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そばに  作者: 振り子時計
2/3

2

(またボーっと窓の外みてるよ。)


俺(中内)の前の席に並んで座る女子が、優を見ながら笑っていた。


・・・お前らは、何も知らないから笑えるんだよ。・・・

そう思いながら優を見る。


薄暗く雨の降っている外を眺める優の姿はいつもと変わらない。


「・・・さて、この問題を・・・。山崎」


「山崎 優いないのか?」


優の方を見ながらクスクスと笑う声が聞こえる。


「・・・優の奴まただな」


隣に座る木村が笑って話掛けてきた。


「いつものことだろ」


と話していると、


ガタッ!!


と言う音とともに優が窓から飛び降りた。

一瞬自分の目を疑い、声が出ないまま木村を見た。木村と目が合ったが動けない。


「キャーーーー!!」


女子の声が教室に響いた。

その声で身体から硬さが取れた。俺と木村は教室を飛び出し、階段を駆け下りて外に出た。優の姿が無い。上を見上げると2階の教室の窓から皆こっちを見ていた。それほど高くないことに安心し優を探した。


「裏門から外に出てった!」


教室からの声に手を挙げて答え、走った。


いつも薄暗い裏の通りは、雨のせいでいつもより暗く気味が悪かった。

人影が見え声を掛けた。


「ゆう!」


体育館の横の道に優はいた。


「何してんだよ」


「焦ったぞ」


特に怪我も無い様子の優に木村と2人で安心し、声を掛けた。


「・・・」


「大丈夫か?」


返答なく項垂れる優にもう一度声を掛ける。


「・・・ああ」


ようやく出た声はとても小さく弱弱しかった。


「今戻っても後で戻っても怒られるのは変わんないから、あそこに行こう。」


木村の声にうなずき「いつもの場所」へ向かった。


合宿所に入った途端に外の雨が激しくなった。


(とりあえず、びしょ濡れはまずいな。)と思っていると


「お前ら、頭だけでも拭いとけ。」


と、木村がタオルを渡してくれた。優も俺もお礼を言い濡れた髪を拭いた。


「ごめんな。迷惑かけて・・・。」


優が小さい声で言った。


「気にすんな。」


笑っていう木村の言葉に俺も頷いた。


「でも、どうしたんだよ。急に飛び降りるから焦ったぞ。」


木村が言うと。


「・・・兄貴が見えたんだ。」


優がゆっくりと答えた。その答えに俺と木村は固まってしまった。


「見えた気がしたんだ・・・。」


「見えた気がしたって・・・。お前の兄貴は・・・」


「分かってる!」


木村の言いかけた言葉を無理やり断ち切るように、優は言った。


「分かってる。・・・兄貴がもういないのも、二度と会えないのも分かってる。でも、兄貴だって思った瞬間気づいたら飛び降りてたんだよ・・・。」


俺も木村も何も言えなかった。


「ごめん。」


沈黙をやぶるように優が言った。


「大丈夫か?」


唯一出た言葉に優が笑って頷いた。無理やり作った笑顔に深い悲しみが見えた気がした。








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