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第80章 魔力の暴走

---


その夜、ルーンは久しぶりにぐっすり眠った。


翌朝、目を覚ますと、孤児院の外が騒がしかった。


窓から外を見ると、何人かの人が門の前に集まっている。


「何事だ?」ルーンは急いで服を着て外へ出た。


門の前には、三人の男が立っていた。身なりの良い商人風の格好で、一人は大きな革鞄を抱えている。


「あの……」年配の男が丁寧に尋ねた。「ここに《ワンピース》を売ってるルーンという若者がいると聞いたんですが」


「私がルーンです」


三人は目を輝かせた。


「やっと見つけた!」年配の男は興奮して言った。「私はサン=トノレ通りで書店を経営しているジャン・ピエールと申します。《ワンピース》を追加で仕入れたいのですが——五十冊、いや、百冊でも構いません!」


「私も!」もう一人が割り込んだ。「マレ地区のアンリです。うちの店では《ワンピース》が一日で完売しました。お客さんが続編を待ちきれないと言っています!」


三人目の若い男も頷いた。「私はラテン区の……」


ルーンは彼らを制した。「すみません、もう在庫がないんです」


「ない?」三人は愕然とした。


「最後の一冊まで売り切れました」ルーンは言った。「でも心配しないでください。近いうちに続編を書き上げます。その時はまず皆さんに連絡しますから」


「続編!」ジャン・ピエールは興奮した。「本当ですか?いつ頃になりますか?」


「一ヶ月後には」ルーンは答えた。「ただし、今回は印刷部数を増やす必要があります。前回は少なすぎました」


「もちろんです!」アンリは言った。「私たちは前金を払っても構いません。とにかく優先的に仕入れさせてください」


三人は競うように注文を出し始めた。


ルーンは一人一人の連絡先を記録し、彼らに約束した。続編が完成したら、必ず最初に知らせると。


三人の商人が去った後、テレサが小走りで駆け寄ってきた。


「ルーン、すごいわ!あんなに多くの書店が買いに来るなんて」


「これは始まりに過ぎない」ルーンは笑った。「《ワンピース》の真の価値は、これから発揮されるんだ」


---


### 数日後


ルーンが街を歩いていると、いたるところで《ワンピース》の話題が聞こえてきた。


カフェでは、若者たちが熱く議論している。


「ルフィは本当にかっこいい!あの"俺は海賊王になる男だ"っていう台詞、痺れたよ」


「私はゾロが好き!三刀流なんて、考えただけでわくわくするわ」


「次はどんな仲間が加わるんだろう?」


路地の角では、子供たちが《ワンピース》ごっこをしていた。


「俺がルフィだ!」


「じゃあ俺はゾロ!」


「私はナミをやる!」


子供たちは木の棒を剣に見立てて、想像の中で冒険していた。


ルーンは立ち止まって、微笑みながら眺めた。


これこそが、物語の力だ。


---


さらに驚いたのは、ある貴族の令嬢が《ワンピース》について詩を書いたことだった。


『海を駆ける自由の風よ

夢を追う勇者たちよ

その姿こそ、真の貴族なり』


この詩はサロンで朗読され、大きな反響を呼んだ。


「《ワンピース》は単なる冒険物語ではない」ある評論家が言った。「これは自由と夢について、勇気と友情についての寓話だ。作者は真の哲学者に違いない」


ルーンはこれを聞いて、苦笑した。


哲学者?俺はただ面白い物語を書いただけなんだが。


---


しかし、良いことばかりではなかった。


成功は問題ももたらした。


まず、海賊版が爆発的に増えた。


街角のいたるところで、粗悪な海賊版が売られている。印刷は荒く、絵も歪んでいる。しかし価格は正規版の十分の一だ。


「くそ」ルーンは海賊版を手に取り、眉をひそめた。「これじゃまともに読めない」


しかし貧しい人々にとって、これでも読めるだけマシなのだ。


ルーンは複雑な気持ちだった。一方では自分の利益が損なわれている。しかしもう一方では、より多くの人が物語を読めることは悪いことではない。


「まあいい」彼は肩をすくめた。「正規版の価値を上げるしかないな」


---


さらに問題だったのは、模倣者が現れたことだ。


ある日、ルーンはある書店で『海賊の冒険』という本を見つけた。表紙は《ワンピース》に酷似していて、内容も明らかに真似している。


「これは……」ルーンは頁をめくった。


『俺は海賊王になるぞ!』という主人公が、仲間を集めて冒険に出る——まったく同じ設定だ。


しかし内容は浅薄で、キャラクターは薄っぺらく、物語は退屈だった。


「劣化コピーだな」ルーンは本を閉じた。


書店の主人が苦笑いで言った。「《ワンピース》が売れたもんだから、みんな真似し始めたんですよ。でもどれも本物には及びませんね」


「まあ、真似されるのは人気の証拠だ」ルーンは気にしないふりをした。


---


その後の二週間、ルーンは充実した日々を送り始めた。


毎朝六時、彼は時間通りに起床し、孤児院の小礼拝堂で子供たちに授業をする。識字から算術、読解から書写まで、彼は前世で学んだ教育方法を活かし、子供たちが二週間後の教会の審査に合格できるよう導いた。


《ワンピース》の成功は、ルーンの予想を遥かに超えていた。


本が発売されてから数日で、パリ中の書店で品切れとなった。カフェでは人々が海賊ルフィの冒険について熱く語り合い、貴族の令嬢たちはあの謎の作者が誰なのかを推測している。


街角では、《ワンピース》の話題を耳にしない日はない。


「聞いたか?あの海賊の物語、続きが出るらしいぞ」


「本当か!早く読みたい!」


「作者は一体誰なんだ?天才に違いない」


ルーンは街を歩きながら、こうした会話を聞くたびに、心の中で密かに笑った。まさか自分がその「謎の天才作者」だとは、誰も気づくまい。


しかし、成功は新たな課題ももたらした。


海賊版がパリ中に溢れ始めた。粗悪な印刷だが、正規版の十分の一の価格で売られている。ルーンの利益は徐々に減り始めた。


「このままじゃダメだな」ルーンは考えた。「もっと安定した収入源を確立しないと」


それに、教会の審査も迫っている。子供たちは確実に進歩しているが、まだ油断はできない。レストランの立地も探さなければならない。魔法の修練も続けなければ——


やることは山積みだった。


---




最初の数日は特に大変だった。子供たちの中には、アルファベットすら知らない子もいた。ルーンは根気よく、一文字ずつ教えた。


「A」は「りんご(pomme)」のA、「B」は「パン(pain)」のB……彼は子供たちが日常で触れるものと結びつけて、記憶しやすくした。


算術の授業では、実用的な問題を使った。


「もし君がパン屋で働いていて、一斤のパンが二スーだとしたら、五斤売ったらいくらになる?」


こうした具体的な問題は、抽象的な数字よりも子供たちの関心を引いた。


七歳のピエールという男の子がいた。彼は最初、まったく字が読めず、数も数えられなかった。しかしルーンは諦めず、毎日特別に時間を割いて個別指導した。


「先生」ある朝、ピエールが誇らしげに言った。「僕、もう自分の名前が書けるよ!」


震える手で羊皮紙に「Pierre」と書く。文字は歪んでいたが、判読できた。


ルーンは彼の頭を撫でて、心から笑った。「よくやった、ピエール。素晴らしいぞ」


こうした瞬間が、ルーンに充実感を与えた。努力は報われる——それを実感できる瞬間だ。


---



午前の授業が終わると、彼は残りの《ワンピース》を持って街へ出た。サン=ジェルマン区、ラテン区などの繁華街で、将来のレストランに適した店舗を探す。


立地は重要だ。高すぎてはいけないが、辺鄙すぎてもいけない。


初日、サン=ジェルマン区で完璧な立地の空き店舗を見つけた。大通りに面していて人通りも多い。しかし家主が提示した賃料は年間八百リーヴル——予算を大きく超えていた。


「若造」家主は鼻で笑った。「お前みたいな貧乏人には無理だ。さっさと行け」


ルーンは冷静に頷いて去った。焦る必要はない。他にも選択肢はある。


二日目、ラテン区で比較的手頃な店舗を見つけた。年間賃料四百リーヴル、手が届く範囲だ。しかし中を見ると、湿気がひどく壁にカビが生えていた。


「この店は十年間誰も借りてないんだ」隣の店主が教えてくれた。「昔ここで人が死んだらしい。みんな縁起が悪いと思ってるんだよ」


ルーンは首を振った。こんな場所では客が来ない。


三日目、四日目、五日目……彼は探し続けた。高すぎるか、場所が悪いか、面積が小さすぎるか。


しかしルーンは焦らなかった。彼は各店舗の利点と欠点、周辺の人の流れ、競合店の状況を詳細に記録し、分析した。


完璧な場所は必ず見つかる。時間の問題だ。


---



午後、人里離れた場所——郊外の廃墟や、セーヌ川沿いの静かな河原——で魔法を練習した。


ヴィラが課した誘導型魔法の訓練は続いていた。十本の金属棒を使った集中力の訓練だ。


最初は一秒も維持できなかった。魔力は金属棒に触れるとすぐに散ってしまう。しかし何度も繰り返すうちに、徐々にコツを掴んできた。


魔力は水のようなものだ。無理に押し込むのではなく、優しく誘導する。流れに従う。


一週間後、三秒間維持できるようになった。


二週間目には、十秒に達した。


「進歩してるな」ルーンは満足した。「このペースなら、一ヶ月後には三十秒いけるかもしれない」


火球術の練習も欠かさなかった。毎晩、人気のない河原で練習する。


最初は不安定だった火球も、徐々に制御できるようになってきた。サイズを調整し、飛行軌道を変え、爆発のタイミングまでコントロールできるようになった。


「まだまだだが、確実に成長してる」


ルーンは自分の進歩を実感していた。焦る必要はない。一歩ずつ、着実に前進すればいい。


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夜は夜警の仕事をこなした。


収入は多くないが、孤児院の足しになる。ルーンは毎晩、決められたルートを巡回した。


ある夜は酔っぱらいの喧嘩を仲裁し、別の夜は小さな火事を発見して消火した。また別の夜には泥棒を追いかけて捕まえた。


「ルーン」年配の同僚が言った。「お前は真面目な若者だな。将来有望だ」


「ありがとうございます」ルーンは笑って答えた。


仕事が終わって孤児院に戻るのは深夜だった。疲れてはいたが、充実感があった。


---



そして深夜、自分の小さな部屋で《ワンピース》の続編を書き進めた。


第一部は「東の海編」だ。ルフィがゾロ、ナミ、ウソップ、サンジと出会い、仲間になっていく物語。


羽根ペンを走らせながら、ルーンは前世の記憶を辿った。あの感動的なシーン、笑える場面、熱い戦闘——全てを蘇らせる。


「アーロンパーク編まで書けば、確実に読者は熱狂するだろうな」


ルーンは期待に胸を膨らませた。


---


こうして、充実した二週間が過ぎた。


孤児院の子供たちは目覚ましい成長を遂げた。ピエールは簡単な文章を読めるようになり、八歳のマリーは四則演算をマスターし、最年少の五歳のジャンもアルファベットを全て覚えた。


魔法の面でも、ルーンは着実に進歩していた。火球術の制御は正確になり、誘導型魔法も十数秒安定して維持できるようになった。


店舗探しでは、いくつか有望な候補を見つけた。まだ決定はしていないが、焦る必要はない。


《ワンピース》の続編も順調に進んでいる。あと数日で第一稿が完成する予定だ。


すべてが順調だった。


しかし——


---


### **突然の異変**


ある夜のことだった。


ルーンは深夜の魔法練習を終え、ベッドに入ろうとしていた。


突然、体中の魔力が奇妙に波打った。


「ん?」


それは一瞬のことだった。すぐに収まった。


「気のせいか……」


ルーンは首を傾げたが、特に気にせずベッドに入った。疲れていたのだろう。しっかり休めば大丈夫だ。


しかし翌日、また同じことが起きた。


そして翌々日も。


徐々に、ルーンは気づき始めた。何かがおかしい。


魔力が時々、制御できなくなる。火球術を放つと、炎のサイズが予想外に大きくなったり小さくなったりする。誘導型魔法を練習すると、魔力が突然中断される。


「これは……」


ルーンは不安を感じ始めた。


---


そんなある夜、風吟小路のセラフィンの家を訪ねることにした。


《ワンピース》の続編について相談するという口実だったが、本当は魔力の異変について聞きたかった。


蝋燭の光が揺れる質素な部屋で、セラフィンは羊皮紙に何かを書いていた。


「入れ」ドアをノックすると、顔も上げずに言った。


ルーンは入り、椅子に座った。「お邪魔します。《ワンピース》の続編について相談したくて……」


話している途中、突然——


体中の魔力が激しく波打った。


ルーンは思わず顔をしかめた。


セラフィンが素早く顔を上げた。


「ルーン」彼の表情が変わった。「お前の魔力が……」


彼は立ち上がり、ルーンに近づいて肩に手を置いた。


その瞬間、セラフィンは異様な波動を感じ取った。


乱れた、不安定な、危険な魔力の波動——


「これは……」セラフィンの顔色が変わった。「お前、魔力が暴走しかけている!」


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