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過去に縛られた女

 


 虹が降りる丘。

 星の降り注ぐ河原。

 月明かりが映える海。

 ……あなたと歩いた季節。輝きに満ちた日々。

 今も記憶の中であなたは微笑みかける――。




 

 時の流れは早く、いつか二人で見たクリスマスツリーが街を活気づけていた。

 大通りのケヤキ並木に取り付けられた数え切れないほどの電球が幻想的な世界を作り上げ、恋人たちはその煌びやかな光の下に集い愛を語り合っている。

 商店街の店先に並ぶクリスマスグッズにサンタの衣装を着た店員たち。毎年見てるその光景が私の心を締め付ける。

 華やかな雰囲気から目を逸らす様に俯き加減に足早に歩く。道行く人の流れに逆らい私は駅へ向かう。

 ――改札を抜けホームへと降りると着いたばかりの電車から大勢の人たちが次々と降りて来た。

 そのほとんどはカップルだ。

 今日はクリスマスイブ……今宵の主役は彼等なのだ。

 私は彼等がいなくなるのをホームの隅で待ち誰もいない車内へ乗り込む。そして、いつもの席に座り発車までの短い時間を虚しさと共に待ち続けた。


 来る時の半分にも満たない乗客を乗せた電車は定刻通りに駅を出発、流れる景色を眺めながら束の間の休息を取る。

 だが、窓ガラスに映る寂しい車内が空虚に思え心は休まらない。それでも乗車時間が短いので私は外に意識を向けて時が過ぎるのを待った。

 電車を降りると向かいのホームには大勢の人だかり。これから街へ向かうのだろう。それを横目に通路を通り改札を出る。

 駅の外にはいつもの賑わいはない。

 人の熱気がないのでいつもより寒く感じる。私は少し体を温めてから帰ろうと駅前のコンビニへ入った――。



 ……あれから半年が過ぎた。不意にその時の記憶が蘇る。

 梅雨の激しい雨の日に突然の別れを告げ、私の前から姿を消した彼。

 愛していた。信じていた。何の疑問も持たずに将来に希望を抱いていたあの頃。

 まさか他に付き合っている人がいたなんて私は夢にも思わなかった。その事実を知らされると共に彼は私の前から去って行き、残された私はどうしていいのかわからずにただ狼狽えるばかりだった。

 振り返れば幸せな日々。思い出すのは彼の優しい微笑み。まるで夢だったかの様に彼から電話が来るんじゃないか、なんて思うほど現実味を感じない。

 私はいまだに彼の影を払拭する事ができないでいる。未練がましいとわかっていても、その別れを私は受け入れられないでいた……。



 コンビニを出るといつの間にか雪が降り始めていた。

 それを見て今夜は寒くなると天気予報で言っていたのを思い出す。それなのに傘を持って来るのを忘れてしまった私はつくづく駄目な女だと悲しくなった。

 こんなんだから愛想をつかしてしまったのだろうか?

 儚げに降り注ぐ雪に私の心も冷えていく。切ない気持ちに胸が痛み、幾度となく繰り返した自己嫌悪に陥る。



 ――このままじゃいけない。早く過去から立ち直らなければ。

 時は止まらない。いくら悩んでも時を戻す事はできない。そして、一度失った人の心も……。



 雪の中、ゆっくりと歩きながら葛藤し続ける。

 立ち直るまでどれくらい時間が掛かるだろう。愚かで弱い私が、この過去を振り切り新しい恋に目覚めるまで。



 ――そう簡単に人は変われない。それでも変わる努力をしなければ前に進む事はできない。

 不安な気持ちでいっぱいだけど、とにかく前に進むしかない。

 白くなりつつある道を歩きながら、私は見えない未来に思いを馳せた――。








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