三話
今日は東京まわりで打ち合わせラッシュ!
ねむいー。
【第三話】
――それは私にとって、いつまでも色褪せることの無い記憶だ。
私の原点にして原初。
すべての始まり。
悲劇の始まり。
『……気のせいか?』
仮面をつけた聖職者が、手元の聖典を閉じ、周囲を見回しながら呟く。
彼(彼女かもしれないが)がいる森は、血で染め上げられていた。
木々は紅葉の季節のように赤く塗られ、足下には緋の泉。
それらの血はもちろん、彼のものではない。
仮面の聖職者の足下には、三人の人物が転がっていた。
いや、死体が転がっていた。
そのうちの二つは、私のお父さんとお母さん。
そしてあとの一つは――
「……っっ!!??」
夢から覚めた私の前に、仮面の聖職者はいない。
私はニルベ村の自室――大量の魔導書に囲まれたベッドの中で、飛び跳ねるようにして起きていた。
窓の外はやや明るい。日の出が近いのだろう。
普段より、寝坊をしてしまったようだ。
「……」
あの日の光景を夢で見ること。
うなされて目を覚ますこと。
もう、珍しくもなくなってしまった。
「……っ」
だというのに、感情はいつまでも変わらない。
無意識のうちに、毛布を指が白くなるまで強く握りしめる。
合わさった奥歯がギリギリと音を立てる。
きっと今の私は、とてもひどい顔をしているに違いない。
数分経って、ようやく私を支配していた衝動が収まる。
私はベッドから起きて、出立の準備を進めた。
今日は、私がニルベ村を出る日だ。
準備と朝食を整えた私は、妹が私に贈ってくれた姿見の前に立つ。
陽光を宿したように鮮やかな白衣。
深い藍色の髪。
ニルベ村の巫女として生きる私の名は、ミナ。
あの時――
〝あの人〟が言った〝可能性〟の、そのどれか一つに向かっていたら、私がこうやって巫女をやっていることは無かったのだろうか?
「……それは無いかな」
独りごちて、姿見から視線を切った私は、そのままドアをくぐった。
おそらく、この家には当分戻らない。
だが、あまり感傷はない。
なぜならそれ以前に、この身は使命を帯びているから。
村のみんなに、見送りはいいと伝えてある。
ガラさんは私についていくと言って聞かなかったが、それもなんとかなだめてある。
だから、ニルベ村を囲むシャルナクアの森に近づいて、背後に気配を感じた時は少しだけ驚いた。
「うまくいくと思うか?」
まごう事なき、村長の声だ。
その問いかけに、くすりと笑みがこぼれる。
「こういう時って普通、達者でなとか、必ず帰ってこいとか、励まして見送るものじゃありませんか?」
「普通は、な。じゃが、おまえの旅路は普通でない」
「でも、一応は心配だから見送ってくれてるんですよね?」
「……」
なんて悲しそうな眼。
私という少女は、村長の瞳にどのように映っているのだろうか?
「大丈夫ですよ。昨日も説明しましたが、まずは〝邪神〟――ヒカルさんの気配を追います。妖精が一緒について行ったかもしれない、とのことですから、比較的痕跡は辿りやすいでしょう。あとは、うまく遭遇して説得しますよ」
「……達者でな。必ず帰ってこい」
「ふふっ。わかりました」
私は笑ったけれど、村長は最後まで笑みを見せなかった。
シャルナクアの森に向き直った私は、そのまままっすぐ歩いていく。
十六年間育った村を後にするにしては、我ながらシンプルな出立だ。
さて、いろいろと格好をつけたけれど。
村長が笑って見送ってくれなかった理由は至って単純。
旅の成否の問題ではない。
これが巫女としての責務を果たす旅路であると同時に、私にとっての復讐を果たす旅路だからだ。
いよいよ始まった、復讐の旅。
包み隠さず言うと、人殺しを最後の目標に据えた旅。
邪神の出現という異常事態が引き金でやや性急ではあるものの、いつかは決まっていたことだ。ちょっと予想より早まっただけ。
私はこの旅を成功させる。
必要であれば、なんでもしてみせよう。
必ずや、邪神を制御する。
巫女としての責務を果たす。
そして、あの仮面の聖職者――
「必ず息の根を止めてあげる」
懐の中に忍ばせた〝魔本の断片〟の感触を確かめながら、私は森の中へと踏み込んだ。
※※※
「なんかさ、寒くないか?」
「それはあなたが裸だからですわ」
両脇を森に囲まれた街道を、俺はただひたすらに歩き続けていた。
夕暮れ時である。
空は赤く染まっており、もう一時間もすれば夜の帳が降りてくる頃。
道標に従って一本道を進んでいるのだが、未だ、とりあえずの目的地――ベーツェフォルト公国城下町には至っていない。
「いや、裸じゃないぞ。ちゃんと服着てる」
「……ボロボロのズボンと靴だけ」
「変態だ♪ 変態だー♪」
「変態やめろ。もう名前教えただろ。ヒカルお兄さんと呼びたまえ」
俺の頭と両肩には、三人の妖精が載っている。
頭頂部で金髪を揺らしているのがチッチ。
左肩で青髪をツインテールにしてるのがピルチ。
右肩で楽しそうに弾む緑髪はマチー。
俺こと坂月ヒカルは、つい先日この異世界に召喚されたばかりだ。
最初はニルベという名前の村で、俺を召喚した張本人であるミナにお世話になってたんだが、身の危険を感じて逐電。
それを訳あって追いかけて来たのがこのチビどもなんだが、ジャイアントスライムに襲われたりなんだりがあって、結局、一緒に旅することになった。
俺は、元の世界に帰る方法を探すために。
このチビたちは、森以外のいろんな場所を訪れたい好奇心を満たすために。
目的はうまく一致していると思う。
俺も異世界で独りぼっちは厳しいし、ある程度の知識がある彼女たちのサポートは正直非常にありがたい。
というわけで、人間+三人の妖精というこの奇妙な取り合わせが成立しているのだ。
「にしても冷えるよなぁ。今って春だろ?」
「そうですけど、そんなに寒いんですの?」
「え? おまえら全然平気?」
「……うちはむしろ暖かい」
「お兄さんぽかぽかー♪ ひっついてれば問題なしー♪」
「ああ、そう」
身長十センチくらいの彼女たちなら、人間の俺の平熱で充分に暖がとれる、のか?
なんにせよ、うらやましい限りだぜ。
くそう、ボロ切れでいいから、どっかに布の一枚でも落ちてないもんだろうか?
などと考えていると、足下に衝撃。
「お?」
体がぐらついたその瞬間に理解する。
石に躓いたのだ。
だがご安心。
自分で言うのもなんだがこの程度で転んでしまうような俺では――
「きゃあああっ!?」
「……わ」
「あれれー?」
転んだ。盛大に。
俺に載っていた妖精たちも、一緒に地面に倒れ込むことになってしまった。
あぶね。
この子ら潰すとこだった。
「す、すまん」
「危ないですわねっ!? 死ぬかと思いましたわ!」
「悪い悪い……?」
あ、あれ?
起き上がれないぞ?
ていうか、体が動かない?
「なんだこれ?」
「って、あなた!?」
地面に俯せになった俺の顔を、視線が同じになったチッチが驚愕の表情で覗き込んでいる。
続いてピルチとマチーも俺の顔側に回り込み、それぞれ驚いた顔を見せた。
「なんですのそのぼーっとした顔は!? ……まさか!?」
チッチがその小さな両手を、俺のでこに当てる。
「やっぱり! どうりであなたの体が温かいわけですわ! あなた、熱を出してましたのね!」
「熱?」
あー、熱。
言われてみりゃ、さっきからなんとなくダルかったしなぁ。
てっきりジャイアントスライム戦で消耗したからだと。
「そういえばあなた、ニルベ村を出てから移動しっぱなしですわね」
「……それに、昨日から何も食べてない」
「さっき、冷たい川の中に飛び込んでたー」
「そうだなぁ」
もともと疲労がたまってたところに、さらなる疲労と行水による体温低下が重なって、うん、こりゃ風邪もひく。
こう見えて結構鍛えてたつもりだったのだが、さすがに半裸で放浪はまずかったか。
……って待て待て。
これってやばくないか?
俺はまだ、今夜の宿すら確保してない状態なのだ。
ていうか、衣服すら手に入れてない。
こんな状態で、道ばたで横になったりしてたら、それこそ冗談抜きに死んでしまうのではなかろうか?
「なあ、おまえら魔法で治せたりしねぇ?」
「わ、わたくしたちは……」
「……うちら、まだ複雑な魔法習ってない」
「気配を消す魔法とか、姿をくらます魔法だけだよー」
「なんだそのチョイスは。どこかの潜入工作員にでもなるつもりか」
こちらチッチ、スライムの根城に潜入した、とか言っちゃうの?
まあ、その能力は最初に俺を追跡してたとき、充分活かされてたわけだが。
彼女たちが自分から気配を露わにすることがなければ、俺はずっと気付かなかっただろう。
「違いますわ。妖精というものは、まず隠れ潜む術を学ぶものなのです。他の魔法はそのあと」
「……人間に見つからないように、捕まらないように」
「いい人ばかりとは限らないからねー♪」
「なるほど」
そう聞くと実に妖精っぽい。
俺のいた世界でも、なんか起こったときに「妖精さんの仕業か?」みたいに言ったりすることがある。
妖精が隠れ忍ぶ魔法から学ぶってのは、うん、理にかなってるよな。
となると妖精って種族は、この世界でもわりと珍しいのかな――ってやばいやばい。
いつの間にか、視界に霞がかかってきやがった。
それに今、俺、寝ようとしてたよな?
いかん、いかんぞ。このまま寝たら死ねる。
でも――
「ぼーっとする……」
「ちょっと!? こんなところで寝たらあなた……っ!?」
言いつつ、チッチたちが驚きながら振り返る。
その理由は俺にもわかった。
遠く――俺たちの進行方向から、ヒヒーンと、馬の啼き声が聞こえたのだ。
「人っ!? ど、どうしよう!?」
「え? いいんじゃないの? 俺、助かったじゃん?」
「……さっき言った。いい人ばかりとは、限らない」
「あ」
「身ぐるみはがされてポイかもー」
「……はがす身ぐるみないけど」
そっか。ここって日本とは違うんだ。
どんな場所でも法制が行き届いているわけじゃないんだろう。
とすると、人々の犯罪に対する敷居は非常に低いわけで……。
「あかん……まずは隠れて、どんな人か見定めてから声をかけるのがベストだ……。身なりでそれとなく察せる部分もあるだろう……」
「そう思うなら立ち上がりなさい! うーんっ……重いっ!」
チッチらは俺に手をかけて、三人でがんばって引きずろうとしているが、全長十センチ程度の彼女たちでは無理がある。
まいったな。
マジで体が動かん。
そうこうしている間に、馬蹄がゆったりと地面を叩く音が近づいてくる。
見てないからはっきりしないが、どうやら二頭分らしい。
とすると、それに乗ってる人間も複数いるのかな?
「……もう、こうなったらさぁ」
「なんですの!?」
「運任せでいいんじゃないかなぁ」
「はぁ!?」
何を言ってるんだこいつは、と言わんばかりのチッチの顔。
「いや、気持ちはわかる。それに、こうやって俺のために焦ってくれるのはありがたい。でもなぁ、相手がどんな人でも、結局今の俺は、人と接触するしか助かる手段が無いと思うんだよ」
風邪を治すにしても。
メシを食うにしても。
服を調達するにしても。
誰かの助けが必要になるのは、どうあっても覆せない事実だ。
「それは! ……そうですけど!」
「だから、とりあえずおまえたちは隠れてていい」
え? と、声をそろえて驚く妖精たち。
「……ヒカル、どういうつもり?」
「とりあえず〝道ばたで倒れてる見知らぬ人〟って体で会ってみるからさ。おまえたちは、最初みたいに隠れ潜んで、今からやってくる人をこっそり観察してればいい。俺を試金石にするんだ」
「でもそれじゃ、ヒカルだけ危なくなっちゃうかもよー?」
「だけどそうするしかないだろ? それにおまえたち妖精は、俺みたいに特別な事情が無い限りは、そう簡単に人間に姿をさらしちゃまずいんだろ? 隠れ潜む魔法から学ぶってことは」
俺の言葉に三人とも押し黙る。
「安心しろぉい」
自然と瞼が降りてきた。
チビたちがどんな表情をしているかわからなくなったが、とりあえず落ち着け。
そういう意味で笑顔を浮かべてやりながら、言う。
「俺、昔から運が無い。でも悪運は強いほうなんだ」
そのあと、チッチたちがしばらく何かを叫んでいたが、いつの間にかそのやかましさも消えた。
俺の意識も徐々に眠りの中に落ちていく。
寒いよー、とか思いながら。
馬の足音だけが、少しずつ俺に近づいていた。
やがて――
妖精たちのものでも、ましてや俺のものでもない会話が聞こえてくる。
「……おっと、どうしやしょうか、旦那」
「はい?」
「道ばたに人が倒れてやすぜ」
「ええ?」
「無視して進むこともできますけど? それとも、財布を持ってないか調べましょうか? ま、俺はしがないギルドの用心棒ですからね。あんたに任せますよ」
限界だったのだろう。
そこまで聞き取ったところで、俺の意識はぷつりと途絶えた。
※※※
「……はぇ?」
気がつくと俺は、見知らぬ場所に立っていた。
辺り一面、真っ暗だ。
でも、闇の中にいるというのに、自分の姿がよく見える。
俺は地球にいた頃の私服を纏っていた。
「あれ? 俺、どうなって――ほわっ!?」
いつの間にやら。いや、最初から居たのか。
俺の正面に、奇妙なものが立っていた。
それが人なのか、造形物なのか、はっきりわからない。
なぜならモザイクがかかったように、霞を纏ったように、それの姿はブレていて、ぼやけていて、ちゃんと視認することができないからだ。
ただ、四肢があるように思う。
あと、背中に何かを背負っている?
よくわからないが、たぶん、人型の何かではあるんじゃなかろうか。
「あ、あの……」
「――――――――――」
聞いたこともない言語で。
そのモザイクさんは、俺に何かを語りかけてきた。
なんだろうこれは?
いったいどういうことなんだろう?
そのうち、ふっと意識が遠くなった。
モザイクさんの姿が徐々に遠退いていって、見えなくなって――
「……はっ!?」
目が覚めた。
夢だ。
俺は今の今まで、夢を見ていたのだ。
「……わけわからん夢だったな」
べつに興奮も恐怖もなかった。
ただ淡々と、モザイクさんが俺に何かを語りかけてくる。
夢らしいといえば夢らしいが、何かの占いにも使えなさそうな、有り体に言うとまったく意味のなさそうな光景を見てしまった。
「やれやれだな」
俺は体からずれていた毛布の位置を直し、枕の位置を調節して、もう一眠りするためにベッドの中で寝返りを打った。
そのまま目を閉じて、すやー。
すやー……。
「ってちょっと待てぃ!?」
毛布?
枕?
ベッド?
俺は、ありえないはずのそれらを吹き飛ばしつつ飛び起きた。
自分の姿を見る。
もちろん夢の中で見た地球の私服姿などではない。
だが、この世界における標準的な、簡素な布衣を纏っていた。
「この俺が服を着ている!? って、その驚き方だとまるで普段はマッパの変態みたいじゃないか……あ……」
急にくらっときて、パタンとベッドに倒れ込む。
そうだ。俺は熱を出して、道の真ん中でへばってしまったんだ。
ところがどっこい、今はどうだ?
仰向けのまま周りを見回すと、そこは小さな窓が備わった個室だった。
本棚にいくつかの本があって、あとは机と椅子、このベッドとクローゼットがあるだけの、とてもシンプルな部屋。
窓から陽が差し込んでるってことは、昼。
俺はどうやら、長い時間寝ていたようだ。
整理しよう。
裸同然で倒れていた俺が、目を覚ますとちゃんと服を着ていて、しかも屋根のある部屋に寝かされていた。
おまけに今気付いたが、毛布に載っていたこの湿ったタオル……これは、俺の額に置かれてたものなんじゃないか? おそらく、跳ね起きた瞬間に落ちてしまったのだろう。
「……助かったっぽい? いや――」
その続きを言う前に、部屋の扉が唐突に開かれた。
そして、出てきた人物とばっちり目が合う。
「あっ!?」
俺の前に姿を現したのは、水が張られた桶を抱えた若いシスターだった。
ゲームなんかでよく見るザ・シスターって感じの格好。
頭には何も被っておらず、髪を一つ結びにして肩から垂らしている。
年齢はたぶん、俺よりちょっと上ぐらい。女子大生みたいな。
「よかった! 気がついたんだね!」
「はぁー……」
「え? どうかしたの?」
シスターを見た瞬間に深く息を吐きながらがっくり頭を垂れた俺に、彼女はどうやら戸惑ってしまったらしい。
今のは安堵の溜息だ。
どうやら俺は、助かったっぽい。
いや、助けられたっぽい、ということを悟ったが故の。
「今回も悪運が勝ったな……」
「ん?」
「いえ、なんでもありません。ええと、あなたが俺を助けてくれたんですか?」
「違うよ。看病したのは主に私だけど、きみをここに運んでくれたのはギルドの人。護衛の任務中に、道の真ん中で倒れてるのを見つけたんだって」
「なるほど」
ギルドってのは、商人同士の組合かなんかだっけ?
でも今、護衛の任務とか言ったし、地球の歴史のギルドとは根本から違うのかも。
まあ今はいいか。
……あ!?
「すみません、倒れてるのは俺一人でしたか?」
「ん? もしかして、誰かと一緒にいたの?」
「いや、そういうわけではないんですが……」
妖精たちのことをすっかり忘れてた。
あいつらどこ行ったんだろう?
まさかそのままどっかに消えたってことは無いと思うが……。
もしかして最初に会ったときみたいに、すぐ近くに〝隠れてる〟のかな?
そうだったらいいな。
あのまま今生の別れってのは寂しいじゃん。
落ち着いたらまた出てきてほしい。
「どうかしたの?」
「あーいえ、その、なんとお礼を言ったらいいか」
「いいよそんなの。ほら、寝た寝た」
シスターに促されて、またベッドに横になる。
シスターはベッドサイドの小さい机に桶を置いて、それでタオルを絞り直してから、俺の額に載せてくれた。
冷たくて気持ちいい。
「……」
「……」
「な、何も聞かないんですか?」
「ん? 聞いてほしいの?」
間髪入れずにそう問い返されて、少々面食らう。
シスターは俺の顔がおかしかったのか、くすりと笑った。
「皆まで言わずとも、全部わかってるよ」
「え?」
「きみ、ここに運ばれた時、ボロボロの格好で、傷だらけで、おまけに熱もあった。もちろんお金なんかなくて、それにその背中の刺青」
邪印のことに触れられて、一瞬ドキッとした。
何を言われるのかと焦ったが、シスターが人差し指を立てながら神妙な面持ちで弾き出した答えは予想外のものだった。
「ずばりきみ、どっかから逃げてきた奴隷でしょ?」
「ど、奴隷?」
「いやいや、否定しなさんな。私にはわかる。私にはすべてわかってる。そんな悪趣味な刺青まで彫られてるってことは、大方どっかの金持ちにでも囚われてたんでしょ? いるんだよね、人を人とも思わない残酷なやつが」
「は、はあ」
ものすごい盛大に勘違いされてるな。
でも、これは考えようによっては好都合なのでは?
なんせ真実の俺は、異世界から召喚されたただの高校生なのだ。
そんなことを馬鹿正直に話しても、おそらく精神状態を疑われて終わりだろう。
ならばここは乗っかるのみ。
「でも安心して。この教会に来たからにはもう大丈夫。イグナ様とアーロン神父と私が、責任を持ってきみを保護します。辛かったね。がんばったね。もう、奴隷生活は終わりだよ。イグナ様の聖火に照らされて、きみの人生は輝きを取り戻すんだよ」
「あ、ありがとうございます」
俺の両肩に手を置いてうんうんと頷くシスターに、とりあえずお礼を言った。
こ、この人、泣きそうになってる。
いい人なんだろうな。
そしてたぶん、熱い感じの人だ。しゃべり方でなんとなくわかる。
「あの、ここは教会なんでしょうか?」
「そうだよ。ベーツェフォルト公国城下町の外れにある、小さな教会。レオニン通りに面してるからレオニン教会っていうの。ま、この町じゃ一番小さな教会だね」
どうやら俺は、図らずも当初の目的地だったベーツェフォルト公国城下町に辿り着いていたらしい。
一番小さな教会ってことは、他にも教会はあるのか?
教会がたくさんあるってことは、それだけ宗教が広く浸透してる?
いろいろ尋ねてみたいが、でもその前に。
「シスター、一つよろしいでしょうか?」
「なにかな?」
「俺、ものすごく遠くから逃げて来たんです」
「ほう」
シスターには申し訳ないが、もう少し嘘を重ねさせてもらうことにした。
これは予防線だ。
こっちの世界のことをよく知らない俺を許容してもらうための。
あるいは不審に思われないための。
「それで、実はこのあたりのことをまったく知らなくて……。読み書きもできませんし、何より風習や習慣にまったく馴染みがありません。知らないことだらけなんです」
「え? もしかして外国から来たの?」
「そんなところです」
「あれ? でもそのわりには言葉ペラペラだよね?」
「が、外国で一緒に奴隷になっていた同い年の子がいたんです。その子がこの大陸出身だったみたいで、言葉を教えてくれて」
「なるほど」
ふー、バレるかと思って焦った。
意外に鋭いなこのシスター。
ともかくこれで、外国から逃げて来た奴隷の俺、完成。
なんとかつじつまを合わせられたかな?
「あ、そう言えばきみ、名前はなんていうの?」
「俺はヒカルです」
「ヒカルくん、か。やっぱり外国から来たんだね。ここらじゃ珍しい名前だよ。あっと、私はケイ。この教会でシスターをやってます。よろしくね」
「よろしくお願いします、ケイさん」
「ところでさぁ」
「はい?」
なんだろうか?
今まで人の良さそうな笑顔を浮かべていたケイさんの表情が、変わった?
いや、相変わらず笑顔ではあるんだけれども。
その笑顔の爽やかさが無くなって、若干、粘性を帯びたというか。
「さっき、一緒に奴隷やってた子が居たって言ったよね?」
「は、はい」
「その子って男の子?」
「え?」
なぜそんな質問を?
いやでも、答えておかないと設定が崩壊してしまう。
男の子……でいいよな。
ていうかあれだ、こういうのは本当の知り合いを置き換えてしゃべったりするとうまくいくパターンだ。
身近な男友達、と考えて思い浮かんだのは、地球で最後に会った三六九だった。
あいつとは高校に入ってすぐ出会って、それから一年ぐらい一緒にいた。
と考えると短い期間のような気もするが、いろんな死線を共にくぐったせいで、とても濃密な時間だったように思う。
よし、三六九モデルで語ろう。
「男の子です」
「なるほどぉ。その子とはどれぐらい一緒にいたの?」
「だいたい一年ぐらいですね」
「部屋は同室だったのかな?」
「はい? いえ、違いましたけど」
「チッ」
「!?」
なんだ!?
今この人、舌打ちしなかったか!?
いやそんなまさか、仮にもシスターが。
ほら、笑顔のままだし。
うん、きっと気のせいだよ。
「その子は今も奴隷なのかな?」
「あー、それは……一緒に逃げて来たんですけど、旅の途中で離ればなれになってしまいました。なのでどうなってるかわからない状態です」
「そっか。またその子に会いたい?」
「もちろんですよ」
設定はすべて嘘だけれど。
俺が三六九にまた会いたいというこの気持ち。
これは本当のことだ。
なので、自然と言葉が溢れてくる。
「俺は今まで、何度も死にそうな目に遭いました。でも、そのたびにあいつが助けてくれたんです。あいつが居なかったら、今の俺は無い」
辛いこと、悲しいこと、たくさんあったけれども。
それはきっと、三六九と再開できてからも続くんだろうけど。
それでもまた、一緒にいたいと思う。
いつの間にか三六九という存在は、俺の中でかけがえのないものになっていた。
ちょっと照れくさいけど、親友、と呼んでもいい。
あいつがどう思うかは別にしてな。
とりあえず俺は、それくらいの気持ちを抱いている。
……うわ何考えてんだ俺、恥ず……。
誤魔化すために、一つ咳をした。
「だからまあ、なんとか元の世界――じゃなくて、ええと、そう、あいつと一緒に平和な毎日を送れる方法を探したいですね。そのために旅してたんですけど、いや、こんな感じでケイさんにお世話になっちゃって申し訳ないです」
「……」
「? ケイさん?」
あれ?
ふとケイさんを見ると、彼女は目を見開いて固まっていた。
な、なんだろうか?
もしや、何か俺の発言におかしなところがあって、嘘がバレた!?
いや、違った。
「キたわぁこれぇ……」
数十秒の沈黙を破ってケイさんが呟いたセリフがこれだった。
「はい?」
「本物の……男の子同士の愛だわぁこれぇ……」
「はい!?」
け、ケイさん!?
あなたいったい、何を言ってるんですか!?
男の子同士の愛?
ま、まさかこの人、腐って――!?
い、いかん!
これは非常にまずい!
このままではこの人の脳内で俺と三六九が……!
今すぐやめさせなければ!
「ケイさん! 俺が思うに、あなたは壮大な勘違いをしている!」
「大丈夫。皆まで言わずとも、全部わかってるよ」
「嘘だ!? 絶対わかってないでしょ!?」
「いやいや、否定しなさんな。私にはわかる。私にはすべてわかってる」
「その遠い目をやめて!」
「奴隷生活からの逃亡……それは二人にとって、愛の逃避行でもあったんだね」
「勝手に物語を作らないでください!」
「しかし残酷な運命は、二人にさらなる試練を与えたもうた! おお、イグナ様! なぜあなたはヒカルの愛を阻まれるのですか!」
「誰かこのシスター止めてえええっ!」
この尼(←二重の意味で)いい加減にしろよ!
その後、俺はケイさんにあーだこーだといろいろ説明、というか俺と三六九はそんな関係じゃないですからと説得するのだが、全然聞いてくれなかった。
むしろ彼女はより温かく、優しい瞳で俺のことを見つめてくるのだ。
何も心配は要らない、今は元気を取り戻すことの専念してくれ、と。
結局俺は、話の途中で出てきたアーロン神父と、この教会に住んでいる身寄りのない子供たちが挨拶に来るまの間に、俺×三六九を否定できないのだった。
すまん三六九……いろんな意味で。
※※※
二週間後。
毎日薬を飲ませてもらった俺の熱はすっかり下がり、完全に回復していた。
今では教会の手伝いに精を出す毎日だ。
掃除したり、洗濯したり、食事を作ったり、壊れた服を修繕したりと、ニルベ村で過ごした時もそうだったが、ここでの生活ってのは、概ね生きることに直結している。
ただ、ニルベ村と違ったのは、皆が温かく俺を迎えてくれていること。
シスターはもちろん、神父さん、教会に引き取られた子供たち、その全員が、いきなり現れた俺を歓迎してくれた。
これもイグナ様のお導き、いつまでいてくれても構わないよ、と神父さんが言ってくれたときは、思わず深々と頭を下げたものだ。
そればかりか神父さんは、この世界についてあまり知識を持たない俺に、いろいろなことを教えてくれた。
もともと、子供たちの教師役として勉強を教えていたようなのだが、それに俺も混ぜてもらったのだ。
「ごらんなさい。地図で言うこの部分がラグナクルト大陸。我々が住まうベーツェフォルト公国のある国です」
「なるほど」
「兄ちゃん、こんなことも知らねーの?」
「おっくれてるぅ」
子供たちにからかわれながらの授業だ。
「こらこら、ヒカルさんは外国育ちなんだ。おまえたちだって外国の地理には詳しくないだろう? ……こほん。話を戻しますと、このラグナクルト大陸全土に普及しているのがイグナ教です」
イグナ教。
それは地球世界でいうところのキリスト教ぐらいメジャーな存在らしい。
いや、一部の地域を除いて大陸全土に広まっているらしいので、膾炙率はキリスト教以上だろう。
人々は皆イグナ教を信仰し、あとはその信仰具合が浅いか深いか、の話になるのだそうだ。
「ですからイグナ教の作法を学ぶことは、これからのヒカルさんにとってプラスになるところが多いと思います。敬虔な信者の方は、イグナ教の教えを守らない者を良しとしない場合が多々ありますからね。私は特に熱心な信者というわけでもありませんが」
神父さんのホーリージョークにみんな笑う。
「では、イグナ教の成り立ちについてお教えしましょう。まず遠い昔――神話の話になりますが、この世界は一度、滅びかけました。それを救ったのが、天界よりこの世界に舞い降りた神々と天使たちです。神々は自らがお作りになった〝神器〟でもって、世界を救済したのです」
神器、か。
その単語はミナからちらっと聞いたかな。
内容はさっぱり覚えてないけど。
「神々はこの世界に神器を残し、天界へとお戻りになられました。人々には平和と安息がもたらされましたが、しかし時間と共に、人々は神器を巡って争うことになるのです。世界中の国々が、神器を巡って戦争を起こしました。神器によって救われた世界が、神器によって再び業火に包まれる。皮肉なものです」
たしかに。
人間の馬鹿さ加減っていうのは、どの世界でもあんまり変わらないもんだなぁ。
「その戦争も百年ほど前にようやく落ち着きを見せました。主立った各国が一つずつ神器を保有することで、なんとか均衡が保たれている状態です。外国の一部では今もなお戦争が展開されていますが、世界大戦当時に比べれば大変平和な状態でしょう」
「そしてこのラグナクルト大陸にも、ひとつの神器があります。〝聖翼神イグナ〟様がお作りになられた〝天上の聖火〟です。これは現在、イグナ教の総本山があるアストロニア王国で保管されています」
神父さんは、地図上で、ラグナクルト大陸の東側を指さす。
なるほど、ここがアストロニア王国とやらか。
領土的にベーツェフォルト公国の十倍以上はある。でかい。
「イグナ様が司るのは〝聖火の翼〟です。イグナ様は聖なる炎で出来たその翼で、滅びかけた人々に暖と希望を与えてくださいました。人々の生きる道筋を、イグナ様が照らし出してくださったのです」
他にも神父さんからは、イグナ教の教義についてやお祈りのしかた、信仰心が浅い人にも役立つことわざなどを教えてもらった。
また、イグナ教とは関係無いが、文字の読み書きを練習させてもらったりもした。
この世界にはまだまだ滞在することになりそうだし、覚えておいて損はないだろう。
そんなこんなで、教会に身を寄せた俺は、充実した日々を送らせてもらっている。
ほんと、みんなの親切がありがてぇ。
こんな会話もあった。
「あの、お世話になった分は、仕事でもなんでも見つけて返しますから」
「仕事を探す、ということについては賛成です。あなたがいずれ旅立つつもりなら、先立つものは必要でしょう。しかし、私たちに気を遣う必要はありません。親切な貴族の方から寄付を頂いておりますので、実は生活には余裕があるのですよ。はっはっは」
嘘か本当かはわからないが、ただ、俺を気遣ってそう言ってくれたことだけは間違いないだろう。
神父さんになんと言われようと、絶対に恩返しがしたい。
そんな決意が固まりつつあった。
そして、三週間目のとある午後。
「そろそろ仕事でも探しに行くかなぁ」
「あら、ようやく仕事を探す気になりましたのね」
「……無職のヒカルがようやく重い腰を上げた」
「就職だ就職だー♪」
石造りの礼拝堂と宿舎を囲む塀。
俺はその塀の内側で、チッチ、ピルチ、マチーらと一緒に庭の草むしりをしていた。
そう、妖精組と一緒にである。
というのもこいつら、教会に来たその日の夜、俺が部屋で一人きりになったところで普通に姿を現してきたのだ。
彼女たちの再登場に、俺大喜び。
三人まとめてぎゅーっと抱きしめてやったら、チッチにめちゃくちゃ怒られた。
いいじゃないかよぅ。
嬉しかったんだよぅ。
そんな、顔を真っ赤にするまで怒らなくてもいいのに……。
ここの教会の人たちは皆いい人だ、と三人に説明したが、やはり姿を現すのは抵抗があるらしく、基本的には俺が一人きりの時にだけどこからともなく出てくる。
その辺、実に妖精っぽい。
「その言い方やめろ。俺が今までニートだったみたいじゃないか」
「ニートってなんですの?」
「あー、別に覚えなくていいよ……お?」
そんなくだらない会話をしていると、チッチたちの姿がいきなり消えた。
これはあれだ、誰か人が来たんだ。
彼女たちは俺以外の気配を察知すると、問答無用で即いなくなる。
その辺、実に妖精っぽい。
「こんにちは」
「ああどうも」
背後からかけられた挨拶に返事をしながら立ち上がる。
振り返ると、教会の入り口付近に一人の中年男性が立っていた。
でっぷりと太った体型に、一目で上等な素材で作られているものだとわかるコート。
首元のスカーフが実に貴族っぽい。
というか、この人は本物の貴族である。
彼の名はバステロリッチ。
なんで知っているかというと、以前にも教会を訪ねてらっしゃったんで、既に面識があるのだ。
「こんにちは、バステロリッチさん。もしかして、今日も寄付を?」
「たいした額ではありませんがね。子供たちの様子を見るついでにちょっとだけ」
「いつもありがとうございます」
「いえいえ」
柔和な笑みを浮かべる彼に、その場でしっかり頭を下げてお礼を述べる。
この人はたいした額ではない、なんて言ってるけど、これがたいした額なんだな。
いつかアーロン神父が〝親切な貴族の方から寄付を頂いているの〟などと話してくれたが、それは本当だった。
その親切な貴族こそ、このバステロリッチ氏である。
しかも俺がこの教会に身を寄せてからは、微妙に額を増やしてくれてるみたいだし。
つまり俺は、この人に面倒を見てもらっているも同然なのだ。
「ははっ、ヒカルさん、もうすっかりこの教会の一員ですね」
「はい。皆さん親切にしてくださったおかげで、すぐに溶け込むことができました」
「良いことです。子供たちは元気ですかな?」
「元気です。毎日からかわれてますよ」
「そうですか。うんうん、子供は元気に健やかなのが一番だ。子供が幸せそうに育っているのを見ると、ほっとする思いですよ」
このバステロリッチさん、自分で公言するほど子供が好きらしい。
たまに、子供たちを見ながら遠くを見つめるような目になっていることがある。
昔、何かあったのかな、などと考えてしまうが、まだ深く尋ねてみたことはない。
とにかく、子供好きで気のいい紳士なのだ。
「子供たちは今、中で神父さんとシスターの手伝いをしています」
「わかりました。ヒカルさんは、ふむ、庭掃除ですか」
「ええ。でもあらかた終わりましたので、これから仕事を探しに出ようかと」
「仕事を?」
俺はバステロリッチ氏に、仕事を探すわけを話した。
路銀稼ぎと、あとはお世話になった人たちへの恩返しだ。
「なるほど。それはとても良い心がけだと思います。ヒカルさんはまだお若いのに感心ですな」
「いえ。あ、もちろんバステロリッチさんにもお返しさせてもらいますから」
「ははっ、私のことはけっこうですよ。私への恩返しの気持ちは、どうか教会の皆さんに向けてあげてください」
この人もめっちゃええ人や。
この町を出るまでには、何が何でもお返しさせてもらおう。
「ところで、何か仕事の当てはありますかな?」
「それがまだ。とりあえず街に出てみようといったところで」
「そうですか。ではまず、大広場の掲示板を見てみることをおすすめしますよ。ギルドに持ちこまれないような小さな依頼や求人は、そこに出されることが多いですから」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「いえいえ。では、私は子供たちに会ってきます」
バステロリッチ氏はひらひらと手を振って、礼拝堂の中へ入っていった。
ふむ、大広場の掲示板か。
これはいいことを聞いたぞ。
俺はむしった草を片付けてから、宿舎で繕い物をしていたシスターに一声かけて、街へと繰り出したのだった。
「ええっと……」
この街に訪れてから教会の外に出たのは、シスターの買い物に付き添った二、三回程度しか無い。
それでも大広場の位置は頭に入っている。
なんせすべての通りが、とりあえず大広場に繋がるようになっているのだから。
つまりこの城下町は、大広場から四方八方に伸びた通路と、それを取り巻く建物で構成されているわけだ。
最初は異世界の街を歩くのにドキドキしたものだが、今ではそんなこともない。
のんびりと、町並みを楽しみながら歩く余裕も出来た。
商店が多い大広場に近づくにつれ、人々の通行量も増えていく。
やがて大広場が見えて――こない。
あれ?
なんだあの人だかりは?
広場でなんかあんのか?
人々の背に遮られて、大広場を見通すことができない。
「おじさん、なんかあったのか?」
「んん? いや、まあ、見てみろよ」
手近な男性に話しかけると、そのように促された。
傍に運良く空樽が転がっていたので、それに載ると、群衆の最後尾からでも楽に広場を見渡すことができた。
そこに広がっていた光景は――
「んだとこらぁ!?」
「おいガキぃ! 舐めてんじゃねーぞ!」
「やれやれ……おっちゃんたち短気だねぇ」
一人の女の子が、柄の悪そうな男たちに囲まれていた――。
一週間後もお楽しみに!