第2章:チート設定の地獄
佐藤太郎(25歳、無職、臨時職員)は、転生管理局の狭い事務室で、書類の山に埋もれていた。目の前には、主任女神ルナリアがエナドリをガブ飲みしながら、キーボードを叩く音が響く。モニターには「システムエラー:転生者データ処理遅延」の赤い警告が点滅。空気は重く、まるでブラック企業の深夜オフィスだ。
「太郎、ボーッとすんな! 次の転生者のチート能力設定、早くやれ!」
ルナリアの声は、3日連続徹夜のイラつき全開。彼女の金髪はさらにボサボサ、目のクマはパンダ級だ。太郎は、目の前の「転生者希望リスト」を手に震える。リストには、転生者の名前、希望する異世界、欲しいチート能力がびっしり。項目数は1000件超え。締め切りは今日の23時59分59秒。
「え、俺、昨日入ったばっかの臨時職員なのに…こんな量、ムリじゃね?」
「ムリとか言うな! お前が昨日、勝手に『世界滅亡魔法』とか設定したせいで、異世界からクレーム殺到! スライムが空飛んで村がカオス! 責任取れよ!」
「いや、あれはなろうの定番かと…」
「定番じゃねえ! お前のなろう知識、害悪でしかない!」
ルナリアの毒舌に、太郎は肩をすくめる。ステータス「運S」以外オールEの凡人だが、なぜか臨時職員として放り込まれた転生管理局。昨日の初仕事で、転生者選別試験をカオスにした罪悪感もあり、渋々書類に向かう。
チート設定業務、始まる
ルナリアの指導のもと、太郎の今日の仕事は「チート能力設定」。転生者の希望を聞き、システムに入力し、適切な能力を付与する。ルナリア曰く、「チートは強すぎると異世界のバランスが崩れ、弱すぎると転生者がクレーム入れる」。繊細な調整が必要らしいが、システムはバグだらけで、入力ミスが即大惨事に繋がる。
最初の転生者は、30歳のフリーター・田中勇太。「俺、ガチャ系の異世界で無双したい! 『無限ガチャ』で最強装備引きまくりたい!」
太郎、なろう知識がフル回転。「おお、ガチャ系! いいね、田中さん! 『無限ガチャ』で、レア率100%、SSR装備確定!」
ルナリアが絶叫。「バカ! そんな設定したら、異世界の経済がインフレで崩壊する! ガチャでSSR乱発とか、サーバー落ちるぞ!」
「え、なろうならガチャ無双が…」
「黙れ! システムの負荷考えろ!」
結局、田中には「無限納豆ガチャ」を付与。1回引くごとに納豆パックが無限に出るスキルだ。田中は「納豆!? 俺の無双どこ!?」と叫びながら、ガチャ系異世界のポータルに吸い込まれる。太郎、申し訳なさそうに手を振る。
次の転生者は、50歳の主婦・佐々木美智子。「私は、ほのぼのスローライフの異世界で、穏やかに暮らしたいの。畑仕事が楽になるスキルが欲しいわ」
太郎、ほっこり。「いいね、佐々木さん! 『超農業マスター』で、作物が1日で育つ!」
ルナリア、ため息。「お前、学習能力ねえな。1日で育つ作物とか、異世界の生態系が狂う。土壌枯れるぞ」
結局、佐々木には「穏やか農作業スキル」を付与。作物が「ちょっと早く育つ」程度に調整され、スローライフ異世界へ。ポータルから「これなら私でもできるわ!」と明るい声が聞こえてきた。
ルナリアのミスと異世界派遣
順調(?)に進むかと思いきや、ルナリアが過労でふらつく。彼女が処理中の転生者データに、誤って「惑星破壊魔法」を入力。ターゲットは、農村異世界の村人・ジョン(仮名)。太郎が気付いた時には、ジョンはすでにポータルに吸い込まれていた。
「ルナリアさん! 村人に『惑星破壊魔法』って!? やばくね!?」
「うっ…やっちまった…過労で目が…」ルナリア、机に突っ伏す。
モニターに緊急アラート。「異世界:農村ワールド、異常事態! 村人ジョン、惑星破壊魔法で村を光の渦に! 至急バグ修正要!」太郎、目を丸くする。「え、村人が惑星破壊!? なろうでもそんな展開ねえぞ!」
ルナリア、フラフラ立ち上がりながら指示。「太郎、お前が行って修正してこい! 臨時職員の仕事だ!」
「俺!? 昨日入ったばっかだよ! スローライフの予定が…」
「文句言うな! ポータル、起動!」
ルナリアに強制的に転生ポータルに突き落とされ、太郎は農村異世界へ。着地した先は、緑豊かな田園風景…のはずが、村は光り輝く渦に包まれ、空にはスライム(またか!)がキラキラ浮遊。村人たちはパニックで逃げ回り、ジョン(50歳、農夫)は巨大な魔法陣の中心で「うおお! 力が溢れる!」と叫んでる。
「ジョンさん、落ち着いて! それ、設定ミス!」
「ハハハ! 俺は選ばれし者だ! 世界を破壊…って、え、ミス!?」
テキトーなバグ修正
太郎、なろう知識をフル動員。「なろうなら、魔法の暴走は別のスキルで中和する展開だろ!」と、村の井戸から水をかけてみるが、当然効果なし。ジョンが「次は太陽を落とす!」と暴走する中、太郎のステータス「運S」が発動。転びながら誤ってジョンの魔法陣に石を投げ込むと、なぜか魔法陣が変形。「惑星破壊魔法」が「花火魔法」に変換される。
ドカーン! 空に巨大な花火が打ち上がり、スライムもキラキラ光って消滅。村人たちは「すげえ!」「祭りだ!」と大喜び。ジョンも「俺、花火職人になれるかな?」と満足げ。太郎、呆然。「え、俺、なんか解決した?」
転生管理局に戻ると、ルナリアが待っていた。「太郎、テキトーすぎるだろ! でも…まあ、村は助かったから、よしとするか」
「よしって…俺、臨時職員なのにこんな仕事ばっか!?」
ルナリア、苦笑い。「慣れろ。これが女神業だ」
太郎、心の中で叫ぶ。「俺のスローライフ、いつ始まるんだよ!」




