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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 黒の剣 ――経済都市エコノミアシティ――
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第3話 消えろ、パトラー

 レーリアは青い刃を持つ剣を手に、私に向かって来る。私も剣を抜き、戦闘態勢に入る。彼女は七衛士の1人だ。今までのヒーラーズ制圧兵とは比べものにならないほど強い。


「…………」


 剣闘士のクローンは無言で、何度も激しく斬りかかってくる。私はその激しい斬撃を全て剣で受け止め、防ぐ。その衝撃が手に、腕に、身体に走る。

 凄まじい斬撃を受け流しながら、私は魔法で自身にシールドを張る。万が一、防ぎきれず、まともに攻撃を受けたら本当に死んでしまう。


「クッ……!」


 何度も金属音が鳴り響き、火花が散る。これじゃ防戦一方だ! このままじゃ、いつか殺られてしまう。反撃しないと……!

 私は隙を見て、地面を蹴り、後ろに向かって飛ぶ。宙を高く飛びながら、手を振る。3発もの白色をした魔法弾――衝撃弾が飛ぶ。


「逃がすものか……!」


 レーリアも地面を蹴って宙に飛び出し、私を追って来る。長い青色の剣で白色の衝撃弾を斬り、爆発させる。その衝撃波によってレーリアは地面に落ち、上手く着地する。着地すると、間髪入れずに再び飛ぶ。地面に着地した私に向かって飛んでくる。

 私は手を振り、宙を舞うレーリアに向かって火炎弾や電撃弾を飛ばす。赤色の魔法弾や黄色の魔法弾が飛んでいく。


「こんなもの……!」


 レーリアは剣を振り、火炎弾や電撃弾を爆発させる。しかも、振った衝撃で斬撃が飛んでくる。私は素早くもう一度後ろに飛び、斬撃を避ける。私がいた場所が大きく斬れる。

 今度は私がレーリアに走り近づく。手に持った剣で剣闘士の脇腹を貫こうとした。だが、その刃は青色の剣に防がれる。


「フフ、やるじゃないか。だが、――」


 青色の剣は私の刃を滑らせ、狙いをブレさせる。その隙に、私の首を狙って剣が振り降ろされる。私は間一髪、剣でその斬撃を防ぐ。剣同士が擦れ合う度に小さな火花が散る。

 レーリアは素早く私の剣から自身の剣を放し、再び激しく何度も斬りつける。とても強い力だった。叩き付けられる度に、手や腕が痛くなる。


「クッ……!」


 私は防ぎながら、僅かな隙を突いて反撃する。だが、それらの攻撃は全て防がれてしまう。防がれ、また防御に徹する。

 不意にレーリアは後ろに飛ぶ。私と距離を開けると、その場で剣を大きく振りかぶる。僅かな間の後、剣を振り降ろす。大型の斬撃が飛んでくる。

 私は素早く横に飛び、大型の斬撃を避ける。強烈な斬撃は私の後ろにあった建物を、斜めにスッパリと斬ってしまう。斜めに切られた建物の上半分が、滑るようにして倒れる。


「あ、あんな斬撃、見たことも――」

「なら、もう一度見せてやろう」

「えっ?」


 声がしたとときには、レーリアは既に剣を振り降ろしていた。再び大型の斬撃が飛んでくる。私は地面を斬りながら、勢いよく飛んでくる斬撃を剣で受け止め……られなかった。


「うわぁっ!」


 斬撃の威力はあまりに高すぎた。剣が折れることはなかったが、剣と共に私の身体は宙を舞い、吹っ飛ばされる。レーリアが飛んでくる。空中で私の首を斬ろうと、剣を振り上げる。


「ぐッ……!」

「消えろ、パトラー」


 冷たいレーリアの声。赤茶色の瞳は、私をしっかりと捉えていた。そこに、何の迷いもなかった。私を殺す、強い意志があった。

 そのとき、発砲音が鳴り響き、レーリアの剣を持った右手の甲から血が噴き出る。私は地面に倒れ、レーリアも空中でバランスを崩し、地面に落ちる。グリップに血の付いたレーリアの剣が振ってくる。先っぽがこっちを向いていた。


「…………!」


 青色の剣は、私の顔のすぐ横に突き刺さる。あと少しズレていたら、顔に突き刺さるところだった。

 私は素早く立ち上がる。レーリアも同じだった。地面に刺さった剣を左手で取ろうとする。私はサブマシンガンを手に持ち、何十発もの銃弾を連射する。

 だが、レーリアはそれを素早い細かな動きで避ける。何度も小さく飛び、身体を捻らせて避ける。地面に刺さった剣を抜こうとする。


「パトラー!」

「…………! クラスタ!」


 仲間のクラスタが私の剣を投げる。私は大きくジャンプし、空中でそれを受け止める。そうか、さっきレーリアを射撃したのも、クラスタだったんだ……!

 私は剣でレーリアに斬りかかる。レーリアは左手に剣を持ち、それで防ぐ。再び激しい斬り合いになる。だが、レーリアの利き手は右らしく、明らかに動きが鈍かった。


「――レーリア、もういいよ」

「…………! セネイシア卿!」

「えっ?」


 私は声のした方に目をやる。そこには、黒色のローブを着た少年――セネイシアと、紫色のラインが入った黒色の装甲服を着たクローン――エデンが立っていた。

 レーリアはセネイシアの前に飛び、2人の前で跪く。ヒーラーズ軍のリーダーがなぜここに……?


「申し訳ございません、セネイシア卿……!」

「レーリア、大丈夫だよ。そんな哀しそうな顔しないで…… ほら、手の傷、早く直さないと……」


 3人の後ろの空間が歪み、大きな黒色の穴が開く。特殊ワープホールだ。どこに繋がっている……? 2人はエデンを残し、特殊ワープホールへと入っていく。

 今、私がセネイシアに襲い掛かっても、間違いなく次の瞬間には、セネイシアの横に控えているクローン・キャプテン――エデンに殺されるだけだろう。彼女の強さは異常だ。


「……第1ラウンドは、お前たちの勝ちだ。だが、まだ終わったワケじゃない」


 そう冷たく言うと、エデンもまた特殊ワープホールの向こうへと消えていく。彼女の瞳は、さっきのレーリアよりも遥かに冷たかった――

  <<統治機構と人物>>


◆ヒーラーズ軍

 かつては「ヒーラーズ・グループ」を名乗る医療連盟だった。現在は「ヒーラーズ軍」と名乗り(侵略完成後は「ヒーラーズ政府」を名乗る予定)、統治機構へと姿を変えた。“世界の治癒”をスローガンとしている。

 クローン技術は医療連盟時代のもの。医療連盟時代を含み、数年かけて130万人ものクローン軍人を作り続けた。

 セネイシアをリーダー(ヒーラーズ政府総帥)に、7人の幹部(レーリア、エデンら)がいる。


 ◇セネイシア

  14歳の少年。ヒーラーズ軍のリーダー。ヒーラーズ親衛隊管理官。ヒーラーズ政府完成後はヒーラーズ政府総帥となる。


 ◇エデン

  女性クローン。親衛士。ヒーラーズ防衛部隊管理官。


 ◇レーリア

  女性クローン。剣闘士。ヒーラーズ制圧部隊の管理官。

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