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第150章:機転

ソフィアが再び舞台に登場した。


今度は華麗な金色のドレスを纏い、髪を精巧なシニヨンに結っていた。


舞台に立った瞬間、一目でシャルルが最前列に座っているのが目に入った。そして彼の隣で酒を酌み交わしているのがクロードだと気づいた時、顔の表情が一変した。


無意識に口を開いて、叫んでしまった。


「シャルル様……」


シャル様という言葉が口から出た瞬間、ソフィアは自分が間違ったことを言ったと悟った。しかしもう遅かった。


席で彼女の歌を待っていた人々から、すぐにブーイングが起こった。


「この歌姫は面白いな。舞台に上がって歌わず、先に男の名を叫ぶとは……」


「恋人が側にいないのか?ずいぶん恋しいようだな。降りてきて兄貴が慰めてやろう……」


歌姫が恥をかくのを見て、何人かの客が大声で嘲笑した。


後方から数人の若い貴族たちが駆け寄ってきた。ソフィアがミスをして嘲笑されるのを見て、すぐに激怒し、振り返って客席に向かって怒鳴り返した。


しかし彼らの身分はクロードに比べてかなり劣るらしく、客たちは誰も彼らに面子を与えなかった。何人かの生意気な者はさらに罵り合いを始めた。


シャルルは恋人と喧嘩した青年のように、頭を背けて舞台を見ようとしなかった。舞台では既にソフィアが涙を流している。


向かいのクロードは既に事態を理解していた。この坊ちゃんはソフィアと揉めているのだと。安心して見物を決め込んだ。


---


「シャル様」ルーンがシャルルの隣で小声で言った。「いずれにせよ、あなたは今でもあの舞台の令嬢の支持者団長です。さっきの冷遇で、彼女に教訓を与えるには十分でしょう。これ以上引きずれば、他の人たちにあなたの笑いものにされかねません」


シャルルは厳しい顔で「うん」と言ったが、歌姫を助ける言葉を口にしなかった。


ルーンはすぐに気づいた。この坊ちゃんは自分から先に口を開いて面子を失うのを恐れているのだと。


そこで再び言った。


「シャル様は口を開く必要はありません。私が言います」


そう言って、ルーンは立ち上がった。


左手の人差し指を伸ばして、後方の全観客席を指し示す。右手で財布を取り出し、中の全ての紙幣を握りしめた。


そして口を開いた。


「さっき誰がソフィア様の面子を潰したんですか?」


声は平静だが、劇場全体に響き渡るほど明瞭だった。


「ここに50銀貨あります。シャルル・ルブラン坊ちゃんは知りたがっておられます――一体誰がこれほど度胸があって、自分が応援している歌姫を辱めたのか、と」


ルーンは手に握った金を高く掲げた。


「さっき口を開いた方、このテーブルまでお越しください。この50銀貨を治療費として差し上げましょう」


治療費という言葉に、場内がざわめいた。


誰もがその意味を理解した――決闘だ。


「もし度胸がないなら口を閉じなさい!」ルーンが続けた。「この50銀貨は花束に換えて、シャル様が舞台のソフィア様に贈ります!」


シャルルの目が輝いた。


向かいに座って見物していたクロードまでもが、感嘆の表情を浮かべた。


ピエールは驚いてルーンを見つめた――


この言葉は見事だ!


第一に、シャルルは口を開かなかったが、ソフィアの窮地を救った。50銀貨を花束に換算すれば相当な量だ。


第二に、ソフィア嬢の背後にいる支持者団長シャルルの名を出したが、シャルル自身が直接出て口を開く必要はなかった。身分を下げずに済んだ。


第三に、この言葉は大胆だ。金を出したら回収するつもりはない。これこそ社交場の老練な手だ。


そして最も妙なのは――


「治療費」という言葉。誰もが理解した。立ち上がる者がいれば、決闘になる。


ルーンはその指をそのまま皆に向けたまま。


「私の話は終わりました。前に出る方はいらっしゃいますか?」


劇場ホール全体が静まり返った。


さっきざわめいていた観客たちは、皆頭を下げた。


誰も立ち上がる勇気がなかった。


冗談ではない。ラ・ロシュ家もルブラン家も、どちらも普通の人が怒らせられる相手ではない。ましてや、「治療費」は決闘を意味している――誰がルブラン家の坊ちゃんと決闘する勇気があるというのか?


「よろしい」


ルーンは手を下ろし、給仕に向き直った。


「この50銀貨を全て花束に換えて、今すぐ舞台のソフィア様にお届けください。シャル様からだとお伝えください」


「はい、旦那様!」給仕は恭しく金を受け取った。


---


クロードはこの光景を見て、顔に複雑な表情を浮かべた。


彼は本来シャルルを圧倒しに来たのだ。


結果今は……


シャルルは恥をかかなかっただけでなく、この機会を借りて全員の前でソフィアへの擁護を見事に示した。


そして最も重要なのは――


この若い秘書の一言で、観客席全体を黙らせたことだ。


これは手腕だ。


真の手腕だ。


しかしクロードもまた、簡単には引き下がらなかった。


深呼吸し、自分の財布から金貨を取り出した。


「給仕」彼が言った。「私からもソフィア様に花束を。この20金ルイを全て花に換えてくれ」


20金ルイ――それは約400銀貨に相当する。


シャルルの50銀貨の八倍だ。


観客席がざわめいた。


しかし誰もが分かっていた――


クロードは負けたのだと。


なぜなら彼は後から出したから。


なぜならシャルルの方が先に、そして適時に、ソフィアを守ったから。


金額の多寡ではない。


タイミングと誠意の問題だ。


---


クロードはグラスを持ち上げ、シャルルに向かって言った。


「ルブラン坊ちゃん、どうやら……我々は共にソフィア様の忠実な支持者のようですね」


声には少し不本意さが混じっていたが、表面上は礼儀正しかった。


「ああ」シャルルも笑った。「我々は共に、な」


二人はグラスを掲げ、軽く合わせた。


表面上は和解だ。


実際には……


この一戦で、シャルルが完全に勝ったのだ。


---


舞台では、給仕が大量の花束を持って現れた。


ソフィアは涙を拭い、花束を受け取った。


深くお辞儀をし、観客席のシャルルの方を見た。


目には感謝の色があった。


そして……


少しの、安堵が。


公演が続いた。


---



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