表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ:走れなかった日から、すべてが始まった

不破聖衣来さんをモデルにインスピレーションを働かせて小説を書いてみました。

挿絵(By みてみん)


中学最後の大会、ジュニアオリンピックのゴールラインを切ったとき、私は確かに世界の中心にいた。


走ることは、私の呼吸で、心臓の鼓動で、生きている(あかし)だった。

「不破セーラは、未来の日本代表だ」――そう言われて、疑ったことなんて一度もなかった。


だけど、あの日。

高校3年の夏、トラックに膝をついて、立ち上がれなくなったとき、世界は音もなく崩れた。


シンスプリント?脛骨過労性(けいこつかろうせい)骨膜炎(こつまくえん)?貧血?

怪我をしたのは、間違いない。

体がもう走りたくないって、言ってるのかな?

挿絵(By みてみん)

休めば、治る?

でも、休んで練習しないと、選手としてはダメになる。

でも、練習すると、また、痛くなる。

痛い=ストレス=走れない=辛い=再ストレス


復帰のメドはいつ?


“あのとき無理をしなければ”“あと一歩抑えていれば”

そんな後悔が何度も頭をかすめた。

けれど、本当はわかってた。

――私は、もう「走れない」ってことを。


推薦も、スカウトも、未来も消えた。

残ったのは、空白のような日々と、重たく湿った静けさだけ。

それでも、陸上部の仲間たちは、私の復活を信じて、エース不在の穴埋めをしてくれている。


そんなとき、母に勧められて訪れた、小さな隠れ家のような鍼灸院。

畳敷きの室内、微かに香る漢方の匂い、老鍼灸師のしわくちゃな笑顔。

正直、最初は「気休め」だと思っていた。だけど、鍼が皮膚に触れた瞬間――


身体の奥で、何かが“響いた”。


その日から、私はもう一度、自分の身体と向き合うことを決めた。

走るためだけでははない。

他の誰かを救うために。


そして、あるニュースが舞い込んできた。


T大学、医学部に「鍼灸学科」新設――伝統医療と科学の融合を目指す第一期生を募集。


「もう一度、夢を追ってもいいのかもしれない」

心のどこかで、忘れかけていた“熱”が蘇った。


あの日、走れなかった私は、再びスタートラインに立つ。

この手で、自分を、誰かを、世界を癒せると

気にいってくれる人がたくさんいるといいなあ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ