第176章 功成
炎夏は去り、初秋の風が涼しさを帯び始めていた。
聖域の裏山にある花畑では、夜だけ咲くあの白い花が、いつの間にか三度目の開花を終えていた。
九月十五日、月が沈む前。
ルーンは花畑のそばに立っていた。ヴィラはすでにそこにいた。暗い赤の長髪が背中に垂れ、彼女は振り返らなかった。
「眠れない?」
「あなたもでしょう」
三ヶ月が経った。六月のあの雨の夜から、二人はほぼ毎晩ここで過ごしてきた。初めて功を練った時、二つの魔力が体内で暴れ回り、ヴィラが背中を一撃して、暴走した力を無理やり抑え込んだのだ。
それからの九十余夜、何度気を失ったか覚えていない。
「始めましょう」
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花畑の両側で、二人は向かい合って立った。
ルーンは上着を脱ぎ、左腕を花畑に差し入れた。ヴィラの右掌が彼の掌に触れる。その手は冷たかった。三ヶ月で、もう慣れていた。
目を閉じ、魔力を巡らせる。
体内の二つの力が流れ始めた——一つは灼熱、一つは陰寒、まったく異なる経路を辿って経脈を駆け巡る。普通の人間は一種類の魔力しか持たないが、彼には二つあり、しかも互いに反発し合う。無理やり同時に巡らせるのは、火と氷を同じ川で流すようなものだ。
最初の八段階に、三ヶ月以上かかった。
第九段階の要求は——融合。
ヴィラの魔力が掌から伝わってくる。冷たく、長く、花畑を通り抜けて彼の魔力と交わり、経脈を通じて全身に広がっていく。
今夜は違った。
二つの力はもう以前のように剣を抜き合うようではなかった。衝突の中に探り合いがあった。二匹の狼が対峙し、互いの気配を嗅ぎ、力を見定めているように。
一刻。
二刻。
東の空が白み始めた時、異変が起きた。
体内の灼熱の魔力が突然暴れ出した。三ヶ月分の怒りが一気に爆発したかのように。ルーンは抑えようとしたが、まったく抑えられなかった。経脈に激痛が走る——
「ヴィラ——」
掌が急に冷たくなった。
ヴィラの魔力が一気に押し寄せてきた。普段の数倍の強さで、その陰寒な力が暴れ馬を押さえつける。
「動くな。ぶつけ合わせろ」
「何——」
「第九段階の鍵は抑制じゃない。均衡だ」
ルーンは歯を食いしばった。
彼女の言う通りだ。ずっと二つの力を「共存」させようとしてきた。だがそれは融合ではなく、ただの休戦だ。
本当の融合とは、衝突させ、戦わせ、その戦いの中で新たな均衡を見出すこと。
もう抑えなかった。
二つの力が激しくぶつかり合った。灼熱と陰寒。狂暴と沈静。両軍が激突する戦場の真ん中に立っているようで、両方の圧力に押し潰されそうだった。
もう持たないと思った時——
「フラメル夫妻がどうやって死んだか知ってる?」
ルーンは一瞬呆然とした。
「魔力の……反動じゃないのか?」
「違う。信頼できなかったから死んだ」
ヴィラの声は静かだった。
「第九段階を三十七回試みた。毎回死にかけた。私はずっとそばで見ていた」
ルーンの心臓が跳ねた。
「ニコラスは天才だった。錬金術の腕は私が見てきた中で三本の指に入る。でも傲慢すぎた。自分の命を他人に預けることができなかった。たとえその相手が五十年連れ添った妻でも」
「三十八回目、ペレネルがようやく彼に警戒を解かせた。もう少しで成功するところだった……でも最後の瞬間、ニコラスはやはり彼女を完全には信じられなかった。融合の瞬間、彼の魔力が抵抗を示した。その僅かな抵抗が連鎖反応を引き起こした」
「私が駆けつけた時、二人はもう息も絶え絶えだった。ペレネルが彼の手を握って、なぜ信じてくれなかったのと聞いた」
「ニコラスが何と答えたか分かる?」
ルーンは答えなかった。
「彼は言った——『君を信じている。でも、自分が信じられる価値があるとは信じられない』」
沈黙。
風が花畑を吹き抜けた。
「ルーン、君はニコラスとは違う。初日から背中を完全に預けてきた」
ルーンは呆気に取られた。
まさかヴィラがそんなことを言うとは思わなかった。
正直、褒められるようなことじゃない。前世からこうだった——美女を前にすると、どうしようもなく信じてしまう。何度騙されても懲りない。転生してからもこの癖は治らず、むしろ悪化していた。
きっと本性は変えられないのだろう。
「だから、ニコラスのようになるな」
ヴィラはそれ以上言わなかった。
ルーンも深く考えなかった。
ただ——手放した。
次の瞬間、ヴィラの魔力が潮のように流れ込んできた。今までの慎重な探り合いではなく、すべてを注ぎ込むような奔流。その力はあまりにも巨大で、あまりにも古く、今まで感じたことのない重みを帯びていた。
そして、彼は見た。
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それは七つの月が輝く世界だった。
七つの月が天蓋に浮かび、銀の光が果てしない原始の森に降り注ぐ。神々はまだ天を歩き、言葉そのものが生まれたばかりだった。
エルフは古木の根から目覚め、樹冠の間に都市を築いた。歌声を煉瓦の代わりに、月光を灯火の代わりに。巨人は山の心臓から現れ、肌は�ite石のごとく、瞳には溶岩の光が燃えていた。
吸血鬼は最後に生まれた種族だった——一柱の神が夜に恋をし、永遠の闇に堕ちた。その神の血が大地に降り注ぎ、落ちた場所から吸血鬼が生まれた。
始祖は最初の一滴から生まれた子だった。
ルーンは彼を見た。
血色の水晶で築かれた宮殿の頂に立つ男。漆黒の髪、雪のように白い肌、紫の瞳は底の見えない深淵のようだった。
七つの種族が繁栄し、王国を築き、文明を創った。黄金の時代だった。
永遠には続かないほど、美しかった。
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神々の黄昏は一つの嘘から始まった。
誰もその嘘の内容を覚えていない。だが誰もがあの日を覚えている——七つの月が同時に赤く染まった日を。
戦争。
天が裂け、裂け目から炎が噴き出した。海は沸騰し、血の色の雨となって降り注いだ。山は沈み、エルフの都市は海底へと落ちていった。灯火が一つずつ消え、歌声が一つずつ途絶えた。
始祖は黄金の炎と化した神と対峙した。
最後の一撃。始祖の手が神の胸を貫き、神の炎が始祖の心臓を焼き尽くした。
二つの影が同時に墜ちた。大地は陥没し、深淵となり、永遠の闘が全てを飲み込んだ。
それは世界の傷。今日に至るまで、癒えていない。
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戦争は終わった。勝者がいたからではない。誰も戦う力が残っていなかったからだ。
七つの月は一つだけになった。それも欠けていた。
エルフは密林に逃げ込み、二度と出ないと誓った。巨人は眠りにつき、体は山と一体になった。吸血鬼は四散した。始祖の庇護を失い、呪われた種族となった——陽光は肌を焼き、聖なるものは魂を蝕んだ。
ルーンは廃墟に立つ少女を見た。
暗い赤の長髪、血のように赤い瞳。細い体躯、だが泣いてはいなかった。
ただそこに立ち、遠くを見つめていた。
それはヴィラだった。千七百年前のヴィラ。
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映像が流れていく。
彼はヴィラが蛮荒の草原を歩くのを見た。獣を退け、血と庇護を交換していた。あの頃の人間は彼女を神として崇めていた。
彼はヴィラがローマの街角に立つのを見た。剣闘士の血が黄砂を染めるのを眺めていた。影の中に立つ女に、誰も気づかなかった。
彼はヴィラが中世の闇を歩くのを見た。誰かが叫んだ——魔女だ! 彼女は逃げるしかなかった。
彼はヴィラがルネサンスのフィレンツェに立つのを見た。ダ・ヴィンチの絵を見つめていた。長い間見つめて、それから背を向けた。
彼はヴィラがヴェルサイユ宮殿の鏡の間に立つのを見た。
それは今。一七七八年のパリ。
シャンデリアの光が虚ろな笑顔を照らし、華やかな貴族たちが踊っていた。ルイ十六世は玉座に座り、茫然とそれを眺めていた。
ヴィラは隅に立っていた。その目は千七百年前、廃墟に立っていた少女と同じだった。
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映像が薄れていく。
ルーンは長い夢から覚めたような気がした。まだ花畑に立ち、掌はヴィラと合わせたままだった。
「融合の過程で、相手の記憶が見えることがある」ヴィラの声が花畑の向こう側から聞こえた。「私は隠さなかっただけ」
ルーンは何も言わなかった。
次の瞬間、体内の二つの力に変化が起きた。反発し合わなくなり、絡み合い、浸透し始めた。
川が海に注ぐのではなく、二つの傷が癒え、一つの完全な血肉になるように。
「……成った」
ルーンは目を開けた。
夜が明けていた。木漏れ日が差し込み、花畑の白い花が閉じていく。
彼はヴィラの方を見た。
顔色は恐ろしく蒼白で、額には汗が浮かんでいた。だがその目には——何かが違っていた。
「魔力が……少し増えた」ヴィラが呟いた。
ルーンは首を傾げた。少し増えた? それがどうしたというのか。
彼は知らなかった。ヴィラは四階の頂点で何百年も足踏みしていた。彼女の魔力は普通の九階吸血鬼の千倍。そこからさらに進むのは至難の業だ。たとえ「少し」でも、数百年ぶりのことだった。
ルーン自身の変化に意識を向けた。
二つの魔力が完全に融合し、魔力の器が大きく広がったのを感じた。おおよそ普通の一環魔法師の十倍くらいだろう。
一環の頂点。
あと一つのきっかけで、二環に突破できる。
ただ、魔法スロットは増えていなかった。魔力は増えたのに使い道がない。財布は膨らんだのに買い物できないような、もどかしさがあった。
「行くぞ」
ヴィラは聖域に向かって歩き出した。いつもより少し速い足取りで。
ルーンはその背中を見て、後に続いた。
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聖域に入るなり、ルナが飛びついてきた。
「どうしたの? 何かあったの? 失敗したの?」
「成功した」
ルナは一瞬呆然とし、それからルーンの腕にしがみついて泣き出した。
「怖かった……二人とも顔色が酷くて……」
ルーンは笑って言った。
「大丈夫、思ったより難しかっただけだ」
ヴィラの部屋の方を見上げた。
扉はもう閉まっていた。
「数日休んだら」ルーンは言った。「ここを出られる」
(完)




