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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 黒の剣 ――経済都市エコノミアシティ――
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第1話 女性クローン軍の侵略

 日の落ちた夜の街。本来なら、人も少なくなり、街は灯りを残して暗闇に包まれる時間だ。だが、今日は違う――


「それっ、進め!」

「D-2部隊からD-7部隊へ、臨時政府軍の軍勢が南西より進軍中。備えを強化しろ」

「かかれ!」


 緑色のラインが入った黒いレザースーツを着た数人の女性たちが、黒色の銃火器――アサルトライフルを持ち、戦乱に巻き込まれた街を走っていく。

 炎の明かりで赤く照らされた街。壊れたエア・カーや軍用戦車が道路を塞ぐ。死んだ市民や兵士たちの死体が転がっている。

 空を見上げれば、戦闘ヘリ――ガンシップが飛んでいる。黒と白。2タイプのガンシップがある。黒いガンシップから、黒いレザースーツを着た女性が降りてくる。


「市街地北北西より都市警備軍が攻め込んできます!」

「一気に都市を制圧しろ」

「敵はまだまだ多いぞ。気を付けろ!」


 戦争だ。突如として起こった新手の侵略戦争――


「そこの若い女、動くな!」

「…………!」


 1人の女性兵士が、建物の影に隠れていた私の姿に気が付く。彼女はアサルトライフルの銃口を向け、こちらに歩いてくる。

 私は素早くそこから飛び出し、彼女に走り迫る。女性兵士は私に向かって射撃する。激しい銃撃音。何発もの銃弾が連続して飛んでくる。


「…………」


 私は銃弾をギリギリのところでかわしながら、女性兵士に向かって飛び込み、右脚で彼女の腹部を蹴りつける。アサルトライフルを手にしていた彼女は、勢いよく吹っ飛ばされ、壁に背を叩きつける。けたたましい音を伴いながら銃弾を飛ばしていたアサルトライフルは、地面に転がる。


「貴様っ!」


 近くにいた2人の女性兵士に見つかる。緑色のラインが入った黒いレザースーツ、黒色のヘッドアーマー、黒いアイ・ガード。皆、同じ服装をした兵士だ。

 私は懐から小型の銃火器――サブマシンガンを引き抜き、走り寄ってきた女性兵士たちに向かって発砲する。私の銃弾は、正確に彼女たちの腹部を貫く。血が飛び、その身体はひっくり返るようにして倒れる。


「今の銃声はなんだ!?」

「あっちの方からだ!」


 近くの曲がり角から別の女性の声が聞こえてくる。私は死体をそのままにし、その場から走り去っていく。

 この女性たちは普通の人間じゃない。1人の女性をベースにしたクローンだ。皆が同じ容姿をしている。顔・体格もよく似ている。


「そこの女、止まれ!」

「…………!」


 走って逃げ、別のストリートに飛び出したところで、新手のクローン兵に出くわす。数は2人。だが、後ろからも2人のクローン兵。挟み撃ちで4人。


「……臨時政府の軍人だな」

「申し訳ないが、私たちと一緒に来て貰う」


 同じ声をしたクローン兵たちが言う。それは困る。私は確かに臨時政府所属だが、ただの軍人じゃない。捕まるワケにはいかない!

 私は腰に装備していた剣を手にする。敵は“ヒーラーズ制圧兵”と呼ばれるクローン兵。ビックリするほど強くはない。


「ほう、私たちと殺り合うのか?」

「死ぬ覚悟は出来ているか?」


 1人のヒーラーズ制圧兵が腰に装備した剣を抜き取り、私に向かって来る。命の取り合い――


「死ね!」


 そのヒーラーズ制圧兵は剣を振り降ろす。私はその斬撃を剣で受け留める。背後から、2人のヒーラーズ制圧兵が剣で私の背を斬り裂こうとする。私は素早く身を屈め、彼女たちの攻撃を回避する。

 身を屈めたながら私は剣から手を離し、再びサブマシンガンを手にする。2丁のそれを操り、2人のヒーラーズ制圧兵を射殺する。僅かな時間だった。


「なっ……!?」


 私に斬りかかってきた最後の1人。彼女の首に銃口を付きつける。


「…………!」

「ひぃっ……!」


 首に銃口を突きつけられたヒーラーズ制圧兵の顔がみるみる青くなっていく。攻撃してこなかったクローン兵も、動くに動けない状態だった。


「や、やだっ、殺さないで……!」

「……武器を捨てたら逃げてもいい」

「えっ?」

「早くしろ!」

「は、はい!」


 生き残った2人のヒーラーズ制圧兵はアサルトライフルと剣を地面に投げ捨てる。彼女たちが武器を持ってないことを確認すると、そっと私は彼女の首から銃口を放す。2人は慌てふためきながら逃げていく。


「…………」


 私はサブマシンガンを戻し、剣を腰の鞘に戻す。再び銃撃音や爆撃音が鳴り響く街を進んでいく。街のあらゆるところで、臨時政府軍・警備軍とヒーラーズ軍が戦っているのだろう。


 女性クローン軍――ヒーラーズ軍は突如、大陸北部を攻撃してきた。不意を突かれた既存の政府――国際政府は混乱し、この侵略に対応できなかった。完全に攻め落とされないよう、抵抗するのが精いっぱいだった。そこで、国際政府の属国である私たち臨時政府がこの事態に対応していた。

 だが、ヒーラーズ軍の勢いは炎の如く強く激しい。私たちは苦戦に陥っていた。


「…………」


 このままじゃ大陸北部はヒーラーズ軍によって完全に制圧されてしまう。その前に、ヒーラーズ軍を倒す。それが私たちの任務だった――

 <<世界と社会>>


◆国際政府

 ◇中央大陸(コスーム大陸)北西部を統治する国家。元々は大陸全域を統治していた。


◆臨時政府

 ◇中央大陸西部・南部を統治する国家。国際政府の下位国家。


◆「ヒーラーズ」

 ◇130万人もの女性クローン兵を有する組織。世界の支配を目指している。

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