第92章 真理の重さ
王都科学アカデミーの私設書斎に、夜の静寂が満ちている。
分厚いベルベットのカーテンの隙間から、街灯のかすかな明かりが忍び込み、ペルシャ絨毯の上に細長い光の帯を落としている。壁一面の書棚には、革装丁の書物がぎっしりと並んでいた——アリストテレス、ボイル、ニュートン、シュタール。それらの背表紙が、燭台の炎に照らされて鈍い金色に輝いている。
暖炉の火はとうに消え、僅かに赤く光る木炭が残るのみ。羊皮紙の匂い、インクの香り、冷めたコーヒーの苦い残り香が、空気の中で混じり合っている。
カルヴァンは書斎の中央に置かれた大きな黒板の前に立ち、チョークを走らせていた。固い黒板の表面を滑る音が、静寂を微かに震わせる。
外套はすでに脱ぎ捨てられ、椅子の背に無造作にかけられている。シャツの袖は肘まで捲り上げられ、襟元の蝶ネクタイも緩んでいた。灰白色の髪が数本、汗ばんだ額に張り付いている。金縁の眼鏡が揺れる炎を映して、時折鋭く光った。
彼の唇から、低い独り言が漏れる。まるで見えない誰かと議論を交わすように——あるいは、自分自身の内なる声と対峙するように。
「金属が燃焼すれば、重くなる……」
チョークが黒板にデータを刻んでゆく。
「鉄片、燃焼前十グレイン。燃焼後、十一・四グレイン。増加量、一・四グレイン」
彼の手が止まる。その数字を凝視したまま、動かない。
「燃素説によれば……これは負の重量を持つ燃素が失われたため……」
チョークを持つ手が、宙で止まったままだ。
「だが、負の重量……」
カルヴァンは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。
「この概念そのものに、問題がある。我々は他のいかなる物質においても、負の重量など観測したことがない。気球が上昇するのは、空気より軽いからだ。『負の重量』などではない——ただの、相対的な密度の差に過ぎない」
目を開け、「負の重量」という文字の下に、力を込めて波線を引く。
「一つの観測結果を説明するために、独立した検証もされていない性質を創り出した……」
彼の声が、誰もいない書斎に響く。
「これは科学ではない。これは……」
彼は躊躇し、そして呟いた。
「自己欺瞞だ」
この三文字を口にした瞬間、胸の奥に鋭い痛みが走った。
それは、三十年もの間、彼が守り続けてきた理論。
それは、彼が教科書に記した内容。
それは、彼が無数の学術会議で擁護してきた見解。
カルヴァンは振り向き、書き物机へと歩み寄る。ガラスのコップを手に取った。半分ほど残った冷めたコーヒーを一口含む。苦い液体が、僅かに意識を覚醒させた。
再び黒板の前に戻り、一部を消し、書き直す。
「仮に……」
チョークが黒板の上をゆっくりと進む。一文字一文字に、力が込められている。まるで何かに抗うように。
「仮に、『何かが失われる』のではなく、『何かが加わる』としたら……」
「加わる」の二文字の下に、強く線を引く。チョークが黒板を突き破りそうなほどの力で。
「では、加わるものとは何だ? なぜそれが加わることで、重量が増すのか?」
簡単な図を描く。中央に鉄片、その周囲に矢印——すべてが鉄片に向かっている。
「空気……いや、空気そのものではない。空気に含まれる、ある成分……」
カルヴァンの脳裏に、再びあの光景が甦る。
リヨン郊外、あの質素な教室。
あの若者が、最も単純な装置で、炎を格別に明るく燃やす気体を分離してみせた。
ガラス瓶の中の炎は、通常の空気中の二倍近く明るく燃えていた。
「酸素……」
カルヴァンはこの言葉を小さく口にした。舌が、その響きに馴染まない。
それは見慣れぬ言葉。彼のこれまでの学術人生すべてに挑戦を叩きつける言葉。
「彼が『酸素』と呼んだあの物質……もしそれが本当に空気中に存在し……もし燃焼が、金属によるその物質の吸収だとしたら……」
黒板に書く:
「鉄片燃焼→重量一・四グレイン増加→空気中の何かを吸収?→その物質には重量がある?→だから鉄片が重くなった?」
この推論の連鎖を見つめ、心臓の鼓動が速まる。
あまりにも単純だ。
笑ってしまうほど単純だ。
負の重量も、場当たり的な仮説も、何も必要ない。
もし燃焼が「吸収」であって「放出」でないなら、すべてが説明できる。
金属が燃焼後に重くなる——空気中の物質を吸収したから。
蝋燭が密閉容器で消える——その物質が使い尽くされたから。
木材の燃焼後の灰が元より軽い——木材の大半が煙や気体となって逃げ、僅かに吸収した物質だけが灰に残ったから。
「待て……」
カルヴァンは突然、ある矛盾に気づいた。
もし燃焼が本当に「吸収」なら、燃焼で生じるすべて——煙、熱、光——を合わせた重量は、元の物質より重いはずではないか?
それとも……何かが空中に逃げているのか?
黒板に書く:
「木材→燃焼→灰(軽)+煙(逃)+熱+光
金属→燃焼→酸化物(重)+熱+光」
なぜ木材と金属では、結果が異なるのか?
カルヴァンはこめかみを揉んだ。頭痛がする。
この問題は、あまりにも複雑だ。
燃焼を真に理解するには、すべてを測り直さねばならない。
金属の燃焼だけでなく、木材も、蝋燭も、油脂も……
反応の前後におけるすべての物質の重量を測定する必要がある——気体も含めて。
そう、気体だ。
これこそが鍵なのだ。
これまでの実験で、気体の重量変化を真剣に測定したことなど、一度もなかった。
なぜなら燃素説の枠組みでは、気体は主に燃素の運び手に過ぎず、その重量は重要ではなかったから。
だが、もしあの若者の理論が正しいなら——
もし燃焼が気体の吸収と放出を伴うなら——
それならば、気体の重量変化を測定することこそが、決定的に重要となる。
カルヴァンの手が、また僅かに震え始めた。
寒さのせいではない。書斎は暖かい。
それは——
自分が今、巨大な発見の縁に立っていることに、気づいてしまったからだ。
もし彼が、燃焼の前後におけるすべての物質(気体を含む)の重量変化を系統的に測定できたなら……
もし彼が、あの「酸素」が確かに金属に吸収されることを証明できたなら……
それは、化学そのものを書き換えることになる。
しかし同時に——
それは、認めることを意味する。自分が三十年間、間違い続けてきたことを。
* * *
その時、扉を叩く音が響いた。
コン、コン、コン。
カルヴァンは勢いよく振り向いた。手に握っていたチョークが床に落ち、二つに割れた。
壁の掛け時計を見る。すでに夜の十時だ。
「どうぞ」
声を落ち着けようと努める。
扉が開き、三人の若い助手が入ってきた。廊下の冷気を連れて。
先頭はアドリアン。二十五歳、カルヴァンの最も優秀な弟子の一人だ。リヨンの裕福な商家の出で、父親は織物業を営んでいるが、アドリアン自身は自然哲学に情熱を傾け、金属精錬に関する博士論文を準備している。上品な深青色の外套に身を包み、金色の懐中時計の鎖が燭光を受けて輝いている。
後ろに続くのはポールとジャン。どちらも二十代前半で、科学アカデミーの研究助手を務めている。ポールは痩身で背の高い青年、いつも丸眼鏡をかけている。ジャンはより若く、学生らしい初々しさが残り、髪は一糸乱れず整えられていた。
「先生、お呼びでしょうか?」
アドリアンは僅かに戸惑いの色を浮かべてカルヴァンを見た。
彼は気づいていた。先生の乱れた服装、床に散らばるチョーク、黒板に描かれた奇妙な図や繰り返し修正された痕跡。
こんな遅い時刻に召集されるのは、異例のことだった。カルヴァンは規則正しい生活を送る人で、夜七時以降に仕事をすることなど、まずなかった。かつて彼はこう言ったことがある——「真の学者は休息の価値を知るべきだ。疲れた頭脳では、明晰な思考など望むべくもない」
しかし今夜は、明らかに例外だった。
アドリアンは黒板の内容をちらりと見て、内心で驚いた。
それは、先生が普段研究している燃素理論ではない。
あの図、あの矢印の方向——
すべてが、逆だった。
「実験棟A、今空いているか?」
カルヴァンが尋ねた。声はいつもより低い。
挨拶もなく、なぜこんな遅い時刻に呼んだのかの説明もない。
「はい、今夜は使用予定がございません」
ポールが眼鏡を押し上げて答えた。
「ドシャン教授の実験グループが今日の午後に終了しました。リンの燃焼を研究していたようですが、もう片付けは済んでいるはずです」
「よろしい」
カルヴァンは振り向き、黒板に描かれた実験装置の図を指差した。
それは複雑な装置の概略図だった。密閉されたガラス容器、底部には金属片を置ける台、上部には逆さまにした大きなガラスの鐘形カバーが繋がり、カバーは水槽に浸かっている。横には天秤、温度計、各種の測定器具が描かれている。
「明朝までに、これを組み立ててほしい」
三人の助手が黒板に近づき、その図を注意深く見つめる。
数秒の沈黙。
「……これは、一体?」
ジャンが慎重に尋ねた。
彼は、このような装置を見たことがなかった。
カルヴァンは少し沈黙し、どう答えるか考えているようだった。
「とりあえず……『密閉燃焼測定システム』とでも呼んでおこう」
弟子たちは目を見開いた。
この装置は、彼らが見たことのあるどの「燃素測定器」とも違っていた。
通常、燃素を測定する実験装置は開放式か、せいぜい半密閉式だ——なぜなら燃素説によれば、燃素は空気中に放出される必要があり、完全に密閉すれば燃素には逃げ場がなく、燃焼は止まってしまうからだ。
だが先生が設計したこの装置は——
完全に密閉されている。
そして、それは「放出」したものではなく、「吸収」したものに注目しているようだった。
「実験対象は……金属ですか?」
アドリアンが慎重に尋ねた。
彼は黒板に「鉄片」という文字があることに気づいていた。
「そうだ」
カルヴァンは頷いた。
「鉄片を密閉空間に入れて燃焼させ、その前後の重量変化を測定する」
「重量変化……それは、ずっと測定していたのでは?」
ポールが僅かに戸惑いを浮かべた。
「いや」
カルヴァンは首を振った。
「これまで我々が測定していたのは、金属そのものの重量変化だ。だが今回、私が測定したいのは——」
彼は黒板の鐘形カバーの図を指差した。
「システム全体の重量変化だ。金属も、容器も、そして……」
彼は一瞬、間を置いた。
「容器内の空気も含めて」
三人の助手は顔を見合わせた。
空気?
空気の重量を測定?
「先生」
アドリアンが慎重に口を開いた。
「空気の重量……そのような微小な量、我々の天秤で測れるのですか?」
「量が十分にあれば、測れる」
カルヴァンは言った。
「だから大きな容器が必要なのだ。十分な空気が入るように。同時に、最も精密な天秤も必要だ」
彼は振り向き、書き物机から一枚の紙を取り、アドリアンに手渡した。
「これは実験室の倉庫リストだ。我々が持つ最も精密な天秤を探してくれ——半グレインまで測定できるものだ。それから、少なくとも三つの異なるサイズのガラス鐘形カバーを準備してほしい。大きければ大きいほどいい」
アドリアンは紙を受け取り、リストに目を通し、それから黒板の装置図を見た。
彼は突然、気づいた。先生がしようとしているのは、単なる検証実験ではない。
これは……
覆すための実験だ。
「先生」
彼の声が震えた。
「この実験は……燃素説を検証するためなのですか?」
カルヴァンは振り向き、この若者を見た。
アドリアンの瞳には、困惑と不安が満ちている。
彼はカルヴァンの下で五年学び、今書いている博士論文も、燃素理論を基礎としている。もし燃素説が覆されたら、彼の研究もまた、基盤を失う。
カルヴァンには、その恐怖が理解できた。
なぜなら彼自身が、まさに同じ恐怖の中にいるからだ。
「検証ではない」
カルヴァンはゆっくりと言った。
「これは……確認だ」
「何を?」
「ある仮説を」
カルヴァンは黒板に戻り、「酸素」という二文字の横に円を描いた。
「燃焼の本質に関する仮説だ。我々の化学に対する認識すべてを変えるかもしれない……仮説を」
ジャンが我慢できずに尋ねた。
「この仮説を提唱したのは、どなたです?」
カルヴァンの手が、空中で止まった。
彼は思い出していた。あの質素な教室、あの若者の穏やかな眼差し、そしてガラス瓶の中で明るく燃える炎を。
「……リヨンで教鞭を執る、一人の若者だ」
彼は小さく言った。
「学位も、肩書きも持たない……ただの教師だ」
三人の助手は驚いて顔を見合わせた。
「学位のない……人?」
ポールが信じられないように繰り返した。
「そうだ」
カルヴァンは振り向き、真剣な眼差しで言った。
「だからこそ、確認が必要なのだ。もし彼が正しければ、たとえ肩書きがなくとも、彼の理論は検証に耐えるはずだ。もし彼が間違っていれば、たとえ実験が説得力を持つように見えても、最終的には厳格な測定で綻びが出る」
彼は少し間を置いた。
「これが、科学のあるべき姿勢だ。提唱者の身分など見ない。理論そのものが正しいかどうか、それだけを見るのだ」
アドリアンは唇を噛み、やがて頷いた。
「わかりました、先生。明朝までに準備いたします」
「もう一つ」
カルヴァンは言った。
「この実験は、当面秘密にしておく。他の誰にも言わないでくれ。学会の記録にも残さないでくれ」
「なぜですか?」
ジャンが尋ねた。
カルヴァンは少し沈黙した。
「なぜなら……もしこの実験結果があの仮説を証明したなら、化学界全体の根底を揺るがすことになる。完全に確認するまで、無用な恐慌と論争を引き起こしたくないのだ」
彼は振り向き、窓の外の暗い夜空を見た。
「そして、もし実験が失敗したなら……なおさら、誰に知られる必要もない」
三人の助手は黙って頷き、黒板の装置図を記録し始めた。
記録しながら、こっそりと先生の背中を見る。
カルヴァンは窓の前に立ち、両手を背中に回し、肩が僅かに丸まっている。
燭光が彼の背中に、長い影を落としている。
その影が、アドリアンに何年も前のことを思い起こさせた。彼が初めてこの書斎を訪れた時のことを。
その時、彼はまだ入学したばかりの新入生だった。家からの推薦状を握りしめ、不安な気持ちでこの著名な化学者を訪ねた。
カルヴァンはその時も、窓の前に立ち、彼に背を向けていた。
しかしあの時の背中は、真っ直ぐで、自信に満ち、力強かった。
そして今は……
アドリアンには、どう表現すればいいのかわからなかった。
その背中は依然として真っ直ぐで、依然として厳粛だ。だが何か……
重さが加わったように見えた。
まるで見えない重量を、背負っているかのように。
「先生」
アドリアンが小さく言った。
「お加減は……よろしいですか?」
カルヴァンは振り向き、疲れた笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ、アドリアン。ただ……」
彼は眼鏡を外し、ハンカチでレンズを拭いた。
「ただ、いくつかの問いは、年を重ねた人間ほど、より多くの力を費やさねば、理解できないものなのだ」
####
この半月、キラは不機嫌だった。
特に街で貴族の衛兵とすれ違う時、その不快感は倍増する……心の奥底には、悔しさまで滲んでいた。
運命に弄ばれている。
そう感じていた。
一ヶ月前、モンモランシー伯爵家からあの鏡を盗み出した時は、興奮に満ちていた。一族の秘密を見つけ、父の無実を証明する——なんと重要で緊急な任務か。
彼女は幼い頃から聖跡区で育った。没落貴族の出身だが、自らの能力で裏街最高の義賊の一人となった。一族の残存勢力では名誉を回復できないと知っていた。ただ機会を待ち、証拠を見つけ、あの陰謀を暴くしかない。
あの鏡の出現が、チャンスだと思った。
明らかにモンモランシー家はこの証拠品が外に流出するのを恐れている。その後の大規模な捜索がそれを証明していた。今年、彼女はパリで最も危険な時を過ごすことになるだろう。
ここで鏡を守り、真実を暴くには、貴族勢力と正面から対抗できる仲間が必要だ。
キラは自分こそがその適任者だと思っていた。
潜行、剣術、変装術に長けている。聖跡区での長年の生存が、勇気の欠如を証明していない。
しかし——
予想外だった。
あの鏡が、ルーアンという普通の若者の手に落ちるとは!
そう、ただの普通の若者。
鏡を失っただけでなく、計画すべてが台無しになった。
信じられない。
運命は、貴族の秘密に触れたこともないあの男が、自分より鏡の保管に適していると判断したのか?
彼はおそらく、その価値も知らずに鉄くずとして売り払うだろう!
しかし現実は残酷だった……
鏡の行方を失っただけでなく、それが聖跡区に売られたと知った。
最初は素早く取り戻せると希望を抱いていたが、最近はますます絶望的になっていた。
そして自分は、毎日危険な任務を遂行し、鏡を取り戻す希望が見えない。
***
夜。
キラは自ら隣の部屋のドアをノックした。
「全員来て。重要な話がある」
声は静かで、確固としていた。
フォックス、傷顔のレモン、そして聖跡区の他の腕利きたちが次々と部屋に入ってくる。
これらは彼女が厳選した者たち——経験豊富、手段は冷酷、そして最も重要なのは、土壇場で逃げ出さないこと。
「キラ様、こんな夜更けに呼び出して、仕事ですか?」フォックスが尋ねた。
「ええ」
キラは懐から重い金袋を取り出し、テーブルに置いた。
「ここに百金ルイある。私の全財産よ。一つ、手伝ってもらいたいことがある」
全員の視線が金袋に集中した。
百金ルイ。
普通の家庭なら三年は暮らせる額だ。
「何の仕事でそんなに?」
レモンが低い声で尋ねた。顔の傷跡が燭光の下で特に禍々しく見える。
「鏡を取り戻す」
キラは彼らを真っ直ぐ見つめた。
「魔法使いの手から」
「魔法使い?」
誰かが息を呑んだ。
「そう。サン・タントワーヌ孤児院に住むルーアンよ。聞いたことがあるでしょう。先日、サン・ジャックの小道で彼と交戦した。彼の魔法は強い。正面からでは私に勝算はない」
キラの口調に躊躇はなかった。
「だから、あなたたちの力が必要なの」
「どうやって?」
レモンが尋ねる。明らかにこの金に興味がある。
「明日の夜、孤児院に行く」
キラは言った。
「あの男は毎晩、街の外で魔法を学んでいる。孤児院には老神父と何人かの修道女、子供たちだけ。彼らを制圧して、ルーアンが戻るのを待つ。彼はあの子供たちを命より大切にしている。人質がいれば、鏡を渡すしかない」
部屋が静まり返った。
「孤児院を襲うのか?」
フォックスが眉をひそめた。
「キラ様、それは……名誉ある仕事じゃない」
「分かってる」
キラの声が冷たくなった。
「でも選択肢はない。あの鏡には父の無実を証明する証拠が、一族の名誉を取り戻す希望が隠されている。そのためなら、あらゆる代償を払う——全財産も、そして……名誉を汚すことも」
彼女は全員を見渡した。
「あなたたちは聖跡区の古参。普通の人が一生で見るより多くの闇を見てきた。道徳的な判断は要らない。ただ力を貸してほしい。百金ルイ、六人で分ける。成功したら一人十五金ルイ」
レモンと仲間たちが視線を交わした。
「正直に言うと、キラ様」
レモンがゆっくりと口を開いた。
「金は魅力的だ。だが魔法使い相手に、孤児院全体を制圧する。リスクは小さくない」
「リスクは承知している」
キラは言った。
「だから全財産を出した。これは普通の雇用じゃない。私の賭けよ。自ら先頭に立つ。最大のリスクも引き受ける。老神父は若い頃騎士だった。彼は私が相手をする。あなたたちは他の者を制圧して、ルーアンが戻った時に状況を掌握していればいい」
「魔法使いが協力しなかったら?」
誰かが尋ねた。
「協力するわ」
キラは冷たく言った。
「彼はあの子供たちを家族だと思っている。人質がいれば、無茶はできない。それに、人数で優位。魔法を使おうとしても、あれだけの人質の前では手が出せない」
レモンは少し考えて、頷いた。
「いいだろう。受ける。ただし条件がある——もし魔法使いが本気で暴れたら、撤退の余地を残す。十五金ルイのために命を賭ける気はない」
「構わない」
キラは即答した。
「私が欲しいのは鏡だけ。命懸けの戦いじゃない。状況が悪化したら即座に撤退する。でもそこまでいかないと信じている」
「なら俺も問題ない」
フォックスが言った。
「百金ルイ、この金なら賭ける価値がある」
他の者たちも次々と頷いた。
キラは満足そうに彼らを見た。
「よろしい。明日の夜、ルーアンが出た後に動く。いいわね、子供たちはできるだけ傷つけない。ただの人質よ。でも老神父や修道女が抵抗したら……」
彼女は言葉を最後まで言わなかったが、全員が意味を理解した。
「そういえば」
レモンが突然言った。
「もしあいつが本当に協力せず、子供たちを犠牲にしても鏡を渡さなかったら?」
キラは冷笑した。
「それなら、私が半月も尾行していたルーアンじゃない。よく知ってる。彼は他人のために自分を犠牲にする馬鹿よ。それが彼の長所であり、致命的な弱点でもある」
彼女は立ち上がり、金袋をテーブルの中央に押し出した。
「これは手付金。一人三金ルイ。成功したら、残りの十二金ルイを清算する。さあ、準備して。明日の夜、孤児院近くの路地で集合よ」




