表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光源氏には向いてない  作者: キョン子
いづれの御時にか、哀れな求職者ありけり
1/36

プロローグ

 源氏物語。

 言わずもがな日本で最も有名な古典文学作品のひとつだ。

 およそほとんどの人は美しい貴公子がたくさんの女性と恋に落ちる話、という認識をしていることだろう。間違いではない。源氏物語においてストーリーの主軸は主人公である源氏の恋愛模様であり、天皇の子として生まれながら臣下の身分に降り、義理の母・藤壷をはじめ数多の女君と恋をする姿は千年昔から変わらない人気を博している。

 しかし、千年語り継がれてきたこの作品の魅力はそれだけに留まらない。あくまで恋愛小説や出世譚の形を取りつつも、著者である紫式部が繰り返し描いたのは登場人物の絶え間ない苦悩だ。宇治十帖と呼ばれる第三部では厭世観の強い主人公・薫の姿が描かれるが、源氏の華やかさに目が行きがちな第一部、第二部においても満たされない気持ちや言い尽くせない寂しさをそこかしこに感じることが出来る。

 栄華と苦悩。煌びやかな宮廷生活と華やかな恋を描きながら、物語は一貫して世の無情さを見つめ、仏教によって安寧を求める登場人物たちの姿を描き出す。特に源氏の正妻格として登場する紫の上は、自他ともに認める源氏の一の人にも関わらず、晩年まで彼の浮気心に振り回され続ける女君だ。愛されながらも子供が出来ないという不安、そして女三宮降嫁により彼女の憂いは最大限に深まり、出家を望むようになる。

 人の世にあって最も権力を持つ男の妻でありながら、彼女が望んだことは煩悩や人の業から遠く離れた心の安寧だった――。

 


 これは、源氏物語に長い間魅せられた男が研究者として成功する物語……ではない。

 うだつの上がらない男が自分だけの紫の上を見付ける真実の愛の物語……でもない。

 それに近い体裁を整えつつ、次々と降って来る予想外の事態にひたすら右往左往してたまに痛手を負ったりしながら、それでもなんとか回復しながら生き抜いた男の、とある三ヶ月間の記録。


 だと、思う……多分。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ