのも癪なので、俺はワイシャツを投げ捨てた。
「...ますます意味が分からん」
とりあえず森から出よう。
俺は立ち上がり、歩き出した。
ーーーーーーーーーー
歩き始めてから相当経ったが、未だに森からは抜け出せない。
「こりゃ相当デカい森ん中だな」
最悪野宿か、そう考えていると奥の方から声が聞こえた。
「そっちに行ったぞ!」
「うわっ!」
「逃げられる!追うぞ!」
どうやら何かを追っているようだ。
「あっちの方に人がいるのか、森の抜け方を聞いてみるのも手だな」
周りの草が揺れる音がする。
何かが動いている、そのせいで草が揺れているようだ。
「人ではないな、となると....」
動物か。
「グゥアア!」
前方の草から目が3つある、黒い毛の犬のような生き物が牙を剥き出しにして飛びかかってきた。
俺は上体を少し横にそらし
「オラッ!」
犬の顎にアッパーをいれた。
「グギュ!」
三ツ目の犬は僅かに後方へ飛ばされる。
「グゥ...ァ....」
犬はその場で動かなくなった。
どうやら犬は手負いのようだ、よく見ると折れた矢や、小さめのナイフが体に刺さっていた。
「死んだわけじゃなさそうだな」
呼吸はしているので恐らく気絶しただけだろう。
「おーいアンタ!大丈夫か!」
先ほどこの犬を追っていたであろう集団が、くさをかき分けこちらにやって来た。
「ん?ああ、見ての通り問題なしだ」
見ると、大剣を持った男とローブのようなものを羽織った男、弓を持った女、そして剣を腰に差した女がそこにいた。
しかし全員変な格好だな、サーカス団か何かか?
「いやーすまねぇな、アイズウルフがそっちに行っちまって」
「気にするな、手負いだったせいか、殴ったらノビちまったしな」
男達はアイズウルフに目を向ける。
ローブの男が呟く。
「まだ消えていない、捕獲するぞ」
男に続き、弓を持った女も口を開く。
「傷はあるけど...まあこっちの方が高く売れるわね」
男と女は縄を取り出し、アイズウルフを縛り始めた。
「なんか勝手に話を進めちまってごめんな、金はアンタに渡すからそれで勘弁してくれ、えっと...」
大剣を持った男が申し訳なさそうに言った。
そういえばまだ名乗っていなかったな。
「すまない、名乗るのが遅れたな俺の名前は一ノ瀬 創真だ」
俺は握手をしようと手を伸ばした。
男は俺の手を取り口を開く。
「ソーマか、俺はアレフ、あっちでアイズウルフを縛ってる男がキーマ、女の方がリズ、こいつが...」
剣を腰に差した女が俺の方を見る。
「ライラだ」
「アレフにキーマ、リズ、ライラか...よろしくな」
全員外国人みたいな名前だな...。
アレフは口角を上げ言った。
「ああ、よろしくなソーマ!」
まあ悪いヤツではなさそうだ。
構想の段階よりも文字数が多くなったでござる
2016/08/21 ワイシャツを捨てる描写が抜けていたので追加