2話 油断
「永瀬組か...」
永瀬組はウチとあまり規模は変わらない組織らしい、ただ後ろにはデカい組織が付いてるとかなんとか...。
そのデカい組織ってのが何なのかは知らないが...コイツら永瀬組はあまり良く思われてないそうだ。
「ま、その辺の事は鉄砲玉の俺には関係ないか」
そんな事を呟きながら、俺は車のトランクから刀と2丁の拳銃を取り出した。
「さっさと終わらせて、組のヤツらと飯でも食いに行きたいね」
皮肉を交えた言葉を呟き、永瀬組の事務所に足を踏み入れた。
中に入ると如何にも下っ端のチンピラらしき男が数人いた。
「あん?」
「なんだオッサ...」
俺は目の前のチンピラAに向かって走り出し、持っていた刀で切りつけた。
「アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
「テメェ!何しやがる!」
チンピラBが殴りかかってくる。
俺はその拳を躱し、そのまま足を蹴って転ばせた。
「悪いな兄ちゃん達、この組潰させてもらうぜ」
ーーーーーーーーーー
何人もの男達が血まみれで倒れている。
その中心には同じく血まみれの創真と怯えた様子の男が立っていた。
男の名前は永瀬明宏、永瀬組の組長だ。
永瀬は声を荒げて叫んだ。
「何なんだよお前!」
永瀬を見据えながら、創真は言った。
「俺は黒崎組の一ノ瀬ってモンだ、組のためにアンタらを潰しに来た」
「黒崎組だと...?そんなチンケな組がウチに手出してどうなるか分かってんか!!俺らのバックには東武連合が居るんだぞ!?」
永瀬はニヤリと笑みを浮かべながら言った。
「テメェらもう終わりだよ」
「...アンタら、その東武連合からよく思われてないって事知らないのか?」
「な、何?」
「知らねぇのか、まあ自分らの行いをあの世で後悔するんだな」
俺は永瀬に拳銃を向けながらそう告げる。
「ちくしょう...」
「じゃあな」
乾いた銃声が、部屋に響く。
「...終わったな」
俺はもう、組の連中《家族》と会うことは出来ないだろう。
じきに警察がやってきて、俺を捕まえるハズだ。
そうなればこれからの一生を、檻の中で過ごすことになる。
だが悔いはない。
かけがえのない、大切なものを守ることができたから。
こんな時に、組にいた頃の事を思い出していた。
自然と笑が零れた。
感傷に浸るなんて歳をとったもんだ。
そんな事を考えていた。
だから俺は気付けなかった。
まだ息があった永瀬組の構成員が、俺を殺そうとしていた事に。
背中に激痛が走る。
「ッ!?」
背中から胸に、刀が貫通していた。
まだ残ってやがったのか!?
「永瀬の親父の敵...取らせてもらうぜ...」
俺の体から刀が引き抜かれ、傷口から血が溢れ出す。
「チッ...!完全に..ッ...油断したな....」
傷口から血が滝のように流れ出ていく。
「今までのツケが回ったか...」
意識が遠のく。
今日この日、俺は、一ノ瀬 創真は、死んだ。
次の話でやっと転生します...遅い