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07 なんで私のおこずかい、こんなに減ってるの?

 最近おこずかいが、減っているような気がする。あの男が来てからだ。

つい今さっき、壁越に隠れて見ていたんだけど、母がその男にお金の様なものを渡しているのが見えた。母は、その男にまるっきり甘いのだ。

スグに、「広都ちゃん、広都ちゃんご飯まだあるからたくさん食べてね。」だとか「広都ちゃん、お菓子もたくさんあるから、遠慮しないで食べていいのよ。」とか、まるで成長期の子供を相手している。お母さんのようだ。何だか、そのやりとりを考えただけでも、吐き気がする。それにしても母が渡したお金をその男がどういう風に使っているのかが気になる。

多分、貰った分、水を垂れ流すかのように使い。遊び回っているに違いない、

そう考えると私は、非常に怒りを覚え自分のハラワタが煮えくり返りそうになった。

そうだ!!

あの男がどういう風にお金を使っているのか確かめてみよう。そして、それを父に報告して、あの男をこの家から追い出す手立てを考えよう!!

それにしても、なかなか外に出ないな~~。

私は、台所と自分の部屋とを極端に行き来し、冷蔵庫の2ℓのジュースを取っては、置いて、取っては置いてを何回も繰り返していた。そして、だんだんと2ℓのジュースも底をつきそうになった頃。

「おっ!?」

やっとその男に動きがあった。

、すると、その男の側にいて一緒にお菓子を食べながらテレビを見ていた晴都が「お兄ちゃん、どこに行くの?」と聞いてきた。

男は、大きな口を開け、よだれが、そこから出ていた。そして、目の玉がどこに向いているのか分からない狂った表情のまま、

「え”ーえ”ーえ”ー。」

と数回、言葉にならない声を発して家を出て行った。

今だ!!

私は、見つからない様に慎重に、重たい足をゆっくりとトンと地面に置くようにして歩き、あの男の後ろを追った。

細かな路地を歩き、コンビニを抜け、人が多いい場所へと出た、どこへ向かっているのだろう?

これって、もしかして駅に向かっているんじゃないの?

いつの間にか私は電車に乗っていた。本当にこの男は、どこに向かっているのだろう?

点々と民家とビルを通り過ぎ遠くには、大きな高層ビルがそびえ建っていた。

私は、隠れるようにして、その男とは別の車両に乗って様子を見ていた。その男は、電車の出入り口付近の手すりにつかまって、色とりどりと風のようにビュービューと変わる景色を一点の眼差しでじっと見ていた。「あっ!?」降りた。

新宿か、もしや、歌舞伎町に行ってキャバクラとか行くんじゃないの?

絶対そうだ。そうしか考えられない。が

混雑してる中、私は、のそのそと、つま先歩きをしながら人を避け、こっそりとあの男を追った。

「あれ?ここって。」

そこは、普通の公園だった。だけど、そこを歩いている人間は、あまりいなくて、ダンボールや木材で小屋みたいのを張っているホームレスの人達がたくさんいた。

私は、見つからないように植えられた小さな木に、こっそり隠れ、その男の後ろをできるだけ違和感のないように歩いていたが・・無理があるな。そう思いながら、後ろをつけていた。

すると、男は、鉄の棒や木材で作られていて、上には、ブルーシートが張りめぐらされている。小さな小屋の前に立ち止まった。そして、出口を塞いでいるシートに手を触れガサガサと合図のようなものをした。

「今、行くよ。」

そう小さな声で、聞こえるか聞こえないか、分からないような微かな声を耳にした。

木の後ろで隠れて見ていると、その小屋の中から髪はツヤッツヤで油ぎっていて、ヒゲは、というとボウボウで、まるで針ネズミの背中の毛が逆立って直列で下に立っているような、顔の人が現れた。

「久しぶりだな。」

「え”ーえ”ー。」

2人の声が私から、遠すぎたので、小屋の後ろまで回って聞く事にした。

「広都いつも、ありがとうな。」

「・・・・・・。」

そう聞こえて来たので小屋の陰から隠れて見てみると、そのホームレスのおじさんに、いくらかは、確かではないけれど、5千円程度のお金を男は、少し震えた手で渡していた。

この男が、その小汚い得体の知らないホームレスのおじさんにお金を渡しているから、私のおこずかいがチョクチョクと減っているのか、そう考えると、何か少しムカついた。

こんな今の社会から離れた場所で暮らして、何もせずにのうのうと生きている早く仕事みつけて、働けって感じだ。

「広都、本当にいつも済まないな。」

「・・・・・・。」

「俺は、ずっと後悔しているんだよ。」

「・・・・・・。」

「お前の母さんと別れて、そして、お前を施設に預けた事を・・・でも、仕方なかったんだよ。お前を引き取りは、したものの、仕事を失敗して、辞めるハメになっちまった・・だからお前を施設に入れるしかなかったんだ。」

「・・・・・・。」

この2人、親子だったの!?

だったら、なおさら、このオッサン早く職を見つけて仕事しろよ!!息子には、悪いと思っているんでしょ!?だったら早くこの現状に気付けよ!!私は、このおじさんのあまりにも責任の無さに唖然とした。

だって矛盾しているでしょう、言っている事とやっている事が私でも分かるよ、そんな事ぐらい。

本当にこの社会のゴミだよ。すると、男は、息が詰まって苦しそうな声で必死に何かを訴えるかのように言った。

「おぉ・・・おぉ・・・れぇ・・・にぃ・・・とっおって、は、大切なぁ・・・一人ぃぃ・・の・・お父さん・・・だぁ・・から。」もう何を言ってるのか全然分からなかった。でも、2人泣いていた、息も切れるくらい泣いていた。

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