雨はキライ
冷たい雨の雫が忙しなく窓を叩き、時折外に閃光が走り雷鳴が轟く。
それが“一人”でいる事の不安を煽る。
《……今日は仕事で遅いのかなぁ……》
いつもならとっくにご飯を食べている時間。それなのに帰って来る気配も感じられない。
今日は朝から土砂降り。だから電車が遅れているのか、それとも止まってしまったのか。
理由なんてどうでもいい。
早く帰って来てほしい気持ちで苛立ちが爆発しそうになる。
《……寂しくてたまらないよぉ。言われた通り、おとなしく待ってるよ。だから早く帰って来て抱っこしてよ!》
我慢し切れなくなり、ドアに向かうとおもむろに爪を立てて引っ掻きはじめる。
《遅い! 遅い! 遅い! 遅すぎるよ!》
苛立ちは頂点に達し“両手”でドアを激しく引っ掻く。
ドアの下辺は削れ、木片が床にこぼれる。傷つけたので後で怒られるかもしれない。
一瞬、怒った顔が浮かんできたが何かしていないと泣きそうになる。だから、頭ではわかっていてもドアに爪を立てて削り続けた。
……しばらくの間ドアに八つ当たりしたものの、疲れたので居間に戻りクッションの上に寝そべる。
――雨は激しく降り注いでいた。しかも風も強いし雷も鳴っている。どこかで雨宿りしているのかな?
《……外は冷たい雨が降ってる。寒いし雷が鳴ってて怖くて帰れなくなってたりして……》
そう思うと心配になり再び不安な気持ちになる。
いつもならそこまで気が回らない。でも、今夜は雨も風も強いし雷も鳴っている。
……寂しくてたまらない。早く帰って来て……。
――気がつけばグッスリ眠っていた。起きるとベッドで安らかな寝息を立てている主人の姿があった。
《……もう! 心配してたのに幸せそうに寝ちゃって! 帰って来たなら起こしてくれたっていいじゃない!》
こんなに心配してたのに。気づいてくれない主人に腹が立った。でも、何事も無く帰って来てくれて嬉しい。
不意に風が窓を叩いた。そして雨音も大きくなる。
《……そうよ、すべては雨のせいよ! 雨が降ったから帰りが遅くなるのよ!》
この天気がすべて悪い。そう決めつけると安心したのか、なんだか眠くなってきた。
ベッドに上がり毛布に潜り込むと主人の胸の上に登る。その暖かな温もりを感じると静かに目を閉じた。
今宵は夢の中で甘えよう……。




