銀色のま〜るい友
ウチにある時計がモデルです( ̄ー ̄)
時を刻む針の音は控えめに。主の眠りを妨げない程度に刻むのが礼儀だ。
できるなら、安らかな眠りを誘う心地よいリズムを奏でられれば言う事はないのだが、一昔前に作られた故それはご容赦願いたい……。
――もう、主とは十数年の付き合いになる。
初めて主と出会ったのは駅前の大型デパート。そこの三階にある小さな時計屋だった。そこで金銀の二色セットで格安販売されていたところを主に買われたのだ。
ちなみに私の色は銀色で形は卵型である。今となっては所々汚れて以前の面影は薄い。主はそういうところは無頓着なのだ。
時を同じくして作られたもう片方は、間もなく主の友人の元へ旅立った。なんでも友人が県外の大学に行くので餞別に我々を購入したという。それが我々を買うきっかけとなった様だ。
金色の時計は今どうしているのか。まだ時を刻んでいるのか、はたまた悠久の眠りについたのか。それは知らない。
我々の寿命はそんなに長くない。私がまだ現役でいる事の方が奇跡といっても過言ではない。それを思えば……いや、何も言わないでおこう。
主と私は朝と夜しか顔を合わせる事はない。
――朝、私は時を告げ主を眠りから覚ます。その時は全身全霊を込めて主を夢の世界から引きずり起こす。自慢ではないが、今まで一度たりとも主に寝坊をさせた事はない。これは私にとって唯一無二の勲章だ。
目覚めた主は私の頭上にあるボタンを押して朝の支度を始める。そして仕事へと出掛けて行く。
それから私は部屋で静かに時を刻む。窓越しに時間の移り変わりを感じながら主の帰りを待つのだ。
――夜、疲れた顔の主がいつもの起床時間をセットする。
これを忘れられると私は主を起こす事が出来なくなる。故に主が部屋に入って来ると私は無言の呼び掛けを繰り返し主を呼び寄せる。
これがなかなか骨のいる仕事だ。
普段はすぐに気付いてくれる。どんなに疲れてても必ず私の元へ来てくれる。
だが、主がお酒を飲んで来た時は大変だ。酔っているから私に気付いてくれないし、着替えもせずそのまま寝てしまう時もあるのだ。
それでも夜中に目覚めると慌てて起床時間をセットしてくれる。そのおかげもあって主は今まで寝坊をした事がない。
私はいつまで時を刻み続ける事が出来るだろう。最近、少しずつ時が遅れてきている。
電池が無くなってきてるわけではない……そう、寿命が近付いてきているのだ。
いつまでも時を刻み続ける事は出来ない。いつかは時が止まってしまうだろう。
それでも十数年も動き続けてきたのだ。十分に役目は果たせたと思う。だから、その時が来るのを怯える必要はない――。
時は流れ続ける。
私が動きを止めても。主が消えて無くなっても――。




