サーモンピンク
回ってきた皿を取る。炙られたばかりのサーモンがピンク色にテカっていた。
「おいしそうだね」
仲良く並んだ2カンのお寿司を二人で分けた。
僕は右。彼女は左。
同じタイミングで箸を出して、衝突しそうになる。
「ごめん」
「どうぞ」
にこりとする彼女の頬はピンク色だ。
「うん」
僕は早く自分の分を取って、彼女に渡そうと慌てていた。
「あ!」
ご飯の上からサーモンがぽろりと落ちた。
彼女がくすりと笑った。
「不器用なのね」
そう言うと、彼女は皿の上でバラバラになったサーモンとご飯をひょいと食べてしまった。
「今度は失敗しないでね」
「……うん」
間接キスなんてことを考えた僕は、彼女よりもウブなんだろうか。
「うわ」
またもや落としてしまった。
彼女がお腹を抱えた。
「わざとだから!」
馬鹿みたいな言い訳をして、手づかみでサーモンをつまんだ。
「もう一皿食べていい?」
サーモンピンクの微笑みで、彼女は回ってきたお皿を指さした。
「いいよ」
僕は指についた脂を舐めた。
「いただきます」
僕は右。彼女は左。
手づかみで食べようとした僕を真似て、彼女も細い指を伸ばした。
「おいしい」
彼女の指を舐める仕草にどぎまぎした。
変な想像をしてしまった僕はやっぱりウブだ。