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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 黒の剣 ――経済都市エコノミアシティ――
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第2話 狙いは私だろう?

 【グリード州西部 経済都市エコノミアシティ 市街地】


 戦いの続くエコノミアシティ。私はエコノミアシティの中心部にあるエコノミア防衛師団の本部要塞を目指していた。

 そこにヒーラーズ制圧部隊の長官――剣闘士レーリアがいる。彼女もまたクローンだが、ヒーラーズ制圧兵とは実力が全く違う。最強のクローン戦士である“ヒーラーズ七衛士”の1人なだけに、実力は化物クラスらしい。


「いたぞ! 臨時政府の軍人だ!」


 またアサルトライフルを持った女性兵士――ヒーラーズ制圧兵が現れる。今度は2人だ。私は剣を抜き、身構える。


 エコノミアシティ市内におけるヒーラーズ制圧兵は4万人程度らしい。残りの26万人は、グリード州西部・中部・南部の諸都市を占拠しているか、臨時政府軍と戦っている。

 彼女たちが知っているのかどうかは不明だが、郊外で戦うヒーラーズ制圧部隊は劣勢に立たされているらしい。このエコノミアシティのみは、ヒーラーズ軍が優勢だった。

 つまり、私がエコノミアシティにて命令を出している剣闘士レーリアを捕まえてしまえば、ヒーラーズ制圧部隊は完全に敗北する。


「喰らえっ!」


 2人のヒーラーズ制圧兵は、一般的な軍用銃であるアサルトライフルの銃口を私に向け、銃弾を連射してくる。私は素早く手を振り、自身に物理シールドを張る。銃弾が私を襲うが、このシールドのおかげでダメージは軽減される。

 私は彼女たちに走り迫ると、黒いレザースーツで覆われた身体を素早く斬りつける。1人のヒーラーズ制圧兵は倒れ、ピクリとも動かなくなる。


「ク、クソっ!」


 もう1人のヒーラーズ制圧兵が至近距離で何度も銃撃する。私はその場から大きく宙に飛び、彼女と距離を取る。

 私は元いた場所まで下がると、そこで再び手を振る。今度は炎の魔法弾が飛んでいく。それはヒーラーズ制圧兵の胸に当たり、爆発する。真っ赤な火柱が上がり、彼女はがれきの上に倒れる。


 シールドも火炎弾も魔法だ。私は普通の人間だから潜在的に魔法は使えないが、ハンド・グローブに仕込まれた魔法発生装置を使うことで、魔法を操ることができた。

 ただ、ヒーラーズ制圧兵は魔法を使えないが、上級のクローン兵になると、機械なしで――潜在的に魔法が使える。恐らくレーリアもそうだろう。


「さて、と」


 私は剣を鞘に戻し、再び戦場となった大都市を歩く。とにかく時間がない。早いとこレーリアを捕まえ、なければならない。遅くなれば、遅くなるだけ戦いが長引き、その結果、死者が増える。

 そのとき、空に大きな飛空艇が現れる。あの飛空艇は……臨時政府軍の飛空艇だ! 飛空艇がやってくると同時に、右手首に付けていた通信機が鳴る。誰かからの連絡だ。


「はい、こちら――」

[大丈夫か?]

「……クラスタ?」


 この声は間違いなく臨時政府の筆頭将軍クラスタだ。このエコノミアシティには、私とクラスタ、数人の将軍で来ていた。彼女がここに現れたということは、グリード州各地での戦いはほとんど終わったのだろう。


[グリード州西部を攻撃していたヒーラーズ制圧部隊は、ほとんどが敗北し降伏した。残りの戦いはティラス将軍、ロッド将軍、ライポート将軍の3人に任せた]

「了解、クラスタ。じゃぁ、後は私が――」

[いや、剣闘士レーリアの逮捕も私が行う。お前は――]

「大丈夫。私に任せて」


 そう言うと、私は一方的に通信を切る。せっかくここまで来たんだ。何もしないで帰るワケにはいかない。クラスタは私の身を案じ、単独でレーリア逮捕に挑むことを恐れている(ここに来る前も反対された)。でも、何もしないワケにはいかない。絶対にレーリアを捕まえてみせる!

 私は薄い小型の携帯型スクリーン・パネルを取り出し、自分の現在位置とエコノミア防衛師団本部要塞の位置を確かめる。


「だいぶ近いな」


 私はそう呟きながら、携帯型スクリーン・パネルを懐に戻すと、コーク保安連隊本部を目指して、歩いていこうとしたときだった。


「狙いは私だろう?」

「えっ……?」


 不意に後ろからかけられた声。私はそっと背後を振り返る。二階建ての建物の上に、エメラルド・グリーンの装甲服に白いマントを羽織った女性クローンがいた。


「…………! ま、まさか――」

「そのまさか、だ」


 彼女はニヤリと笑い、建物の屋根から飛び降りると、私と、ある程度距離を保てる地点に着地する。間違いない。このクローンは――


「――レーリア、なぜここに?」

「……この戦いに私は負けた。臨時政府の筆頭将軍クラスタがここにやってくるとは、私も運が悪い。ヒーラーズ・クローン兵団の一角を担う制圧部隊をことごとく失っては、“セネイシア卿”に申し訳が立たない」


 そう言いながら、剣闘士の異名を持つ女性クローン――レーリアは腰に装備していた剣を抜いていく。刃が青色をした特殊な剣だ。

 セネイシア―― ヒーラーズ軍のリーダーだ。一度だけ会ったことがある。まだ、14、5歳ぐらいの子ども。彼がヒーラーズのリーダーだ。


「だが、運は完全に尽きてはいないようだ。なぜなら、臨時政府の“総帥”であるパトラー=オイジュス、お前がここにいるのだからな!」

「…………!」

「パトラー、お前の首を斬らせて貰う。その上でセネイシア卿にお詫びする――!」

  <<地域と社会>>


◆経済都市エコノミアシティ

 経済都市として名高い大都市。人口は3000万人ほど。超高層ビルが多く、その夜景は観光スポットにさえなっている。都市面積は広大で、多くの企業が支部・本部を置く。

 グリード州の中東部に位置するこの都市は、グリード州都(州庁所在地)の候補地でもあった(実際には、グリード州北西部にある国際政府首都グリードシティが州都となっている)。




  <<統治機構と軍隊>>


◆ヒーラーズ軍

 ◇ヒーラーズ制圧部隊

  兵力30万人を誇るヒーラーズ軍の一角。管理官は剣闘士の異名を持つレーリア。その兵員は、管理官のレーリア含め、全て女性クローン兵士。1人1人の実力は、それほど高くないらしい(一般の人間軍人と同じレベル)。

  ヒーラーズ鎮圧部隊と共に、首都攻撃・制圧を任務としている。兵の大部分は、すでにグリード州各地に散ってしまっている。

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