第4話 別の意味で厄介だな
【グリード州 経済都市エコノミアシティ 市街地】
レーリアとの戦いを終え、しばらく経ったが、私たちはまだエコノミアシティの市街地にいた。別にレーリアを倒していても、この戦争に勝てるワケじゃない。ヒーラーズ軍を倒さない限り、戦いは続いてしまう。
クラスタは近くにあった白色の小型戦闘機を調べていた。
「ヒーラーズ制圧部隊はだいぶ抑えたが、まだヒーラーズ鎮圧部隊がいる」
「……空にいるクローン軍だよね」
私は夜空に視線を向ける。空には、無数の黒い飛空艇が飛んでいた。ヒーラーズ鎮圧部隊だ。ヒーラーズ制圧軍と共に、このグリード州に攻め込んできた。両部隊を合わせて、その総兵力は60万人にもなる。60万の兵力で、国際政府首都を目指しているらしい。
ヒーラーズ鎮圧部隊の指揮を執るのは、“戦術士ソフィア”という女性クローン。彼女も、レーリアと同じく七衛士という幹部の地位にある。
「……この小型戦闘機は使えそうだ」
「それで、ソフィアの司令艦に?」
「もちろん」
そう言いながら、クラスタは小型戦闘機の操縦席に座る。3人乗りのデルタ型戦闘機。機体の色からして、臨時政府の物だろうか?
私も急いでデルタ型小型戦闘機の上に乗り、後部座席に座る。
「撃ち落とされないといいな」
さっきから空では、臨時政府軍とヒーラーズ軍で激しい攻防戦が繰り広げられている。何十機もの小型戦闘機やガンシップが撃墜されている。私もやられる可能性は十分になる。
デルタ型の小型戦闘機が、ゆっくりと空に浮かぶ。そして、煙と炎が上がるエコノミアシティの空に向かって、勢いよく飛ぶ。
「さて……」
エコノミアシティ上空では、激しい戦いの最中だった。白色の戦闘機と黒色の戦闘機が何百機と飛び交い、戦いを繰り広げていた。黒色の機体は、ヒーラーズ軍のものだ。操縦しているのは、当然のことながらクローン兵だ。
戦闘機だけでなく、飛空艇もある。軍艦と呼ばれるヒーラーズ軍の飛空艇がすぐ近くを飛んでいる。そこから砲弾が飛んでくる。
「う、うわっ!」
「狙っているのか?」
私たちの戦闘機のすぐ近くを砲弾が飛んでいく。1発でも当たれば、木っ端みじんになるだろう。こんな小さな機体では、ひとたまりもない。
ヒーラーズ軍鎮圧部隊の軍艦は全部で60隻。多くがこのエコノミアシティ上空に集結している。この大都市エコノミアシティを陥落させれば、ここを拠点に、国際政府首都グリードシティへ攻め込める。
「鎮圧部隊長官ソフィアの司令艦があったぞ」
「アレがソフィアの……」
私たちの向かう先に、軍艦よりも大型の飛空艇が飛んでいる。ソフィアの乗る司令艦だ。ヒーラーズ軍鎮圧部隊の司令塔でもある。
「一気に行こう!」
私の声と共に、小型飛空艇は速度を速め、ソフィアの司令艦を目指して進んでいく。ヒーラーズ軍の軍艦と臨時政府の中型飛空艇の間を飛び抜けていく。
ヒーラーズ軍も、臨時政府軍も、お互いに砲撃し合っている。その流れ弾が、私たちの命を奪う可能性だってある。
それでも、ソフィアの司令艦に辿り着き、彼女を倒す価値はある。鎮圧部隊の長官が倒れれば、この戦いは終わる。戦いが早く終われば、早く終わるだけ、多くの命が助かる。危険を冒す価値はある。
「ソフィアは戦術士だ。戦闘が専門じゃないが、知能派だ。別の意味で厄介だな」
「例え、上手くソフィアに接触できても、安心は出来ない、か」
戦術士の名前通り、ソフィアは指揮に特化したクローン軍人。その身体能力は、普通のクローン兵と同じかも知れないが、知の面ではヒーラーズ軍ナンバー1らしい。
すぐ近くで、爆音が鳴り響き、炎に包まれた軍艦が落ちていく。何百人ものクローン兵が死んでいく。長引けば、長引くほど、死が増えていく。戦争に、時間はかけていられない。
「司令艦から、砲撃が!」
「分かっている!」
クラスタは小型戦闘機の操縦機をぎゅっと力強く握り締め、自分の手足の如くこの機体を扱う。全ての砲弾をかわす。
そのまま、司令艦の飛空艇プラットホームに突入すると、ゆっくりと着陸する。私たちはすぐに小型戦闘機から外に飛び出す。
「侵入者だ!」
「殺せ!」
ヒーラーズ鎮圧兵たちが走り寄ってくる。ヒーラーズ制圧兵と同じく、赤茶色の髪の毛に、同色の目をしたクローン兵だ。全員で6人。剣を持ったヤツが3人、アサルトライフルを持ったのが3人。私はサブマシンガンを手に、クラスタは剣を手にする。
「…………! まさか、この女、パトラー=オイジュスじゃ……!」
「怯むな、かかれ!」
クローン兵の1人がアサルトライフルで射撃してくる。私は魔法発生装置を内蔵した黒色のハンドグローブを振る。私とクラスタに物理シールドを張る。
クラスタが先に剣を手に、鎮圧兵に斬りかかる。私も続いて、サブマシンガンで応戦する。
「あぅッ!」
「うわぁッ!」
また1人、また1人とクローン兵たちは血を流し、倒れていく。斬られ、撃たれ、コンクリートの床に倒れる。
ヒーラーズ鎮圧兵もヒーラーズ制圧兵と実力はほとんど変わらない。彼女たちは一般の軍人とそんなに変わらないレベルだ。
私はサブマシンガンを戻す。クラスタも剣を腰の鞘に戻す。6人の鎮圧兵は、全て倒れた。
「新手の兵が来ない内に最高司令室を目指そう」
私たちは司令艦プラットホームから廊下に向かって走る。この司令艦にはまだ3000人以上のクローン兵が搭乗している。全てを相手にしている体力も時間もない。一刻も早くソフィアを倒す。それが勝利への近道だ。




