gift[年下×年上]
「ついにこの日がきたか……」
「来たねぇ」
喫煙室で換気台に肘ついて頭を抱える俺とは対照的に、今となりにいる男は棒読みにつぶやいた後、天を仰いでタバコの紫煙を勢いよく吹き出した。
― gift ―
「お前は……他人事だと思ってっ」
「今日の礼服カッケーよ。うん」
「俺褒めてどうすんだ!」
「褒めたのは礼服だってば」
「きーさーまーはーっ!」
俺は勢いよく頭を上げて自分より少し上の位置にある顔を見上げると、
「わっ!」
荒々しく口にくわえていたタバコをふんだくって自分の口にくわえた。
「オーボー」
「煩いっ」
「そんなイライラしないでよ。せっかくのメデタイ席なんだから」
単調だが、決して呆れてるわけでもない物言いに、
「……わかってる」
俺は何度も煙を浅く吸いながらイラつく気持ちを落ち着かせた。
「わかってないですよ」
「わかってるって」
「わかってない」
「お前さっきからなに突っかかって!」
怒鳴りつけようとしたらいきなり大きな掌に大きく開いていた口を塞がれた。
勢いがあったのでそのままふごふごと口を動かせていると、
「いい加減、シスコンはなおして下さい」
「……」
細められた瞳が俺をじっと見下ろす。
たまに見せる、この全てを見透かすようなコイツの目が嫌いだ。
「卒業しろなんていいません。アナタのその、家族想いな所に……」
俺は惚れたんですから。
年下のくせに……腹が立つ。
指摘されなくても、進歩のない自分に……腹が立つ。
「幸せになってほしんでしょ?」
「……」
俺は口を塞がれたまま、軽く頷く。
「だったら、アナタのことはこの世で二番目に幸せにしますから」
俺はその言葉に目を見開く。
「何で俺も式に呼んでもらえたか……解ります?」
俺は言われてる言葉が解らず、ただこいつの顔を見ることしかできない。
「式終わったら……タキシードじゃないし2人だけですけど。挙げましょうよ」
にっこり微笑まれる表情が徐々に霞んでいく……。
「よかったら、アナタの名前を……俺に頂けませんか?」
いつの間にか離れた掌が、優しく頬を伝う滴を拭ってくれる。
嬉しいのに……照れくさくて、
「んな……喫煙所でとか、」
「はは、ムードないですね」
なら、後で聞かせて下さい。
と、言葉を添えて俺が落ち着くまで背中をさすってくれた。
式はまもなく始まる。
誓いを交わしたアイツが出てきたら、精一杯笑って、『余計なんだよ』って言ってやろう。
そして、
「俺のことも、幸せにして下さいね」
「三番目にな」
「構いません。アナタが幸せなら、それで」
『共に、幸せに……』
そう、心からの祝福を、この世で誰よりも幸せ願う貴女に……贈ります。
end