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そばに  作者: 振り子時計
1/3

どんよりと雲が空を覆う春。僕は高校生になった。


「今日も雨か・・・。」

授業が頭に全く入らず、今日も窓の外を眺めていた。


高校に入って1ヶ月経つが人付き合いが余り得意でないため、僕はまだ新しい友達ができないでいる。


それでも孤独を感じないでいられるのは、小、中学校が同じ中内と木村が奇跡的にも同じクラスにいたからだろう。


僕の入学した高校は通っていた中学の目と鼻の先(歩いて5分)ほどの距離にあるため、中学が同じ生徒が多くいる。しかし、その中でも特に中の良かった2人と同じクラスになれたのは奇跡と思うほど嬉しかった。


チャイムが鳴り、ようやく昼休み。


「あ〜。腹減った」


と言いながらこっちに向かってくるのは中内。中学で柔道をやっていただけあって、かなりがっちりとした体格をしている。性格は体格に似ず穏やかで僕は中内が怒っているところを一度も見たことがない。そのうえ、始めて会う人にもすぐに打ち解けてしまえるので中内の周りにはよく人が集まる。


「どこで食う?」


と中内の後ろから現れたのは木村。線が細く整った顔をしているため、高校に入ってからすぐ女子に囲まれていた。始めはかなり困っていたが最近はその状況にもなれてきたらしく、休み時間に女子と話しているのをよく見かける。


「いつものとこで」


と僕は言った。中内や木村と違い、僕は一人でいることが多かった。一人で何をするというわけでもなくぼーっと窓の外を眺めていた。時々話しかけてくれる人もいたが、ぼーっとしている時の僕の返事が余りにもそっけないので話が弾むわけもなく、僕に話しかける人は少なくなった。そんな僕を嫌な顔せず付き合ってくれる2人には口には出さないが感謝していた。


「ここは静かでいいなぁ」


「ここ」とは、いつも僕らが使っているたまり場で体育館の横にある合宿所だ。


「俺に感謝しろよ」


中内が得意そうに言った。


「はいはい。ありがとな」


木村が笑って答える。


「苦労したんだぞ」


「「うそつくな」」


中内の言葉に僕と木村が笑いながら言った。



ここを見つけたのは中内だが、苦労したのは僕と木村である。学校が始まって最初の1週間。僕たちは教室でおとなしく昼飯を食べていたのだが、木村に女子が集まって来たり、その女子目当てで男子は中内の所に群がって来たり、集まってるついでに僕に話し掛けてくる人がいたりでゆっくり昼飯も食べれないでいた。


そんな日が続き教室に嫌気がさしたので、僕らはゆっくり昼飯を食べれる所を探すことにした。


「余り目立たなくてゆっくりできるとこにしよう」


と3人の意見がまとまり。わざわざ3人で5時間目を抜け出し、「たまり場」を探しに行った。


さすがに授業中に校内をうろうろできないので、外に出て学校の周りをうろついていた。


学校の前の「学園通り」という二車線の人目に付きやすい道路方面はさけ、学校裏の通り沿いから探すことにした。この通りは昼間でも薄暗く、道路の舗装も行き届いていないため車も自転車も余り通ることがなかった。そのため、「たまり場」を探すにはうってつけの場所だった。


「もうここでいいんじゃない?」


と、道沿いの体育館の渡り廊下を指差す僕に


「室内のがゆっくりできる」


「そうそう」


と2人は少し意地になってるようだった。


体育館の横を抜け、見知らぬ建物が目に付いた。


「あれ何?」


木村の問いに


「合宿所!今は使ってる部活はな・・・」


言葉の途中で中内が走る。


僕と木村もつられて走った。


「何だよ急に」


走り出して・・・と木村が言い切る前に


「ここ今使われてないんだよ!誰も入ってこないんだぜ!」


少し興奮気味に中内が言った。


「てことは・・・。」


3人とも顔を見合わせた。


「決まりだな!」


中内の嬉しそうな声に僕らは笑って頷いた。


そこからが大変だった。使われていない合宿所は案の定鍵がかかっていて入れなかったため、

2階の錆びて閉まりきっていない窓に目を付け、僕と木村で合宿所の横にあった大きな桜の木からよじ登り、何度も落ちそうになりながらまだ肌寒い空気の中、汗をかきながらこじ開けた。


本来なら一番力のある中内のやる役目なのだが、「高いところはちょっとな・・・。」と言う中内を笑いながら僕と木村が引き受けた。


始めて中に入る合宿所の中は外面と違い、埃はたまっていたが想像していたよりきれいだった。


「へ〜、畳かぁ」


僕の後から入ってきた木村も気に入った様だった。


階段を見つけ、1階に降り一番目立ちにくい場所の窓(僕と木村の入ってきた真下)を開け

中内を入れた。


「すっげ〜!10畳くらいあるんじゃね?」


と中内も嬉しそうだった。


それから、暇があるとここに集まった。

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