第48章 深淵の囁き**
「エティエンヌ、行くぞ」
ルーアンは手記をしまい、床に描いたばかりの魔法陣を見下ろした。
「起動しなくていいのか?」
エティエンヌが疑問を口にする。
「いや」
ルーアンは首を横に振った。
「よく調べた結果、この魔法陣は特定の場所でしか起動できない――あの大祭壇だ。そこに戻らなければならない」
「でも……」
エティエンヌはあの怪物たちを思い出す。
「他に方法はない」
ルーアンが言う。
「それに、もしかしたらあの怪物たちはもうあそこにいないかもしれない。もっと深い場所に戻ったかもしれない」
二人は引き返し始めた。ルーアンが先頭を進み、エティエンヌがすぐ後ろに続く。
十五分、三十分、一時間が過ぎた……
「待て」
ルーアンが突然立ち止まった。
「何かおかしい」
「何が?」
エティエンヌが訊く。
「これだけ歩けば、とっくにあの鼠の巣の密室に着いているはずだ」
ルーアンが眉をひそめる。
「だが……まだこの通路の中にいる」
エティエンヌは手に持つ微かな光――イザベルの部屋で見つけた、まだ使える蝋燭――を周囲に向けた。
通路は変わらない。石壁、石段、来た時と同じように見える。
だが確かに長すぎる。
「この場所はおかしい!」
エティエンヌの声が震え始める。
「俺たちを弄んでいる!」
「落ち着け」
ルーアンは自分を冷静にさせようとする。
「地面を見ろ。自分たちの足跡を辿ればいい」
二人は燭光を床に向けた――確かに、来た時に残した足跡が湿った石板の上にはっきりと残っている。
「行こう。足跡を逆に辿って戻る」
ルーアンが言う。
二人は慎重に足跡を追い始めた。いくつかの場所では足跡が不明瞭だったが、他にも痕跡があった――ルーアンの腕の傷口からまだ血が滲み、所々に血痕が残っていた。
彼らは血痕と足跡を辿って引き返した。
十五分が過ぎた。
三十分が過ぎた。
一時間が過ぎた。
あのイザベルの小さな密室はまだ現れない。
「あり得ない」
エティエンヌの声に絶望が滲む。
「俺たちは確かにここを通ってきたんだぞ!」
ルーアンの顔色も険しくなった。彼は地面の血痕を見つめた。血滴は暗闇の中へと延々と続き、まるで終わりがないかのようだった。
「ルーアン……」
エティエンヌの声が震える。
「俺たち、出られないんだ。この地下は……俺たちを永遠にここに閉じ込めるつもりだ」
こんな絶望的な状況に、ルーアンの心も底まで沈んだ。
だがその時、彼の表情が突然疑問に変わった。
「しっ――!」
ルーアンは素早く身をかがめ、目を閉じ、眉を寄せて何かに耳を傾けた。
彼はその奇妙な姿勢のまま止まり、ゆっくりと左側に向きを変えた。
「音がする」
彼が低く言う。
「誰かが話している」
「何?」
エティエンヌが耳を澄ますが。
「何も聞こえないぞ」
「蝋燭を消せ」
ルーアンが命じる。
「でも――」
「早く!」
エティエンヌは蝋燭を吹き消した。
闇が瞬時に二人を包み込んだ。絶対的な、抑圧的な暗闇。まるで生き埋めにされたかのような感覚だ。
エティエンヌは本能的にルーアンの袖を掴んだ。暗闇ではぐれないように。
「ついてこい」
ルーアンが低く言う。
「前に誰かいる」
「でも何も聞こえないぞ」
エティエンヌが小声で言う。
ルーアンは答えなかった。彼の聴覚は箱の力の残存効果で、常人より遥かに鋭い。エティエンヌには聞こえない音が聞こえる。
彼らはゆっくりと前進した。一歩ずつ、完全な暗闇の中を手探りで進む。
線香一本分ほど歩いたところで、ルーアンが突然立ち止まった。
エティエンヌにはまだ何も聞こえないが、ルーアンにははっきりと聞こえていた――
老いた、しわがれた声が、暗闇の奥から響いている:
「では問おう。人はなぜ深淵に堕ちるのか?」
そして、若い、わずかに躊躇いを含んだ声が答える:
「それは……人の本性が悪だからですか?」
「否」
老いた声に嘲りが混じる。
「人の本性に善悪はない。人が深淵に堕ちるのは、人が真理を渇望するからだ」
ルーアンの眉が深く寄せられた。彼はその場に留まり、この暗闇の中の二つの存在が何を語っているのか聞き続けた。
「しかし教会は、知識を渇望することは美徳だと言います」
若い声が言う。
「ハ! 教会!」
老いた声が嘲笑する。
「教会は彼らが許可した知識だけを知ることを望んでいる。だが真の真理、深淵の真理こそが、彼らが最も恐れるものだ」
「だから『真理会』は……」
「そうだ」
老いた声が遮る。
「『真理会』が追求するのは真の知識、束縛されない知識だ。そのためなら、いかなる代償も払う価値がある」
「その……犠牲者たちも含めて?」
若い声が躊躇いがちに訊く。
「犠牲?」
老いた声が冷笑する。
「あれは犠牲ではない。昇華だ。彼らの血肉も魂も、真理への階段となった。光栄に思うべきだろう」
「でもアルベ大師は、我々にはもっと多くが必要だと……」
「アルベ大師の計画はもうすぐ完成する」
老いた声が言う。語気に狂信的な熱が込められている。
「あと数ヶ月待てばいい。冬至の夜、星々が正しい位置に並ぶ時、儀式が始まる」
「その時、『それ』が降臨する。深淵の主、永遠なる闇の化身。『それ』は我々に真の力を授け、生死を超越させ、あらゆる束縛を超えさせてくれる」
ルーアンの全身が冷たくなった。
彼は『真理会』の核心計画を聞いてしまった――彼らは冬至の夜に大規模な召喚儀式を行うつもりなのだ。
「先生」
若い声がまた訊く。
「イザベル様は? 彼女は……」
「あの裏切り者か?」
老いた声が突然冷たくなる。
「すでに代償を払った。『真理会』を裏切って生き延びられる者はいない」
「でも彼女は大師の娘……」
「だからこそ、彼女の裏切りは許されない」
老いた声が言う。
「だがもう関係ない。彼女が残した手記のほとんどは回収した。一冊だけまだ見つかっていないが、重要ではない」
ルーアンは無意識に懐の手記に手を当てた。
彼らはずっとイザベルの手記を探していたのだ。
「今夜の巡回はここまでにしよう」
老いた声が言う。
「上層に戻る。覚えておけ、この階層の封印はすでに強化されている。実験体どもは外には出られない」
「はい、先生」
そして、二つの声が遠ざかり始めた。
どこから聞こえてくるのか分からない二つの声を聞きながら、壁に張り付くように立っていたルーアンの目がわずかに動き、彼らの言葉の意味を考え始めた。
「『真理会』? こいつらは邪教の信者か? 召喚儀式について話している?」
「計画は大規模らしい。しかも数ヶ月後の冬至に実行されると」
ルーアンが思索する間も、向こうの会話は続いていた。若い声に興奮が混じる。
「先生、『それ』が降臨した後、本当に永遠の命を得られるのですか?」
「永遠の命?」
老いた声が嘲笑する。
「そんな凡人の概念は浅はかすぎる。我々が追求するのは永生ではない。超越だ。生死を超越し、肉体を超越し、この世界のあらゆる規則を超越するのだ」
「でも……あの生贄たちは……本当に望んでいるんですか?」
「望む?」
老いた声が冷酷になる。
「彼らの意思など重要ではない。重要なのは、彼らの血肉と魂が偉大な事業に貢献できることだ。それこそが彼らの存在する唯一の価値だ」
眉を寄せたルーアンは相手の言葉の意味を考えた。
「すべての苦痛はあの『それ』を召喚するため? あの深淵の主を?」
ルーアンはすぐにイザベルの手記に書かれていたものを連想した。
「だからこの地下に実験システム全体を作り上げたのか? あの儀式の準備のために?」
しばらく考えて、ルーアンは力強く頭を振り、少し混乱した思考を振り払った。
「いや、待て。ルーアン、奴らの理屈に引き込まれるな。これらは単なる狂信的な理論かもしれない。重要なのは奴らが何を言っているかではなく、何をしているかだ」
「これは今考えるべきことじゃない。今考えるべきは、迷子になった俺がこの二人に遭遇して、次に何をすれば俺とエティエンヌが脱出できるかだ!」
「直接姿を現して、夜巡隊だと名乗るか?」
ルーアンはほぼ即座にこの選択肢を思いついた。だが考えただけだ――相手の実力が不明な状況では、あまりに無謀すぎる。それに邪教の信者なら、夜巡隊を見たら口封じのために殺すだろう。
周囲の暗闇を見回し、ルーアンの心に別の考えが浮かんだ。
「敏感な聴覚を利用して、遠くから奴らを追跡し、一緒にこの地下迷宮から脱出するか?」
「試してみる価値はある。だが危険も大きい。もし見つかったら……」
ルーアンがどう利用すべきか考えていると、誰かが必死に自分の袖を引っ張っているのを感じた。
「ル……ルーアン……」
エティエンヌの声が極度に低く、恐怖に満ちている。
「しっ! 喋るな!」
ルーアンが低い声で警告する。
遠くの二人に気づかれたら、この場所から逃げる唯一のチャンスが失われる。
「ルーアン、何か……何かが俺を掴んでる」
エティエンヌの声は泣き出しそうだ。
「右側にいるんだ。でも……でも右側には誰もいないのに!」
ルーアンの心臓がドクンと跳ねた。彼は左手を伸ばし、エティエンヌの服に沿ってゆっくりと手を動かした。
そして何かの手に触れた。
冷たくて、湿っていて、人間のものではない手。
ルーアンがそれを掴んだ瞬間、その手が反転し、巨大な力でルーアンを掴み、暗闇の奥へと引きずり込もうとした。
「くそっ!」
ルーアンは本能的にもがこうとした。
だがその時――
「キィン!」
剣光が暗闇から閃き、その手を斬りつけた。
手は離れ、甲高い悲鳴を上げて暗闇に引っ込んだ。
同時に、微かな光が灯った――炎ではなく、淡い青色の、蛍のような光だ。
光の中で、ルーアンは一人の人物を見た。
深灰色の長衣を着た中年男性。顔に傷があり、目つきは鋭く警戒的だ。手には短剣を握り、刃には黒い液体が付着している。
「声を出すな」
男が声を潜めて言う。
「俺について来い、早く!」
その声をルーアンは聞いたことがある――さっきの若い声だ!
だが見た目は少なくとも四十歳で、声とまったく合っていない。
ルーアンとエティエンヌがまだ呆然としているのを見て、男が急いで言った。
「何をぼうっとしている? グールがもうすぐ来るぞ!」
グール? ルーアンはあの怪物たちを思い出した。
「ついて行け!」
ルーアンがエティエンヌに言う。
二人はすぐに男を追った。
男の足取りは速く、暗闇の中をほとんど音もなく移動する。手に持つ光るもの――何らかの魔法道具らしい――が発する光は微弱で、前方数メートルを照らすのがやっとだ。
「お前たちは誰だ?」
男が歩きながら訊く。
「夜巡隊か?」
「ああ」
ルーアンが簡潔に答える。
「ここに閉じ込められた」
「閉じ込められた?」
男が冷笑する。
「閉じ込められたんじゃない。誘き寄せられたんだ。この地下システム全体が罠だ。お前たちは引っかかったんだ」
「出口がどこか知っているのか?」
ルーアンが訊く。
「知ってる」
男が言う。
「だが今は行けない」
「なぜ?」
「あれらが目覚めたからだ」
男が背後の暗闇を指す。
「一定期間ごとに、『真理会』は実験体の一群を目覚めさせ、地下を徘徊させて侵入者を始末させる。今がちょうどその時間だ」
その時、背後から水の音が聞こえてきた。
たくさん。
非常にたくさん。
「来た」
男が立ち止まり、懐から小瓶を取り出した。
「俺の後ろに立て。動くな」
ルーアンとエティエンヌは従った。
男は瓶を開け、中の液体を地面に注ぎながら、何かの呪文を唱え始めた:
「聖水を境として、信仰を盾とし、穢れたるものよ、この境を越えるなかれ……」
呪文は短いが、発音が奇妙だ。フランス語でもラテン語でもない。
呪文が終わると、ルーアンは液体から無形の力が放たれ、周囲に何かの障壁を形成するのを感じた。
そして黒暗の中から、奇妙な音が近づいてくる。
水の滴る音。
何かが這う音。
そして――呻き声。
数分が過ぎた――あるいは数時間だったかもしれない。時間の感覚が失われていた。
やがて、その音は遠ざかり始めた。
呻き声も、水の音も、徐々に小さくなっていく。
「行ったか」
男がようやく息を吐いた。
「奴らが戻る前に、ここを離れる」
三人は再び歩き出した。
だがまだ数歩も進まないうちに――
「ルーアン、ま、また……」
エティエンヌの声が震える。
「また何かが……」
ルーアンの左手が、再び何かに触れた。
冷たい。硬い。皮膚は樹皮のように粗く、爪は長く鋭い。
そして次の瞬間、その手が反転し、巨大な力でルーアンの手首を掴み、暗闇の奥へと引きずり込もうとした!
「くそっ!」
ルーアンは本能的にもがいた。
「キィン!」
剣光が再び閃き、その手を斬りつけた。
手は離れ、甲高い悲鳴を上げて暗闇に消えた。何かが素早く這い去る音が響く。
同時に、エティエンヌが慌てて懐から蝋燭を取り出し、火打ち石で再び火を灯した。
「シュッ!」
橙色の炎が周囲を照らす。だが異常は何も見えない。周囲は空っぽで、何もいない。
ルーアンが不安げに周囲を見回していると、一つの人影が狼狽した様子で燭光の中に飛び込んできた。
深灰色の長衣を着た中年男性。顔に傷があり、髪は乱れ、息を切らしている。手には短剣を握り、刃には黒い液体が付着していた。
ルーアンが想像していた邪教の信者というより、逃亡者のような姿だ。
互いを見て、双方が同時に固まった。だがすぐに男が口を開き、不揃いな歯を見せて言った。
「撤退しろ! 縊死霊がもうすぐ追ってくる!」
その声をルーアンは覚えている。さっき話していた声の一つ――あの若い声だ!
だが外見は声よりずっと老けており、少なくとも四十歳はある。
男が慌てて向きを変えて暗闇に駆け込むのを見て、ルーアンとエティエンヌは目を合わせ、急いで後を追った。
男の口にする「縊死霊」が何であれ、この忌まわしい場所にいる以上、ろくなものではないだろう。
男と比べて、ルーアンたちは明らかに遅い。エティエンヌの傷がまだ完全に癒えていないし、ルーアンも体力を使い果たしていた。
ルーアンがこの男は自分たちを盾にしているのではないかと疑い始めた時、男が突然引き返してきた。
彼は短剣を胸の前に構え、もう一方の手で懐から小さなガラス瓶を取り出し、歯で栓を抜いて中の液体を剣身に注いだ。
「火を消せ!」
その緊張した背中を見て、ルーアンは一秒躊躇した後、エティエンヌに目配せした。エティエンヌはすぐに蝋燭を吹き消した。
真っ暗闇の中、男の呪文を唱える声が二人の耳に届く。
この呪文は特殊だ。ラテン語の祈りでもなく、ルーアンが聞いたことのある言語でもなく、まったく異なる体系のようだ。
「鮮血を誓いとし、魂を盾とし、死者は近づくことなかれ、怨霊は退散せよ……」
呪文が終わると、何か無形の威圧が伝わってきて、ルーアンは全身に鳥肌が立った。何か言葉にできない力が体を掠めていく。
すぐに自分の体温が急速に下がっていくのを感じた。まるで氷窟に落ちたかのように冷たい。
「しっ――」
男のシッという声で、全員がその場に固まり、微動だにしなかった。
ルーアンはエティエンヌが自分の袖を強く掴んでいるのを感じた。手が震えている。彼はエティエンヌの恐怖を感じ取れた――未知のものに直面した時の、本能的な、骨の髄まで染み込んだ恐怖を。
ルーアン自身も恐れていた。
近づいてくる何かを。
地面が震動し始めた。いや、震動ではない――上方で何かが動いており、石塊や塵が天井からパラパラと落ちてくる。
暗闇の中で、何か巨大なものが近づいている。
次第に、その摩擦音がどんどん近づいてきた。ルーアンは曖昧な暗闇を通して、上方の天井に巨大な黒い影がゆっくりと動いているのが見えるほどだった。
「フウ――」
冷たい風がルーアンの頬を撫でた。
いや、これは風ではない。
何かの呼吸だ。
上方から伝わる、死者の呼吸。
その吐き気を催す悪臭――腐肉、カビ、そして何か甘ったるい死臭――を嗅いで、ルーアンは吐きそうになった。明らかに、これは長い間死んでいた何かの口から吐き出されたものだ!
突然、重いものが上方の暗闇から落ちてきて、ドンとルーアンの目の前の地面に落ちた。
ルーアンは本能的に後退しようとしたが、男の手が彼の肩を押さえ、動くなと示した。
微かな、どこかの亀裂から差し込む月光を借りて、ルーアンは地面のものをぼんやりと見分けた――
それは古びた革靴だった。
女性用の、十八世紀貴族様式のハイヒール。だがすでに腐って黒ずんでいる。
靴の後ろには紐が引きずられていた――いや、普通の紐ではない。吊り縄だ。縄の反対側には、惨白く腫れ上がった足が繋がっている。
女の足。
ルーアンがそれに気づいた瞬間――
「シュッ!」
縄が急に張り詰め、一体の死体が天井から逆さまに降りてきた。
それは女の死体だった。
華麗だが腐敗した貴族のドレスを着て、首には吊り縄がかかり、紫黒い唇から舌が一尺も突き出ている。顔は腫れ上がって変形し、眼球が飛び出し、死に様は極めて悲惨だった。
だが最も恐ろしいのは――
それがまだ動いていることだった。
その死体はゆっくりと回転し、巨大な腐敗した振り子のようだ。飛び出した眼球が眼窩の中で回転し、下方を見渡している。
そして、回転が止まった。
その顔が、ルーアンの正面を向いた。
両者の距離は、一尺にも満たない。




