第一話~魔王様よ永遠に~
この広い世界で魔王の名を知らぬものはそうはいないだろう。
見た目は小柄なれど、その身に有する魔力規格外。
地震・雷・火事・オヤジ
ありとあらゆる天災を引き起こし、極めて高い自己治癒能力すら手にしていた。
更にはその規模の大きさ、人々を羽虫を踏み潰すかの如く蹴散らし拡大。
この地の三分の二までを手中へと収めた。
しかし、悪魔たちの進行が北の地から衰退していく。
風の噂によれば、その身を勇者と名乗る者の仕業であると。
この噂を皮切りに全土で人間たちの反抗が始まる。
何処にこれ程の規模が残っていたのか疑いたくなるものであったが、魔王にとって各地での反乱など微々たるものであった。
しかし、勇者という存在が侵略の邪魔であることは明白だった。
そこで魔王。
あえて勇者を自らの城、ガルガンティスへと招き入れる。
勿論罠は腐るほど仕掛けておいた。
石像に化けさせたガーゴイル
石璧自体がモンスターだったり、食べれば一日中もがき苦しむ下剤入りの晩餐
触ればビリッと静電気が流れるドアノブとか
魔王城にドアノブがあるのか?とか、初盤の頑張りはどうした?とか、色々間違っているような気もするが、魔王は意気揚々だったのでこれはこれでよしとする。
全てが難なく片付けられ、勇者達が来たときには魔王様、ちょぴり悲しげだったが気を取り直してバトルスタート。
勇者のこれまたお決まり聖剣での斬撃に、勇者のお仲間たちの魔法攻撃。
轟く雷鳴、風切る剣閃
魔法の方は魔王を追い詰めるほどではなかったが、聖剣から溢れ出る霊気は魔王のそれに匹敵する。
しかし魔王は楽しくて愉しくて仕方なかった。
これ程に身を焦がし、血を滾らせる戦いはそうはなかった。
その瞳、嬉々として勇者を見つめ。
その身体、嵐の如く速く激しい。
そんな死闘を繰り広げる事二時間が経過したその時、
魔王に一瞬だけ気の緩みが出来た。
なんせ勇者・その他御一行、計五人を一挙に相手にしているのだ。
治癒能力があるとはいえ、当然ともいえる疲労の蓄積に目が眩み、それを逃す勇者であるはずがない。
勇者、聖剣を握り魔王へと肉薄。
その剣が魔王を捉えようとした、その瞬間。
二人の間を“何か”が穿つ
防御もままならぬ二人はあえなくその身を地になげうった。
これを見て勇者一向、勇者を回収し一時撤退を行った。
魔族側も深追いをせず、魔王の安否の確認に急いだ。
仲間に抱えられた勇者の瞳はうっすらと魔王を見つめていた。
いやぁ、こりじゃぁまだ入れ替わりしたか、全然わかんないですね~
頑張れ、魔王!勇者!