03 ドラマ【愛のために】
小学校の近くの道には、児童が多く列をなし登校していた。
秋の涼しげな風が少し厚着をした子供を吹き付ける。ルナの弟は、教室に入り自分の椅子に座った。そして、机の中から教科書を出しページをめくった。すると、鉛筆で数ページに渡りバカ、死ね、のろまと言う字が大きく書きつづられていた。
ルナの弟は、それを見て唇をかみしめて自分の持っていた消しゴムで、その悪口をひたすら消した。そうすると、教室の後ろの隅にいた三人組のクラスメイトの男子生徒が大声で笑っていた。
下校途中ルナの弟は、突然三人組の男子生徒に囲まれて学校から少し離れた、公園に連れて行かれた。そして、急に同じクラスの生徒の一人に胸を押されて倒れ込んだ。
「バカ、死ね、お前みたいのは、死ねば良いんだよ。」
「こいつ、跳び箱三段も飛べないんだぜ、幼稚園以下かお前は!!」
「こないだのテストなんか15点だっただろう。頭も腐れてやがんの。」
と三人組の男子生徒は、笑ってルナの弟を上から見上げていた。
「ただいま~~!!」
さっき罵られていたのが嘘みたいな、元気な声でルナの弟は、玄関を開けた。
そして、リビングへと向かうと、その男の姿しかなかった。男は、何一つ表情も変えずにテレビの方を向きずっと見ていた。
「なんだお母さんいないんだ。」
ルナの弟は、台所の近くにある食器棚の一番下のとってに手をやり開け棒状のチョコレートのお菓子の袋を手に取り自分の部屋に行こうとしたが、その男の事が気になり、そのままソファーへと向かった。
「お兄ちゃん、コレ。」
「・・・・・・。」
男は何も言わずにルナの弟から棒状のチョコレートを4本手に取り、一気にたいらげた。
「まだ、いっぱいあるから、いっぱい食べていいよ。」
とルナの弟が言うと、その男は、次々と表情を何も変えずに食べ続けた。
「実はお兄ちゃん、僕、学校でイジメられてるんだ。」
「・・・・・・・。」
男は、何も言わず、テレビの画面に目を向けていた。
「今の話しは、お母さんとお父さんとお姉ちゃんには、内緒だよ。」と
ルナの弟は言い、その男と一緒に再放送の【愛のために】というドラマを見ていた。