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弱者の戯れ言

 


 『僕は、とても弱い人間だ』


 僕は弱い。

 僕は臆病だ。

 僕はすべてを拒絶する。

 うまくいかない人生に対し、僕は最も卑劣な手段で反抗する。


 『ひきこもり』


 僕は外界との接触を断つ事で張り詰めた緊張と沸き上がる不安を封じ込める。

 ……深い理由など無い。ただ“そう思う”事が事実だ。

 何が原因なのか、何が僕を変えたのか……言葉に表せるほど僕の闇は単純ではない。

 味気ない現実。

 造られた幸福。

 飾られた愛情。

 ……気付いた時には手遅れだった。

 僕の中で“何か”が崩壊し、すべてがモノクロの情景と化した。

 失意と絶望。

 今、僕の心の大半を占める二つの思いが僕の心に怒りの炎を燃え上がらせる。

 醜い感情に支配され、繋がりを放棄するのに時間は掛からない。理解も無く、押しつけの常識でしか計る事のできない大人達に僕の闇は取り除けない。

 この苦しみと悲しみ、そして寂しさを癒す者は現れるのか。

 唯一、僕の自由を肯定してくれる狭い部屋の中で、僕は電脳世界の住人に救いを求め放浪する。

 真実と虚実が交差する平面世界で、果たして心が瓦解した僕を救い出す者が現れるのか。それとも、残酷なまでの“現実”の名の下に僕の価値を否定するのか。

 ……僕は今日もまた電脳世界へ旅立つ。決して癒される事が無いとわかっていても僕は答えを求めて放浪する。




 『僕の心は妬みの塊だ。』



 僕の心は複雑だ。

 愛すべき人に素直になれない。愛おしさが強すぎて憎しみに変化する。

 愛しくて、愛しくて、でも自分のモノにはならなくて。その切なさが嫉妬を呼び、嫉妬は憎悪へと変貌する。

 どんなに望んでも手に入らない心。

 その優しさも温もりも手に入れられるのに……最も欲するべく“愛”を手にする事はできない。

 愛すべき人。

 尊敬すべき者。

 僕のすべてを理解してくれたはずの母なる人。

 その想いは敢えなく潰える。

 形だけの愛に飼われていた事実を突きつけられ、僕の心は決して溶けぬ氷河に覆われる。


 「その愛は歪んでいる」


 純真な想いは不浄なる劣情と断罪され、耐え難き苦痛の刃と化して胸に突き刺さる。そして“不良品”の烙印を押される。

 純真な想いは拒絶され、偽りの思いに矯正される。

 ――僕を取り巻くすべてが疎ましい。

 いったい何が正しいというのか?

 心の底から沸き上がる想いは間違いなのか?

 造られた社会の常識にそぐわぬものはすべて誤りなのか?

 与えられし常識に従属せねばならない世の中ならば……僕はその世界を拒絶する。

 それを誰もが独りよがりの思い込みという。単なるわがままだと後ろ指を刺す。理解よりも矯正を促す。

 僕は人形じゃない。玩具でもない。弱くとも、醜くくても、歪んでても、今ここに在る一人の人間だ。


 僕は現実世界を拒絶する。

 僕を取り巻く与えられた環境を否定する。

 僕の在る小さな檻の中で、偽りの名を冠して電脳世界の光と闇を行き来し、自分だけの理想郷を探し求める。

 この真偽不定な世界に身を置く事で僕は存在を誇示する。

 逃げの行為と言われても“僕”を維持する手段はこれしか無いのだから。



 『僕は何を求めて放浪する?』



 その答えを求めて、僕は独りで異世界をさまよい歩く。

 決して満たされる事は無いけれど、それが僕を救う唯一無二の方法だと思うから。

 ――僕は弱く、臆病で孤独に耐えられないちっぽけな人間だから……。







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