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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 黒の戦 ――ウォルタミア防衛師団本部要塞――
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第13話 頑張ろうね、エデン

 【ヒーラーズ本部要塞(ダーク・サンクチュアリ=暗黒城)】


 僕は暗黒城のテラスから、霧の深いダーク・サンクチュアリを見ていた。ダーク・サンクチュアリ――闇の聖地。昔、僕がつけた、この辺り一帯の名称だ。

 かつて、ヒーラーズが「ヒーラーズ・グループ」という医療連盟の時代から、この辺りは霧に包まれた不気味な深い森だった。

 黒い色の針葉樹林。年中、霧に閉ざされたこの地方は、まさに暗黒の森。太古の時代から、魔の森として恐れられてきた。


「セネイシア卿、フェールとアーカイズが軍を揃えたそうです」

「ヒーラーズ強襲部隊(第3a兵団)とヒーラーズ精鋭部隊(第3b兵団)だよね」

「はい。あの強兵揃いの軍です」


 手に白い包帯を巻いたレーリアが僕に報告する。まだ彼女の傷は治りきっていない。

 彼女の手を撃ったクラスタが、アーカイズに捕えられた。アーカイズはクラスタを人質に、再び政府首都を目指す。僕らの夢を叶えるために。


「アーカイズとフェールは共に“将軍艦ジェネラル・シップ”に乗り、レート州北部より2つの兵団に所属する兵員、全てを率いて首都を目指すそうです」


 将軍艦。司令艦を高度に改造した大型飛空艇だ。今度は国際政府首都を落とせるだろうか。エデンの立てた計画は、成功するだろうか?


「……クリアの件は残念でしたね」

「…………。……クリアはソフィアのことが好きだったからね。きっと、ソフィアの側にいたかったんだよ」

「だからこそ、アーカイズを同行させたんだがな」


 奥から青色の衣服を纏う、赤茶色の長い髪の毛をしたクローン――エデンが出てくる。


「監視役としてもう少し有能に働いてくれると思っていたが、所詮は戦闘バカでしかなかったか」

「エデン…… アーカイズは頑張ってくれたよ」

「……どうだか」


 エデンはクローン軍人に対してとても厳しい。アーカイズやレーリアに対しても、鋭い言葉を浴びせる。その度に、僕は悲しかった。もっと優しい言い方はできないのかと、思っていた。

 でも、エデンのすることに僕は口を出せないでいた。僕の口出しが、エデンの邪魔になったらいけない。そう思い、何も言うことはなかった。


「エデン…… “優しい世界”は造れるのかな?」

「……任せろ。世界を治癒するヒーラーズ、だろ?」

「うん……」


 世界の治癒。3年半前に勃発したラグナロク大戦で、世界は荒れ果てた。国際政府は戦争を延々と続け、世界は荒廃の一途をたどっていた。そこへ僕らが世界に出た。国際政府に宣戦布告し、世界を治癒する戦いを始めた。


「頑張ろうね、エデン」

「ああ……」

「…………。……世界の治癒。私も微力ながら、尽くさせて頂きます」

「ありがとう、レーリア」


 僕は黒い広大な森に目をやりながら答える。……だからこそ、レーリアの様子に気が付かなかった。


「…………」


 レーリアが、どこか悲しそうな目をしていることに。


















































































◆◇◆



















































































 【暗黒城・魔のフロア】


 暗黒城の魔のフロア。石造りの城内とは思えないほどの内装。白色のじゅうたんが敷かれ、壁も赤色のカーテンで覆われている。ここは七衛士の一角を担う魔導士フェール閣下の管轄するフロアだ。


「フェール閣下、そろそろお時間です」


 ゾイサイトが黒と白のメイド服を纏ったクローン軍人――魔導士フェール閣下に声をかける。


「ありがとう、ゾイサイト中将……」


 小さく落ち着いた声で言うフェール閣下。彼女は音もなしに、柔らかそうな布で覆われたイスから立ち上がる。その腰には刀が装備されていた。最強の魔法使いには相応しくない武器だ。


「ジャスパー中将、アーカイズに酷いことされませんでしたか?」

「私は大丈夫だ。フェール閣下こそ、“戦闘バカ”を旗艦に乗船させることに対し、怒りがあるんじゃないか?」

「気にしません。そんなこと……」

「そうか」

「……それよりも気になるのは、ジャスパー中将の言葉使いですよ。“私の武器が似合わないとお考えになる前に”、自分の服と言葉使いの似合わなさを考えてください……」

「ああ、すまない」


 私はメイド服を着ている。しかし、その口調は、全く伴わない口調――攻撃的な口調だ。以前、セネイシアにもそう言われた。レーリアにも言われたかも知れない。


「“セネイシアさんには、せめて『閣下』か『さん』を付けてください”。それと、“レーリアさんには言われていません。ソフィアさんの間違いです”……」

「そ、そうだな……」


 ……フェール閣下の最大の武器は、“読心”だ。相手の心の中を読むことができる。これはエデン含め、他のクローンには到底できない高度な魔法技だ(かなりの集中力を有するらしいが)。

 フェール閣下がそっと目を開ける。読心をやめたらしい。読心のやり方は2つ。目を閉じ、集中力を上げる方法。もう1つは相手に直接触れる方法だ。


「…………」


 フェール閣下が歩き出す。その後に私と、黒いローブを纏ったゾイサイトが続く。

 間違いない。私は確信している。総合的に見たとき、七衛士最強のクローンは、魔導士のフェール閣下だと――

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